高等学校商業 経済活動と法/特殊な不法行為

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

責任無能力者が加害者の場合[編集]

判断能力がいちじるしく低いと見なされる年齢の未成年者や、そのように判断能力のひくい精神障害者などは、責任能力が無いとみなされるのが、かわりに監督義務者が責任を負う場合がある。(民712〜714)

つまり親権者や、後見人、精神科の院長などが、それなりの責任を負うことになる。


共同不法行為[編集]

数人の者が共同で不法行為をした場合、直接的に相手に損害を発生させた人物だけが損害賠償をするのではなく、共同で不法行為をした者もまた、それぞれ連帯して損害賠償の責任を負う。

使用者責任[編集]

運送会社のトラックが不注意運転により事故を起こして第三者に損害を発生させた場合、事故を起こした運転手が賠償責任を負うのは当然として、会社も賠償責任を負う。

このように、会社にも責任を追求することを使用者責任という。なお「使用者」とは、会社のこと。

いっぽう、従業員のことは、法文上は「被用者」(ひようしゃ)という。

従業員が、その会社の仕事の一貫としての作業中に、第三者に損害を発生させた場合、会社は使用者責任によって、原則として会社も損害賠償の責任を負う。(民715)

より厳密に「使用者責任」について言うと、たとえば・・・

被用者(従業員)が、使用者の事業の執行により(つまり、会社の仕事中の作業により)、第三者に損害を発生させた場合、使用者責任によって、原則として使用者(会社)も損害賠償の責任を負う。

・・・のようになる。

ただし、使用者が相当の注意(監督など)をしていた場合、使用者の責任が免れる事もある。(民715但書)

※ このような但し書き(ただしがき)があるので、完全には無過失責任ではなく、中間責任である。(※ 参考文献: 川井健『民法入門』、有斐閣、第7版、368ページ)

※ なお「但し書き」(ただしがき)は、法律書では「但書」のように送り仮名を省略されて表記される場合も多い。法学書だけでなく、医学書や理工書などでも、関連する法律(たとえば医学書なら医師法など)の条文に但書のある場合には「但書」と省略されて理科系の学術書でも記載されている場合も多いので、高校生のうちに「但書」という表記も知っておこう。
「但し書き」と送り仮名つきで書いてしまうと、文脈によっては接続詞「ただし」と紛らわしいからか、専門書などでは「但書」と書く場合も多い。本wikiではカギ括弧(「」)をつけて区別しやすくしているが、実際の法学書などの書籍にはカギ括弧はなく、そのまま但書と文中に書かれているので、もし接続詞「ただし」(但し)との誤解をまねく恐れもあるからだろう。


工作物責任[編集]

たとえば、歩道のわきにある民家の塀(へい)が崩れかかっていたのを住人が放置していて、ついに塀がくずれてしまい、そのとき近くにいた通行人がケガをした場合、その塀の管理者(通常は家の所有者、あるいは住人)が、ケガをした通行人に損害賠償をすることになる。このような責任を工作物責任という。(民717)

ある土地にある建物や塀などを、「土地の工作物」という。

※ なお、法文上は、工作物責任を負うのは原則として、その「占有者」(住人)であるが、しかし借家の工作物では所有者(家主など)でないと修理できない場合などもあるので、当Wikibooksでは「管理者」と記述した。民法717条でも、但し書きにより、所有者に落ち度がある場合には、所有者の責任追求も認めている。

まとめると、たとえば・・・

建物や塀などの土地の工作物の適切な管理(修理など)を怠っていたために事故が起きて、第三者に損害を発生させた場合、その工作物の管理者が、賠償責任を負う。

・・・のようになる。

動物占有者の責任[編集]

飼い犬が、通行人をかんで、ケガをさせたという場合、その犬を占有してた飼い主に「動物占有者の責任」が問われ、占有者(普通は飼い主)は被害者(ケガした通行人)に損害賠償をしなければならない。

その動物の所有者の責任ではない。占有者の責任である。

※ つまり、動物を預かることは、けっこう責任が重い。

自動車の運行者の責任[編集]

「自動車損害賠償保障法」(自賠法、読み:じばいほう)という特別法がある。この法律により、原則として、人身事故(じんしんじこ)の場合では、自動車の運転者の側が賠償責任を負う。

※ なお世間一般に「人身事故」とは、運転してる自動車や電車などの交通事故によって、その自動車や電車などに轢かれた(ひかれた)通行人などがケガをしたり死亡したりする事故のさせること。

なお、賠償責任の例外として、法律上では、もし通行人に落ち度がある場合が立証されれば、その自動車側の責任が軽くなる。しかし、その(通行人側に落ち度があるという)立証がむずかしいのが実情である。よって、事実上は、自動車の側の、ほぼ無過失責任である。

自動車損害賠償保障法により、自動車の運行者が損害賠償を免れるには、次の3つの義務の証明が必要である。

1 自己および運転者が自動車の運行に関して注意を怠らなかったこと。
2 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと。
3 自動車に構造上の欠陥または機能の障害が無かったこと。(自賠3)

としている。

製造物責任法[編集]

(※ 調査中。記述を募集中。)

出版による名誉毀損[編集]

ある出版社Aが書籍である人物Xを批判して、その批判の内容がXの名誉を不当に傷つけるならば、Xは出版社Aに対して損害賠償を請求できる。 また、Xはその出版社Aの代表取締役Bに対して損害賠償を請求してもよい。

損害賠償のほか、謝罪広告の掲載を請求する事もできる。

なお、刑法も名誉毀損(めいよ きそん)を犯罪としている。

国家賠償責任[編集]

国または地方公共団体または公務員が、職務としての行動により、故意または過失によって、違法に他人に損害を与えた場合は、その国または地方公共団体が賠償の責任を負う。(国家賠償法1)

※ 国や地方公共団体は民間人ではないが、国家賠償法では、民法の損害賠償の考え方を受けているような内容が、いくつか、ある。

不法原因給付[編集]

賭博(とばく)に負けて掛け金(かけきん)を払った者が、買った者に掛け金の返還を求めるために損害賠償請求などをしようとしても、賭博は違法であるため、法律は賭博の掛け金の返還請求を救済しない。

このように、違法または公序良俗に著しく反する事については、法律は損害賠償を認めない。 賭博で負けてカネを払うように、違法な行為にもとづいて金銭や物などを他人に渡すことを「不法原因給付」という。法律は、不法原因給付した物の返還を救済しない。(民708)

ただし、高利貸しが違法な高金利を取ったりする場合は、法律の限度を越えたぶんの過払い金額などは返還請求できるだろう。(※ 参考文献: 野村豊弘『民事法入門』、有斐閣、第6版、135ページ)


不当利得[編集]

(※ 調査中。記述を募集中。)