高校受験参考書/社会 地理/ヨーロッパ
各国
[編集]イギリス
[編集]イギリスの正式名称は、「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合」。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北部アイルランド連合からなる。略して「連合王国」(United Kingdom)(U.K.)という。
18世紀に産業革命が起き、イギリスは産業革命の発祥の国である。
首都はロンドン。
民族はゲルマン系のアングロ=サクソン人が多いが、少数民族に先住民のケルト人がいる。
現代のイギリスは、EUに加盟しているが、ユーロは導入しておらず、ポンドを通貨にしている。
近代にはイギリスは「世界の工場」と言われるほどに製造業が盛んだった。近代には、その工業力を背景に、軍備も強大化し、世界の各地を占領し、世界各地に植民地を持っていた。
しかし、第二次大戦後、植民地だった国が独立した。 また、1960年代、主要産業であった造船、自動車工業、機械工業など重工業が国際競争力をうしない、イギリスの経済が低迷し、イギリスの景気も悪化し、「イギリス病」と言われた。
このような景気の低迷を打破しようと、1980年代には改革がされ、国営企業の民営化や、各種の規制緩和が行われた。
現代でもイギリスには王室があり、また、貴族などの階級制度の残る国である。
公用語は英語。宗教はおもにキリスト教のプロテスタントで、宗派はイギリス国教会。
イギリスは国際連合の5つの常任理事国のうちのひとつ。(イギリス、フランス、ロシア(当時はソ連)、アメリカ、中国、の5つの国が国際連合の常任理事国である。)
イギリスは核兵器の保有国でもある。
高緯度であるが、周辺の海の暖流の影響により、緯度のわりには寒くない(西岸海洋性気候)。
産業革命の歴史
[編集]近代、グレートブリテン島の中央付近にあるペニン山脈から石炭が産出されたので、この石炭を産業革命のころは利用していた。
18世紀にイギリスのマンチェスターを中心とするランカシャー地方で産業革命が起きた。ペニン山脈の西側の沿岸部にマンチェスターがある。産業革命時のマンチェスターでは綿工業が発達した。いっぽう、ペニン山脈の東側にあるヨークシャー地方では羊毛工業が発達した。
この東西での綿工業と羊毛工業の違いは、降水量のちがいによる、空気の乾燥のちがいであると考えられている。 偏西風のためヨーロッパでは、山脈の東側と西側とでは、降水量がちがう。
ペニン山脈の西側は湿潤なため、綿工業の加工に適していたと考えられている。
また産業革命により、ペニン山脈の南側にあるミッドランド工業地帯が鉄鋼業などで栄えた。
近年のイギリスの工業
[編集]近年のロンドンの工業地帯では、エレクトロニクス産業が盛んである。
現代でもランカシャー地方のマンチェスターやリヴァプール、ヨークシャー地方のリーズなどの都市のいくつかでは、工業が盛んである。 現代でもミッドランドは工業都市である。
その他、イギリスについて
[編集]- グリニッジ天文台
本初子午線(ほんしょ しごせん)の通るグリニッジ天文台はロンドン郊外にある。
- 北海油田
北海油田(ほっかい ゆでん)の開発によって、イギリスとノルウェーは産油国となった。
フランス
[編集]フランスは、ヨーロッパを代表する農業国であり、小麦、とうもろこし、テンサイなどの生産がさかんである。フランスは農産物の輸出も多い。農業がさかんなため、食料自給率は100%を超えており、外国に農産物を輸出している。
北部にあるパリ盆地で、小麦の生産が盛んである。また北部の気候は、高緯度であるが、周辺の海の暖流の影響により、緯度のわりには寒くない。フランス北部の気候は西岸海洋性気候である。
地中海沿岸では ぶどう も生産しており、ワインの産業が有名である。フランス南部の気候は地中海性気候である。
フランスは工業国でもある。 航空機産業や自動車産業が、さかん。
石油などのエネルギー資源にめぐまれず、そのため原子力発電を重視しており、原子力発電が全電力の7割を越えている。
かつては内陸部にあるロレーヌ地方で鉄鉱石が産出したので、ロレーヌ地方が工業地帯であった。だが現代では、フランス南北の沿岸部に工業地帯が立地している。北海沿岸のダンケルクや、地中海沿岸のフォスに、鉄鋼業などの重化学工業地帯が立地している。
