高等学校地理B/地誌 ヨーロッパ
EUの共通農業政策
[編集]予備知識として、まず、EU域内の農産物の移動には、関税が掛からない、ということを知っておこう。
さて、EU域内で食料を自給しようという目的で、つぎの共通農業政策が1960年代から実施された(当時は「EU」でなく「EC」などだが、細かいことは気にしなくてよい)。
共通農業政策の内容は、EU域内で農産物にごとに統一価格を定め、生産性の低い国にあわせて、市場価格よりも高い価格で買い取ることである。つまり、市場価格よりも高い値段でしか生産できない農家からEUが農産物を買い取る場合に、市場価格との差額がEU財政の負担になる。
アメリカなど域外からの安い農産物の輸入については、域内価額との差額を課徴金(かちょうきん)として取ることで、EU域内の農家を保護する。
また、EU域外に輸出するときは、国際市場価格との差額を農家に補助金として与えて価格を下げさせる。
この共通農業政策はEU域内の農家に有利なので、結果的にEU内の農家の生産意欲が上がり、生産量も上がった。だが、EU財政の負担になったので、小麦など一部の農産物で買い取り価格の低下をしたり、生産調整をしたりなども起きている。
気候と農業
[編集]ヨーロッパ州はユーラシア大陸の西の端にある。 ヨーロッパの西の大西洋にある、暖流の北大西洋海流(きた たいせいよう かいりゅう)から、ヨーロッパに温かい風が来るという 偏西風(へんせいふう) という現象により、ヨーロッパ北部は緯度のわりに温暖である。また、偏西風が水分をふくんでいるので、雨も多く、水不足にはなりにくい。このような気候を西岸海洋性気候(せいがん かいようせい きこう)という。
ヨーロッパ南部にはアルプス山脈があり、南部は山がちである。南部からヨーロッパ北部に向かうに連れて、すずしくなってくる。
- 地中海式農業
アルプス山脈の南側の、ヨーロッパ南部の地中海沿岸の気候は、夏は暑く雨が少なく乾燥しており、冬は雨が多く温暖である。地中海式農業(ちちゅうかいしき のうぎょう)と呼ばれる農業が行われており、夏にはぶどう や オリーブやオレンジ類などが乾燥に強いので栽培されており、冬には小麦が栽培されている。羊や山羊などの放牧による飼育もおこなわれている。
イタリアでスパゲティなどのパスタ料理が有名なのも、これらの農産物を活かした料理である。パスタには小麦が使われている。オリーブオイルなどが調味料に使われたりしている。
- ヨーロッパ北部の混合農業
北西部や東部では、小麦やライ麦などの穀物の栽培と、豚や牛などの飼育と、トウモロコシやジャガイモなどの飼料作物、根菜(かぶ、てんさい)の栽培などが、組み合わされて行われている。このような農業と家畜の飼育を組み合わせた農業を混合農業(こんごう のうぎょう)と言い、ヨーロッパ州の北部で、このような混合農業がさかんである。
- 酪農
イギリスやデンマークやオランダなどの北海・バルト海沿岸のヨーロッパ北部や、スイスなどのアルプス山脈の地帯は、冷涼であるので、あまり穀物の栽培には向かないので、かわりに酪農(らくのう)がさかんである。
農業の歴史
[編集]中世の農業
[編集]- 予備知識: 連作障害と畑作、稲作
一般に、畑作では地力が低下しやすい。このため、毎年、畑で同じ作物を栽培しつづけると、生産量が低下する。いわゆる連作障害である。なので、1年ごとなどに作物を変える輪作(りんさく)をしたり、あるいは定期的に休閑(きゅうかん)させることが必要である。なお米をつくる稲作は、連作障害に強い。
ヨーロッパは、気候的に、あまり稲作には向かない地域である。稲作には、高温多湿な季節があって、降水量が多いことが必要だが、ヨーロッパは、その条件を満たしていない。
地中海付近は高温だが、降水量が少ない。いっぽう、ヨーロッパ北部などは降水量はあるが、気温が低い。
- 中世ヨーロッパの農業
中世のヨーロッパ北西部では、三圃式農業(さんぽしき のうぎょう)が行われた。これは、地力の低下をふせぐために、耕地を3つに区分して、夏作物(大麦、えんばく)の耕地、冬作物の耕地、休閑地(きゅうかんち)として、1年ごとにローテーションさせることで輪作(りんさく)する栽培する方法である。
休閑地には、地力回復の効果のあるクローバーを植えることもあった。
なお、古代のヨーロッパでは、耕地を2つに区分して、耕地と休閑地とをローテーションさせることで輪作(りんさく)する二圃式農業(にほしき のうぎょう)が行われた。地中海沿岸では、中世にも二圃式農業が行われた。
