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高等学校化学II/合成繊維

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

ポリアミド系合成繊維

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アミド結合によって重合した化合物をポリアミド(polyamide)という。

ナイロン66

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アジピン酸 HOOC-(CH2)4-COOH とヘキサメチレンジアミン H2N-(CH2)6-NH2 との縮合重合によって、6,6-ナイロンが得られる。

この、ポリアミドを繊維にしたものをナイロン(nylon)という。 ナイロン6-6は、6,6-ナイロンとも言う。

ナイロン66の合成式。

ナイロン6

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カプロラクタム(caprolactam)という環状のアミド結合を持つ化合物があるが、このカプロラクタムに少量の水を加えて加熱すると、環のアミド結合が開き、そして他の開環したカプロラクタムと重合してナイロン6というポリアミド繊維になる。

ナイロン6の合成式。

また、このように、環状分子が開環して 鎖状のポリマーに重合することを開環重合(かいかんじゅうごう、ring-opening polymerization)という。アミド結合を持つ環状化合物をラクタムという。ナイロン6は1941年に日本で開発された。



(※ 発展:) アラミド繊維

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アラミド
※ 検定教科書の範囲。教科書で「参考」などとして頻出。

アミド結合の間にベンゼン環を導入した芳香族ポリアミドをアラミド(aramid)といい、それを繊維にしたものをアラミド繊維という。

アラミド繊維の一例として、原材料にテレフタル酸ジクロリドという芳香族2価カルボン酸のクロロ化物と、p-フェニレンジアミンとを重合させると、p-フェニレンテレフタルアミドという化合物になる。

ひじょうに丈夫であり、引っ張り強度も高く、耐熱性・難燃性もすぐれるので、防弾チョッキや消防服などに使用される。

ポリエステル系合成繊維

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エステル結合 -COO- によって連なった高分子化合物をポリエステル(polyester)という。

ポリエステルは、合成繊維のほかにも、合成樹脂としても使われる。

ポリエチレンテレフタラート

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テレフタル酸 HOOC-C6H4-COOH と、エチレングリコール HO-(CH2)2-OH の間で縮合重合を行うと、ポリエチレンテレフタラートという鎖状の重合高分子になる。 略称はPETである。

ポリエチレンテレフタラートの生成式。
ポリエチレンテレフタラートのエステル結合。

このPETは水を吸いにくい性質が有る。 飲料用の容器のPETボトルは、このポリエチレンテレフタラートを用いている。

また、ポリエステル繊維は しわ になりにくいので、衣服にも用いられる。



付加重合

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アクリル系合成繊維

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ポリアクリロニトリル

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アクリロニトリル
ポリアクリロニトリルの構造式

アクリロニトリル CH2=CH-CN を重合させようとすると、CH2=CH-CN の二重結合の部分であるビニル基 CH2=CH-が、付加重合をして一重結合になることで、他の分子との結合が可能になる。

アクリロニトリルを付加重合させたものをポリアクリロニトリルという。ポリアクリロニトリルを主成分とした繊維をアクリル繊維という。 ポリアクリロニトリルは疎水性であり、そのままでは染色しづらいので、ポリアクリロニトリル繊維に添加物として酢酸ビニル CH2=CH-OCOCH3 などの原子団を混ぜて、染色性を高める。

アクリル繊維の肌触りは羊毛に似ていて、やわらかい。

また、アクリロニトリルと塩化ビニルを共重合させた繊維は燃えにくく、カーテンなどに用いられている。

炭素繊維

アクリロニトリルを窒素などの不活性気体中で、温度200℃ から段階的に温度を上げ 温度3000℃程度の高温で熱分解すると、炭素を主成分とする炭素繊維(カーボンファイバー)が得られる。炭素繊維は強度が優れている。

カーボンファイバーは、テニスラケットなどのスポーツ用品や釣竿に用いられている。 航空機の翼の材料の一つにも、カーボンファイバーは用いられている。


ポリビニルアルコール系合成繊維

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ビニロン

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原料 : ポリビニルアルコール
ポリビニルアルコールの構造式

酢酸ビニルCH2=CH-OCOCH3 を付加重合させて、ポリ酢酸ビニル[-CH2-CH(OCOCH3)-]n を作り、これを水酸化ナトリウムNaOHでけん化するとポリビニルアルコール -[CH2-CH(OH)]- n とCH3COONaになる。

ポリビニルアルコールは、ヒドロキシ基を多く持ち、水溶性が高いので、そのままでは繊維には使えない。洗濯のりとして、ポリビニルアルコールは用いられる。

ポリビニルアルコールは、硫酸ナトリウム水溶液へ入れると凝固する。なので、繊維にするために、ポリビニルアルコールを細孔から硫酸ナトリウム水溶液へ送り出す。これは、単に塩析をしただけなので、凝固しても親水性は変わらない。

アセタール化

硫酸ナトリウム水溶液で凝固させたポリビニルアルコールを、ホルムアルデヒド水溶液HCHOで処理すると、ポリビニルアセタールになり(アセタール化)、 これをビニロン(vinylon)という。

ビニロンの合成
ビニロンの合成

このアルデヒドで環にする反応をアセタール化という。アセタール化によって親水基のOH基が減ったので、ビニロンは水に溶けなくなり、繊維として使える。ビニロンには親水基が残っているため、ビニロンの繊維は吸湿性を持つ。

ビニロンは、防護ネットや漁網などに用いられる。 ビニロンは1939年に日本の桜田一郎によって開発された合成繊維である。


酢酸ビニル

酢酸ビニルそのものの作り方は、エチレンCH2=CH2 に適当な触媒(たとえば酢酸パラジウム)を用いて、酢酸CH3COOH と反応させると、酢酸ビニルCH2=CH-OCOCH3 が得られる。