フランスの首都はパリ。フランスでは芸術の文化がさかん。首都のパリは観光地でもある。
ルーブル美術館、エッフェル塔(エッフェルとう)はフランスにある。
工業では、パリ周辺にも工業地帯があり、衣類・化粧品の工業や、自動車工業や機械工業などの工業地帯がパリ周辺にある。
フランスは移民を入れてるが、旧植民地であったアルジェリアなどの北アフリカ諸国からの移民も多い。
また、イスラム系の移民やその子孫もフランスに暮らしているが、フランスでは公立学校や官公庁などの公共機関では政教分離を徹底するので、公共機関での宗教的なシンボルの着用を禁止している。イスラム教徒にも政教分離を徹底させるため、フランスの公立学校では、イスラム教徒の女子学生・女子生徒などの髪をおおうためのスカーフやベールの着用を禁止している。
フランスは国際連合の5つの常任理事国のうちのひとつ。(イギリス、フランス、ロシア(当時はソ連)、アメリカ、中国、の5つの国が国際連合の常任理事国である。)
フランスは核兵器の保有国でもある。
ドイツ
[編集]現代のドイツはヨーロッパでは最大の工業国である。首都はベルリン。
自動車産業や電子工業や重化学工業がさかん。ライン川ぞいにあるルール工業地帯は、かつては石炭の産出地でもあり、鉄鋼業や重化学工業が、さかんであった。
ドイツのルール工業地帯はルール炭田の近くにあり、伝統的な工業地帯であるが、しかし第二次大戦後の石炭から石油へのエネルギー革命や、機械工業からエレクトロニクス産業への産業構造の変化などにより、ルール工業地帯は伸び悩んでいる。
第二次大戦後のドイツでは、臨海部や消費地周辺に新たな工業地帯が作られていった。 大都市周辺であるミュンヘンに、自動車工業やエレクトロニクスの工業地帯がある。
- ドイツ文化、
ドイツで話されている言語はドイツ語であり、英語では無い。 おもな宗教はキリスト教でプロテスタントが信仰されている。
- ドイツ史など
近代のドイツは国家統一が遅れたことなどから、工業化をするのがイギリスやフランスなどと比べて遅れ、そのこともあり植民地の獲得に遅れた。
そのため、植民地を獲得しようとしてイギリス・フランスとしばしば対立し、イギリス・フランスと戦う2度の世界大戦を起こし、両大戦ともドイツは敗れた。
第二次大戦後の冷戦時には、ソビエトの支援を受けた東ドイツと、アメリカの支援を受けた西ドイツとに分裂していた。なお東ドイツがソ連など共産主義・社会主義の陣営。西ドイツがアメリカ・イギリスなど資本主義・民主主義の陣営である。
首都ベルリンも、2つに分割され、両陣営を分ける壁(ベルリンの壁)が建設された。
冷戦の終了によって1989年にベルリンの壁が壊され、1990年には西ドイツが東ドイツを吸収する形で東西ドイツが統一した。
第二次大戦後、ドイツは、労働力不足をおぎなうため、移民を多く受け入れた。トルコなど地中海付近の国から多くの移民を受け入れた。
また、ポーランドなど東ヨーロッパ諸国からの移民も、ドイツには多い。
- 農業
ライ麦、じゃがいもの栽培、酪農や、豚の飼育(豚肉の生産のため)などを組み合わせた混合農業が盛ん。(ソーセージなどは豚肉料理)
イタリア
[編集]古代のローマ帝国があった場所は、現代でいうイタリア。 現代のイタリアの首都はローマ。
おもな宗教はキリスト教。公用語はイタリア語。
国土は、長ぐつの形をした半島と、シチリア島やサルデーニャ島などからなる。
気候は、地中海性気候のため、夏に乾燥し、冬に雨が多い。
イタリア北東部に重化学工業が多い。 工業は、ミラノ、トリノ、ジェノヴァを中心に発達。
南部は農業地帯。
これらに対し、ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどが衣服・皮革・家具製造などの企業が多くて盛んな地域であり、このようなイタリアの衣服・皮革・家具製造などの企業が多くて盛んな地域(ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネツィアなど)を「第3のイタリア」(third itary ,「サードイタリー」)という。イタリアのこれら(衣服・皮革・家具製造など)の産業は世界的なブランドになっている。
イタリアの宗教はカトリックが主に信仰されている。
