電気回路理論/グラフ理論の基礎

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
回路例

電気回路図は、各回路素子が導線によって接続された図として描かれる。グラフ理論で扱われるグラフの一種である。

ここでは電気回路理論を学ぶにあたって参考となるグラフ理論の知識についてまとめることにする。

枝、節点、閉路、網目[編集]

電気回路において、複数の回路素子が接続される点を節点(node)という。

節点と節点をつなぐ線を(branch)あるいは(edge)という。電気回路においては各回路素子がこれに対応する。回路素子の電気的特性は枝に与えられるパラメーターである。

回路図を描く場合、枝・辺が交差する部分で相互に接続される場合は●の記号を付して接点であることを明示し、接続されない場合は●の記号を付さない。

ある節点から枝をたどることによって別の節点へ到達することができるとき、到達するまでにたどった節点と枝の集合を経路(path)という。このとき有向グラフであっても枝の向きは問わず、とにかく節点間に枝が存在して隣接していればよい。

グラフ上で接点と枝を順にたどる経路を考える。ある節点を出発し、枝を経由して隣接する節点をたどって、途中で同じ節点を2度通過することなく、出発した節点へ戻ることができる場合、この経路を閉路(loop)という。ひとつの閉路をなす枝の集合をタイセット(tieset)という。

グラフのうち、他の枝と接続されない孤立した接点を持たないものを網目(mesh)という。 電気回路は電流の流れる閉路を前提にしているので、全体として網目である。 ただし電気回路の一部分を取り出してその部分を回路として示す場合は、入力端子、出力端子として他と接続されない節点を持つかのように見える。この場合はこれら端子に別の回路が接続される事が予定され、全体として網目を成す。

電気回路をグラフ理論の観点で考察すると、電気回路は枝によって接続された節点の集合であるとする見方が可能となる。 また、電気回路は枝によって接続された網目の集合であるとの見方も成り立つ。

無向グラフと有向グラフ[編集]

節点と枝によって接続するグラフのうち、枝の方向を考えないグラフを無向グラフといい、枝に方向をもたせたグラフを有向グラフという。 電気回路理論においては、電圧源、電流源、相互インダクタンスは方向性を有するが、その他の線型受動素子は方向性を有さない。

カットセット[編集]

任意の2節点の間に経路が存在するとき、このグラフは連結(connected)であるという。連結でないグラフは非連結(unconnected)であるという。非連結グラフの中の連結な節点と枝の集合を分離成分(separate part)という。非連結グラフは複数の分離成分を持つ。

一式の電気回路として取り扱う電気回路は連結グラフである。連結グラフのなかで、1つ以上の枝を選び、それらの枝を取り去ることによってグラフをちょうど2つの分離成分を持つ非連結グラフにすることができるとき、取り去った枝の集合をカットセット(cutset)という。

木、補木[編集]

グラフが連結で、かつ閉路を持たないとき、このグラフを(tree)という。n個の節点を持つ木の枝の本数は(n-1)本である。

閉路を持つ連結なグラフから1つ以上の枝を選び、それを取り去ることによって木にすることができるとき、取り去った枝の集合を補木(complement tree)という。

木に補木の枝を1つ追加することによって、そのグラフは1つの閉路をもつようになる。しかも、追加する補木によって異なる閉路を形成する。