貨幣供給

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

信用創造~借金としてのお金[編集]

本源的預金[編集]

たとえば、あなたがお金を10,000千円をA銀行に預金したとする。預金は銀行にとって見れば借金なので貸方になる。銀行券は現金なので借方。そうすると銀行のバランスシートは下記になる。

銀行券 10,000 預金 10,000
合計 10,000 合計 10,000

(専門用語で本源的預金ってやつ)

貸付[編集]

銀行は、ただ、お金を集めるのでは商売にならないから、企業Aに貸し付けて利息収入を得ようとする。ただし、集めた預金を全額貸してしまうと、銀行は預金者が支払いに応じられなくなってしまうので、例えば10%は手元に残しておいて、中央銀行に預ける。残り90%を企業に貸し付ける(専門用語で準備預金などという)。そうすると、銀行全体のバランスシートは下記になる。

銀行券 9,000 預金 10,000
準備預金 1,000
貸付(企業A) 9,000  預金(企業A) 9,000    
合計 19,000 合計 19,000

銀行は銀行券10,000千円を手元に残したまま、企業の預金通帳に9,000千円って書くだけで貸付できてしまう。

企業Aは、借りたお金を何かに使う。例えば企業Bに対する仕入の決済資金9,000千円の支払いに充てるとする。現金で支払うよりも、通常は振込みが一般的だからB銀行に振込むとする。そうすると、銀行全体のバランスシートはこうなる。

銀行券 9,000 預金 10,000
準備預金 1,000
貸付(企業A) 9,000 預金(企業B) 9,000
合計 19,000 合計 19,000

銀行Bはさっきと同じように、企業Bの預金を元に企業Cに貸付する。

銀行券 8,100 預金 10,000
準備預金 1,900
貸付(企業A) 9,000 預金(企業B) 9,000
貸付(企業C) 8,100 預金(企業C) 8,100
合計 27,100 合計 27,100

これをずっと繰り返すと、

派生的預金 = 9,000 + 8,100 + 7,290 + ・・・
= 900 (1 + 0.9 + 0.92 + 0.93 + ・・・)
= 90,000

となる。バランスシートは最終的に下記のようになる。

準備預金 10,000 (本源的)預金 10,000
貸付(合計) 90,000 (派生的)預金 90,000
合計 100,000 合計 100,000

銀行全体は、10,000千円の(本源的)預金に対して、10倍の預金を創り出した。これを信用創造という。また、本源的預金と総預金の比率を信用乗数(しんようじょうすう)と呼ぶ(上の例は10)。

中央銀行のお金[編集]

中央銀行のバランスシートを簡記すると下記になる。

資産 負債
中央銀行貸出 現金通貨
債権保有 銀行準備預金

中央銀行は民間銀行に貸出し、銀行準備預金(又は現金通貨)を同額だけ増やすことで貨幣を供給できる。

中央銀行が発行しているお金をハイパワードマネー(あるいはベースマネー)という。ハイパワードマネーは現金通貨(紙幣や硬貨)と、民間銀行からの準備預金を合わせたものだ。これを数式に直すと

H = C + R
H :ハイパワードマネー
C :現金通貨
R :準備預金

となる。

Wikipedia
ウィキペディアマネーサプライの記事があります。

マネーサプライとは

マネーサプライは現金を含めた総現預金量だとすると、

M = C + D
D :預金量

となる。また、H = C + R なので

となる。c = C /D (通貨・預金比率)、k = R /D (預金準備率)とおくと

となる。ここでm = (c + 1)/(c + k) は貨幣乗数である。つまり、ハイパワードマネーはm 倍のマネーサプライを生み出していることを表している。これは、先の例でいくと本源的預金が10倍の総預金を生み出しているのと同じである。

貨幣発行益[編集]