南部の農業は地中海性農業。 北部の農業は混合農業。
経済格差が南北のあいだにあり、北側が裕福で、南側が貧しい。
バチカン市国
[編集]イタリアのローマ市内に、バチカン市国がある。
バチカン市国は、イタリアとは、別の国。
つまり、バチカン市国は、周囲をイタリアに囲まれている。
スペイン
[編集]首都はマドリード。
- 近年、バルセロナで自動車産業が発達。農業は、南部は地中海式農業で、ブドウ、オリーブなどを栽培。
- リアス式海岸の「リアス」の語源は、スペインの入り江(いりえ)のことである。
- イベリア半島の内陸部の乾燥高原をメセタという。メセタで、羊の牧羊が盛ん。つまり、イベリア半島の内陸部の高原では、羊の牧羊が盛ん。
バスク地方で、バスク人の独立問題をかかえている。
イベリア半島の南端とアフリカとのあいだの海峡はジブラルタル海峡(ジブラルタルかいきょう)。
ポルトガル
[編集]イベリア半島の西端。首都はリスボン。
気候は、地中海性気候。農業は、ぶどう、オレンジ、コルクガシなどの地中海式農業。
ギリシャ
[編集]ギリシャの首都はアテネ。オリンピック発祥の地。農業や海運業が、経済の中心。
ギリシャはバルカン半島の南部に位置する。
気候が地中海性気候のため、温暖。
スイス
[編集]スイスは、どこの国とも軍事同盟を結ばない永世中立国である。そのため、スイスはEUに加盟していない。 中立の政策が、経済にも影響している。
時計の生産が有名
首都はベルン。
チューリッヒが、国際的な金融の中心地のひとつになっている。
工業もさかんで、時計などの精密機械が盛ん。
農業では、アルプス山脈中での涼しい気候をいかした、酪農(らくのう)が盛ん。
スイスの公用語については、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を公用語として定めている。「スイス語」という言語は無い。
宗教も、カトリックとプロテスタントの両方である。スイスは、中立国ということから、国際会議などの開催の場所になることも多い。スイスには国際機関の本部も多く、たとえば世界保健機関の本部がある。ジュネーブに、国際機関が多い。
永世中立というスイスの立場のため、第2次大戦後、ながらく国際連合にはスイスは加盟しなかったが、2002年にスイスは国際連合に加盟した。スイスは、その中立を維持するために、軍事力を高めている国である。スイスには徴兵制(ちょうへいせい)がある。
ベネルクス
[編集]ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3国をまとめて「ベネルクス」という。
オランダ
[編集]国土の4分の1が(つまり25%が)、海面よりもひくい干拓地(かんたくち)であり、その干拓地はポルダーと呼ばれる。
古くは排水に風車(ふうしゃ)を利用していた。
チューリップの栽培などの園芸農業や、バター・チーズなどの酪農がさかん。 オランダの首都はアムステルダム。
沿岸部のロッテルダムにヨーロッパ最大の貿易港になっているユーロポートを持つ。 また、ロッテルダムでは製油所や石油化学工場が多く、石油化学工業が発達している。(一般に石油化学の大工場は、輸入に便利な沿岸部に立地しやすい。日本でも同様。)
ベルギー
[編集]首都はブリュッセル。首都のブリュッセルにEUの本部がある。
国の南北で民族が異なる。南部はフランス系。北部はオランダ系。
北ヨーロッパの国
[編集]北ヨーロッパの夏では、一日中、太陽の沈まない白夜(びゃくや)が見られる。逆に冬では、一日中、太陽の登らない日もある。
ノルウェー
[編集]スカンディナビア半島の西側に位置し、スカンディナビア山脈の西側に位置する。そのため、偏西風の風上側にあり、よって、降水量が多い。水力発電が盛んで、アルミ二ウム工業が盛ん。
半島の西岸にフィヨルドという地形が見られる。
首都はオスロ。
北海油田から原油が産出されるので、イギリスとノルウェーは産油国である。
ノルウェーはEUに加盟していない。
スウェーデン
[編集]社会保障の制度が充実していることで有名。しかし、福祉が充実しているぶん、税金も高い国としても有名。
製紙工業が、さかん。 首都はストックホルム。
スウェーデンはノーベル賞の授賞式が行われる国でもある。首都のストックホルムでノーベル賞の授賞式が行われる。
スウェーデンでは鉄鉱石が産出され、ドイツなどに輸出されている。
