電気回路理論/回路を記述する量

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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電気回路の構成

まず初めに電気回路の構成について述べる。この説明は何らかの装置への具体的な電気回路の実装を指すものではなく、概念的なものである。

電気回路は電源と負荷、およびそれらをつなぐ導線から構成される。電源は電気エネルギーを回路へ供給し、負荷はそれらを蓄積したり、あるいは光エネルギーや熱エネルギーへと変換して消費する。電源、負荷の実体については次節で後述する。


次に電気回路の話題に入る前に、応用としての電気回路学の前提となる電気現象の基本について再確認し、電気回路への誘導とする。


電流

電気現象の根源は電荷(charge)であり、その量を単位[C](クーロン)で表す。

回路のある部位での電荷の移動を電流(current)という。その大きさは単位時間当たりに移動する電荷の量で表し、単位は[A](アンペア)を用いる。 電荷の量q(t)[C]と電流i[A]の間には

の関係がある。

電流の元となる電荷の実体は、金属中においては電子(electron)であり、半導体中においては電子または正孔(hole)である。 電子は負の電荷を持つので、電流の方向は電子の移動する向きと逆方向である。正孔については電流の方向は正孔の移動する向きと順方向である。

電圧

電気現象では電荷の存在により生じる電界による作用、または磁気との相互作用により電荷に力がはたらく。電荷の移動はこの力の働きによるものであり、力により仕事を受けることからポテンシャルエネルギーを持つ。 電荷量qが持つ電気的ポテンシャルエネルギーはqに比例するので、電荷の量によらずある位置の電気エネルギー的な位置付けを示すためにポテンシャルエネルギーを電荷量qで除した値を考え、これを電位という。

電気回路の解析では回路素子で結ばれた2点間の電位の傾斜により電荷が移動する現象を扱うので、2点間の電位差に着目する事が多く、これを2点間の電圧(voltage)という。

また特に電源が発生させる電位差を起電力(electromotive force)という。

電位と電位差である電圧、起電力の単位には[V](ボルト)を用いる。

電力

電気回路において回路の各部分で消費または蓄積される電気エネルギーは、電位の定義から、2点間の電位差とその間を移動する電荷量の積で求めることができる。 2点間の電位差は電圧であり、単位時間当たりの電荷の移動量は電流であるから、単位時間あたりの電気エネルギーは電流と電圧の積によって与えられる。 これを電力(power)といい、電圧v[V]で電流i[A]が流れていれば、その電力P[W]は

で与えられる。 電力の単位は[W](ワット)を用いる。