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高等学校国語総合/漢文/管鮑之交

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

管鮑(かんぽう)の交わり(まじわり)

原文

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管仲字夷吾。嘗与㆓鮑叔㆒賈、分㆑利多自
与。鮑叔不㆓以為㆒㆑貪。知㆓仲貪㆒也。嘗謀㆑事窮
困。鮑叔不㆓以為㆒㆑愚。知㆔時有㆓利不利㆒也。嘗
三戦三走。鮑叔不㆓以為㆒㆑怯。知㆔仲有㆓老母㆒
也。仲日生㆑「我者父母、知㆑我者鮑子也。」
桓公九㆓合諸侯㆒、一匡天下、皆㆓仲之謀㆒。
一則仲父、二則仲父。

出典は『十八史略』。

書き下し文

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管仲(かんちゅう)字(あざな)は夷吾(いご)。 嘗て(かつて)鮑叔(ほうしゅく)と賈す(こす)。利(り)を分かつ(わかつ)に多く(おほく)自らに(みづからに)与ふ(あたふ)。鮑叔(ほうしゅく)以つて(もつて)貪(たん)と為さず。 仲(ちゆう)の貧しき(ひんしき)を知れば(しれば)なり。 嘗て(かつて)事(こと)を謀りて(はかりて)窮困(きゅうこん)す。鮑叔(ほうしゅく)以つて(もつて)愚(ぐ)と為さず(なさず)。時に(ときに)利(り)と不利(ふり)と有る(ある)を知ればなり。嘗て(かつて)三たび(みたび)戦ひて(たたかひて)三たび(みたび)走る(はしる)。鮑叔(ほうしゅく)以つて(もつて)怯(けふ)と為さず(なさず)。仲(ちゅう)に老母有るを知ればなり。仲(ちゅう)曰はく(いはく)、「我(われ)を生む(うむ)者(もの)は父母(ふぼ)、我を知る(しる)者(もの)は鮑子(ほうし)なり。」と。 

桓公(かんこう)諸侯(しょこう)を九-合(きゅうごう)し、天下を一-匡(いっきょう)せしは、皆(みな)仲(ちゅう)の謀なり(はかごとなり)。一にも則ち(すなわち)仲父(ちゅうほ)、二にも則ち(すなわち)仲父といへり。

現代語訳

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管仲(かんちゅう)という人物がいた、字(あざな)は夷吾(いご)という。 以前、鮑叔(ほうしゅく)と一緒に商売をしていたことがある。 管仲(かんちゅう)は分け前を、自分に多く、取っていた。 (しかし、)鮑叔(ほうしゅく)は、このことで管仲(かんちゅう)を欲張りとは思わなかった。 なぜなら、管仲(かんちゅう)が、貧乏なことを知っていたからである。

以前に(管仲は)、何度か(商売の)事業を立ち上げて、(その事業はすべて失敗して)かえって貧乏になってしまった。 鮑叔(ほうしゅく)は、(管仲を)愚かだとは思わなかった。 時勢(じせい)によって、ものごとが上手く行く時もあるし、上手く行かないときもあることを知っていたからである。

以前に(管仲は)、何度か戦いにでて、その度ごとに逃げた。 鮑叔(ほうしゅく)は、(管仲を)臆病だとは思わなかった。 管仲には、(彼が面倒を見なければならない)老いた母がいたことを知っていたからである。

(そんな鮑叔のことについて、)管仲は言った、「私を生んだのは父母であるが、私を理解してくれるのは鮑君である。」

桓公が天下の諸侯を何度も集合し、天下の乱れを正して統一させたのはすべて管仲の計略によったものである。(だから、)桓公は1にも2にも(管仲のことを)仲父と呼んだ。

語釈

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  • 管仲(かんちゅう) - のちに斉の宰相になる。
  • 鮑叔(ほうしゅく) - のちに斉の重臣になる。
  • 賈 - 商売する。店を構えて商売する。いっぽう、これに対して、「商」は「行商」の意味。
  • 貪(たん) - 欲張り。貪欲。「たん」と読む。
  • 走 - 逃げる。
  • 怯(きょう) - 卑怯(ひきょう)。臆病(おくびょう)。
  • 三 - 回数が多いことを表す場合に、漢文でよく用いられる比喩的な表現。実際の回数とは、限らない。
  • 知 - 理解する。分かる。
  • 字(あざな) - 古代・中世の中国で、男子の成人のさい、本名の他に付ける別名。
  • 鮑子(ほうし) - 鮑叔(ほうしゅく)のこと。「子」は敬称。
  • 九合 ー 一つに集めまとめる。「九」は「糾」に通じる。
  • 一匡 ー 乱を治めて、天下を統一する。「匡」は、正す。
  • 仲父 - 読みは「ちゅうほ」。管仲を父と同様に尊敬した呼び方。


表現

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  • 嘗て(かつて) - 以前に。過去のことについて説明するときの表現。
  • 与(と) - 「与」は原文中にある語句。「与 A 」で「Aと一緒に」の意味。書き下し文では「と」と訓読する。
  • 不以為貪 - 「A以B為C」で「AがBをCだと思う」の意味。「A以為C」はBを省略した形である。「鮑叔不以為貪」は「鮑叔不以管仲為貪」の省略形。貪欲かどうかが、この文の話題になってる相手は管仲であり、鮑叔ではない。「不」があるので否定形であり、最終的に「鮑叔不以為貪」は「鮑叔が管仲を貪欲だとは評価しない。」の意味。

似た熟語

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「刎頸の交わり」(ふんけい の まじわり)が、よく例として挙げられる。

この他にも、「知音」、「水魚の交わり」(三国志)、「竹馬の友」(晋書)など、似た意味の語は多い。