電気回路理論/キルヒホッフの法則

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キルヒホッフの法則(Kirchhoff's circuit laws)は電気回路理論において大変重要かつ基本的な定理である。キルヒホッフの法則はマクスウェルの方程式から得られる法則であり、直流・交流、あるいは線形・非線形回路を問わず一般の回路について成り立つ。

キルヒホッフの法則は2つの法則から成り立つ。

  • キルヒホッフの電流則(第一法則, Kirchhoff's current law; KCL)
  • キルヒホッフの電圧則(第二法則, Kirchhoff's voltage law; KVL)

この2つの法則について見ていくことにする。

キルヒホッフの電流則[編集]

KCLの例。節点へ流れ込む電流の総和は0である。すなわち、が成り立つ。

キルヒホッフの電流則(KCL)とは、回路の任意の節点について成り立つ法則である。

ある任意の節点にn本の導線が接続されているとする。各導線から節点へ流れ込む電流をとする。もし電流が節点から流れ出す向きに流れていれば、その電流は絶対値の等しい負の値をとると定義する。このとき、

が成り立つ。これをキルヒホッフの電流則という。

キルヒホッフの電流則はさまざまな解釈のしかたがある。一般的には、ある節点へ流れ込む電流の総和と、その節点から流れ出す電流の総和は等しいと考える。あるいは、電流がある1点へ溜まることはなく、あるいはある1点から流れだし続けることもなく、回路上を流れつづけるものと考えることもできる。これは電気磁気学における電荷の保存則に対応する。

キルヒホッフの電圧則[編集]

KVLの例。実線で書かれた部分が一つの閉路をなす。この閉路を時計回りにみて、1周する電圧の和は0である。すなわち、が成り立つ。

キルヒホッフの電圧則(KVL)とは、回路の任意の閉路について成り立つ法則である。

ある任意の閉路に、n個の回路素子があるとする。各節点を一定の方向にたどって1周する経路を考え、各枝の電圧をとする。このとき、

が成り立つ。これをキルヒホッフの電圧則という。

キルヒホッフの電圧則もなかば自明な法則である。閉路を1周して元の点に戻ってくれば、その点の電位は出発した点と同電位であるから、電圧は0になるはずである。