なお現在のヨーロッパで主流である混合農業は、三圃式農業が発展したものである。 、混合農業はたとえば耕地を4つに区分して、夏作物、牧草、冬作物、根菜(かぶ、てんさい)を栽培し、さらに豚や肉牛などの家畜の飼育を合わせたようなものである。
また、家畜の排泄物を肥料として利用する。
園芸農業
[編集]都市近郊の農業では、都市近郊では地価が高く、また現金が必要なので、販売価格の高い作物である野菜や花卉(かき)などの園芸作物の栽培が盛んになったが、このような園芸作物の農業を園芸農業(えんげい のうぎょう)という。
近年では交通機関の発達により、都市から離れた地域でも園芸農業が行われているが、これを輸送園芸(ゆそう えんげい)という。
現代の農業のまとめ
[編集]現代のヨーロッパで行われてる農業は、
- 混合農業
- 園芸農業
- 酪農
- 地中海式農業
である。
三圃式農業は中世の農業であり、現代の主流ではない。
その他
[編集]ヨーロッパ北部のノルウェーなどの海岸ぞいのギザギザした地形は氷河によって削り取られた地形である。このようなギザギザした地形をフィヨルドと言う。ノルウェーでは、この地形を活かし、漁業などの水産業がさかんである。
ヨーロッパには40カ国以上の国がある。国の多くは、国土の面積が、日本よりも小さい国が多い。
ヨーロッパの言語、民族、宗教の分けかた
[編集]言語
[編集]ヨーロッパの言語は、およそ3種に分類される。ヨーロッパ北西部の英語やドイツ語などのゲルマン語派と、南部のフランス語やイタリア語などのラテン語派と、東部のロシア語やチェコ語などのスラブ語派の3つの系統である。
- ラテン語派
南部が中心。イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語
- ゲルマン語派
北西部が中心。イギリス語、ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語
- スラブ語派
東部が中心。ポーランド語、チェコ語
ゲルマン語派、ラテン語派、スラブ語派ともにインド・ヨーロッパ語族である。
なおフィンランド語、ハンガリー語はウラル語族。
スイスでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を公用語として定めている。
ベルギーでは、ワロン語とフラマン語がある。
民族
[編集]ヨーロッパの民族も、とても多くあるが、おおまかにはゲルマン民族、ラテン民族、スラブ民族の3つに分けることが出来る。
宗教
[編集]ヨーロッパではキリスト教が中心に信仰されている。キリスト教の宗派は、おおまかに3つの宗派に分かれる。古代からの教えを重んじるカトリックと、近世以降に宗教を改革したプロテスタントと、ルーマニアなどヨーロッパ東部でさかんな東方正教(とうほう せいきょう)である。
カトリックはイタリアなど南部のラテン系の国家でさかん。 プロテスタントはイギリスを中心にさかん。
東方正教は、ヨーロッパ東部に多い。
このほか、アルバニア、ボスニア、コソボなどヨーロッパ南東部でイスラム教も信仰されている。
このほか、20世紀後半から、西アジアなどイスラム圏からの移民を受けいれたため、ヨーロッパ各国でイスラム教徒が増えている。
- バチカン市国
イタリアの首都ローマの中にある国であり、世界最小の国であり、独立国でもある。ローマ教皇(ローマきょうこう)が住んでいる国である。キリスト教のカトリック宗派の中心地になっている。
ヨーロッパ連合
[編集]1948年 | ベネルクス関税同盟が発足。 |
1952年 | ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足。 ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)が発足。 |
1958年 | ヨーロッパ経済共同体(EEC)が発足。 |
1967年 | ヨーロッパ共同体(EC)が発足。 |
1973年 | イギリス、アイルランド、デンマークが加盟。 |
1981年 | ギリシャが加盟。 |
1986年 | スペイン、ポルトガルが加盟。 |
1987年 | 単一欧州議定書。 |
1993年 | ヨーロッパ連合(EU)が発足。 ヨーロッパ単一市場が発足。 |
1995年 | スウェーデン、フィンランド、オーストリアの加盟。 |
