独立変数が2つであるような関数
を二変数関数という。独立変数が3つであるような関数
を三変数関数という。一般に、独立変数が
個であるような関数
を
変数関数という。
が2以上であるとき、多変数関数という。
「関数」という語の定義から、多変数関数は(定義域・値域に於いて)「独立変数の組の各々に対して対応する従属変数が必ず存在する」「独立変数の組を一意に定めたら従属変数が一意に定まる」という性質を満たす。
なお、ここで独立変数の組
を
上の点と捉えると、多変数関数とはベクトルをスカラーへ写す写像(スカラー関数)
と考えることができる。拠って、以下で扱う話題はベクトル関数(ベクトル解析学)で一般化され得る。
一般に、
変数関数のグラフは
次元空間ではじめて描画され得る。そのため、多変数関数の議論では(簡単な場合を除き)「グラフを考えて図形的に解釈する」手法はあまり通用しない。
多変数関数の考え方は変数が幾つであっても本質的には同じなので、以下の議論は全て(最も基本的な)二変数関数で扱うものとする。
二変数関数の極限は、定性的には一変数関数と同様にして以下のように定義される。
に於いて
を実定数の組
に
とは異なる値を取りながら限りなく近づけたとき、
が一定値
に近づくならば「
のとき
は
に収束(収斂)する」といい、
のように書く。
収束する値を極限値、収束しない場合を発散というのも同様である。
なお、ここで
を
平面上の点と見れば位置ベクトルを用いて
![{\displaystyle \lim _{\scriptscriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)\to \left({\begin{array}{c}a\\[-6pt]b\end{array}}\right)}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/038bdc324975b827d6a86413c1889dda1e7f8b92)
のように書くことができる。また、

のような書き方も許容される。
但し、

のような書き方は反復極限(各変数を独立に飛ばすような極限)

と受け止められるので推奨しない(この場合は
と
を同時に飛ばしているので)。
同一値に飛ばす場合は

のような書き方も見られる。
ここからは、二変数関数の極限を定量的に考えていく。
一変数関数の場合を復習しておくと、「関数
が
で有限値
に収束する」とは
とすると
論法を用いて

で定義された。
二変数関数でも同様な定義にしたいので、
を適切に取り換える必要がある。高校数学を思い返してみると、
の意味は「実数の絶対値」から「ベクトル(複素数)の大きさ」に拡張されていた。つまり、先程と同様に変数の組
を
平面上の点を表す位置ベクトルと見ればよい(より一般にはベクトル空間のノルム
を用いる)。
つまり、
として
![{\displaystyle \forall \varepsilon >0,\,\exists \delta >0,\,\forall {\scriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)}\in \mathbb {R} ^{2}\left({\scriptstyle \left\|\left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)-\left({\begin{array}{c}a\\[-6pt]b\end{array}}\right)\right\|}<\delta \implies |f(x,y)-L|<\varepsilon \right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/bc5034aaf079613e867a638742944ee63fdf3867)
とすればよい。
一変数の場合、
の近づけ方は
(右側極限)と
(左側極限)の二通りしかなかった。しかし、二変数の場合は
平面上のありとあらゆる方向からあらゆる経路で近づくことが考えられる。
つまり、二変数関数の収束は「2つの片側極限が一致」すれば良かった一変数の場合に比べ遙かに厳しい条件であることがわかる。
先程「反復極限のように表してはいけない」と述べたのは、反復極限では「どのような近づけ方であっても一意に収束する」ことが示せないからである。
それでは、実際に二変数関数の極限を求めるにはどうしたらよいであろうか?
法による上述の定義では、「全ての近づき方に就て一意に収束する」ことを言うしかないが、近づけ方は無数に考えられるので実務的に不可能である。ここで、「直線的に近づく」場合に限っては無数にある近づき方を纏めて判定できる方法がある。
それは、二次元極座標(円座標)を利用する方法である。
高校数学の復習だが、極座標とは極を原点に取ったときに変数変換
で定まる座標系だった。ここで
である。
例えば
の極限を考えるとき、
と変換すると上記の関係式から
と表すことができる。ここで
を計算したときに
が消えた場合、
は
にのみ依存するので
の極限は存在しないと考えることに注意。
二変数関数でも極限に関する線型性などの性質はそのまま成り立つ。
- 例題
- 極限
を求めよ。
- 解答
- なお、
より
や
、つまり
の場合は除外できるので
は不定形ではない。
二変数関数の連続性は、一変数関数と同様である。
- 二変数関数
が「
で連続」とは、
が成り立つこと。
で連続な
に就て、
とすると

- は全て
で連続。
- 任意の
で連続ならば「
で連続」である。
の
近傍での変化の様子を調べるとき、極限の節で述べたように
の動かし方・方向は無数にあるのでそれらを全て扱う厳しい。そこで、代表的に
軸のそれぞれの方向で動かしたときの値の変化を観察し、それを併せることで変化の様子がある程度理解される。
ここで
を
軸で動かすときは
を
に、
軸で動かすときには
を
に固定していることに注意すると、二変数関数
は実質的に一変数関数
と見做せる。
一変数関数のある点に於ける変化の度合いはその点での微分係数で表された。則ち、
軸方向で動かした変化の様子は
の
での微分係数を見ればよい。
これらの微分係数を
の
に於ける
に関する偏微分係数といい、
のように表す。
ここで、記号「
」は「デル」「パーシャル」「ラウンドディー」「ラウンディー」「ラウンド」などと読まれる。
一変数関数での微分係数の定義式より、偏微分係数の定義式は以下のようになる。


