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高校受験ガイド/偏差値・倍率など数値データの分析法

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

偏差値と倍率

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偏差値とは?倍率とは?

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偏差値(へんさち)とは、統計学的な処理をして、平均点の人を偏差値=50として、偏差値55が上位30%、偏差値60が上位15%、あたりになる指標です。高校数学で習う「正規分布」(せいきぶんぷ)という計算法を活用しています。

倍率(ばいりつ)とは、受験者数を募集定員で割った比です。たとえば倍率「4倍」の高校なら、4人受けたうちの3人は不合格で、1人は合格した、という意味です。

実倍率など

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私立高校の場合、募集定員よりかなり多めの合格者を出すのが普通です。

たとえば、200名しか一般入試で募集していないのに、実際は400名も合格者を出すような私立高校があります。

この理由は、私立は併願によって合格しても入学辞退をする生徒もあるので、何倍も多く出すからです。


もし受験者数が410名だとしたら、募集上の倍率(応募倍率)は2倍以上のやや難関高校ですが、しかし実際の受験の倍率(受験倍率)は1.1倍以下という、算出方法によって倍近い開きのあることもあります。

このように、実際の合格者で計算した「受験者数÷合格者」で算出される倍率のことを実倍率と言います。

いっぽう、公立の場合、そんな2倍も3倍も多いような合格者を出す事は無く、せいぜい定員オーバー人数が5名~10名ていどの1.1倍以下くらいの定員オーバーなのが普通です。

さて、高校受験の倍率には、次の3種類があります。

応募倍率 = 募集定員÷志願者数
受験倍率 = 募集定員÷受験者数
実倍率 = 受験者数÷合格者数

なお、公立高校の上記の倍率を調べたい場合、教育委員会などが公表していると思います。私立高校の場合は、その高校のサイトで公表している学校もあるでしょう。


さて上述したように、私立高校では、実倍率が応募倍率と2~3倍ちかくも違っている場合もあります。

私立高校を受験する場合、このような事を見越して、応募倍率などに惑わされないようにする必要があります。

なお、模試の倍率は、基本的に応募倍率です。このため私学受験では、模試での合格予想の判定と、実際の受験時の合格・不合格の傾向は、けっこう違います。

ところで、私立高校で合格者がまったく辞退しなかった場合、果たしてどうなるのかは、分かりません。きっと1クラス(40人ではなく)80人以上の「すし詰め教室」になるのでしょうか?


なお、高校の公式webサイトにある「募集人数」は、けっしてサイト閲覧次点での入試直前の募集人数ではなく(たとえば入試前の年明け前の12月に見ても、けっして年明け入試のこれからの募集人員ではない)、すでに年度開始(3~4月ごろ)に公表した募集要項にある募集人員のままです。なので、募集人員が「男女200名」と書かれていても、そのうちの例えば十数名はすでに推薦者などで、一般入試より前に決まっている可能性があります。

偏差値が高いのに倍率の低い高校について

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少なからず、入試の偏差値が高いのに倍率が低い高校があります。たとえば、偏差値65なのに倍率1.1の高校もあります。これはどういう事でしょうか?

いろいろな理由が考えられます。下記に述べます。


受験しない人が模試で志望して偏差値を上げている可能性

まず、偏差値は通常、模試による偏差値です。なので、実際には受験しない人でも、模試では志望校に書いたりします。

たとえば東北や九州などの地方に住んでいる受験生で、東京に進学できない家庭の人なのに、模試では東京・首都圏の知名度の高い私立高校を志望先に書いたりするような場合もあるので、決して偏差値だけを参考にしてはいけません。

あなたが競争すべき相手は、けっして西日本や東北・北海道に住んでいるのに東京の進学校を模試で志望先にするような人ではなく、地元の都道府県や、せいぜい隣の都道府県に住んでいる受験生だけです。

高校受験では、そういった近隣に住んでいる受験生との競争に勝てばいいのです。


進学高校が多い地域だと倍率が下がる

また、進学校の多い地域などだと、実際の受験では、近隣の受験生が、多くの高校にばらけるので、高校進学実績が良いにもかかわらず意外と倍率が小さい場合もよくあります。


倍率が低い高校への合格

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倍率が低いと合格しやすいのでしょうか? そうとは限りません。

