高校受験ガイド/普通科高校のカリキュラム

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

進学校のカリキュラムの元ネタ[編集]

私立の場合[編集]

進学校のカリキュラムの元ネタは、

難関私大の公募推薦(総合型選抜や自己推薦)要件の科目 + 新共通テスト(かつてのセンター試験に相当)対策

です。

例外はキリスト系の高校で「聖書」とか「礼拝」とかあったりするくらいでしょうが、それすらも「キリスト教系大学の宗教推薦の要件にすぎないのでは?」と勘繰りたくなるほどです。

ほか、(必修最低限の「家庭基礎」2単位ではない)「家庭総合」4単位とか、進学私立では履修不可能なのが傾向です。芸術科目で、必修ではない「音楽II」とか「美術II」とかあるのは、普通科高校ではごく一部の大学付属高校くらいです。

また、大学の文系学部と理系学部とで、推薦の要件が大きく違うからか、高校のほうも文理のコースが分かれています。

文理両方を学ぶハイブリッド的なコースは2020年代、基本的に無いです。かつて2001年くらいは模索され、実験的な高校が導入していましたが、しかし現状それらの実験高校はそのようなハイブリッド方式からは撤退しました。

文系学部では、数学IIIとか専門「化学」「物理」「生物」とか推薦要件でないので、多くの高校でも文系コースでは履修できません。


大学教授の中には教育評論などで「文系人材も理系を勉強すべきだ」とか言いますが、しかし彼らの所属大学の推薦入試の要件がそうなっていません。言動不一致、厚顔無恥(こうがん むち)と言わざるを得ません。良識派ぶりたいw:美徳シグナリングでしかないでしょう。

数学III・C は理系学部の推薦要件に入っていることが多いです。数学Cの半分くらいはかつては高校2年で教えていた内容なのでそれほど難しくはなく独学も可能な内容ですが、しかし推薦要件に入っているので数学Cも理系コースで履修させられます。

なお、令和の現代、数学Cが文系コースでも進学校だと国立対策として履修させられます。新共通テストがそういう風に仕組みが変わっており、文系でも数学Cが共テ受験できる制度に変わっているからです。


公立の場合[編集]

公立の進学高校の場合、基本的には私立と同じく、文理のコース分けがあり、私大推薦の要件に適した科目構成です。

ただし選択科目などで、多くの大学の受験に出ない家庭科「フードデザイン」とか高3「美術」・「音楽」を公立高校だとそこそこの進学高校でも履修できたりしてしまいます。

いっぽう私立だと、「フードデザイン」とか高3「音楽II」「美術II」などが存在しない私学も多く、そういう科目の存在自体を私立高校出身者は知らなかったりします。

ほか、公立高校だと文科省や教育学者などの教育実験に参加させられている高校もチラホラあるようで、たとえば進学校なのに文系コースで高2~3で「美術II」・「音楽II」が必修の公立高校が日本には実在します(高校名は隠す)。偏差値70あたりだと影を潜めますが、首都圏だと意外と偏差値60 ~ 65 あたりに、そういう実験的なカリキュラムの公立高校がチラホラと生息しています。

※ 「2年次以降の必修でない選択としての芸術 II をwiki編集者は勘違いしてるのでは?」と思うかもしれないが、しかし教育課程表を見ると芸術科目の単位数が合計「4」単位と書いてあるので必修なのは確実(芸術Iと芸術IIはそれぞれ2単位なので、合計4単位とるには芸術IIも必修でなければならない)。

公立高校の教育実験は長くなるので、別の節にまとめます(本ページ末尾に予定)。

高校科目の「探究やったふり」[編集]

高校の教科で、「古典探究」とか「日本史探究」とかありますが、実態は、従来通りの教室内での授業です。なので、脳内では「古典探究」→「古典B」とか、「日本史探究」→「日本史B」みたいに置き換えて構いません。

また、別科目の「総合的な探究の時間」についても、色々と理想どおりには進んでない、残念な報告が上がっています。

外部サイト 『高校必修科目・探究、教員の半数「調べる時間や人脈ない」』2022.8.23 Tue 15:15 による、國學院大學との共同調査による全国の高校教師へのアンケートによると、

 2022年度から高校で必修となった「総合的な探究の時間」の指導で、半数の教員が「生徒からの質問に答えるために情報を調べる時間や、大学の研究室等への人脈がない」と回答していることがトモノカイが2022年8月22日に公表した調査結果から明らかとなった。

とのことです。

また、上記とは別件ですが、せっかく探究をして良いレポートを完成させても、大学受験で総合型選抜に使おうとしても、難関大学では出願の「英検準1級以上のこと」などの足切り要件にあってしまい、探究が受験でなかなか評価されません。

地方高校だったら地元の国立大学が探究で若干名を地域トップ高校から受け入れてくれる可能性もあるかもしれませんが、首都圏や京都・大阪には関係ない話です[1]。首都圏の国公立大学や難関私大は、日本全国から受験生が集まってくるので、探求学習して推薦入試に使おうとしても競争倍率が高く、うまみがありません。

それもあってか、ともかく日本のほとんどの高校では、「探究」は「やったふり」です[2]。研究的なことをしようにも、それだけの時間ない、予算ない、人手ない。高校にはヒト・モノ・カネが与えられていないのです。

高校カリキュラムのばらつきと共通性[編集]

中学校は義務教育なので、履修科目は日本全国で、総合学習系の科目以外は、教わる教科は統一です。

しかし高校は、普通科の公立高校ですら、学校ごとに差が大きいです。

また、時間割(「カリキュラム」ともいう)をネットでは公表してない高校も、公立高校でも私立高校でも多くあります。説明会などでしか確認しようのない高校も多くありますので、それぞれの志望校の説明会で確認してください。

なお、高校でその科目を履修していなくても大学受験できます。たとえば「情報II」を履修していなくても、大学の情報系の学科を受験でき、得点が高ければ合格できて進学できます。

そもそも中堅以上の私大の情報科学科の入試科目には、「情報I」も「情報II」もありません。いわゆるマーチ(明治、青学、中央、法政)の情報工学科の入試科目に、情報科目は無い状態です(「物理」や「化学」などを選ぶ)。

進学校で履修してない科目は、履修しても受験で利点が無いので、あまり心配する必要はありません。ですが、説明するなら、下記のようになります。


芸術科目[編集]

基本[編集]

たとえば「芸術」教科では、指導要領では普通科の芸術科目には「音楽」・「美術」・「書道」・「工芸」の4科目があるのですが、しかし高校によってはこのうち3科目の「音楽」・「美術」・「書道」しか開講していない高校も多くあります(「工芸」科目の無い高校も多い)。

かなり多くの公立高校のカリキュラム表を見ても、「芸術」教科には「音楽」・「美術」・「書道」の3つしかありません。おそらく、読者の保護者の多くも、「工芸」科目はその科目の存在自体を知らないと思います。

「書道」の無い私立。「美術」の無い私立

さらに私立の場合、「書道」の履修できない高校や(「音楽」「美術」の2科目のみ)、美術の履修できない高校もあります(「音楽」「書道」の2科目のみ)。

特に、高校芸術の「書道」科目は、公立と私立とで、かなり開講の比率の差が大きい科目です。(私立高校には、「書道」科目の無い学校も多い。)

