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高等学校国語総合/漢文/早発白帝城

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

早(つと)に白帝城(はくていじょう)を発す(はっす)

李白(りはく)

事前の解説

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川下りの速さを歌っている歌である。

なので、後述する第二句の「千里(せんり)の江陵(こうりょう) 一日(いちじつ)にして還る(かえる)」が、特に重要。

本文

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漢文『早発白帝城』

書き下し文

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朝(あした)に辞す(じす) 白帝(はくてい)彩雲(さいうん)の間(かん)
千里(せんり)の江陵(こうりょう) 一日(いちじつ)にして還る(かえる)
両岸(りょうがん)の猿声(えんせい) 啼いて(ないて)住まざる(やまざる)に
軽舟(けいしゅう)已に(すでに)過ぐ(すぐ) 万重(ばんちょう)の山(やま)


形式

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七言絶句

現代語訳

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タイトル: 朝早く、白帝城(はくていじょう)を発つ(たつ)
朝早くに、美しくあざやかな雲のたなびく中、白帝城をあとに(辞去)した。
千里の彼方(かなた)にある江陵(こうりょう)まで、(激流の川下りで)一日で帰ってきた。
両岸で鳴く猿の声が、まだ鳴きやまないうちに(=まだ、耳に残っているうちに)、
(船足が速くて)軽快な小舟は、いくつもの連なった山々を、すでに通過してしまった。

対比

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文章から確実に分かる対比は、

  • 「千里」と「一日」の対比。しかも、それによって、川の激流の速さを強調している。(※ 算数で、「距離」÷「時間」は「速さ」だったのを思い出そう)
  • 「白帝」と「彩雲」との対比。「白帝」の「白」の名から、白色を連想するだろう。それと、「彩雲」から連想するだろう、朝焼けの赤や、微妙に混じった青などの色とを対比させている。
  • 「軽舟」が、いくつもの山を(「万重」(ばんじゅう)の山)を、通り過ぎてしまったという、「軽」と「重」との対比さえもある。

などの対比だろう。


なお、「万重」(ばんじゅう)の「山」については、「山」とは言ってるが、おそらく崖(がけ)が含まれている。なぜなら、「両岸」というふうに「岸」と言ってたり、また地理的な背景から、おそらくは崖(がけ)である可能性が高い。
おそらく作者の意図は、崖の険しさを表現することで、川下りの難所であることを表現し、それにも関わらず、そこをあっという間に舟が通過したということを説明することで、舟の軽快さを表現しているのだろう。

押韻

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「間」(かん)、「還」(かん)、「山」(さん)で、韻を踏んでいる。

語釈

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辞 - 辞去する。辞去とは、別れの挨拶をつげること。辞去と似た意味で「いとまごい」ともいう。
白帝(はくてい) - 後漢の公孫述(こうそんじゅつ、(人名))のこと。
白帝城(はくていじょう) - 今でいう重慶市の東にある、古城(こじょう)。後漢の公孫述(こうそんじゅつ)が、四川省のあたりに築いた。長江(ちょうこう)に近い。
彩雲(さいうん) - 色鮮やかな雲のことだが、この文の状況から考えて、ここでは朝日による「朝焼け雲」(あさやけぐも)のことだろう。
千里(せんり) - 当時の一里は、約 五六○ メートル。ここでいう「千里」は、おそらく、長い距離を表す比喩であり、実際の距離ではないだろう、と考えられている。
江陵(こうりょう) - 現在でいう湖北省(こほくしょう)荊州市(けいしゅうし)。長江ぞいの町。