1999年 | 通貨ユーロを通貨の計算単位として導入。 |
2002年 | ユーロ紙幣・硬貨の流通開始。 |
2004年 | EU拡大、加盟国25ヶ国に。 |
2007年 | EU拡大、加盟国27ヶ国に。 |
2013年 | クロアチアが加盟。 |
ヨーロッパ連合とは、ヨーロッパでの経済の統合など、ヨーロッパの国どうしで協力しあっている国家どうしの連合である。ヨーロッパ連合のことを EU(イーユー) という。
EUの本部はベルギーの首都ブリュッセルにある。
もともとは第二次大戦後に、ヨーロッパの資源の共同管理をすることで、資源をめぐる戦争をなくそうという平和目的として1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC,イーシーエスシー、European Coal and Steel Community)の設立が、戦争であらそったドイツとフランスを中心に設立された。結果的にドイツ・フランスにイタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクを加えた6カ国で1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立された。
似たような国際機関で、1958年にはヨーロッパどうしの経済協力を目的にヨーロッパ経済共同体(EEC イーイーシー、European Economic Community)が設立した。また1958年に原子力の共同管理のためのヨーロッパ原子力共同体(EURATOM 、 ユーラトム European Atomic Energy Community)が設立された。
このECSCとEECとEURATOMの3つが統合して、1967年にEC(ヨーロッパ共同体 European Community)が設立された。
ECの原加盟国はフランス、西ドイツ、イタリア、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の6カ国である。
その後、ECは加盟国が増えていった。
1992年のマーストリヒト条約で、経済協力だけでなく政治統合に向けても協力しあうことが合意された。オランダのマーストリヒトで調印されたので、マーストリヒト条約という。
1993年にはECからEU(ヨーロッパ連合、European Union)に発展した。
ECが市場の統合を目指していたのにくらべ、EUはさらに通貨の統合や外交政策の共通化など、より踏み込んだ目標を目指している。
2002年からEUの共通通貨のユーロ(Euro)が加盟国の多くで使われている。このため、それまで加盟国にあった通貨(たとえばドイツのマルク通貨やフランスのフラン通貨など)は回収された。
EUの政策
[編集]シェンゲン協定
[編集]EU域内で国境管理を廃止して、通行を自由化するシェンゲン協定(Schengen Agreement)が1995年に発効し、現在も実施されてる。このためEU域内では、パスポートなしで国境を通過できる。この協定は、ルクセンブルクのシェンゲンで調印された。
ただし、イギリス・アイルランドは、シェンゲン協定を実施していない。(北アイルランド問題などが理由だろう。)
また、EU非加盟であるスイス・ノルウェーはシェンゲン協定を実施している。
EUの機関
[編集]フランスのストラスブールにヨーロッパ議会。
ベルギーのブリュッセルにEU本部に相当するヨーロッパ理事会およびヨーロッパ委員会。
ルクセンブルクにEU裁判所。
ドイツのフランクフルトにヨーロッパ中央銀行(ECB)。
近年の加盟国
[編集]2000年〜2010年ごろ、旧ソ連圏の東欧諸国などがEUに加盟した。
- 2004年にポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニアが加盟。さらに、エストニア、ラトビア、リトアニアといったバルト3国がEUに加盟。
- 2007年にルーマニアとブルガリアがEUに加盟。
- 2013年にクロアチアがEUに加盟。
なお、近年、財政危機が言われているギリシアが加盟した年は1981年である。
またなお、トルコはEUに未加盟である。
財政問題
[編集]2010年ごろ、ギリシャの財政赤字によるギリシャ財政危機や、スペインの財政不安などが発生し、その結果、ユーロが急落し、財政の健全な他の加盟国も影響を受け、EUの金融政策にも弱点があることが明らかになった。
