出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
n 次正方行列 A があるとします。 n 次正則行列 P を上手くとって、 P とその逆行列とをそれぞれ右と左から掛けて(このようにサンドイッチにすることを相似変換といいます)、
のように n 次対角行列 D にすることを、行列 A の対角化といいます。対角化はできる場合とできない場合があるので、できる場合を対角化可能といいます。後に理由が明らかになりますが、対角化のことを固有値分解とも言います。対角化は固有値と非常に深い関係があるのです。
定義式を成分で表示してみると、
両辺に左からPを掛けると:
ここで、Pを列ベクトル を並べて表記すると
となるので、定義式は次のように書き直すことができます。
つまり、P の構成する各列ベクトルは Aの固有ベクトルであり、対応する対角成分はその固有ベクトルに対応する固有値になっているのです。
行列 P が正則であることは、これらの固有ベクトルが線形独立である(= n次元ベクトル空間の基底になっている)ことを意味します(「行列のランク」で習ったことを思い出しましょう)。
ここまでの議論は完全に逆向きにたどることができます。つまり、 行列Aの固有ベクトルだけで n 次元ベクトル空間の基底が構成できるならば、それら縦ベクトルを横に並べた行列 P は正則行列となり、
が成り立ち、 D の対角成分には A の固有値が並ぶのです。
これが対角化できるためのひとつの必要十分条件です。同時に、実際に対角化を行うための手順にもなっています。
次の行列は対角化可能かどうか判断し、可能な場合は対角化しなさい。
固有値と固有ベクトルを計算すると、
固有ベクトルを並べた
の行列式は0でないため、これを使って対角化できます。実際に計算すると、