自動車工業が発達している。
スウェーデンは緯度が高く、気候が寒冷なことから、農業(畑、田)には適さない土地が多い。森林は耕地にはせず、森林のまま、森林資源として用いている。
スウェーデンは1995年にEU加盟したEU加盟国である。だがスウェーデンは、EUの共通通貨ユーロを導入していない。
中立国である。軍事に関していうが、日本では あまり知られてないが、スウェーデンは徴兵制(ちょうへいせい)を2010年まで行っていた。スウェーデンの徴兵制は、2010年に廃止された。
育児を支援する制度が1980年代から充実し、出生率を上昇させた。
デンマーク
[編集]酪農、養豚などの畜産、漁業が、さかん。豚肉などの輸出国になってる。水産物の輸出国にも、なっている。
風力発電が盛んである。
首都はコペンハーゲン。コペンハーゲンは半島ではなく、島に位置している(シュラン島)。
フィンランド
[編集]氷河湖が多い。
アジア系のフィン人が多い。
フィンランドは森林資源が豊富で、パルプ・製紙工業が発達している。
東ヨーロッパ
[編集]ポーランド
[編集]農業は、ライ麦・ジャガイモなどの栽培。ポーランドの首都はワルシャワ。宗教は、カトリックの信者が多い。
以前のローマ法王のヨハネ=パウロ2世はポーランド出身。ショパンやキュリー夫人もポーランド人。
シロンスク地方で石炭が産出される。
住民のほとんどはスラブ系で、宗教はカトリック。
チェコ
[編集]プラハで工業が発達している。チェコの首都はプラハ。
冷戦中はチェコスロバキアという国だったが、1993年にチェコとスロバキアという2つの国に分離。
チェコ、スロバキアは両国とも、住民のほとんどはスラブ系で、宗教はカトリック。
チェコの首都はプラハ。
ハンガリー
[編集]住民はウラル語族のマジャール人で、宗教はカトリック。
ドナウ川が流れる。
首都はブダペスト。
ハンガリーの農業では、小麦の栽培、あるいは肉牛や豚などの飼育を組み合わせた混合農業が盛ん。
ルーマニア
[編集]住民の大半がラテン系で、宗教は東方正教。国名のルーマニアとは「ローマ人の土地」という意味。
カルパティア山脈などから石油・天然ガスが産出する。
ルーマニアの農業は小麦が盛ん。あるいは混合農業。
旧ユーゴスラビア
[編集]かつてバルカン半島に存在した連邦国家。20世紀にユーゴスラビア紛争が発生し、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボが独立。マケドニアも無血で独立。この間、ボスニア・ヘルツェゴビナでは内戦が発生している。その後、モンテネグロがセルビアから独立。
EUの共通農業政策
[編集]予備知識として、まず、EU域内の農産物の移動には、関税が掛からない、ということを知っておこう。
さて、EU域内で食料を自給しようという目的で、つぎの共通農業政策が1960年代から実施された(当時は「EU」でなく「EC」などだが、細かいことは気にしなくてよい)。
共通農業政策の内容は、EU域内で農産物にごとに統一価格を定め、生産性の低い国にあわせて、市場価格よりも高い価格で買い取ることである。つまり、市場価格よりも高い値段でしか生産できない農家からEUが農産物を買い取る場合に、市場価格との差額がEU財政の負担になる。
アメリカなど域外からの安い農産物の輸入については、域内価額との差額を課徴金(かちょうきん)として取ることで、EU域内の農家を保護する。
また、EU域外に輸出するときは、国際市場価格との差額を農家に補助金として与えて価格を下げさせる。
この共通農業政策はEU域内の農家に有利なので、結果的にEU内の農家の生産意欲が上がり、生産量も上がった。だが、EU財政の負担になったので、小麦など一部の農産物で買い取り価格の低下をしたり、生産調整をしたりなども起きている。
気候と農業
[編集]気候
[編集]ヨーロッパ州はユーラシア大陸の西の端にある。 ヨーロッパの西の大西洋にある、暖流の北大西洋海流(きた たいせいよう かいりゅう)から、ヨーロッパに温かい風が来るという 偏西風(へんせいふう) という現象により、ヨーロッパ北部は緯度のわりに温暖である。また、偏西風が水分をふくんでいるので、雨も多く、水不足にはなりにくい。このような気候を西岸海洋性気候(せいがん かいようせい きこう)という。
