高等学校商業 経済活動と法/債権・債務が消滅する特別な場合

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弁済[編集]

借金を返済するなどのように、債務者が債務を履行すれば、その契約の債権・債務は消滅する。 ある契約の債権・債務を消失させるために、本来の債務を履行する行為のことを弁済(べんさい)という。

債権・債務は、通常は弁済によって消滅するが、次のような場合にも消滅する。


供託[編集]

債務者が弁済しようにも、債権者が弁済の受領を拒んで弁済できない場合、債務者は弁済の目的物を供託所に預けることで、債務を免れることができる。これを供託(きょうたく)という。(民494)

供託所のある場所は、法務局、地方法務局またはその支局などである。

相殺[編集]

たとえばAがBに100万円の借金をしてるが、同時期にBもAに70万円の借金をしてるなら、それを差し引きして、なるべくお互いの債務の金額を減らすのが相殺(そうさい)である。

このAとBの相殺の場合、最終的に、AがBに30万円の借金をするのが残り、BはAに0円の借金になる。

このように、同種の債権を持っている2人が、その債権を打ち消しあうことで、債務をお互いに減らすことが相殺である。(民505)


代物弁済[編集]

代物弁済とは、たとえば、50万円の借金のある債務者が借金そのものを金銭で返すのではなく、かわりに債務者が保有する自動車1台を債権者に提供することで債務を消滅させるような事が、代物弁済(だいぶつ べんさい)であり、これは合法である。(※ 借金の金額は、実教出版の教科書を参考にした。)

債権者の合意のもと、債務者が、借金を弁済するために、価格が同等の実物を債権者に引き渡すことで債務を消滅させることを代物弁済(だいぶつ べんさい)という。(民482)

更改(こうかい)[編集]

たとえば、50万円の債務がある場合、50万円の借金を弁済するかわりに、自動車1台を引き渡すという債務に置き換えることが、更改(こうかい)である。旧債務を、新債務に置き換えることが、更改(こうかい)である。(民513)

免除[編集]

たとえば100万円の債権がある場合、債権者が一方的に債権を放棄して、債務者の債務(100万円を返す)が無くなることが免除(めんじょ)である。

債権者が債務者に対して、債務を消滅させる意思を表示することが免除である。(民519)

混同[編集]

父から借金をしていた子が、父が死ぬと相続によって、債権者と債務者が同一人物になる。このような場合、債権・債務を残しておくのは無駄なので、債権・債務が消滅する。

債権者と債務者が同一人物の場合、債権と債務が消滅するのであるが、これらのことを混同(こんどう)という。(民520)