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線型代数学/行列と行列式/第三類/外積

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう. 単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する.

定義3 外積

のベクトル に関して、 を次で定める.

ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。

定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え, ×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい.

ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ. 交換法則が成り立たないことに注意する. を入れ替えると,符号が逆になる.


定理4 ベクトル積の計算法則

(1)

(2)

(3)

(4)

証明

(1)

にて

(2)

同様に


(3)

にて




(4)


2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった. ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する.


定理5 ベクトル積の意味

(1) は, の両方と直交する.

(2) が張る平行四辺形の面積 は,

(3) が張る平行六面体の体積 は,

証明

とする.

(1)

の内積をとる.



同様に


よって, の両方と直交する.


(2)

のなす角を とすると,内積の性質より,

を底辺としたときの の高さを とすると,


と表されるので,


,また だから,






なぜならば

よって,


(3) とする. が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの の高さを のなす角を とすると,

が張る平行四辺形に垂直なので,

だから,


演習1.

のとき,

(1) を求めよ.

(2) の両方と直交する単位ベクトルを求めよ.

(3) とするとき,三角錐 の体積を求めよ.

解答例

(1)

.

(2) に垂直なので, を単位化する.

.(解となるベクトルは二つ)

(3) が張る平行六面体の体積 は,

が張る平行四辺形の面積を が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを とすると であり,

(三角錐 の体積)