内積があるのなら外積があってもいいのでは,と思っている人もいることだろう.
単に「外積」と呼ばれることもある,3次元実数ベクトルについての外積,すなわち「ベクトル積」を紹介する.
定義3
外積
のベクトル
,
に関して、 を次で定める.
ベクトル積は 3 次元ベクトルの場合のみについて定義される演算である。
定義のとおりだが、実際の計算は図に示したように第 1 成分を下に付け加え,
×の形に積を取り,使っていない成分に押し込むという感じで技化しておくとよい.
ベクトル積に関して次の計算法則が成り立つ.
交換法則が成り立たないことに注意する.
で と を入れ替えると,符号が逆になる.
定理4
ベクトル積の計算法則
(1)
(2)
(3)
(4)
証明
(1)
,
にて .
(2)
.
同様に
.
(3)
,
,
にて
.
(4)
2次元ベクトル,3次元ベクトルの内積は,図形的な解釈が可能であった.
ベクトル積が図形的には何を表しているかを紹介する.
定理5
ベクトル積の意味
(1)
は,, の両方と直交する.
(2)
と が張る平行四辺形の面積 は,
(3)
,, が張る平行六面体の体積 は,
証明
,
とする.
(1)
と の内積をとる.
.
同様に
.
よって, は , の両方と直交する.
(2)
, のなす角を とすると,内積の性質より,
を底辺としたときの の高さを とすると,
と表されるので,
,また だから,
なぜならば
よって,
(3)
とする.
, が張る平面を平行四辺形の底面としてみたときの
の高さを ,
と のなす角を
とすると,
は , が張る平行四辺形に垂直なので,
だから,
.
演習1.
,
,
のとき,
(1)
を求めよ.
(2)
の両方と直交する単位ベクトルを求めよ.
(3)
とするとき,三角錐 の体積を求めよ.
解答例
(1)
.
.
(2)
は と に垂直なので, を単位化する.
.(解となるベクトルは二つ)
(3)
が張る平行六面体の体積 は,
が張る平行四辺形の面積を , が張る平行四辺形を底面として見たときの平行六面体の高さを とすると であり,
(三角錐 の体積).