偏差値の高い私立高校の場合、その私立が定める合格基準点に、もし受験生の入試得点が到達していない場合は、たとえ倍率が1を下回っても、その低得点の不合格者には合格を出しません[1]


とはいえ実際の倍率が低いと、高校の偏差値の高さにかかわらず受験すると意外と合格する場合もあります。よほど試験の成績が悪くないかぎりは。

しかし、その高校の授業は高い偏差値を前提として難しい授業や早い学習進度があるので、もし偏差値の低い人が無理に合格して進学しても、授業についていくのが大変になる場合もあります。ついていけないだけならまだしも、留年や、留年の繰り返しなどの成績不振による退学のリスクも高くなります。

たいていの場合、ついていけない場合は、より偏差値の低い高校への転校を推奨されます。

なので、あまりにも現状の偏差値よりも高い高校に進学するのは、リスクがありますので、良く考えましょう。たとえば、偏差値45の人が進学先として偏差値65とかの理系の進学高校とかに進学するのは、おすすめしません。

また、たとえ大学付属校などに進学できたとしても、成績が悪すぎると、系列の大学への推薦をもらえない場合も高くなります。


なので、倍率や偏差値だけを見るのではなく、卒業生の進学実績の統計も見ましょう。

ただまあ、この進学実績も、意外と外部からは実態が分かりづらいものです。

たとえば、「わが高校は日大(私立の日本大学のこと)に合格者100人」とかでも、うち日大の理系の学部に50人の合格者を出してるのか、それとも文系学部だけで100人なのかで、まったく意味合いが違います。

卒業生のプライバシー保護があるので、高校側はあまり細かく卒業生の学部学科までは公表しません。

あるいは、たとえば東京理科大など理系の「単科大学」(たんかだいがく)への合格実績を参考にしようにも、その理科大とかあるいは芝浦工大とかにも経済学・経営学系の学科みたいな文系の学科もありますので、合格者の人数だけでは卒業生の文理の実態は不明です。20世紀のかつては理系の「単科大学」と言われていた私立理系の大学にも、じつは21世紀には文系の学科が設立されていますので、進学先の学校名だけでは21世紀では文理の実態は不明です。

結局、高校への見学やその他の調査をきちんとするしか、高校の進学実績の実態を知ることはできません。

芸術系・体育系の学科の偏差値は変則的

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芸術系の学科や、体育系の学科の偏差値は、例外的です。

体育科や芸術系学科などの高校は、受験科目に実技試験がありますが、しかし模試には実技試験が無いので、偏差値の精度はあまりよくありません。

模試には実技試験が無いので実態が分かりづらく、そのため、倍率から機械的に偏差値を算出したりしています。一例として、倍率2倍の高校 = 偏差値50 と置いて、ほかの高校は独自の計算法で算出したりしています(模試によって計算方法は異なる可能性がある)。

また、普通科以外の美術科・音楽科は、そもそもカリキュラムが、普通科とは大きく違います。一般大学を志望している人は、気を付けてください。

高校の合格の難しさの序列は、高校偏差値だけで決まる

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スポーツ推薦の率は一般受験の難度に関係ない

たとえばスポーツ推薦の多い私立高校Aを「簡単に入れそう」とか勘違いする受験生がいます。しかし、普通科高校の一般受験の合格の難しさは、合格最低点以上を取れるかと、あとは受験生のなかでの順位で決まるので、したがって、ほぼ高校偏差値(および、それの元になった倍率)だけで高校の合格難度が決まります。

なので、受験生のあなたがスポーツの県大会とか全国大会とかで好成績を収めてない限り、どんなにスポーツ推薦を多くとってる高校でも、偏差値の高い高校は、難関のままです。

志望校の偏差値の高さから、目を背けないでください。高校の合格の難しさの序列は、(例外として体育高校とかでないかぎり、)あくまで高校偏差値だけで決まります。

受験問題の範囲や難度は、二の次

受験問題の難度も、合格難度には関係ありません。高校1年レベルの入試問題を出してくる私立高校でも、高校偏差値が低ければ(もっとも、そういう高校は少ないですが)、その私立高校への合格は比較的にラクです。(ただし合格最低点以上を取る必要があるので、志望校にしているなら、出題範囲である高校の内容も予習して対策するのが望ましい)