偏微分係数が存在するとき、
はその点で偏微分可能という。
変数
が
平面上の領域
を動く時を考える。
このとき、各点
に対し、その点での偏微分係数
を与える関数を
の
に関する偏導関数という。
偏導関数を求める操作を偏微分という。これに対し、一変数関数の微分を常微分という。
形式的には偏微分係数の定点を変数に置き換えればいいので、


のように定義される。
常微分に様々な記法があったように、偏微分にも様々な記法が存在する。
の
に関する偏導関数の場合

なお、偏微分係数は
を
に取り替えた記法の他、代入記号「
」を用いて
![{\displaystyle {\frac {\partial {z}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{x=a,y=b},~{\frac {\partial {z}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}},~{\frac {\partial {z}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{(x,y)=(a,b)},~{\frac {\partial {z}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)=\left({\begin{array}{c}a\\[-6pt]b\end{array}}\right)}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/00c0b505795a053e868147b85aff1d28e221b840)
などと書く記法も存在する。
偏導関数の計算は偏微分係数に立ち戻ると「偏微分変数以外の独立変数を固定してできる一変数関数」に関する常微分なので、偏微分したい変数以外は定数と見做して常微分すればよい。
例えば、
の場合、
に関する偏導関数は
を定数と見ることによって
と求まる。
- 同様に、
に関する偏導関数は
を定数と見ることによって
と求まる。
前節で二変数関数の変化の様子を測る道具として偏微分を定義したが、偏微分のみでは
の変化の様子が全て分かったとは到底言えない。
例えば、区分的に定義された二変数関数
を考える。
この関数は
軸(則ち直線
)上では値が常に0な定数関数である。よって軸上の全ての点で微分可能なので、原点に於いて
とも偏微分可能である。
しかし、区分的に定義された上の式の
の極限をとってみると、

より原点に近づけた極限は存在しない。従ってこの
は原点を不連続点に持つ。
このように、常微分で成り立った「ある点で微分可能ならばその点で連続」という定理は偏微分では成り立たない。
そこで、この定理を多変数関数でも成り立たせるような新たな微分を考える。
一変数関数の常微分係数の定義式は

であったが、これは
で
ということなので、ランダウの記号(オーダー記法)を用いて

という式が出来上がる。
これを二変数に拡張するとき、
の項を「極限で飛ばす変数と導関数の内積※」と考えることによって、以下のような表示を得る。

これをそのまま(完)全微分の定義式とする。
※複素数の内積
より、実数同士の積
は内積
と考えることができる。詳しくは関数解析学を参照。
この式が成り立つとき(諄いが二変数関数の極限値はあらゆる方向あらゆる経路で近づいても一致する必要がある)、
は
で(完)全微分可能という。
また、
を(完)全微分係数という。
- 全微分係数を
とおく。
が
で全微分可能であるとき、
と固定して
の極限をとると、
- 全微分の定義式より


- 最左辺は
の
に関する偏微分係数に等しいので
に就ても同様。//
ここで証明したことから、以下が成り立つ。
ここから、全微分可能は偏微分可能より強い条件であると判る。
更に、先ほど全微分を「微分可能なら連続」という定理を成り立たせる微分として導入したので、この定理が成り立つ筈である。
を全微分可能な点
の充分近傍にとる。
とすると
であり、
なので





- よって極限の分配法則より


- 従って、
は全微分可能な点で連続である。
なお、全微分と常微分は完全に対応するため、両者を区別せずにただ「微分」と呼ぶ文献も存在する。実際、関数が一変数か多変数かは文脈で容易に判断されるので、両者を区別しなくとも実務的な支障はない。
余談だが、全微分は偏導関数に各独立変数の微小量を掛けて足し合わせた式

でも表される。
一変数関数に於いて、常微分可能性は「点
を通る接線の存在性」に対応した。
それでは、全微分可能性の幾何的意味は何であろうか?
一変数の話に立ち戻ると、関数の接線とは「接点の充分近傍に於ける関数の一次近似」であった。つまり、次元を1つ上げると曲面
は「点
を通る且つ方程式が
の一次方程式である」図形で一次近似される筈である。
高校数学を思い出すと、
空間で一次方程式
は平面の方程式であった。更に、ベクトル
はこの平面に垂直な法線ベクトルであった。
が全微分可能ならば
に関して偏微分可能なので、一変数関数
はそれぞれ
に関して常微分可能であり、曲面
を平面
で切った切り口の曲線の接線の傾きは
となる。よってこれらの接線に対してそれぞれ方向ベクトル
をとれる。
求める平面はこれらの接線を共に含む筈なので、
の両方に直交するようなベクトルが求める平面の法線ベクトルである。
よってこれらの外積を計算して、