一方で、ユーロの下落により、EU諸国の輸出産業には有利に働いたという側面もある。
民族問題
[編集]北アイルランド問題
[編集]イギリスに属する北アイルランドでは、多数派のイギリス系住民(宗教はプロテスタント)と、少数派のケルト系住民(宗教はカトリック)が対立している。少数派のケルト系住民はアイルランドへの帰属を主張している。
政治や経済ではイギリス系住民が優位に立っている。
1998年に和平合意ができ、解決に向かっている。
- 予備知識
そもそもイギリス(グレートブリテンおよび北部アイルランド連合)とは、イングランド王国が、ウェールズ王国・スコットランド王国・北部アイルランドを併合して出来た国である。
旧ユーゴスラビア問題
[編集]1945年〜1946年に結成された旧ユーゴスラビアは、社会主義で、多民族国家で、6つの共和国からなる連邦国家であった。
セルビア、クロアチア、ボスニア=ヘルツェゴビナ、スロベニア、マケドニア、モンテネグロの6ヶ国からなる。
冷戦の終結時、民族運動が高まり、そして1991年にスロベニアとクロアチアが独立した。その後、ボスニア=ヘルツェゴビナやモンテネグロも独立。
宗教は、ギリシャ正教、カトリック、イスラム教が混在している。ボスニアにはイスラム教徒が多い。
各国の独立のさい、各国内で、民族対立や宗教対立が起きた。 ボスニア=ヘルツェゴビナでは民族・宗教対立から内戦になった。
またセルビアでは、2008年にコソボが独立を宣言したが、セルビア政府はこれを認めていない。
- 旧ユーゴスラビアについて
旧ユーゴスラビアは指導者チトーによって率いられていた国で、「7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国」と言われた。
- 7つの隣国とは、イタリア、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、アルバニアのこと。
- 6つの共和国とは、セルビア、クロアチア、ボスニア=ヘルツェゴビナ、スロベニア、マケドニア、モンテネグロの6ヶ国のこと。
- 5つの民族とは、セルビア人、クロアチア人、スロベニア人、マケドニア人、モンテネグロ人。
- 4つの言語とは、セルビア語、クロアチア語、スロベニア語、マケドニア語。
- 3つの宗教とはギリシャ正教(正教会)、カトリック、イスラム教。(プロテスタントは無い。)
- 2つの文字とはラテン文字(ローマ字)、キリル文字(ロシア文字)。
交通や物流など
[編集]イギリスとフランスとのあいだのドーバー海峡(ドーバーかいきょう)の海底に、海底トンネルのユーロトンネルがある。 1994年にユーロトンネルが開通した。
また、そのユーロトンネルをつかった高速鉄道のユーロスターが、ロンドン〜パリ間を走る。
工業
[編集]工業地帯の立地
[編集]産業革命のころ、製鉄や蒸気機関などの燃料には、石炭を用いていた。
このため、炭田のちかくに工業地帯が作られていった。
しかし、第二次大戦後、石炭から石油にエネルギー資源が変化したこともあり(エネルギー革命)、炭鉱・炭田のちかくに立地する必要性がうすれたこともあり、むしろ沿岸部のほうが外国からの石油の輸入に便利なので、第二次大戦後は沿岸部に工業地帯があたらしく作られた。(例:イギリスのカーディフ フランスのダンケルク)
また、都市部の周辺に、電気機械などの工業地帯が作られるようになった。
なお、ヨーロッパのかつての炭鉱などは閉鎖され、一部は観光施設などとして活用されている。
世界での工業力の移り変わり
[編集]フランスでは、航空機の産業が有力である。
産業革命がヨーロッパのイギリスやフランスを中心にして起きた。古くからヨーロッパで近代工業が起こったことにより、ヨーロッパでは工業がイギリス、フランス、ドイツなどを発達した。 今でこそ中国が(一昔前は日本が)「世界の工場」と言われているが、元はイギリスが「世界の工場」と言われていた。
現在でも、イギリス、フランス、ドイツなどの工業の技術力も高い。
第2次大戦後はアメリカや日本の工業が発達してきたので、ヨーロッパの国々は日米に対抗するため、ヨーロッパの企業どうしで協力しあっていることが多い。
たとえば航空機の生産では、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ベルギーの企業が、航空機の部品を分担して共同生産をしている。 EUの4カ国(フランス、ドイツ、イギリス、スペイン)が出資したエアバス社により、各国で部品を作り、最終組み立て工場のラインがあるフランスのトゥールーズで組み立てている。
