コンテンツにスキップ

線型代数学/行列と行列式/第三類/行列の定義・和・差

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

線形代数では、行列と呼ばれるものを扱う.

数字を長方形の形に並べて括弧で括ったものを行列という. 横に並んだ数の並びを行と呼び,上から第 1 行,第 2 行,, 縦に並んだ数の並びを列と呼び,左から第 1 列,第 2 列, と数える. × の長方形に並んだものを, 列の行列, または 型行列という.

元列ベクトルは 型行列, 元行ベクトルは 型行列とみなすことができる.

例えば 型行列があって、その第 2 行、第 3 列に書かれている数が であるとき、 これを 成分が であると表現する.

縦と横に並んだ数の個数が等しいとき,つまり正方形の形に並ぶとき,正方行列という. 型の正方行列を 次正方行列 という. 正方行列において, の成分を対角成分という. 対角成分以外の成分が である行列を 対角行列 という. 成分が のところは書かないで済ます場合もある.

ベクトルを一つの文字で置いたように,行列も一つの文字で置いて表す. など大文字で置かれるのが通例である.

同じ型の行列に対して,和,差を計算することができる. たとえば, のとき,


というように,成分ごとに和,差を取る.また行列の実数倍は,

というように,各成分を定数倍して求める. 行列の和,差,実数倍はベクトルと同じようにして計算するわけである. すべての成分が の行列を零行列 といい で表す.

この行列の演算(和,差,実数倍)について,行列を文字で表すと次のような計算法則が成り立つ.


定理6 行列の計算法則

を同じ型の行列, を実数とすると次が成り立つ.

(1)
(2)
(3)
(4)
(5)

これらが成り立つことは,ベクトルの計算法則から容易に想像がつくだろう. ベクトルであっても行列であっても,和は成分どうしの和,実数倍は成分ごとの実数倍だからである.


計算問題をしてみよう.

演習4.

のとき, を求めよ.


解答例

与式に直接代入してもかまわないが,せっかく計算法則があるのだから,同類項をまとめてから代入する.