求める平面は
を通るので、方程式の一般形に代入して


この平面を、曲線
の点
に於ける接平面という。
則ち、全微分可能性は接平面の存在性に対応することが判った。
解答
(1)
全微分可能性を示すには、
・・・(*)を示せばよい。
より、




ここで
とは
を満たす
のことだったので、
が0に収束する点
が存在することを示せばよい。
変数変換
により、


(
三角不等式)

最後の式で
とした極限は0に収束し、不等式
と挟み撃ちの原理より
なので、(*)が示された。//
(2)
(1)で求めた偏導関数から
なので、
一般形に代入して
//
の偏導関数
は一般に
の二変数関数である。そのため、これらが偏微分可能であればさらに偏微分することが可能である。
今、
の
について偏導関数が存在し、それぞれ偏微分可能であればそれぞれ更に
についての導関数が存在する。そのため、積の法則より二回偏微分した偏導関数(二階偏導関数)は4種類存在することになる。
の
に関する偏導関数を
などと表す。
の
に関する偏導関数を
などと表す。
の
に関する偏導関数を
などと表す。
の
に関する偏導関数を
などと表す。
ここで、
を用いるか否かで
の順序が入れ替わっていることに注意。
また、それぞれの二階偏導関数が存在するかは一階偏導関数の偏微分可能性に依存するので、上の4種類が必ず揃う訳ではない。
先程の
の場合、




である。
ここで
が成り立っているが、これは応用上用いられるような「まとも」な関数ならば偏微分の順番が可換であることによる。
- 「まとも」でない例

- とすると、
より

- 一方、
のとき、



- 従って


- である。
「まとも」な関数が具体的にどのような関数であるかは、以下の定理により与えられる。
定理(偏微分順序の可換性)
点
に於いて
ともに連続ならば、

- 証明の導入
まず、
とは定義に従うと



であり、同様に
とは定義に従うと



である。
よって、この定理は式
における
と
(反復極限)の可換を証明している。
- 証明
やや天下り的だが、

と置くと

である。
技巧的だが、この式を参考に


とすると、

という風に
を1変数関数に置き換えられる。
ここで、1変数関数に於けるラグランジュの平均値の定理を適用すると、

を満たす
が存在するので、

として

と書いておく。
ここで偏微分係数の定義に立ち戻ると、
である。
なので

また、
を
の関数と考えることにより、偏微分係数の定義を再び用いて

を得る。
一方、

と表した場合も、同様の式変形によって

よって

より

この式について、
の極限をとれば、極限をとる順番に関係なく
//
二階偏導関数が偏微分可能な場合、その偏導関数たちを三階偏導関数という。三階偏導関数が偏微分可能な場合、その偏導関数たちを四階偏導関数という。同様に次数を上げていくことができる。次数が2以上の場合を高階偏導関数という。
一変数の場合と異なり、次数が上がるたびにそれぞれ
について偏導関数を考えるため、
階偏導関数の(最大)個数は
個から
個とる重複順列
に等しい。
但し、上で証明した定理を繰り返し用いると偏微分の順序が関係なくなるので、「どの変数で何回偏微分したか」のみが重要である。具体的には、一致する偏導関数たちを全体で
個と数えると、(偏微分が可換な)
階導関数の(最大)個数は
個から
個とる重複組合せ
に等しくなる。
点
で二変数関数
の
階偏導関数(
)が全て存在し、且つそれらが全て連続であるとき、
は
で
階連続微分可能といい、「
は
で
(級)関数である」という。また、定義域の全てで連続微分可能である場合は
と書く。
でいえるときは
級関数という。
応用上で用いられる関数の殆どは
級関数である。
これを用いて先程の定理を言い換えると、
で
が
級
である。
二変数関数に対しても合成関数を考えることができるが、合成元の関数は一変数と二変数の二通り考えることができる。
先ずは、一変数関数の場合を考える。
一変数関数
に対し、
となるような媒介変数
が存在するとする。このとき、合成関数
を考えることができる。
は勿論一変数関数なので、
で微分するには常微分可能性を考えればよい。則ち、極限

が有限値
に収束すればよい。
ここで
とする。
が常微分可能とすると
は連続なので
で
である。よって

更に
が全微分可能とするとどの方向から
としても
- (分母)
![{\displaystyle ={\frac {\partial {f}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot \Delta x+{\frac {\partial {f}}{\partial {y}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot \Delta y}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/55c726a47d2bdf729d65a38f4784d6d80f3ff39c)
よって
![{\displaystyle L=\lim _{h\to 0}\left\{{\frac {\partial {f}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot {\frac {\Delta x}{h}}+{\frac {\partial {f}}{\partial {y}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot {\frac {\Delta y}{h}}+O\left(\left\|{\begin{pmatrix}\Delta x\\\Delta y\end{pmatrix}}\right\|\right)\right\}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9bda04ac772faa2c040cf974f7decd0054b9a3ae)
ここで