ヨーロッパ州は工業が古くから発達したことで、大気汚染などの公害や環境問題などにも直面した過去があり、そのため公害などへの規制がきびしい。人々の環境問題への意識も高く、リサイクルも普及している。また、太陽光発電や風力発電などの普及にヨーロッパ諸国は積極的である。
東ヨーロッパの工業
[編集]東ヨーロッパは、工業がおくれており、賃金も安い。そのため、外国の企業が安い賃金の労働力を求めて、工場などを進出させている。日本の企業の工場やアメリカの企業の工場も、東ヨーロッパのチェコやポーランドやハンガリーに進出している。
どのあたりを東ヨーロッパというかは、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアなどが東ヨーロッパである。
チェコとポーランドとハンガリーの3カ国で工業がさかんである。とくにチェコは昔からの工業国である。冷戦中はソビエト連邦の主導する社会主義の陣営にチェコやポーランドやハンガリーなどは組み込まれたが、その中でもチェコは工業力の高い国であった。現在でも東ヨーロッパの中でチェコは工業がさかんである。
いっぽう、ポーランドは東欧の中でも人口と国土が多い。ポーランドの国土の広さは、スペインと同じくらいである。(チェコとハンガリーの国土面積は、北海道と同じくらい。)そのため、今後の発展が期待されており、西ヨーロッパやアメリカなど外国の企業もポーランドに進出している。
各国
[編集]イギリス
[編集]産業革命の歴史
[編集]近代、グレートブリテン島の中央付近にあるペニン山脈から石炭が産出されたので、この石炭を産業革命のころは利用していた。
18世紀にイギリスのマンチェスターを中心とするランカシャー地方で産業革命が起きた。ペニン山脈の西側の沿岸部にマンチェスターがある。産業革命時のマンチェスターでは綿工業が発達した。いっぽう、ペニン山脈の東側にあるヨークシャー地方では羊毛工業が発達した。
この東西での綿工業と羊毛工業の違いは、降水量のちがいによる、空気の乾燥のちがいであると考えられている。 偏西風のためヨーロッパでは、山脈の東側と西側とでは、降水量がちがう。
ペニン山脈の西側は湿潤なため、綿工業の加工に適していたと考えられている。
また産業革命により、ペニン山脈の南側にあるミッドランド工業地帯が鉄鋼業などで栄えた。
近現代のイギリス
[編集]近代にはイギリスは「世界の工場」と言われるほどに製造業が盛んだった。近代には、その工業力を背景に、軍備も強大化し、世界の各地を占領し、世界各地に植民地を持っていた。
しかし、第二次大戦後、植民地だった国が独立した。 また、1960年代、主要産業であった造船、自動車工業、機械工業など重工業が国際競争力をうしない、イギリスの経済が低迷し、イギリスの景気も悪化し、「イギリス病」と言われた。
このような景気の低迷を打破しようと、1980年代には改革がされ、国営企業の民営化や、各種の規制緩和が行われた。1980年代のイギリスでは、サッチャー首相(女性である)などの政治家が、このような規制緩和の政策をすすめた。
近年のイギリスの工業
[編集]近年のロンドンの工業地帯では、エレクトロニクス産業が盛んである。
その他、イギリスについて
[編集]- グリニッジ天文台
世界標準時の基準になってるグリニッジ天文台はロンドン郊外にある。
- 正式名称
イギリスの正式名称は、「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合」。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北部アイルランド連合からなる。
- 北海油田
北海油田(ほっかい ゆでん)の開発によって、イギリスとノルウェーは産油国となった。
- その他
現代でもイギリスには王室があり、また、貴族などの階級制度の残る国である。
公用語は英語。宗教はおもにキリスト教のプロテスタントで、宗派はイギリス国教会。
イギリスは国際連合の5つの常任理事国のうちのひとつ。(イギリス、フランス、ロシア(当時はソ連)、アメリカ、中国、の5つの国が国際連合の常任理事国である。)
イギリスは核兵器の保有国でもある。