ヨーロッパ南部にはアルプス山脈があり、南部は山がちである。南部からヨーロッパ北部に向かうに連れて、すずしくなってくる。
地中海式農業
[編集]アルプス山脈の南側の、ヨーロッパ南部の地中海沿岸の気候は、夏は暑く雨が少なく乾燥しており、冬は雨が多く温暖である。地中海式農業(ちちゅうかいしき のうぎょう)と呼ばれる農業が行われており、夏にはぶどう や オリーブやオレンジ類などが乾燥に強いので栽培されており、冬には小麦が栽培されている。羊や山羊などの放牧による飼育もおこなわれている。
イタリアでスパゲティなどのパスタ料理が有名なのも、これらの農産物を活かした料理である。パスタには小麦が使われている。オリーブオイルなどが調味料に使われたりしている。
ヨーロッパ北部の混合農業
[編集]北西部や東部では、小麦やライ麦などの穀物の栽培と、豚や牛などの飼育と、トウモロコシやジャガイモなどの飼料作物、根菜(かぶ、てんさい)の栽培などが、組み合わされて行われている。このような農業と家畜の飼育を組み合わせた農業を混合農業(こんごう のうぎょう)と言い、ヨーロッパ州の北部で、このような混合農業がさかんである。
酪農
[編集]イギリスやデンマークやオランダなどの北海・バルト海沿岸のヨーロッパ北部や、スイスなどのアルプス山脈の地帯は、冷涼であるので、あまり穀物の栽培には向かないので、かわりに酪農(らくのう)がさかんである。
園芸農業
[編集]都市近郊の農業では、都市近郊では地価が高く、また現金が必要なので、販売価格の高い作物である野菜や花卉(かき)などの園芸作物の栽培が盛んになったが、このような園芸作物の農業を園芸農業(えんげい のうぎょう)という。
近年では交通機関の発達により、都市から離れた地域でも園芸農業が行われているが、これを輸送園芸(ゆそう えんげい)という。
現代の農業のまとめ
[編集]現代のヨーロッパで行われてる農業は、
- 混合農業
- 園芸農業
- 酪農
- 地中海式農業
である。
その他
[編集]ヨーロッパ北部のノルウェーなどの海岸ぞいのギザギザした地形は氷河によって削り取られた地形である。このようなギザギザした地形をフィヨルドと言う。ノルウェーでは、この地形を活かし、漁業などの水産業がさかんである。
ヨーロッパには40カ国以上の国がある。国の多くは、国土の面積が、日本よりも小さい国が多い。
ヨーロッパの言語、民族、宗教の分けかた
[編集]言語
[編集]ヨーロッパの言語は、およそ3種に分類される。ヨーロッパ北西部の英語やドイツ語などのゲルマン系と、南部のフランス語やイタリア語などのラテン系と、東部のロシア語やチェコ語などのスラブ系の3つの系統である。
- ラテン系
ラテン系の言語はヨーロッパ南部が中心。イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語
- ゲルマン系
ゲルマン系の言語は北西部が中心。イギリス語、ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語
- スラブ語系
スラブ系の言語は東部が中心。ポーランド語、チェコ語
- 例外
スイスでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を公用語として定めている。
ベルギーでは、ワロン語とフラマン語がある。
民族
[編集]ヨーロッパの民族も、とても多くあるが、おおまかにはゲルマン民族、ラテン民族、スラブ民族の3つに分けることが出来る。
宗教
[編集]ヨーロッパではキリスト教が中心に信仰されている。キリスト教の宗派は、おおまかに3つの宗派に分かれる。古代からの教えを重んじるカトリックと、近世以降に宗教を改革したプロテスタントと、ルーマニアなどヨーロッパ東部でさかんな東方正教(とうほう せいきょう)である。
カトリックはイタリアなど南部のラテン系の国家でさかん。 プロテスタントはイギリスを中心にさかん。
東方正教は、ヨーロッパ東部に多い。
このほか、アルバニア、ボスニア、コソボなどヨーロッパ南東部でイスラム教も信仰されている。
このほか、20世紀後半から、西アジアなどイスラム圏からの移民を受けいれたため、ヨーロッパ各国でイスラム教徒が増えている。
- バチカン市国