また、

より

よって
![{\displaystyle {\frac {dF}{dt}}={\frac {\partial {f}}{\partial {x}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot {\frac {d\phi }{dt}}+{\frac {\partial {f}}{\partial {y}}}{\Bigg |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=\phi (t)\\[-6pt]y=\psi (t)\end{array}}}\cdot {\frac {d\psi }{dt}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/dcb76a108ad75bab35ad5f7bcf27c3d44aab62a5)
と求まる。
ここでは代入記号を省略する略記法を用いていることに注意。右辺を見ると、一変数関数の合成関数微分と同様に連鎖律(チェーン・ルール/チェイン・ルール)が成り立っていることが判る。
二変数の場合は、偏微分の定義に立ち戻って一変数の場合に帰着すれば容易にわかる。
定理(合成関数の偏微分)
が全微分可能で
の何れも
で偏微分可能であるとき、合成関数
は
で偏微分可能で


合成関数の常微分の証明の計算に於いて
とそれぞれ置くことで直ちに成り立つ。
一変数関数の場合と同様に合成関数の二階微分も考えられるが、一変数の場合より遙かに煩雑である。
例えば、
を考える。

(
和の微分)
(
積の微分)

(
合成関数の偏微分)
//
ここで、
が
級であれば更に変形して

合成関数微分の計算は、偏微分方程式に役立てられている。
例えば、
(ポアソン方程式)という二階線型偏微分方程式を考える。
を極座標表示
に直すとき、変換公式
は
に二変数関数
を合成していると捉えることができる。
よって、


先程求めた合成関数の二階偏微分の式から


ここで
より

なので


故に

と変形される。
ここで
ならば
なので

更に、
が回転対称性(
の項を無視できる性質)を持っている場合、

という(元の二変数線型偏微分方程式に比べ)圧倒的に簡単な二階線型常微分方程式に帰着できる。
なお、元の偏微分方程式はベクトル解析の知識を用いると
と非常に簡潔に表され、これは座標系に依らない記法なので大変便利である。
一変数関数の場合と同様に、二変数関数でもテイラーの定理を考えることが可能である。
但し、先程も見たように
の
階偏導関数の最大個数は
であり、その全てを式に書いたのでは非常に煩雑となって収拾がつかなくなる。
そこで、以下のような略記法を考える。
に対し、
を形式的に
と変形する。ここで、
とすれば
と表せる。
この
は「各独立変数に関して偏微分したそれぞれの偏導関数の総和をとる」という意味の演算子として定義され得る。一般に、偏微分演算子の一次結合として定義される演算子
を一次の偏微分作用素という。各
のとり方で微分する方向が変わることから方向偏微分作用素ともいう。
にこの
を複数回作用させることを考える。




と、四種類の二階偏導関数が全て現れている。
ここで形式的に



なので、偏微分作用素
と作用素の対象となる関数
の間に結合法則が成り立っていると見做せる。
そこで、
と定義すると、同様の議論により一般に
階偏導関数の総和は
で表される。
これを用いて、以下のテイラーの定理を証明しよう。
定理(二変数に於けるテイラーの定理)
が
近傍で
級であるとき、
とすると

を満たす
が存在する。
として
の有限マクローリン展開より

- を満たす
が存在する。
- 合成関数の偏微分より

- なので
を常微分することと
に
を作用させることは同値であり、非負整数
に対して

- よって


- より

- ここで
とすれば定理の式を得る。//
この定理の応用として最も基本的なのが、極値である。
一変数関数と同様、極小値・極大値を求めることは最大値最小値問題を解く手掛かりになるが、その求め方は複雑である。
先ずは、極値を定義する。
として、
![{\displaystyle \exists \delta >0,\forall {\scriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)}\in \mathbb {R} ^{2}\left({\scriptstyle \left\|\left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)-\left({\begin{array}{c}a\\[-6pt]b\end{array}}\right)\right\|}<\delta \implies f(x,y)\leq f(a,b)\right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/2412701f53a2f272f475b9cc522d085c65b6bb83)
- ならば
は
で極大という。
![{\displaystyle \exists \delta >0,\forall {\scriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)}\in \mathbb {R} ^{2}\left({\scriptstyle \left\|\left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)-\left({\begin{array}{c}a\\[-6pt]b\end{array}}\right)\right\|}<\delta \implies f(x,y)\geq f(a,b)\right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/17444e2631840233a0c522e07e1a466d9ff89084)
- ならば
は
で極小という。
- 極大/極小となるときの
を極大値/極小値といい、纏めて極値と呼ぶ。
一変数の場合と異なるのは、どの方向から見ても極大/極小でなければならない点である。
例えば、曲面
を考える。
- この曲面を
平面(則ち平面
)で切った切り口は拋物線
であり、
より原点で極小値をとる。
- 然し、この曲面を
平面(則ち平面
)で切った切り口は拋物線
であり、
より原点で極大値をとる。
このように、方向によって極大・極小が変わるような点を、馬の鞍に見えることから鞍点といい、極値点とは区別する。極大方向・極小方向の少なくとも一方が存在しない場合は鞍点とは呼ばない。
極値をとる点を求める手掛かりとなるのが、次の定理である。
定理(二変数に於けるフェルマーの定理)
が
で極値をとる
が極値ならば、
軸方向で見ても極値になっている筈である。
- ここで
軸方向に見るとは、他の独立変数を固定した一変数関数として見ることだったので、
を考えていることになる。
- このとき、一変数に於けるフェルマーの定理より

