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高等学校商業 経済活動と法/保証人制度

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

(※ 連帯保証人については、この科目「経済活動と法」の範囲内です。検定教科書で説明の記載があるのを確認済。)

(※ 実教出版『経済活動と法』、平成25年検定版、114ページ、に連帯保証人の記述あり。)
(※ 東京法令出版『経済活動と法』、平成25年検定版、93ページ、に連帯保証人の記述あり。)

借金の保証人

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他人の借金の保証人になると、他人の借金を背負わされます。 保証人になるという事は、万が一の場合、その借金を、自分が払う覚悟があるという事である。

なので、保証する相手が特別に信頼できる相手方でないかぎり、保証人には、ならないほうが良いだろう。(※ 保証人になる場合の注意喚起は、検定教科書の範囲内である。実況出版の教科書の112ページに、「慎重でなければならない」注というふうな意喚起がある。)

「保証人」とは、必ずしも借金だけの保証人とは限らないが、本書では、まず、借金の保証人について説明する。

借金の連帯保証人は危険

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特に、借金の連帯保証人(れんたい ほしょうにん)には、まず、ならないほうが良い。

ふつうの保証人は、借金をした本人が優先的に借金取りから取り立てをされる。仮に借金をした本人が取り立てられるよりも先に、(普通の)保証人のところに借金取りが来ても、保証人は「まず、借金をした本人を探して、その本人に取り立ててください。」と反論でき、また、借金取りの側も、まず先に借金取りをした本人から取り立てる努力をしなければならない。


たとえば、900万円の借金の連帯保証人として、A,B,Cの3人が、連帯保証人になってたとする。

この場合、Aが900万円を請求される場合もあるし、Bが900万円を請求される場合もあるし、Cが900万円を請求される場合もある。

けっして、「3人で分担して、Aが300万円の負担、Bが300万円の負担、Cが300万円の負担」とかいうふうにはならない。


しかし、連帯保証人の場合だと、連帯保証人は借金をした人と同様の責任を負い、借金をした人と同様の責任で連帯保証人も借金取りから取り立てられる。

たとえ連帯保証人が、「私に取り立てるよりも前に、まず、借金を借りてる本人に、取り立ててください」などと反論しても、法的効力が無い。 つまり、連帯保証は、借金をしているのと同じ法的責任である。「連帯保証人」の「連帯」とは、このように、自身が借金をしているのと同じ扱いを受けます、という意味である。

※ 検定教科書には書かれてないが、この連帯保証制度を悪用した詐欺で、借金を負わせる詐欺がある。注意しなければならない。


2020年度の民法改正の内容 (※ いまのところ範囲外
) 情報提供の義務の新設

連帯保証人に対して、主債務者は、主債務者の財産などの状況についての情報提供を、連帯保証人に対して情報提供しなければならない義務(改正民法458条の2)が、2020年4月からの改正民法で新設で追加された。(※ ただし、条文では連帯保証人からの要請があった場合の規定であるので、まだ抜け穴がある。)

この義務の意義は、詐欺などを防止するためである。詐欺の手口で、詐欺師の債務者と債権者がグルになって、債務者があたかも財産があるかのように振舞って安心させたあと、計画的に債務者が破産して、保証金を連帯保証人から取る手口の詐欺が、連帯保証を悪用した詐欺の典型例として、よく知られてていた。

このような典型的な詐欺を未然に防止するため、改正民法では、主債務者の財産状況の情報提供の義務が追加されることになった。

債務者の提供する情報は、財産以外にも、契約対象以外の債務の有無と債務金額やその返済状況についても、情報提供の義務がある。(抜け道を防いでいる。)


この他、債権者の側にも義務が追加され、連帯保証人への、返済状況などの情報提供の義務が追加された。


分割保証

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※ (分割保証も検定教科書の範囲内。東京法令出版の教科書で、保証人の章節での傍注にて言及されている。)

「900万円を3人で分担するので、Aが300万円の負担、Bが300万円の負担、Cが300万円の負担です。」とか仕組みの保証の場合は「分割保証」という。分割保証も合法である。 分割保証は、連帯保証ではない。 なので、もし仮に、あなたが連帯保証人を頼まれた時、相手がもし「1000万円の債務を10人で分担して保証してるので、1人あたりは、たったの100万円の保証金額で済みます。」なんて頼んできたら、そいつは単なる詐欺師なので(なぜなら連帯保証の債務額は分割できないので)、そいつを相手にしないか、または警察か弁護士に相談したほうが良いだろう。

根保証

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※ 検定教科書の範囲内。

詐欺などに悪用される危険な保証人の種類と言うと「連帯保証人」が有名であるが、他にも「根保証」(ねほしょう)というのも危険である。

もともとは、根保証(ねほしょう)とは、企業どうしの継続的な融資では、取引のたびに債務金額が増減したりするので、具体的な債務金額は決めずに、カネを貸したり借りたりするなどの契約である。