イタリアの首都ローマの中にある国であり、世界最小の国であり、独立国でもある。ローマ教皇(ローマきょうこう)が住んでいる国である。キリスト教のカトリック宗派の中心地になっている。
ヨーロッパ連合
[編集]1948年 | ベネルクス関税同盟が発足。 |
1952年 | ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足。 ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)が発足。 |
1958年 | ヨーロッパ経済共同体(EEC)が発足。 |
1967年 | ヨーロッパ共同体(EC)が発足。 |
1973年 | イギリス、アイルランド、デンマークが加盟。 |
1981年 | ギリシャが加盟。 |
1986年 | スペイン、ポルトガルが加盟。 |
1987年 | 単一欧州議定書。 |
1993年 | ヨーロッパ連合(EU)が発足。 ヨーロッパ単一市場が発足。 |
1995年 | スウェーデン、フィンランド、オーストリアの加盟。 |
1999年 | 通貨ユーロを通貨の計算単位として導入。 |
2002年 | ユーロ紙幣・硬貨の流通開始。 |
2004年 | EU拡大、加盟国25ヶ国に。 |
2007年 | EU拡大、加盟国27ヶ国に。 |
2013年 | クロアチアが加盟。 |
ヨーロッパ連合とは、ヨーロッパでの経済の統合など、ヨーロッパの国どうしで協力しあっている国家どうしの連合である。ヨーロッパ連合のことを EU(イーユー) という。
EUの本部はベルギーの首都ブリュッセルにある。
もともとは1948年にベルギー・オランダ・ルクセンブルクの3国が関税同盟(かんぜい どうめい)を結成した。
さらに、第二次大戦後に、ヨーロッパの資源の共同管理をすることで、資源をめぐる戦争をなくそうという平和目的として1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC,イーシーエスシー、European Coal and Steel Community)の設立が、戦争であらそったドイツとフランスを中心に設立された。結果的にドイツ・フランスにイタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクを加えた6カ国で1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立された。
似たような国際機関で、1958年にはヨーロッパどうしの経済協力を目的にヨーロッパ経済共同体(EEC イーイーシー、European Economic Community)が設立した。また1958年に原子力の共同管理のためのヨーロッパ原子力共同体(EURATOM 、 ユーラトム European Atomic Energy Community)が設立された。
このECSCとEECとEURATOMの3つが統合して、1967年にEC(ヨーロッパ共同体 European Community)が設立された。
ECの原加盟国はフランス、西ドイツ、イタリア、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の6カ国である。
その後、ECは加盟国が増えていった。
1992年のマーストリヒト条約で、経済協力だけでなく政治統合に向けても協力しあうことが合意された。オランダのマーストリヒトで調印されたので、マーストリヒト条約という。
1993年にはECからEU(ヨーロッパ連合、European Union)に発展した。
ECが市場の統合を目指してたのくらべ、EUはさらに通貨の統合や外交政策の共通化など、より踏み込んだ目標を目指している。
2002年からEUの共通通貨のユーロ(Euro)が加盟国の多くで使われている。このため、それまで加盟国にあった通貨(たとえばドイツのマルク通貨やフランスのフラン通貨など)は回収された。
EUの政策
[編集]シェンゲン協定
[編集]EU域内で国境管理を廃止して、通行を自由化するシェンゲン協定(Schengen Agreement)が1995年に発効し、現在も実施されてる。このためEU域内では、パスポートなしで国境を通過できる。
ただし、イギリス・アイルランドはシェンゲン協定を実施していない。
また、EU非加盟であるスイス・ノルウェーはシェンゲン協定を実施している。