- であるが、
- 偏微分係数の定義より

- だったので、

- である。//
なお、
が成り立つ点
を停留点という。これは、ベクトル解析的に
である(
の勾配がない)ことに由来する。
フェルマーの定理の対偶を取れば
は極値ではない
となるので、極値を取る点を求めるには停留点のみを考えればよいことになる。
停留点を求めるには、連立方程式
を解けばよい。
但し、その解
が極値をとる点とは限らない(必要条件であって十分条件ではないため)。
一変数関数の場合は
を満たす
近傍の増減を調べればよかったが、二変数の場合はより複雑な手続きを要する。
一般に、多変数関数
に対して
なるn次行列
をヘッセ行列という。
ヘッセ行列式
を判別式という。
二変数の場合、
より判別式は
である。
この判別式の符号を調べることによって、極値の有無を判定することができる。
定理(極値の判定)
を
の停留点とすると、
- (1)
のとき、
で
は極値をとり、
- (ⅰ)
は極大値
- (ⅱ)
は極小値
- (2)
のとき、
で
は極値をとらない。
- (3)
のとき、
で
は極値をとることもとらないこともある。則ち、判別式では判定できない。
- テイラーの定理で
の場合を考えると、
が
近傍で
級ならば
が存在して

が停留点より変形して

- ここで
より
の二階偏導関数は何れも連続なので、
ならば充分小さい
に対して
となる。
- ここで
とすると
・・・(*)
- (1)
のとき
とすると
となって不適。
- 充分小さい
に対して
より(*)の右辺を平方完成して


- ここで両辺
に注意すると、
- 上式の最右辺は
の符号と正負が一致する。
- これは
の充分近傍では
で
が最小値、
で
が最大値をとることを意味するので、
は極値である。
- (2)
のとき
のとき、平方完成した最右辺の波括弧の中身は、
を満たす
を充分小さくとると負/正
を満たす
を充分小さくとると正/負
- であるので、
のとり方によって
のどちらにもなり得、
は
近傍で最大でも最小でもない。
- 則ち、
は極値ではない。
のとき、
ならば
を二階偏導関数に置き換えることで同様の結論を得る。
のとき、
より
なので(*)より

- これは
の符号によって正負のどちらもとり得るので同様に
は極値ではない。
- (3)
のとき、
のとり方により
は正負のどちらもとり得る。
- よって(1), (2)より
は極値であることも極値でないこともあるので、
- 判別式では判定不能である。//
解答
1.
より
- 停留点は

より

- また、
より
は
で極小値
をとる。
2.
より
- 停留点は

より

- よって
は極値を持たない。
3.
より
- 停留点は

より

- よって判別不能。
- ここで、直線
を経路として原点から点
を動かしてみる。

- よって
で
、
で
より
- 原点近傍で
は最大でも最小でもない、則ち
は極値ではない。
- よって
は極値を持たない。
- 発展問題
を二次の項迄テイラー展開せよ。
停留点が鞍点である条件を補足しておく。
鞍点とは「関数が極大となる方向・極小となる方向の双方が存在する」ような点であった。
を停留点
に於けるテイラー展開で二次近似することを考える。
- テイラーの定理より厳密に

- であるが、
より
と見做して近似すると

より

が停留点より
なので

- ここで
で括られた部分に着目すると、





- ここで
とすると
![{\displaystyle f(a+h,b+k)\fallingdotseq f(a,b)+{\frac {1}{2}}({}^{t}\!{\boldsymbol {v}}{\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {v}}){\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/81369a0459cd0ece0084d5c35a2991e6303ed04f)
- 則ち
![{\displaystyle f(a+h,b+k)-f(a,b)\fallingdotseq {\frac {1}{2}}({}^{t}\!{\boldsymbol {v}}{\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {v}}){\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b9ea7882592dc807532524f7f25e380c44b4ddeb)
拠って、
方向で極大・極小か見るには停留点から
だけ動かしたときの
![{\displaystyle {\frac {1}{2}}\varepsilon ^{2}({}^{t}\!{\boldsymbol {v}}{\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {v}}){\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/4fb516a8d62483bab1c1bbcf56439341a914cf13)
の変化を見ればよいが、

より、結局は二次形式
![{\displaystyle ({}^{t}\!{\boldsymbol {v}}{\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {v}}){\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/04be05b508c6e7fad1734ee2da1f8791fcd5cbd0)
の符号を見れば良いことになる。
ここでヘッセ行列
を対角化することを考える(ヘッセ行列は対称行列なので直交行列で対角化可能)。
- ヘッセ行列の各固有値を
とおくと、ある直交行列
による相似変換で
![{\displaystyle ({}^{t}\!{\boldsymbol {P}}{\boldsymbol {D}}{\boldsymbol {P}}){\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}x=a\\[-6pt]y=b\end{array}}}=\mathrm {diag} (\lambda _{1},\lambda _{2})}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/5c64e7a2e83b79e67912ce3a25a8c567a618a310)
- と対角化できる。
- このとき、二次形式は
という一次変換で