なので、高校で「書道」または「美術」を習いたい人は、きちんと受験前にカリキュラム表を確認しましょう。


けっこうな数の首都圏の私立高校で、カリキュラム表を見ると、当たり前のように「音楽」「美術」の2科目しか芸術教科には項目が無い高校が多くあります。なので私立高校の生徒や卒業生には、そもそも「書道」が高校の芸術科目として存在する可能性すら知らない場合もあります。

「音楽・書道・美術の3科目が高校芸術の定番」という "常識" は、公立高校でしか通用しない "常識" です。私立高校の常識では「音楽・美術の2科目が定番」です。


音楽を必修にしている私立高校もあります。立教大付属の立教女学院高校 や 城西大付属の城西高校 では、音楽Iが必修です。選択の余地がありません(なお、高校3年などで美術を履修できる)。


なお、「美術」が無い高校について、「美術」だと居残りで作品を作ったりすることもあるので、進学校では勉強時間がとられるという側面もあるでしょう。

一方、「音楽」と「書道」だと、居残りすることが基本的には少ないです。


また、美術で作品づくりをしなくても、学校によっては「総合的な探究の時間」やホームルームなどで作品づくりをできます。

たとえば、文化祭の出し物とかを作らせてもいいわけです。むしろ文化祭の出し物づくりアピールのほうがチームワークもアピールできるし、いいことづくめです。

国としては芸術はどのジャンルも平等ですが、個々の私立高校を見ると芸術科目を決して平等とは見ておらず、「正直、書道は高校の授業には相応しくない」とか「正直、美術は高校の授業には相応しくない」とかの本音が見え隠れしています。

たとえば「音楽」だとチームワークを合唱や合奏などで授業で教育として教えられますが、しかし「美術」も「書道」も現状の教育ではそうなっておらず、特に「美術」は個人主義的なカリキュラムです。もしアニメや映画などの作品を作れれば美術は別かもしれませんが、そこまでの時間も予算も多くの高校にはありません。金持ちの私学ですら、映画製作なんて無理です。

また、「音楽」だと、高校レベルだと進学校では外国の歌を外国語で歌う授業もあったりするので(公立でも私立でも)、英語(第一外国語)に加えてフランス語やドイツ語など第二外国語の練習も出来ますし実際にフランス語などの歌の練習をさせる進学校もあるので、私立高校カリキュラムでの「音楽」授業の人気が高い時間割も合点がいきそうです。

なお、動画編集ソフトの使い方の教育は、今ではもう中学校の「技術・家庭」科の技術分野で習う中学もあれば、「情報I」の実習のひとつとして習う高校もあり、もはや「美術」を通さずに動画編集の教育が可能になっています。

私立高校の教員らの「(うちの高校では)フランス語やドイツ語の授業を2単位で作るほどではないが、しかしうちの生徒にはエリート高校生としてフランス語やドイツ語なども教えたいから、音楽の授業を通して教えよう。小学校でも音楽を通して国語教育をしているし・・・」という、そういう私立高校の本音および教育テクニックが見えます。

書道では知識は基本的には教わらないし、美術では美術史はもう中学卒業までで完了してます。たとえば高校美術では、美術史や色の科学(「彩度」とか「色相」とか)などについて、高校では特に新しいことは教えません。

なにか高校芸術で知識を教わるのが、今はもう「音楽」だけなのです。


一部の私学の高校3年「受験美術」「受験音楽」科目

私立の高校の一部ですが、高校3年に「受験美術」や「受験音楽」みたいな学校設置科目で、美大・音大の対策みたいな科目を用意している私立高校の普通科も、ごく一部ですがあります。比較的によくある設置パターンとして、高校1年に他校と同様の選択芸術科目として「美術I」や「音楽I」などがあって、高校2年に芸術科目は無く、高校3年に自由選択科目として美大・音大対策むけの受験科目がある、というパターンです。

ただし、圧倒的に多数の私学の普通科は、そもそも受験音楽科目も受験美術科目も無く、高校1年の選択芸術科目だけで学校提供の授業としての芸術教育は終わりです。

高校3年の受験美術などは、他科目の授業時間を減らしますので、他分野や非芸術系の一般の国立大に進学したい人には履修が困難です。


大学付属校

マーチだと、青学(青学の高等部)、立教(池袋および新座(にいざ)、※ 新座は男子校、※ 女学院)、中央(杉並)、法政(法政国際および法政二高、※ 二高は男子校)、の一部の付属校に、音楽IIまたは美術IIまたはそれと同等の学校独自科目「音楽B」(立教池袋)みたいなのがあります。

必ずしも大学付属校だからといって、音楽IIのような科目があるとは限りません。明治大付属明治高校にはその科目が見当たりません。なお、明治大付属「中野」高校は、音楽Iまたは美術Iを2年間にまたがって1単位ずつ(他校の半分ずつ)学びますが[3]、音楽IIが見当たりません。

(中央「杉並」でない)中央大学高校を見ても、自由選択科目のなかに、音楽IIや美術IIなどは無いです[4]。(法政国際高校ではない)法政大学高校に音楽IIなどは無い。

立教女学院高校は少し特殊なので省略。立教女学院高校では音楽Iが必修です。選択の余地なし。いちおう、音楽IIや美術IIは立教女学院にあります。

多くが、高校1年は他校と同様の選択芸術の美術Iや音楽I。高校2年に芸術科目は無し。高校3年に自由選択科目として受験音楽、受験美術の設置です。

志望した科目を履修できるとは限らない[編集]

高校芸術の科目は、1年次の入学前後に履修志望の科目を聞かれますが、必ずしも志望した科目を受講できるとは限りません。たとえば「音楽」科目の志望でも、新入生の「音楽」科目の志望者が殺到した場合は定員オーバーになって、「美術」や「書道」などの履修を強制される場合もあります。

なお、「書道」は不人気の科目です。多くの高校で、新入生は「音楽」か「美術」を志望します。

カリキュラム表に「音楽I」「美術I」があるからと言って、必ずしも受講できるとは限らないことに注意してください。

確実にその科目を練習したいなら、単位にはなりませんが、部活動などで練習するのが確実でしょう。もっとも部活にも定員はありますが。

なので、確実に練習したいなら、自宅でも練習するしかありません。


教員免許が高校芸術「書道」と小中「書写」(国語免許)は別科目[編集]

そもそも教員免許では、小中学校で教える「書写」は(「芸術」教科ではなく)「国語」教科の免許です。しかし高校の書道は、芸術科目の「書道」の免許であり、別科目の免許です[5]つまり、高校「書道」は、決して中学「書写」の発展ではなく、まったく別体系の別科目です。

一方、「美術」や「音楽」は、それぞれ短大卒でも取得できる2種免許と大卒以上の1種免許と言う違いはあるものの、基本的には中学と高校とで科目としては同じ免許です[6]