貨幣発行益(貨幣発行収入)は二つの定義があるようだ(筆者注:これはおそらく、政府からみるか、中央銀行からの視点かの違い)。

まず政府からの視点でみてみよう。中央銀行が貨幣を発行し、政府の国債を買うとする。政府にとってみれば、これは返す必要のないお金になるわけだからそのまま政府の収入とみなすこともできる。これを貨幣発行益(シニョレッジ)と呼ぶ。直感的には、日銀が刷ったお金(預金含む)が貨幣発行益になるから、

(名目)シニョレッジ

となる。

経済学では名目と実質という2つの概念がある。例えば、車10台を1台100万円で生産するA国があったとする。翌年、デフレが起こり、車の価格が90万円に下がったが車11台を生産したとする。これの名目の生産高は100万円×10台=1,000万円で、翌年の名目生産高は90万円×11台=990万円。実質とは何かというと、車の台数で見てやるということだ。10台から11台に増えたということは、経済成長しているということだ。だけど、名目(つまり価格表示でみると)だと10万円マイナスになっている。物を中心にみてやることが実質といえ、価格表示でみることを名目だともいえる。経済学では実質化をするために、よく物価水準で割るという方法を使う。これらの影響については、後述しようと思う。

シニョレッジを実質化すると、

実質シニョレッジ
= (外部貨幣の増加率)×(実質貨幣残高)

となる。

次に、中央銀行からの視点で見てみよう。中央銀行のバランスシートを思い出してみる。

資産 負債
中央銀行貸出 現金通貨
債権保有 銀行準備預金

中央銀行が国債を買うということは、債券保有額と同額現金通貨が増えると同じことだ。つまり、借金と同額の資産が増える。

借金して債券を買っているわけだから中央銀行が得られるのは、あくまで金利収入だけだ。だから、名目の貨幣発行益は日銀保有国債×名目利子率i だ。これを実質化すると H /P・(i - ) となり、フィッシャー方程式よりH /P・πとなる。

フィッシャーの交換方程式[編集]

Wikipedia
ウィキペディア貨幣数量説の記事があります。


フィッシャーの交換方程式、または単に数量方程式と呼ばれる式は下記。

MV = PT
M :(名目)マネーサプライ
V :貨幣の流通速度
P :物価水準
T :取引回数

取引回数を把握することは極めて難しいので、代替案として経済学ではよく所得を使用する。実質所得をY とおくと

MV = PY

となる。

Vを一定においたとき、貨幣数量説という。 M・V( ̄)=P・T 貨幣数量説の意味:マネーサプライが変化すれば物価水準Pも比例して変化する。

  1. M は中央銀行が管理できるとする。
  2. V は一定
  3. P は名目GDPであるPY と生産水準Y の比
  4. Y は生産要素と技術水準に依存する。つまり、Y は外生変数で一定。

フィッシャー方程式[編集]

i = r + π
π:インフレ率
i :名目利子率
r:実質利子率

この式でとくに i = (_) + π、つまり名目金利増減とインフレ率増減が 1対1 で対応している(つまり実質利子率は一定)と考えることを貨幣数量説と呼ぶ。古典派は貨幣数量説をとっている。

ケインジアンはr = i - πと考える。名目利子率とインフレ率は 1対1 に対応しているとは考えない。つまり、インフレ率が上昇したとしても、名目金利が上昇せず、実質金利は低下すると考える。

日銀理論[編集]

ハイパワードマネーは日々の金融調節の結果として受動的に供給することができないという理論。日銀理論によれば、市中銀行が必要とする法定準備預金の額は、過去の預金額に比例するためその金額分だけを受動的に供給しなければならないと考えるからである。

また、信用乗数には乗数の意味はなく、マネーサプライとハイパワードマネーとの事後的な比率に過ぎないとした。つまり、日銀はマネーサプライの管理ができないと同義である。


銀行券ルール[編集]

日銀の長期国債の保有残高は日銀券の発行残高の範囲内に収めるというルール。


参考文献[編集]