- と表される。
- すると
の項は対角行列の零成分が掛かって消えるので、

- (つまりこの変換は主軸変換)
則ち、任意方向で極大か極小か調べるにはヘッセ行列の各固有値の符号を見ればよい。
固有値が全て正であるとき、どのような
に対しても
と考えられるので、
のとり方に依らず
は極小値である。
固有値が全て負であるとき、同様に
は極大値である。
固有値の符号が異なるとき、
のとり方によって極大か極小か変わるので、
は鞍点である。
零固有値を持つときは、零固有値に対応する固有ベクトル方向の情報が近似の際に切り捨てられている(則ち
- 依存性が高い)ので極大・極小・鞍点・何れでもない、の全ての場合をとり得る。
纏めると、以下のようになる。
定理(極値の判定Ⅱ)
を
の停留点とすると、
- (1)
が負定値行列ならば
は
で極大。
- (2)
が正定値行列ならば
は
で極小。
- (3)
が不定行列ならば
は鞍点。
- (4)
が半正定値行列又は半負定値行列又は完全退化行列ならば
は極値点であることも鞍点であることもそうでないこともある。則ち、ヘッセ行列の定値性では判定できない。
近似の際に切り捨てた項の振舞によってはこの判定法が通用しない場合がある。特に、三変数以上で(3)を用いる場合は注意。
ヘッセ行列が正定値・負定値・半正定値・半負定値・不定値の何れであるかは、シルヴェスターの判定法を用いると固有値を求めることなく判別できる。
という形で陽に表示される関数を陽関数という。
これに対し、方程式
がある区間で定義が区分的でない関数
を表すとき、「
は
で定義された陰関数」という。このとき、方程式
を「
の陰関数表示」という。一般に、陰関数は陽に表示できるとは限らない。なお、陰関数表示のことを単に陰関数と呼ぶ場合もある。
例えば、単位円の方程式
に対し、
はそれぞれ単位円の方程式で定義された陰関数である。ここで、点
を内部に含む開区間を考える。このような区間をどんなに小さく取ったとしても、円の上半分と下半分を両方含んでしまうため、区分的に定義しなければ一意な関数で表せず、則ち陰関数が存在しない。
それでは、方程式
の陰関数が点
の充分近傍で存在する条件は何であろうか?
先ずは、厳密なことを抜きにして考える。
形式的に、陰関数
は方程式
を
に就て解いた解である。そのため、このような関数が存在するならば
という
の一変数方程式が成り立つ。
媒介変数を
と見て方程式の両辺を
で常微分すると合成関数微分の公式より

ここで、実際には
が省略されていることに注意。
この式の主張を纏めると、以下の定理を得る。
定理(陰関数の定理Ⅰ)
であるとき、
の充分近傍で
の定義する陰関数
が唯一つ存在し、

また、この陰関数は
の充分近傍で常微分可能で

先程の考え方では「
の存在性・一意性・常微分可能性」を既に仮定してしまっているので、それらを担保するこの定理の証明としては用いることができない(循環論法になってしまう)。
実は、二変数の場合ならば今迄習った知識で証明可能である。以下に示す。
を
の開集合とする。
とすると
より
は連続で
![{\displaystyle \exists \delta _{1},\delta _{2}>0,~U=\{x{\big |}~|x-a|\leq \delta _{1}\},~V=\{y{\big |}~|y-b|\leq \delta _{2}\},\quad f(x,y)>0\quad \left({\scriptstyle \left({\begin{array}{c}x\\[-6pt]y\end{array}}\right)}\in U\times V\subset \Omega \right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ba32349a1b452ea18645efe2f35e932d0d4aaf87)
で
よりこの区間で単調増加し

- 更に
が連続より
が十分小さければ

- 中間値の定理より

よりこのような
は一意に定まる。(仮に二つあるとしても、
なのでロルの定理より
。則ちこの
を
として新たにとれば良いことになるので一意である。)
- ここで
とおくと
は一意で
- 上記より

が
で連続でないとすると

とすると

- 但し
に注意。
- ここで
より
、則ち
は有界数列である。
- 拠ってボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より
の部分列
が存在して

且つ
が連続より
で
でなければならないので

- 一方、

- これは
に矛盾する。
- 従って
は
で連続である。
とおくと
が連続より
で
であり、
を充分小さくすると
と
を結ぶ線分が
に含まれる。
- 拠ってテイラーの定理より

と
より変形して

とすれば

- 更に、

- の右辺が連続関数なので

の場合も同様に示される。//
この証明は「一次元での単調性」に依存しているため、三変数以上に拡張することができない。そのため、(「解析学基礎」の範囲を大幅に超えるが)一般の場合を補足しておく。位相空間論や多様体論を修得してから戻ってくるのが良いだろう。
を