要するに、教員側の立場で、中学校でも教えている教員免許の発展した免許で教育しようとすると、芸術科目では「音楽」「美術」の2科目しか選択肢が無い、という事です。


要するに、多くの私立高校で、「高校芸術の書道(「書写」にあらず)は工芸科目と同じような、高校教育独自のマニアック科目」みたいに教職員などから思われているわけです。

なので、もし私立高校が中学教育からの発展性を高校生に教育しようとすると、必然的に「書道」・「工芸」は高校カリキュラムからは外すことになります。


高校「書道」は、その名に反して、あまり中学「書写」からの接続性がありません。

高校「書道」の根本問題として、美術の中でも小中学校の授業レベルなら書道のような美しい字のジャンルを扱えてしまいます。(「レタリング」と言って、ポスターなどの題字のデザインの仕事が美術家にもある。)教育大でも、国公立の教育大では、美術・書道専攻が一体化されて併設されている場合もチラホラあります。

なお、「工芸」についても、じつは美術の中で一部は出来てしまいます。木工や七宝焼き(しっぽうやき)くらいなら、「美術」でも可能です。高校「美術」の中には立体造形の分野もあるので、その中で「工芸」的な分野も少々は扱えてしまうのです。

なので結局、「美術があれば十分だよね」という考えでしょうか、私立では「うちの高校では、芸術科目は音楽・美術の2科目だけ」という高校も多いのです。


ほか: 大学に茶道学部とか華道学部とかは無い

「音大」・「美大」は存在しますが、しかし「書道大」と言うのは無いのです。たとえば東京芸術大学には書道の専攻は無い。

「書道は日本の伝統」とか言われても、国公立大学には茶道学部も華道学部も和菓子学部も茶菓子学部も無ければ、剣道学部も柔道学部も無いのに、書道学部だけ特別視しろというのも、おかしな話です。

教育大には書道専攻のコースもありますが、国立の教育大はだいぶ難関です。つまり、それだけ需要が少ないという意味です。


ほか: 有名私立大の付属高校にも「書道」科目は無い

世間では評論家によっては批判で、選択芸術科目で「書道」が存在しない私立高校を批判するかもしれませんが、しかしすでに「書道」が存在しない私立高校がもう別の業績で好意的にテレビなどで称賛されています。たとえ大学付属高校で、慶応大学と明治大学や立教大学や法政大学などの付属高校には、書道が存在していません。慶応・明治・立教・法政の付属以外にも、千葉埼玉あたりの周辺地域の私立高校などでも書道の無い私立高校はいくつも存在しています。(早稲田大と中央大の付属には「書道」がある。青学の付属には「書道」に加えて「工芸」もある。)

そもそも、いくつかの私大付属高校では「書道室」という教室そのものが存在していません。webサイトを見ても、明治大や法政大の付属校には、音楽室や美術室はあっても書道室が見つかりません。(立教の付属高校にはある。慶応の付属は和室を書道部の部室に流用。)明治の付属校の部活紹介で「美術部」や「音楽部」はあっても「書道部」は無い状態です。法政の付属校の部活紹介を見ても、「茶道部」や「華道部」はあっても「書道部」が無い状態です。

書道室も無ければ、書道に流用できそうな和室もない(首都圏などの狭い)高校の場合、仮に部活動で書道部があっても活動場所が校外の可能性もあるので、高校で書道をしたい人は事前に確認しましょう。首都圏は過密で土地不足なので校舎が狭いのです。首都圏の私立には、決してなんでもかんでも施設があるわけではありません。


書道が存在しない高校で都心・首都圏にある私立高校で、その高校出身の漫画家やイラストレーターなどがいてすでに活躍していて、ツイッターSNS住民とか漫画オタク・アニメオタクみたいな人たちにも評判のいい私立高校だったりする高校が、首都圏でいくつか既に存在します。

地方在住の偏差値なかば50前後の公立高校出身のSNS住民やアニメオタクとかの大人の多くはきっと千葉埼玉あたりの私立高校に親近感を抱いているのかもしれませんが、しかし私学のカリキュラムは一般的な公立高校とは違っています。やはり、マンガやアニメなどから社会を学ぶのは、やめたほうが良いでしょう。


書道は不人気科目であるので、書道を開講している高校では「美術や音楽を本当は履修したかったのに、書道に回された・・・」という不本意で「書道」科目を履修する生徒が発生しがちなのですが、しかし最初から「書道」の科目自体が無い高校の場合、不本意な選択「書道」の履修の可能性が原理的に無くなります。資金力があるのに「書道」を開講しない私立高校は、そういった優しさでしょう。

まあ、「音楽の志望だけど美術に回された」という不本意の発生する可能性もありますが、さすがに西洋音楽が好きなのに西洋美術をそこまで嫌いな生徒は少ないでしょうか。


ほか: 書道部はかなり「書写」と異なる場合もある

なお、高校の部活動での「書道部」の内容は、中学卒業までの国語の授業の「書写」とはだいぶ違う活動内容の高校も、公立・私立ともあります。たとえば草書で書くとか、大きい紙(両手を広げた幅よりも大きい紙)に書くとか、非実用性が高かったりする書道も多くあります。ペン習字みたいな実用的な「普通の紙の大きさに、上手な字を書く」みたいなのとは、だいぶ違います。

芸術科目が2年目以降にある高偏差値の公立高校[編集]

ほか、芸術科目が何年生まであるかも、高校ごとに違います。

例として「音楽」科目を例に述べると(「美術」などでも同様)、たとえば1年生で「音楽I」、2~3年生で「音楽II」、3年生で「音楽III」のように芸術科目は音楽も美術・書道・工芸のどれも3段階あるのですが、しかし高校によっては「音楽I」まで、あるいは「音楽II」まで、というような制限のある高校も多くあります。

ほか、「音楽I」を2年間かけて行う高校もあります。音楽Iは2単位なのですが、1年間あたり1単位ずつ音楽の授業をするのを2年の終わりまで続けて2単位、というわけです。当然、この場合、「音楽III」は履修できません。


公立高校などで、「音楽I」「美術I」「書道I」が3単位、というのもあります。1年生で「音楽I」を2単位、2年生で「音楽I」を1単位、という仕組みです。おそらく、進学特化の受験有利なカリキュラムに設計しすぎると教育委員会などから是正命令が入り、芸術など入試に不利な科目も少し増やしてバランスを維持するように行政命令されるのでしょう。そういった行政上の都合も公立高校のカリキュラムでは関わってきます。

この事情のためか、偏差値が高めの公立進学校でも、芸術科目が他校より少し多めという公立高校もチラホラあります。


まあ、芸術科目が少なくても部活などで「美術部」「合唱部」などで経験を補うことはできますが、しかし「工芸」はその部活が無い高校が普通なので(工芸の設備そのものが無い高校が多い)、知っておきましょう。もっとも、その部活自体、3年生は夏で引退するので、音大・美大などの進学を考えている人以外は、あまり音楽IIIや美術IIIは関係ないのかもしれませんが。

ただし、部活と違って芸術の授業では、校外の展示会などに出展をしたりはしないので、もし展示会の出典などの経験を積みたいなら、部活を中心に経験を積むことになるでしょう。(たとえば選択「音楽II」などでも、決して老人ホームとか保育園とかに慰問コンサートとかは行きません。)