だが、この根保証を悪用した詐欺として、たとえば借り主が保証人には少額の借金額で安心させて、たとえば30万円の借金で「この借金の保証人になってほしい。」と言われて引き受けたら、じつは限度額が1000万円の根保証で、借り主が知人に保証人を引き受させた後に限度額まで借りて、そのまま逃げるというトラブルや詐欺が知られてる。

(※ たぶん範囲外:) 2020年度の民法改正により、個人の根保証契約では、契約の種類にかぎらず個人の根保証契約なら、必ず限度額を提示しなければならない義務が追加された(改正後の民法465条)。(それ以前からも2005年の民法改正で、金銭貸借や手形の割引などの一部の個人取引の保証では限度額の提示の義務があったが、2020年の開成のより、金銭貸借や手形に限らず、個人契約の全般に限度額の提示義務が拡張された。)
このような民法改正の背景として、上記のようなトラブルや詐欺があったからである。

範囲外: 借金以外の場合の保証人

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保証人には、借金の保証人以外にも、就職時の身元保証人とか、私立学校への進学時の保証人とかもある。上記の説明で学んだように、保証人は、その法的責任が重い。「私の保証人になってくれ」と頼んできた相手が信用できない相手の場合は、断ったほうが良いだろう。

特に、借金の連帯保証人には、まず、なってはいけない、と考えたほうが、安全だろう。保証相手がよほど信頼できる相手でないかぎり、借金の連帯保証人には、なってはいけない、と考えるのが安全だろう。

※ 検定教科書には「借金の連帯保証人になってはいけない」とまでは書かれてないが、しかし、世間一般の家庭では、そう教育するのが一般的だろうし、書店などで販売されてる保証人についての実用書などにも、そう説明されているだろう。

それでも、どうしても他人の借金などの保証人・連帯保証人にならないといけない場合、詐欺に気をつけた上で、じっくり契約書を読んで内容を理解してから、借金をする当人が信頼できる場合のみ、保証人・連帯保証人になるべきだろう。

保証人制度の用語や分析

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※ 検定教科書に書かれている内容。

保証人制度は、かならずしも借金だけの制度ではないが、借金で説明するのが分かりやすいので、当Wikibooks「経済活動と法」では用語説明などを、借金を例に説明する。

抗弁(こうべん)

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催告の抗弁権

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保証人のところに借金取りが来たとき、保証人が「まず、借金をした本人を探して、その本人に取り立ててください。」というふうに反論するなどして、借金取りに、借金をした本人を取り立てるように、カネを貸した側(借金取りや、その雇い主など)に請求することを、「催告の抗弁」(さいこく の こうべん)という。

また、このように、借金取り側は抗弁をされたら、借金をした本人から先に取り立てに行かなければならない、という保証人にとっての権利のことを催告の抗弁権(さいこく の こうべんけん)という。(民452)

しかし、連帯保証人には、催告の抗弁権が無い。(民454) ふつうの保証人には、催告の抗弁権がある。 連帯保証人には「催告の抗弁権」などの権利が無いので、実質的には、連帯保証人が借金をした本人とほぼ同等の法的責任を負っているのである。

検索の抗弁権

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また、ふつうの保証人の場合、かりに借金取りが財産を差し押さえようと強制執行する場合、まず、借金をした本人の財産から先に強制執行しなければならない。(民453)

※ 「差し押さえ」とは、国家権力によって、私人がその財物を許可なく処分できないように、その財物を国・公共機関の管理下に置くこと。
ここでいう借金取りによる差し押さえとは、債務者が返済の債務をまぬがれようとして、財産を回収できないような形で処分するのを防ぐために、裁判所などに債務者への強制執行をしてもらおうとすること。

ふつうの保証人の場合なら、借金をした本人の財産が強制執行されてないのに、保証人の財産が強制執行される事はなく、もし、そのような強制執行が行われても、これに抵抗できる。

このように、保証人の財産への強制執行よりも先に、まず先に借金をした本人の財産を強制執行せよ、と請求する権利を検索の抗弁権という。

しかし、連帯保証人には、この「検索の抗弁権」が無い。(民454) ふつうの保証人には、「検索の抗弁権」がある。

保証人の求償権

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ふつうの保証人の場合、保証人が代わりに借金の返済額を支払った場合でも、保証人はあとから借金をした本人に、保証人の支払ったぶんの支払え、と請求できる。

これを「保証人の求償権」(ほしょうにん の きゅうしょうけん)という。(民459〜462)

しかし、連帯保証人には、「保証人の求償権」が無い。(民454)

なお、保証人が代わりに借金の返済額を支払うことを弁済(べんさい)という。 つまり、先ほどの「保証人の求償権」の説明を「弁済」という言葉で言い換えると

ふつうの保証人の場合、保証人が代わりに弁済した場合、保証人はあとから借金をした本人に、保証人の弁済したぶんと同等の金額を支払え、と請求できる。

のようになる。


以上の3つの権利をまとめると、

ふつうの保証人には、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「保証人の求償権」がある。
しかし、連帯保証人には、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「保証人の求償権」が無い。