- と定義する。
に就て
より

- 従って
![{\displaystyle {\tilde {\boldsymbol {f}}}'({\boldsymbol {\alpha }},{\boldsymbol {\beta }})={\begin{pmatrix}{\boldsymbol {E}}&{\boldsymbol {O}}\\{\frac {\partial {\boldsymbol {f}}}{\partial {\boldsymbol {x}}}}{\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}{\boldsymbol {x}}={\boldsymbol {\alpha }}\\[-6pt]{\boldsymbol {y}}={\boldsymbol {\beta }}\end{array}}}&{\frac {\partial {\boldsymbol {f}}}{\partial {\boldsymbol {y}}}}{\Big |}_{\scriptscriptstyle {\begin{array}{c}{\boldsymbol {x}}={\boldsymbol {\alpha }}\\[-6pt]{\boldsymbol {y}}={\boldsymbol {\beta }}\end{array}}}\end{pmatrix}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/63bad253e1c63539b07ff302bf531a2c4bfa566e)
- これは下三角行列なので

- 階数が行列の次数に等しいのでこの行列は正則行列、則ち

- (なお、三角行列に関する行列式の公式を用いると
と導かれる。)
- よって逆写像定理を適用すると
の開近傍
と
の開近傍
が存在して
は
級微分同相写像となる。
- ここで
の
級逆写像を
とすると逆写像の定義より

- また、
は
の
成分を並べたベクトル
、
は
の
成分を並べたベクトル
になるので、

とすると定義より

に
を代入して

の定義より
とすれば

- 則ち

より
であり、逆写像の一意性より
は一意に定まるので、
は陰関数の満たすべき性質を全て満たす。//
(補足ここ迄)
陰関数の定理の応用として、陰関数表示で与えられた曲線の接線・法線の方程式を求めることが考えられる。
- 円
を考える。
とおくと
であり、何かしらの関数の陰関数表示となっている。
- よって陰関数定理より

- ここで

- より
で

- 接点を
とすれば接線の方程式の公式より

- 変形すると


- ここで
は明らかにこの接線の法線ベクトルなので
でも成り立つ。
- 同様に法線の方程式は

- と求まる。//
高校数学では「
を
の関数とみて合成関数微分を行う」という考え方で求めたが、陰関数定理はそのような関数
の存在を保証していたのである。
一般の二次曲線やその他の陰関数曲線でもこの考え方を適用することが可能である。
二変数方程式で定義される陰関数は一変数関数であった。では、二変数関数もある三変数方程式で定義された陰関数とは考えられないだろうか?実は、一般に
変数方程式の定義する陰関数は
変数関数である。直観的には、「元の
変数方程式に陰関数
を代入することで自由度が一個下がる」と理解される。
空間で方程式
は一般に曲面を表す。この曲面上の点
近傍で曲面の関数表示が二変数関数
であるための十分条件も陰関数定理で与えられる。
定理(陰関数の定理Ⅱ)
が
の
- 開近傍で定義されているとしたとき、
ならば
の
- 開近傍
で陰関数
が唯一つ存在し

を満たす。
のとき曲面
の
に於ける接平面は

である。
この定理を用いると

なので

と、全微分の節で求めた接平面の方程式に一致する。
更に、以下も成り立つ。
定理(陰関数の定理Ⅲ)
が
の
- 開近傍で定義されているとしたとき、
ならば
の
- 開近傍
で陰関数の組
が唯一つ存在し

を満たす。
陰関数定理が成り立つ状況下に於て、原点近傍で以下のような変換を考える。

このとき逆写像定理により
は微分同相写像なので、
として

が成り立つ。
これは、
を座標軸としてみる座標変換を考えていることになる。例えば二重積分で積分領域の境界が
であるとき、これは一般に曲線を表すので扱いづらい。しかし、このような座標変換を行うことで
という非常に単純な
-単疆界領域となり、二重積分が容易となる。詳しくは「重積分」節で後述する。
演習問題
- 1. 双曲線
の点
に於ける法線を求めよ。
- 2. レムニスケート
に就いて、円
上を除く領域で
が
の関数として単調であることを示せ。
- 3. 曲面
の点
に於ける接平面の方程式を求めよ。
- 4.
とする。点
近傍の陰関数
を具体的に表示し、その微分係数を求めよ。
解答
1.


で




2.
よりレムニスケートの方程式は




で

- ここで
平面上の象限を固定して考えると、
の符号は
の正負で決まる。
- よって
則ち円
上を除く領域で、
は
の関数として単調である。
3.