なお、よく高校のカリキュラム表では、「音楽I」「美術I」「書道I」「工芸I」をまとめて、教科名として「芸術I」と書かれています。あくまで実際には「芸術I」という教科名・科目名は指導要領には存在しませんし、検定教科書も存在しません。教科名は「芸術」の2文字だけです。

また、「芸術I」と書かれていても、履修できるのは「音楽I」「美術I」「書道I」「工芸I」の1つだけですし、ほとんどの高校では「工芸I」はありません。

同様、「芸術II」と書かれていても、履修できるのは「音楽II」「美術II」「書道II」「工芸II」の1つだけですし、ほとんどの高校では「工芸II」はありません。

情報科目[編集]

基本[編集]

指導要領では、必履修の「情報I」 と 選択科目の「情報II」 の2つがあります。

しかし「情報II」が履修できるかどうかは、高校によります。

理系大学への進学者も多い進学校などでも、「情報II」の無い高校もあります。

そもそも3年生になってから「情報I」を履修させる高校すら、あります。この場合、当然ですが情報IIは履修できません。


なお、「情報」教科は、かつては「情報と社会」「情報の科学」の2つに分かれていて、学校によってはどちらか片方しか履修できない場合が多かったですが(学校側が履修科目を決めていた)、しかし2022年以降は必履修の「情報I」と選択科目の「情報II」に変わったので、それは関係なくなりました。

文系科目あつかい[編集]

分かりやすい例をあげると、明治大付属 明治高校で、情報IIは高校3年生の文系科目あつかいです[7]

また、別の節で述べるように、理系の私立大学の理系学部では、入試科目には「情報」科目は入っていません。

私大の理系学部の入試科目に「情報」は無い傾向[編集]

中堅私大(明治meiji・青学aogaku・中央chuoh・法政hoseiなど、いわゆるマーチmarch )以上の偏差値の理工学部の情報科学科(または情報工学科)の入試科目を見ると、「情報I」も「情報II」もありません。なお、立教大学および学習院大学には工学系の学部は無く(理学部はある)、したがって情報工学科もありません。マーチに学習院大学のGをつけて「GMARCH(ジーマ-チ)」と言う場合もあります。


「英語・数学・理科(「物理」または「化学」のどちらか一方)」の合計3科目、または理科に生物を含む「英語・数学・理科(「物理」または「化学」または「生物」のどれか一つ)」が一般的です。

なお、数学は「数学III」までです。数学A~Cが数学Cを含むか数学Bまでかは大学ごとに異なるので、それぞれの大学の募集要項などを確認してください。


この3科目「英語・数学、理科(物理または化学)」は、情報科が普通科高校に導入される前からの90年代には既にあった伝統的な入試科目のスタイルです。

なお、東京理科大(私立)に至っては、情報工学科の入試科目の理科は「物理」のみです(英語・数学・物理)。「化学」も「生物」も理科大では情報工学科の入試科目としては認めていません。


入試科目を4科目以上に増やすというような機運は、マーチでも理科大でも四工大(芝浦工大や工学院など)でも、特にみられません。

「地学」選択は、情報系の学部には入試が不利になってしまいます。

この入試科目の理由はおそらく、理工学部のほかの入試科目が3科目なのに合わせている(最近はバイオテクノロジー系の学科もあるので「生物」も理工学部の入試科目に含まれる)ものと思われます。もし、物理学科とか生物学科とか機械工学科とかすべて入試科目が3科目なのに、もし情報系だけ4科目にしてしまうと、大学側のスケジュール管理がとても難しくなってしまいます。入試科目には、このような学校法人側の営業の都合も含まれます。


新共通テスト(かつての「センター試験」の後継)に「情報I」が追加された機運に反して、じつは多くの私立大学の理系学部では大学個別の入試科目には「情報」系科目は含まれていません。


早慶については入試スタイルがやや特殊なので、説明を省略します。

四工大(芝浦工大・工学院・東京都市大学・東京電機大)については、おおむね、マーチ同様の傾向で3科目が理科で「物理または化学」です。

工学院と東京都市大は情報系の学部があるのに、情報学部の入試科目の3科目目は「情報」ではなく「理科」です(つまり、英語・数学・理科(物理または化学)の3科目)。


今後、年度によって各大学の入試科目の変更の可能性もあるので、必ずしも今後は上記の通りとは限りませんが、しかし少なくとも2023年の時点では、傾向として上記の通りです。


正直、IT企業の仕事では物理学・化学の知識の活用は減っていますが(たとえばツイッターあたりにいる日本の大手IT企業勤務(外資も含む)の有名プログラマーたちは、大して高校レベルの化学とか物理とか知りません)、しかし入試科目は依然(いぜん)として物理・化学を含んでいます。

一応、製造業の組み込みソフトとかを作る組み込み系とかでは物理とかの知識を使う可能性はあるので、そういう進路の可能性も若干はあります。

なお、団塊ジュニア世代の文系学部(法学部や経済学など)出身のプログラマーが高校化学に詳しくてファンデルワールス力(りょく)とかアルカン・アルケンとか色々と知ってるのは、単にセンター試験時代の多くの高校で必修だった化学Iの範囲に入ってたから高校で文系コースでも化学を多めに習ってて知ってるだけであり、べつに高校3年の選択化学を履修するような猛者だったわけではありません。

高校側の容量の限界[編集]

あと、「情報II」を開講しない高校が多い理由は、コンピュータ室の敷地面積の問題や、教師の増員の問題もあるでしょう。特に中高一貫校では、コンピュータ室がもう中学の授業および高校「情報I」の授業で使用済みで授業コマがほとんど埋まっていたりして、これ以上の情報科目の授業を増やすのが難しい、という可能性があります。

もともと旧カリキュラム(~2021年以前)では1学年ぶん「情報と社会」または「情報の科学」の片方だけを履修すれば良かったのと比べて、2022年以降の新カリキュラムでは、もし必修「情報I」に加えて「情報II」を開講するとコンピュータ室を利用する授業のコマ数が単純計算で2倍になってしまい、コンピュータ室のコマ数オーバーになってしまい実現不可能になってしまう可能性もあります。

コンピュータ室のコマ数オーバー問題は校舎を増築しないと解決困難な問題なので、たとえ年月が十数年と経っても「情報II」を開講する高校が増えづらい可能性もありえます。

あるいは、「情報II」を座学を中心の授業にすれば開講も可能でしょうが、しかし座学なら高校卒業後でも自宅で可能だし、「なので、いちいち情報IIを開講するほどの必要もないだろう」と見送っている私学もあるでしょう。


また公立高校の場合、もし「情報II」を3年生の選択科目として開講すると、雇用しなければならない情報科教員の数も増えます。果たして財政難の日本で可能かどうか、とても先行きは暗いです。

私学の場合、いちいちコンピュータ室で情報科目を実習しなくとも、各教室にLAN完備とか、wi-fiスポットを校内に増設しまくるとか、そういう手段も使えますので(ただし学費がやや高くなるが)、受験に出ない「情報II」に投資して授業時間を2単位ぶん受験に不利にするよりもLAN増設など設備に投資すべきだという経営判断も働くかもしれません。

