区間[a,b]上の連続関数f(x)の定積分
についてはこれまでに述べた通りです。この節では、区間が有限でない場合について述べます。
無限区間の積分[編集]
無限区間の積分とは、積分区間の片方の端(あるいは両端)がないものをいいます。このような積分は、たとえばa以上のすべての実数という区間について積分するならば
のように、
を使って表します。このような積分は、単純に原始関数を見つけて
を代入する、などといって計算することはできませんが、極限を用いて積分を書き直せばうまくいきそうです。

このように書きなおせば、原始関数を見つけて定積分を計算し、積分が収束するかを確かめればよいことがわかります。
![{\displaystyle \lim _{b\rightarrow \infty }\int _{1}^{b}{\frac {1}{x^{2}}}\,dx=\lim _{b\rightarrow \infty }\left[-{\frac {1}{x}}\right]_{1}^{b}=\lim _{b\rightarrow \infty }\left(-{\frac {1}{b}}+1\right)=1}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/edd2a725a6a9ec7ba12105985a8723f1468409cf)
そこで、一般の無限区間の広義積分については、以下のように定義します。
- (a)
となる任意の数bについて
が存在するとき

- (b)
となる任意の数aについて
が存在するとき

これらの極限が存在するとき積分は収束するといい、存在しないときは発散するといいます。
- (c) 同様にして
を以下のように定義することができます。

ただし、定義できるのはどちらの積分も収束するときです。
例を見てみましょう。
は収束するでしょうか。

と置換を行うと、合成関数の微分法より原始関数を見つけることができ、
![{\displaystyle \lim _{b\rightarrow \infty }\int _{0}^{b}x\exp(-x^{2})\,dx=\lim _{b\rightarrow {\infty }}\left[-{\frac {\exp(-x^{2})}{2}}\right]_{0}^{b}=\lim _{b\rightarrow \infty }\left\{{\frac {1}{2}}-{\frac {\exp(-b^{2})}{2}}\right\}={\frac {1}{2}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/795dd836af4797150be808f04122b70caf5465f8)
よってこの積分は1/2に収束します。
優関数の原理[編集]
具体的に原始関数を見つけられない場合でも、広義積分が収束するかどうか判定できれば便利です。そのような判定のために、次の定理が役に立ちます。
定理 連続関数
に対して、
において
をみたし、
が収束するような連続関数
が存在するならば、
は収束する。
この
を
の優関数といいます。
(証明)

とおく。仮定より、
なるt,sに対して

である。よって、
なる自然数nに対して
とすると、非負の値をとる数列
は
を満たし、
なる自然数mに対して

が成り立つ。よって数列
はコーシー列なので、
は収束する。
とする。
なる実数tと自然数nを考えると、

なので、
の極限をとると

である。さらに
の極限をとると

なので、はさみうちの原理より

である。すなわち、

である。//