で




4.
とすると
であり、
に代入して



となるためには


- これは
を満たす。
- 根号の実数条件より
より「
近傍」も満たす。
- よって

- 逆にこのように
を定義すると条件を満たす。

で

ここでは、多変数関数の積分について解説する。厳密な説明は煩雑な数式を要するので後に回して、まずは証明は抜きに定義と定理の大まかなイメージについて説明し、計算例を見る。
まず、1変数関数の積分について復習する。1変数関数の積分は、大まかに言えば次のような概念だった。直線(x軸)の一部である区間Iと、I上で定義された関数fを考える。簡単のためfは正の値を取るとする。このとき、
はxy平面内の曲線を表し、関数fのグラフと呼ばれる。このグラフ
とx軸で挟まれた部分
の面積を求めるのが定積分
である。その厳密な定義は、領域を細長い長方形に分割して足し合わせると、長方形の幅を十分小さくしたときその面積の和は分割のしかたによらないことを示し、その和(リーマン和という)の極限値として定めるのだった。
これに対して2変数関数の重積分とは、大まかに言えば次のような概念である。平面(xy平面)の一部である領域Dと、D上で定義された関数fを考える。簡単のためfは正の値を取るとする。このとき、
はxyz空間内の曲面を表し、関数fのグラフと呼ばれる。このグラフ
とxy平面で挟まれた部分
の体積を求めるのが重積分
である。その厳密な定義は、立体を細長い直方体に分割して足し合わせると、直方体の底面積を十分小さくしたときその体積の和は分割のしかたによらないことを示し、その和(リーマン和という)の極限値として定めるのである。
リーマン和の極限は分割のしかたによらないことを証明していないことはともかくとして、大まかな概念はつかめたと思う。しかし、この定義だけでは具体的な関数についての計算はできそうにない。具体的な計算には、次の定理が役に立つ。
定理(縦線領域の逐次積分)
のとき、

証明の代わりに定理のイメージを説明する。
を満たすcについて、領域Dと直線
の共通部分をIとする。このとき、立体を平面
で切った「断面」
の面積は
で与えられる。この面積をx軸方向に積分することで立体の体積が得られる。
この定理を使って、球の体積を計算してみよう。
は半径1の球面を表す。この球面の「上半分」は
なので、半径1の半球の体積Vは
とすると

で与えられる。逐次積分の公式を使うと、
![{\displaystyle {\begin{aligned}V&=\int _{-1}^{1}\left(\int _{-{\sqrt {1-x^{2}}}}^{\sqrt {1-x^{2}}}{\sqrt {1-x^{2}-y^{2}}}dy\right)dx\\&=\int _{-1}^{1}\left[y{\sqrt {1-x^{2}-y^{2}}}+(1-x^{2})\arcsin {\frac {y}{\sqrt {1-x^{2}}}}\right]_{0}^{\sqrt {1-x^{2}}}dx\\&=\int _{-1}^{1}{\frac {\pi }{2}}(1-x^{2})dx\\&=\pi \left[x-{\frac {x^{3}}{3}}\right]_{0}^{1}\\&={\frac {2}{3}}\pi \end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/996a6c66e32ff385fa3ed7e9a52e60b9ed32115d)
である。
上の節でみた球の体積の計算のような場合には、実は直交座標ではなく極座標を用いた方が便利である。このような座標の変換を行う場合には、1変数関数の積分の場合には置換積分の公式があり、たとえば
で定まる変数uを用いると

と計算できるのだった。2変数の場合には、積分の変数変換の公式は次のようになる。
定理(変数変換公式)
とするとき、行列
を考える。このとき、

である。ただし、
は行列式を表す。
これもまずは証明は抜きにして、極座標の場合の計算をしてみよう。直交座標と極座標の変換は
であるから、

である。これを用いて再び半球の体積を計算すると、
![{\displaystyle {\begin{aligned}V&=\int _{D}{\sqrt {1-x^{2}-y^{2}}}dxdy\\&=\int _{0}^{2\pi }\left(\int _{0}^{1}r{\sqrt {1-r^{2}}}dr\right)d\theta \\&=\int _{0}^{2\pi }\left[-{\frac {1}{3}}(1-r^{2})^{\frac {3}{2}}\right]_{0}^{1}d\theta \\&=\int _{0}^{2\pi }{\frac {1}{3}}d\theta \\&={\frac {2}{3}}\pi \end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/76fcba661ad1b2c1c70de17d12b394185749c48f)
である。先ほどよりも簡単な計算になったことが分かる。
2つの2変数関数の組
と、パラメタ表示された滑らかな曲線
があるとき、次の(1変数関数の)定積分の値をCに沿った線積分という。

この積分を、

という記号で表す。
かつ
が半開区間[0,1)上で単射なとき、Cは単純閉曲線であるという。単純閉曲線は平面の一部のある有界領域を囲む境界線となっている。単純閉曲線に沿った線積分とその内部の領域での重積分の間に、次のような関係式が成り立つことが知られている。
定理(グリーンの定理)
Cは単純閉曲線で、Cで囲まれる有界の領域をDとするとき、Dで定義される連続微分可能な関数
に対して、

である。ただしCはDの境界線を反時計回りに進むものとする。
グリーンの定理の適用例と適用できない例をあげる。
例(面積)
とすると
である。
一方、重積分
は領域Dの面積を表す。よって、グリーンの定理より

は単純閉曲線Cで囲まれる有界領域の面積を表す。たとえば、
(単位円周)とすると

は単位円板Dの面積である。
例(領域D内で定義されない点がある)
とすると
であるから、任意の領域Dについて
である。ところが、
(単位円周)とすると

である。