なお、情報IIを開講せずにLAN増設に投資する場合、教員の雇用を増やさなくて済むので、ランニング・コスト(維持費用)が掛かり続けるのも減らせますので合理的です。

理科[編集]

理科には、「生物」・「物理」・「化学」・「地学」の4分野と、横断的な基礎科目の「科学と人間生活」の5つがありますが、しかし多くの進学校では「科学と人間生活」はありません。

進学校の理系コースでは、ふつう、「生物」・「物理」・「化学」の3つの分野を重点的に学びます(「地学」分野が含まれていない)。

さらに1年~2年生は基礎科目として、「生物基礎」・「物理基礎」・「化学基礎」と言う科目3つを2年の終わりまでに習うのが普通です。

「地学基礎」は、3年になってから文系コースなどでしか学べない場合も多くあります。あるいは、そもそも「地学基礎」すら履修できない高校も多くあります。

私立学校の進学校などで地学の履修できない高校は多いですが、実は公立高校でも地学の履修できない高校は多くあります。東京都内の都立高校でも、たとえば都立の新宿高校や小金井北高校や杉並高校や八王子北高校などには、「地学基礎」も「地学」もありません[8][9]


公立の普通科高校だからといって、必ずしも地学が履修できるとは限らないので、誤解しないようにしましょう。


また、基礎科目でないほうの3年生用「地学」は、履修出来ない高校が多くあります。


2010年以降は、文理のコース分け(文系コースと理系コース)を行っている高校では、進学校でも、文系コースでは「物理基礎」を履修できない高校も少なからずあります。(その場合、文系コースは「地学基礎」を履修することになる。)

1990年代は文系コースでも物理I(いまの「物理基礎」に相当)を履修していた進学校も多かったのですが(代わりに当時は地学基礎が履修できなかった)、今は違います。


大学付属校などを受験する際、高校での所属コースによって推薦してもらえる学科が異なる場合があります。たとえば、高校で文系コースを履修してないと併設大学の文系学科には推薦をもらえない、同様、理系コースを履修していないと併設大学の理系学科には推薦をもらえない、などです。


理系コースでは令和では、高校3年では理科は1科目しか選べないのが普通です。専門「生物」、専門「物理」、専門「化学」を選びます。

かつては理系コースの高3の理科では2科目を選ぶパターンが主流でしたが、しかし現代では1科目のパターンに変わったので、保護者からアドバイスをもらうときは注意してください。

この変化の理由は、多くの高校で、古典科目を高校3年で習うように変化したためです。(2001年ごろは理系コースでは高校3年の古典を習わない場合が普通でした。)


正直、大学受験のことだけを考えるなら、文系生徒にも「地学基礎」でなく「物理基礎」を履修させる高校に進学するほうが得です。実際、そういう私立高校の進学校もよくあります。

しかし、実際には、進学校でも「物理基礎」ではなく「地学基礎」を文系生徒に履修させる高校もそこそこあります。

子ども視点では分からないでしょうが、これは教育産業上の理由があり、じつはその地域の地学教育者の雇用を絶やさないようにするため、という文化の維持および雇用の維持という理由もあります。地域によっては近隣に大学のない地域も多く、そう言った地域では、高校で地学の科目が無いと、中学卒業以降の地学教育者の雇用が地域から無くなってしまい、文化が途絶えてしまうのです。

よって、地域の地学教育を絶やさないようにするために、入試に不利なのを知りつつ、文系生徒に教育させます。


高校3年の文系コースの理科で、大学入試共通テスト(かつての「センター試験」)対策をする場合があります。しかし、範囲が狭いからか(「生物基礎」や「化学基礎」などの基礎科目)、進学校でも高校3年の理科を行わない場合もあります。たとえば慶応大の付属高校では、高校3年の文系コースの理科を2023年の時点では行っていません[10]

共通テスト理科の演習の時間が少なくて済むので、余った時間で、数学IIBの未履修分野をするのが多くの高校の文系コースのパターンです。

つまり、日本国は、(理科ではなく)数学を、文系むけの理数系教育のもっとも基礎的な教科と考えているようです


なお、1990年代のかつて、「化学IB」や「生物IB」と言う科目があって、今でいう専門「化学」や専門「生物」や専門「物理」などのうち、生物IB・化学IBなら物理などの知識をつかわない(複合分野でない)分野や、物理IBなら数学の微分積分をつかわない分野を文系コースの3年生で習っていた時代も昔はあったのですが、しかし令和の今は授業時間不足により、そこまでの文系むけの高校理科の教育はなくなりました。

化学IBなどはこれはこれで学習範囲が広くて結構な勉強が必要ではあったのですが、そのぶん数学IIBの授業時間が減ってしまうので、文科省が減らすのはやむを得なかったのでしょう。

例外的に、法政大学の付属校で、まるで化学IB時代の名残のような、文系コースむけに専門「化学」や専門「生物」などを高校3年で教えていますが[11]、かなり例外的です。慶応の付属校ですら文系コースの専門「化学」などは行っていません。べつに法政方式がいいとかは話しておらず、単にそういう事例もあるという事です。

社会科[編集]

高校の社会科の「公民」分野の科目には、必履修の「公共」と、選択科目の「政治経済」と「倫理」があります。

このうち、「倫理」を開講していない高校も多くあります。

なお、「政治経済」の内容が、中学の公民で習った政治や経済の話題の発展的な内容です。いっぽう「倫理」の内容は、哲学史です(倫理学ではありません)。

大学入試新共通テスト(かつてのセンター試験に相当)には現代、「公共・政治経済」と「公共・倫理」というのがあります。

なお、中学生に分かりやすく「社会科」と言いましたが、正しくは指導要領では高校では「地理歴史・公民」という言い方に代わります。


普通科の進学コースでも、理系コースだと公民は「政治経済」すら選択できずに高校1年の「公共」で公民は終わりという場合もチラホラあります[12]。つまり、高校1年の「公共」で理系コースは公民が終わりと言う高校もチラホラあります。

公立高校でも理系コースに「政治経済」の無い高校はありますが、ただし代わりに「日本史探究」とかが理系コースに課されていたりしますたとえば茨城県の某公立 2024年03月03日に確認.