あるいは、中学範囲の問題しか出さない高校でも、偏差値が高ければ(公立の地域トップ高校や国立高校などによくある)、難関のままです。

大学進学実績は合格難度に関係ない

また、大学進学実績の偏差値水準とは、高校偏差値は関係ありません。

よく、大学受験の難しさの目安として「高校偏差値を10マイナスすると、大学偏差値の予想になる」(ただし私大の文科系の場合)とか言いますが、べつに公的な決まりがあるわけではないので、あくまで単なる目安です。

たとえば高校卒業後の進路が多様な高校で、大学進学先が大学偏差値45をボリュームゾーンとしていても、もし高校偏差値が64の高校なら、それは受験生が(45+10の偏差値55ではなく)偏差値64にならないと合格するのが難しい高校のままです。

なので、たとえ高卒後の大学偏差値ボリュームゾーンが45でも、それに10を足したら計算上は高校偏差値55ですが、しかし高校偏差値64の高校を志望する以上は、高校偏差値55のままでは合格できません。さらに高校偏差値64まで学力を高める必要があります。

付属校と大学の難度の混同をしないように

私大の付属校の難度について、大学偏差値と高校偏差値を混同する人が、大人によくいます。大学偏差値50の大学の付属高校を、「私の子なら、(大学偏差値にプラス10して)高校偏差値60くらいで付属校に合格できそう」と勘違いする大人です。しかし、もし高校偏差値68の付属高校の志望なら、偏差値60では合格できず、さらに68まで高校偏差値を高めなければいけません。

特に、その私大が駅伝など大学スポーツに出ていると、「私でも大学に合格できそう。だから付属高校も簡単だろう」と、ろくにスポーツで全国大会にも出てない大人が勘違いします。しかしともかく、付属高校だろうが、高校合格の難しさは高校偏差値だけで決まります。

大学の難度自体、大学受験したことのない大人には誤解されるので、それも輪をかけて、混同されがちです。

美術高校、音楽高校、体育高校などでも偏差値だけで難度はおおよそ決まる

ほか、美術高校、音楽高校は、どうしてもそういう高校に行きたい人がいるので高校偏差値が高く出る場合もありますが、しかし偏差値の同じくらいの普通科高校と比べると、美大・音大以外の一般の大学(文学部とか経済学部とか)への進学先の大学偏差値は高くありません。しかし、それでもその美術高校・音楽高校などの高校偏差値が高ければ、難関高校である事には変わりません。

20年後の少子化は今の合格難度に関係ない

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よく、「少子化で、多くの高校と大学が統廃合でなくなるだろう」とか「日東駒専やマーチも今より合格しやすくなるだろう」とか議論されます。しかしその事と、今の中3や高3にとって、数か月後にせまった受験の合格難度は関係ありません。

たとえ20年後に合格しやすくなろうが、今年度の偏差値が高い志望校の高校および大学は、今年度も卒業時の3年後・4年後も難関高校および難関大学のままです。

いま中学3年生の読者でも、大学受験はたった3年後(と数か月)です。けっして20年後ではありません。高校受験では、20年後ではなく3年後を考えて行動しなければならないのです。

20年後の高校の偏差値予想ではなく、今の高校偏差値を見ましょう。

私立小学校受験をする幼稚園児ならともかく(9年後が高校受験、12年後が大学受験)、今年度の高校受験には20年後予想は関係ないです。

20年後を気にする必要があるのは、教師や学校関係者、または塾経営者など、教育を仕事にしている人です。高校生・中学生は気にする必要がないです。

統計誤差の注意

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統計値には、誤差が含まれる場合があります。たとえば合格者の数なら、たとえばある塾から受験先の学校A,B,C,D,Eの5校の合格者が全体で200名なら、ときどき1校くらいは1~2名くらい、人数がズレている場合がありえます。特に、塾などの宣伝の統計は、短期間で集計しなければならない場合もあったりして、もしかしたら人数が1~2名くらい、ズレているかもしれません。

これは別に誇大広告とかそういう話ではなく、社会常識として、無料や極端に低価格の統計には、誤差が含まる事が時々あります。とくに明確な基準はありませんが、社会常識として、無料・低価格のサービスの品質では、3~5%くらいの誤差が許容される、と言われるのが一般常識です。

脚注

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  1. ^ 早稲田ゼミ『公立高校の倍率が高くても不安になってはいけない理由(2023年最新) 』2023.08.242024年03月31日に閲覧.