EUの機関
[編集]フランスのストラスブールにヨーロッパ議会。
ベルギーのブリュッセルにEU本部に相当するヨーロッパ理事会およびヨーロッパ委員会。
ルクセンブルクにEU裁判所。
ドイツのフランクフルトにヨーロッパ中央銀行(ECB)。
近年の加盟国
[編集]2000年〜2010年ごろ、旧ソ連圏の東欧諸国などがEUに加盟した。
- 2004年にポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニアが加盟。さらに、エストニア、ラトビア、リトアニアといったバルト3国がEUに加盟。
- 2007年にルーマニアとブルガリアがEUに加盟。
- 2013年にクロアチアがEUに加盟。
またなお、トルコはEUに未加盟である。
交通や物流など
[編集]イギリスとフランスとのあいだのドーバー海峡(ドーバーかいきょう)の海底に、海底トンネルのユーロトンネルがある。 1994年にユーロトンネルが開通した。
また、そのユーロトンネルをつかった高速鉄道のユーロスターが、ロンドン〜パリ間を走る。
工業
[編集]工業地帯の立地
[編集]産業革命のころ、製鉄や蒸気機関などの燃料には、石炭を用いていた。
このため、炭田のちかくに工業地帯が作られていった。
しかし、第二次大戦後、石炭から石油にエネルギー資源が変化したこともあり(エネルギー革命)、炭鉱・炭田のちかくに立地する必要性がうすれたこともあり、むしろ沿岸部のほうが外国からの石油の輸入に便利なので、第二次大戦後は沿岸部に工業地帯があたらしく作られた。
また、都市部の周辺に、電気機械などの工業地帯が作られるようになった。
なお、ヨーロッパのかつての炭鉱などは閉鎖され、いちぶは観光施設などとして活用されている。
世界での工業力の移り変わり
[編集]フランスでは、航空機の産業が有力である。
産業革命がヨーロッパのイギリスやフランスを中心にして起きた。古くからヨーロッパで近代工業が起こったことにより、ヨーロッパでは工業がイギリス、フランス、ドイツなどを発達した。 今でこそ中国が(一昔前は日本が)「世界の工場」と言われているが、元はイギリスが「世界の工場」と言われていた。
現在でも、イギリス、フランス、ドイツなどの工業の技術力も高い。
第2次大戦後はアメリカや日本の工業が発達してきたので、ヨーロッパの国々は日米に対抗するため、ヨーロッパの企業どうしで協力しあっていることが多い。
たとえば航空機の生産では、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ベルギーの企業が、航空機の部品を分担して共同生産をしている。 EUの4カ国(フランス、ドイツ、イギリス、スペイン)が出資したエアバス社により、各国で部品を作り、最終組み立て工場のラインがあるフランスのトゥールーズで組み立てている。
ヨーロッパ州は工業が古くから発達したことで、大気汚染などの公害や環境問題などにも直面した過去があり、そのため公害などへの規制がきびしい。人々の環境問題への意識も高く、リサイクルも普及している。また、太陽光発電や風力発電などの普及にヨーロッパ諸国は積極的である。
東ヨーロッパの工業
[編集]東ヨーロッパは、工業がおくれており、賃金も安い。そのため、外国の企業が安い賃金の労働力を求めて、工場などを進出させている。日本の企業の工場やアメリカの企業の工場も、東ヨーロッパのチェコやポーランドやハンガリーに進出している。
どのあたりを東ヨーロッパというかは、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアなどが東ヨーロッパである。
チェコとポーランドとハンガリーの3カ国で工業がさかんである。とくにチェコは昔からの工業国である。冷戦中はソビエト連邦の主導する社会主義の陣営にチェコやポーランドやハンガリーなどは組み込まれたが、その中でもチェコは工業力の高い国であった。現在でも東ヨーロッパの中でチェコは工業がさかんである。
いっぽう、ポーランドは東欧の中でも人口と国土が多い。ポーランドの国土の広さは、スペインと同じくらいである。(チェコとハンガリーの国土面積は、北海道と同じくらい。)そのため、今後の発展が期待されており、西ヨーロッパやアメリカなど外国の企業もポーランドに進出している。