このような高校では、大学進学で経済学部への指定校推薦などを考えている人は、文理のコース選択は必然的に文系にしなければいけません。

なお、あまり細かくコースを調べる必要もないと思います。(指定校推薦ではない)総合型選抜や自己推薦入試やら大学は、たとえその入試方式で受験しても、必ずしも合格するわけではありません。

また、総合型選抜は基本、学校推薦型総合型選抜というものであるので、1高校あたりから受験できる人数が制限されています。

やたらと公募推薦の履修科目の要件が厳しいのは、早慶とマーチあたりくらいです。それより気にすべきは、細かい履修科目よりも、英検準1級以上や同等のTOEICなどのいずれかの成績などを学校推薦などの要件で要求している大学も多いので、英検などを対策すべきです。英文科でなくとも英検・TOEICなどを推薦の要件として要求している私立大学は多いので、注意して事前に大学3年の秋までに対策してください。

名ばかり「総合型選抜」

日本の大学入試の総合型選抜は、難関大学の場合、名ばかりなことが多く、多くの難関大学で出願の要件として、「英検準1級以上」や「TOEIC 〇〇点以上」とか定めている一方で、英語以外の理科については理系学部以外ではロクに要件を定めていません。なにも「総合」ではなく「英語の一芸の外部試験利用入試」な実態があります。

「今のデジタル社会の時代、英語ばかりでなく数学や物理なども勉強すべきでは?」と疑問に思うかもしれませんが、しかし日本の私立大学の文系学部の推薦の要件はそうなっていません。私大は国の理系支援に乗って「わが大学もデータサイエンス学部をつくる!(もしくはすでにあって「拡充する」)」とか掛け声を言ってますが、口先だけだというのが分かります。

総合型選抜とは名ばかりの「英検・TOEIC等の外部英語試験を利用した学校推薦型の面接・小論入試」みたいな実態があります。

口先では「日本にも文理の融合人材が必要だ」とか早慶マーチの文系学部の大学教授は言ったりしますが、しかし推薦入試の科目構成を見ると全然そうなっておらず、英語重視型または理系特化型(理系学部の志望の場合)のようなカリキュラムでないと難関大学の推薦の要件を満たせないようになっています。

かつて1990年代、1科目入試や一芸入試などが流行しました。どうも2020年代の総合型選抜もその流れにあるようで、「英語の一芸の外部試験利用入試」のような実態があります。


さすがに早慶マーチなどの大学付属校の大きな私立高校だと、政経も倫理も日本史探求も世界史探求もそろっているのですが、しかし大規模でない私立高校だと意外とそろっていません。

進学コースだとかコースによっては、高校3年の歴史科目は「日本史探求」しか選べない高校もよくあります(「世界史探求」が選べない)。理由は何通りか考えられますが、おそらく、学力不安のある生徒には世界史は負担が重いのでしょう。また、他の事情として「探求学習をする際、世界史は現地調査が日本では出来ないので、探究しづらい」というのもあるかもしれません。高校ごとに事情が異なるので一概に言えませんが、ともかく世界史探求を履修できない高校は意外と多いのです。

ほか、二松学舎大学の付属高校に、地理探究が無いのを発見[13]。大学付属校だからって、なんでも科目がそろってるわけではない。

国語[編集]

「国語表現」の無い高校も多い

「国語表現」という作文の多い科目を学ばない高校も多くあります。

しかし、「論理国語」で作文などは代用できるので、心配ありません。


「文学国語」の無い高校も多い

進学校でも「文学国語」という2年生むけの科目を履修しない高校も多くあります。しかし「古典探究」という3年生むけの別科目で、より発展的な内容を学びますので、あまり心配ありません。

古典っぽい科目は、1年向けの必履修「言語の文化」、2年向けの選択「文学国語」、3年向けの選択「古典探究」の3つがあるのですが、このうち「言語の文化」はカットされる高校も多くあります。

高校2年生は、現代文っぽい「論理国語」のほうを学ぶ高校もよくあります。

なお、「現代文探求」(← 無)という科目は存在しません。なので、「論理国語」が、事実上の現代文の最高科目です。だからか進学校は、高校2年で「論理国語」、高校3年で「古典探究」というカリキュラムになるのです。

2022年以前の旧課程でも、さらに前の2010年や2000年のころから、高校2年生では現代文重視という高校も多かったので、それと同様のことを2020年代でも続けているだけなので、「文学国語」がカットされても、あまり心配ありません。


理系コースでも「古典探究」

進学校では、理系コースでも高校3年で「古典探究」を習うことがよくあります。

また、このため、高校3年の理科を2科目以上ならうことは、理系コースでも不可能になっている場合もあります。

旧・センター試験に相当する新共通試験では国公立大には理系学部でも古文漢文が必須科目であり、高校2年までの教育では古文漢文が不足なので、理系コースでも「古典探究」を習うのが普通になっています。

なお、2001年ごろは、理系コースの高校3年生は「生物II」「化学II」の2科目(今でいう専門「生物」、専門「化学」に相当)、または「物理II」「化学II」の2科目を習うパターンがよくあったのですが、しかし2010年以降は1科目だけのパターンに変わっています。

なお、古典「探究」とありますが、決して『総合的な探究の時間』のように自由研究をしたりとか多くのレポートを課したりはしないので、勘違いしないようにしてください。

ほか[編集]

家庭科[編集]

家庭科も、じつは科目のばらつきが高校ごとに大きいのですが、あまり関係ありません。

2単位の「家庭基礎」だけの高校もあれば、

4単位の「家庭総合」の高校もあれば、

滅多にないですが進学校でも「家庭基礎」に加えて選択科目「フードデザイン」または「保育基礎」とかのいずれか高校もあります。(実教出版と教育図書の2社がフードデザインなどを出している)

ほとんどの高校は、「家庭基礎」または「家庭総合」のどちらかです。家庭科を扱っている多くの教科書会社は、「家庭基礎」または「家庭総合」の2科目しか出版していません。


進学校の場合、受験に出ない家庭科の授業時間数を減らしたいこともあってか、「家庭基礎」だけの場合もよくあります。


選択科目は「フードデザイン」や「保育基礎」の2科目のほかにも、さらに実教出版の出している「ファッション造形基礎」とか「生活産業基礎」とか「生活産業情報」の選択科目もありますが、どれも普通科高校では滅多に聞きません。

なお、「生活産業情報」は、コンピュータリテラシー系の科目なので、「情報I」を習っていれば、特に問題ありません。これは、商業高校など実業高校の人のための家庭科科目であったりするので、普通科には関係ないでしょう。

普通科高校だと、マイクロソフト Office の使い方などを練習する時間があまり取れないので、別途、そういった実用ソフトの使い方を練習する科目があるのです。


数学Cの事情[編集]

進学校の高校だと、文系コースでも、高校3年相当の「数学C」を履修させられることがあります。これはどういう事でしょうか?