主たる債務者 (しゅたる さいむしゃ)

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借金の契約の場合、借金をした本人は、主たる債務者(しゅたる さいむしゃ) である。

なお「債務」(さいむ)とは、契約などの結果により、「○○しなければならない」と義務を負うことである。(要 確認)

一方、金を貸した側は、債権者(さいけんしゃ)である。債権(さいけん)とは、例えば「貸したカネの返還を、借りた側(債務者など)に請求してもよい」のように、契約などの結果により、相手方に義務をおわせてもいい権利である。(要 確認)

たとえば先ほどの「催告の抗弁権」について、「主たる債務者」「債権者」などの用語を用いて言い換えてみれば、次のようになる。

保証人のところに債権者(借金取りや、その雇い主など)からの請求が来たとき、保証人は、まず主たる債務者(借金をした本人)から先に取り立てるように、保証人が債権者に請求できる権利を「催告の抗弁権」(さいこく の こうべんけん)という。

のような説明になる。

保証債務

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保証人も、契約によって、いろいろな義務を負ったのであるから、保証人も債務を負ってる。

保証人制度における保証人の債務のように、主たる債務者の代わりにカネを払うかもしれない債務のことを保証債務(ほしょう さいむ)という。

そもそも「保証人」とは、民法第446条によると、民法第446条「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。」である。

そして「保証債務」とは、「主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任」のことである。(要 確認)

その他

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保証について

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保証人の資格

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保証人の資格として (1) 行為能力者であること、(2) 弁済の能力を持つこと、 が必要である。(民450)(※ 高校の範囲内。実教出版の教科書に記述あり。)

複数の連帯保証人のいる場合

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(※ 検定教科書の範囲内.)

ひとつの債務について、その債務の連帯保証人が複数いるとき、債権者(金貸しの側)は、どの連帯保証人にも、保証債務の全額を請求できる。なので、とにかく連帯保証人は、自己破産などをしないかぎり、債権者に弁済を要求されたら、保証額をいったん全額を払うハメになる。(ここまでは、すでに説明した通り。)で、複数の連帯保証人がいる場合、連帯保証人どうしでは保証額を分担するように請求できる。(※ 検定教科書の範囲内。 東京法令出版の教科書に解説あり。)

たとえば、Aが300万円の借金をして、Aの連帯保証人としてBとCとDの3人が連帯保証人なっているとする。 債権者は、BとCとDの誰に対しても、300万円を請求できる。

で、とりあえず債権者がBに300万円を請求して、その結果、Bが300万円を払ったとしよう。

すると、Bは100万円のCとDに求償を請求できる。(300万円÷3人=100万円/人 なので、他の連帯保証人1人あたり100万円を請求できる)

※ とはいえ、もし詐欺の場合だと、たとえばCとDに財産が無かったりして、仮に強制執行によって財産の「差し押さえ」しようにも、そもそも「差し押さえ」できるほどの財産が無かったりする。たとえば、もしBが債権者に保証額を請求されたので、とりあえず債権者に保証額を支払って、CとDに分担してもらおうと弁護士に相談して、弁護士にBとCの職業を調べてもらったら、なんとBとCはホームレスで無職の老人だったりしたら? どうやって何を「差し押さえ」するんですか?


保証契約は書面で

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保証契約は、書面でしなければならない。(民446の2)(※ 高校の範囲外)この保証契約を書面で行う規定は、2004年(平成16年)の民法改正による。電子メールなどの電磁的記録で保証契約がされた場合、その保証契約は有効である。(民446の3)(※ 参考文献: 有斐閣『債権 エッセンシャル民法*3』、永田眞三郎ほか、2010年初版、84ページ)

商取引の保証は連帯保証

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商取引における保証については、「連帯保証にする」などの特約がなくとも、連帯保証になる。(商511の2) (※ 検定教科書の範囲。実教出版の教科書に記述あり。)(※ 参考文献: 自由国民社『保証・連帯保証のトラブルを解決するなら、この1冊』、石原豊昭、第2版、70ページ) 正確に言うと、主たる債務者の債務が商取引から生じたものである場合、法律上当然に連帯保証と見なされる。(商511の2)(※ 検定教科書では、こういう言い回し(「主たる債務者の債務が〜(以下略)」)で説明している。)


連帯債務について

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夫婦の一方が日常の買い物(たとえば、日常の食料品を買う、など)として行った債務(その食料品の代金を払う、など)は、その夫婦の連帯債務になる。(民761) (※ 実教出版の教科書では、発展項目として家族法(民法内にある)について習う単元がある。その単元で、夫婦の日常の買い物の連帯債務についても書いてある。)