実は、もともと、2020年代の今の数学Cの内容は、1980年代から2020年代までのあいだの一時期、高校2年で教えていた時代もあった内容でした。

数学Cの事情

なお、共通テストの数学Cの出題範囲である「楕円・双曲線」および「複素数平面」という単元は、かつて1980年代の古い時代の旧カリキュラムで高校2年だった範囲です。

1980年代のかなり古い昔ばなしですが、かつて『代数・幾何』という科目を高校2年に教えていた時代があり、その科目で楕円・双曲線などが教えられていたのです[14]

(定期的に文科省が指導要領を変えて、高校2年で教えてた内容を3年に移したり、または高校3年で教えていた内容を2年に移したり、まるで当番制みたいに定期的に入れ替えます。)


1980年代には今では高校2年で教えている確率・統計が、当時は高校3年でした。[15]

近年では数学I A で教えているだろう「期待値」が、昔は高校3年の「確率統計」科目だった時代すらありました。


なお、1980年代の『代数・幾何』の時代から「ベクトル」という単元は高校2年でしたが、2020年代に数学Cに移行しました。

1980年から令和の2020年代まで、統計が3年生から下がってきたぶん、他の科目が3年に移ったりなどの変化がつづいています。


共通性の高い科目[編集]

保健体育は、科目自体は共通です。

どこの高校も、「保健」と「体育」(スポーツの実技)の2科目です。

無い科目[編集]

技術科は無い

中学であった「技術科」(技術家庭の技術分野)は、高校の普通科では、ありません。

部分的に、中学で習ったコンピュータ関係の内容は、「情報I」に発展していきます。

なお、文化祭などのクラスの出し物で木工をするクラスも、どこの高校でも良くあります。ふつう、文化祭は毎年あるので、高校の3年間では3回、文化祭の出し物をつくることになるでしょう。

余談ですが、大学の文化祭では、木工などの出し物はないのが普通です。大学はクラスではなく「学科」で分かれますが、大学文化祭には、学科の出し物というのはありません。大学の文化祭は、一部の部活・同好会(文化部のみ)などの作品や自主研究レポートなどのパフォーマンスの場所です。ほか、大学に「体育祭」や「運動会」は無いのが普通です。

なので、クラス単位で文化祭の出し物をするのは、高校が人生で最後になるのが普通です。


「数学探究」とかは指導要領には無い

まず、「数学I」("すうがくイチ" と読む)・「数学A」("すうがくエー")・「数学II」(すうがくに)・「数学B」・「数学III」(すうがくさん)・「数学C」という6科目が存在します。

基本的には、

1年生向けに「数学I」・「数学A」という科目、
2年生向けに「数学II」・「数学B」という科目、
3年生向けに「数学III」・「数学C」という科目、

の編成です。

まとめて、「数学I・A」、「数学II・B」、「数学III・C」と呼んだりします。

ほとんどの高校で、「数学III」・「数学C」を履修できるのは、理系コースの高校3年生だけです。(例外的に早稲田実業では文系でも数学IIIが必修[16]


さて、指導要領上の科目では(「数学A」ではなく)「数学探究α(アルファ)」とか「数学探究β(ベータ)」という科目は、指導要領では存在しません。よく、いくつかの高校で、高校3年のカリキュラム表に「数学探究α」とかの科目があります。

高校によって異なるので一概には言えないのですが、「数学探究○○」でよくある内容は、「文理のコースに合わせた未習分野」+「センター試験対策」です。

科目名の付け方に、特に法律的な決まりはないので、高校ごとに名付け方が違いますので、あくまで一例です。たとえば、文系向けセンター試験対策が、ある高校では「数学探究α」なのに別の高校では「数学探究β」だったりする事もあります。

また、参考書売り場などで「数学探究β」とかを探しても、そういう題名の参考書も検定教科書も存在していませんので、売っていません。


さて、つまり、高校では普通、2年生の終わりまでには、数学II・Bの教科書は終わりません。

おそらく、もし「数学α」だと、指導要領にある「数学A」とまぎらわしいので、探究をつけて「数学探究α」と名付けているのでしょう。

決して、『総合的な探究の時間』のような調べ学習とかレポート作成とかをたくさんするわけではないので、誤解しないように。


高校の文理コース分けで「国立文系コース」と言うのは、単にこの高校3年での「文理のコースに合わせた未習分野」+「センター試験対策」があるだけだったりします。べつに、特に高度な数学とかを教えているわけではありません。

つまり、1990年代は、高校3年でセンター数学II・B対策すら教えてなかった高校も多いわけです。(高校2年で数学が終わりの高校も、昔は私立高校ではチラホラあったのです。) 2001年以降、私大文系の人気が下がったので、現代のように高校3年でも数学の授業があるカリキュラムが普及して現在(2023年に本文を記述)に至るだけです。


1990年代の国立文系コースというのは、「化学IB」とか「生物IB」とかの、今でいう専門「化学」や専門「生物」レベルに近いことを学習しないといけなかったので、かなり難しかったのですが、実は令和の今はそこまでの理科の負担が無いので、単に高校3年次のコース選択で国立文系むけの高校の授業を履修するだけなら割と簡単でしょう。もっとも、コースを履修したところで国立大学に合格できる保証はありませんが。

なので令和の今はもう、いちいち「国立文系志望コース」とか「私立文系志望コース」とか国立私立の区別を言わず、単に「文系コース」のように名称統一している高校も多いです。

文系生徒の数学IIBの習得については、さすがに文系コースの高校生でも、高校3年で約6か月くらい勉強すれば(3年生になったら、もう入試まで12か月もありません。一般入試まで約9か月。推薦入試はもっと前です)、まあとりあえず理系コースの2年生の終わりの生徒の下っ端のほうの生徒に追いつき追い越せるくらいには勉強できるでしょうし。

高校の「文系コース」は、カリキュラム的には国立志望にも対応できるコースですが(少なくとも平均以上の偏差値の高校なら)、しかし実際には多くの日本の文系高校生は、そのような高度なコースの数学を履修をしても私大の文系学部に進学することになるでしょう(国立大学は学費の安さなどの理由で高倍率。また国立大学数が私立大学数に比べて極端に少ない)。


受験以外の理由でのカリキュラム構成[編集]

高校カリキュラムは、基本的には入試対策に有利な科目が設置されますが、いくつか例外があります。

公立高校だと、普通科高校でも偏差値高めの高校では、入試に不利な科目も取れてしまいます。具体的には、「地学基礎」「地学」、「音楽II」「美術II」「書道II」のような芸術II以降、家庭科の「フードデザイン」みたいな科目、などです。

ただし、公立高校だからといって、必ずしも「地学基礎」「地学」が取れるとは限らず、実際に「地学基礎」の取れない公立高校もあります。おそらく、進学実績先の偏差値が低めの高校は、地元の教育委員会などから指導が入るのでしょうか、進学に不利な科目は取れない高校になる傾向が見られます。


なお、「情報II」については、公立でも私立でも、まだ多くの高校で開講されていません。優れた指導例が蓄積されるまで、「情報II」は様子見でしょうか。一部の公立高校で、特にスーパーサイエンスハイスク-ルなどでもないのに「情報II」の開講が見られます。おそらく実験台でしょう。


なんとなく世間では「私立は民営なので革新的であり実験台。公立は保守的」みたいなイメージが見られますが(ここでの「革新」「保守」とは決して右翼左翼の意味ではなく、新しい物好きかどうかの意味で「革新(新しい物好き)」「保守(新しいものに用心している)」を使っている)、しかし実際には私立高校は受験でのブランド大学への進学実績を目指すので保守的なカリキュラムである事も多いです。

そのため、一部の公立高校が実験台になって、「情報II」などの授業の実験台になっています(国や都道府県からの命令でしょう)。


ほか、ごく一部の進学校で、文化上の理由で、入試に不利な科目のカリキュラムがあります。ほかの理由としては、たとえば私大(文系)の付属高校などで、学園全体での教科の知識水準の確保のためか、入試に不利な科目を置いていると見られる場合もあります。

たとえば「地学」科目は入試に不利なのですが、そのため多くの私立高校では地学の科目は無くなってきています。しかし地方などでは地域の地学教師の雇用を絶やしてはいけないので(日本は地震国なので地学教師の雇用が絶える地方はヤバイので)、一部の高校では、あえて地学の科目があります。

「べつに高校で地学をしなくても、大学で地学を学べばいいじゃないか」と疑問を思うかもしれませんが、しかし首都圏と違って地方では大学が近隣に無い地域が多いことも忘れないでください。


「家庭科」や「芸術」などの教科も同様です。家庭科は「家庭基礎」の2単位だけで高校卒業させられるのですが、しかし進学校でも「家庭基礎」でなく「家庭総合」を履修させているところもありますし、あるいは「家庭基礎」+「フードデザイン」などのパターン。

「芸術」教科でも、私立の進学校なのに芸術II(「音楽II」「美術II」のこと)や芸術IIIまで存在する高校もあります(指導要領上の卒業要件としては「音楽I」「美術I」の片方だけで良い)。私大で芸術学部を持たない大学でも、代わりに付属高校に「音楽III」「美術III」など芸術系のかなり高学年の科目が存在していたりして、そこで学園が芸術系の研究者・兼・高校教師の人材を自前で確保しているとみられます。もし学園が自前で芸術家を何人か教師などとして安定雇用で確保しておかないと、他大の美大・音大あたりの無責任な研究者の言説にダマされかねませんので。

「家庭総合」も、私大の付属校の場合、その私大に家政学部は無くとも、「家庭総合」を置くことで家庭科の知識を学園全体で確保しているのでしょう。


高校でコース外のことをどうしても勉強したい場合[編集]

もし、どうしても文系コースの人が高校3年の物理基礎を勉強したい場合、授業とは別に、家での独学になります。

ただし、部活動などの時間が減ってしまうので、あまり推奨しません。

塾については、特に現役向けの塾の場合、あまりコース外の教育には積極的ではなく、コース外の受講を禁止している場合もあります。

高校卒業後や大学卒業後などに、高校在学時のコース外の科目もコツコツと勉強すれば、それで十分でしょう。


さいわい、履修外になりやすい科目は、独学のしやすい科目です。

たとえば、文系コースで履修外になりやすい「物理基礎」または「地学基礎」は、高校卒業後のあとからでも独学しやすい科目です。ただし独学だと実験はできませんので、どうしても知りたい場合、動画サイトの教育動画や、あるいは市販の資料集の付属DVDなどで、実験動画を見ることになります。

同様、理系コースの履修外になりやすい「世界史探求」や「日本史探求」といった歴史系の高校3年科目も、いわゆる「暗記科目」、よく言えば「知識科目」であるので、独学のしやすい科目です。


現在、コース分けのきつい高校が多く、そのため、文系志望の学生が高校3年の数学IIIや専門「化学」や専門「生物」などを履修するのは、ほぼ無理になっています。(2001年ごろは文系コースでも数学IIIを履修できる高校もあった。)


教育評論の書籍『分数のできない大学生』シリーズにも書いてある事例ですが、文系志望でもあえて文理のハイブリッド型の科目履修をしてセンター試験の総合点をあげたりするという受験テクニックも2001年くらいにはあったのですが(法学部志望なのに受験科目の選択科目では物理受験するという例がシリーズ書籍にありました)、しかし2020年代の現代はそういう履修方法はさまざまな事情で難しくなっています。

文理ハイブリッド型のコースは2010年以降、ほとんどの進学高校では存在しなくなっています。(昭和では、高校2年の終わりまで文理ハイブリッド型のコースの高校も多く、その場合は高校3年で文理のコースが分かれていた。)

同様、理系コースの高校生も、社会科では高校3年の「世界史探求」と「日本史探求」などは履修できないのが普通です(高校3年の社会科は理系コースでは「地理探究」と「政治経済」しか履修できない場合も多い)。

公立高校の教育実験の事例[編集]

公立には文理のコース分けを(2年生ではなく)高校3年で行う高校もまだまだ残っています。

ほか、高校2年「美術II」「音楽II」が2年生では文系・理系を問わず必修の進学校の公立高校も、日本には わずかですが存在します。


一部の公立高校の高校3年の芸術科目

ほか、芸術系とかの勉強に興味・関心ある人は、首都圏や京都・大阪や愛知なら、だいたいどの地区(スポーツの地区大会とかの「地区」)にも「音楽II」・「美術II」とか履修できる公立高校の普通科が最低でも一高校くらいはあるはずなので(ただし電車通学が必要かもしれません)、どうしても興味ある人はそれを調べてみるのも良いかもしれません。また都市部でなくても、最低でも県内に1つはそういう公立高校があると思います。

ただし、クリエイター業界などへの就職率などが良いかは知りません。また、吹奏楽部コンクールなど部活の全国大会の強豪校は、基本的には私立高校です。

ともかく、べつに音楽学科や美術学科の公立高校でなくとも、よく探せば都市部なら「地区」に1校くらい、そういうチョットした発展的な芸術科目の学べる公立の普通科高校はあります。

参考文献[編集]

書籍[編集]

なし(2024年03月31日の時点)

脚注[編集]

  1. ^ (動画)山内太地『高大接続改革は失敗なのか?!関西の高校が探究をがんばれない理由があった!』2022/10/13
  2. ^ (動画)山内太地『国の思惑通りにいかなかった高大接続改革の悲惨な現状』2023/11/29、 5:00 あたり
  3. ^ 『高等学校の学び|明治大学付属中野中学・高等学校』
  4. ^ 『教育課程|学習指導|中央大学高等学校』
  5. ^ キャリアガーデン編集部『書道の教員になるには? 必要な資格は? 書道家の仕事・なり方・年収・資格を解説 キャリアガーデン』
  6. ^ 田坂圭吾 著『音楽の先生になるために必要なことは?表現力・指導力が大切な理由を解説』2021/09/14
  7. ^ 『高等学校教育課程(2022年度新入生より適用) 明治大学付属 明治高等学校』
  8. ^ 『小金井北高校 教育課程表』
  9. ^ 新宿高等学校 『教育課程表(~令和3年度入学生)』
  10. ^ 『カリキュラム | 慶應義塾高等学校』
  11. ^ 『高校の学習 | 高等学校 | 法政大学中学高等学校』 2024年03月31日に確認.
  12. ^ 『教育課程 | 学習指導 | 二松学舎大学附属高等学校』 ※ たとえば私立の二松学舎大学の付属校の理系コース
  13. ^ 『教育課程 | 学習指導 | 二松学舎大学附属高等学校』2024年03月31日に確認.
  14. ^ 高村政志 著『高等学校数学カリキュラムはどこまで骨抜きにされたか』高等教育ジャーナル─高等教育と生涯学習─ 5(1999)、1999年、 P.7
  15. ^ 高村政志 著『高等学校数学カリキュラムはどこまで骨抜きにされたか』高等教育ジャーナル─高等教育と生涯学習─ 5(1999)、1999年、 P.7
  16. ^ 『教育課程 | 高等部 | 早稲田実業学校』2024年03月31日に確認.