高緯度であるが、周辺の海の暖流の影響により、緯度のわりには寒くない(西岸海洋性気候)。
ドイツ
[編集]現代のドイツはヨーロッパでは最大の工業国である。
自動車産業や電子工業や重化学工業がさかん。ライン川ぞいにあるルール工業地帯は、かつては石炭の産出地でもあり、鉄鋼業や重化学工業が、さかんであった。
ドイツのルール工業地帯はルール炭田の近くにあり、伝統的な工業地帯であるが、しかし第二次大戦後の石炭から石油へのエネルギー革命や、機械工業からエレクトロニクス産業への産業構造の変化などにより、ルール工業地帯は伸び悩んでいる。
第二次大戦後のドイツでは、臨海部や消費地周辺に新たな工業地帯が作られていった。 大都市周辺であるミュンヘンに、自動車工業やエレクトロニクスの工業地帯がある。
- ドイツ文化、ドイツ現代史など
ドイツで話されている言語はドイツ語であり、英語では無い。 おもな宗教はキリスト教でプロテスタントが信仰されている。
冷戦時は東西ドイツに分裂していた。なお東ドイツがソ連など共産主義・社会主義の陣営で、西ドイツがアメリカ・イギリスなど資本主義・民主主義の陣営である。
冷戦の終了によって1989年にベルリンの壁が崩壊し、1990年には西ドイツが東ドイツを吸収する形で東西ドイツが統一した。
第二次大戦後、ドイツは、労働力不足をおぎなうため、移民を多く受け入れた。トルコなど地中海付近の国から多くの移民を受け入れた。
また、ポーランドなど東ヨーロッパ諸国からの移民も、ドイツには多い。
- 農業
ライ麦、じゃがいもの栽培、酪農や、豚の飼育(豚肉の生産のため)などを組み合わせた混合農業が盛ん。(ソーセージなどは豚肉料理)
イタリア
[編集]イタリア北西部に重化学工業が多い。 工業は、ミラノ、トリノ、ジェノヴァを中心に発達。
南部は農業地帯。
これらに対し、ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどが服飾・皮革・家具製造などの企業が多くて盛んな地域であり、このようなイタリアの服飾・皮革・家具製造などの企業が多くて盛んな地域(ボローニャ、フィレンツェ、ヴェネツィアなど)を「第3のイタリア」(third itary ,「サードイタリー」)という。イタリアのこれら(服飾・皮革・家具製造など)の産業は世界的なブランドになっている。
イタリアの宗教はカトリックが主に信仰されている。
南部の農業は地中海性農業。 北部の農業は混合農業。
経済格差が南北のあいだにあり、北側が裕福で、南側が貧しい。
フランス
[編集]フランスは、ヨーロッパを代表する農業国であり、小麦の生産がさかんである。フランスは農産物の輸出も多い。農業がさかんなため、食料自給率は100%を超えており、外国に農産物を輸出している。
北部にあるパリ盆地で、小麦の生産が盛んである。
地中海沿岸では ぶどう も生産しており、ワインの産業が有名である。
フランスは工業国でもある。 航空機産業や自動車産業が、さかん。
石油などのエネルギー資源にめぐまれず、そのため原子力発電を重視しており、原子力発電が全電力の7割を越えている。
(※ 地理の範囲外 :)フランスは核保有国でもある。 (※ 『地理』科目では核問題は通常、範囲外なので。ただし『政治経済』科目では核問題を扱うので、問われる可能性あり。)
かつては内陸部にあるロレーヌ地方で鉄鉱石が産出したので、ロレーヌ地方が工業地帯であった。だが現代では、フランス南北の沿岸部に工業地帯が立地している。北海沿岸のダンケルクや、地中海沿岸のフォスに、鉄鋼業などの重化学工業地帯が立地している。
フランスの首都はパリ。芸術の文化がさかん。首都のパリは観光地でもある。
工業では、パリ周辺にも工業地帯があり、衣類・化粧品の工業や、自動車工業や機械工業などの工業地帯がパリ周辺にある。
フランスは移民を入れているが、旧植民地であったアルジェリアなどの北アフリカ諸国からの移民も多い。
また、イスラム系の移民やその子孫もフランスに暮らしているが、フランスでは公立学校や官公庁などの公共機関では政教分離を徹底するので、公共機関での宗教的なシンボルの着用を禁止している。イスラム教徒にも政教分離を徹底させるため、フランスの公立学校では、イスラム教徒の女子学生・女子生徒などの髪をおおうためのスカーフやベールの着用を禁止している。
オランダ
[編集]国土の4分の1が(つまり25%が)、海面よりもひくい干拓地(かんたくち)であり、その干拓地はポルダーと呼ばれる。 ポルダーは塩分が多いので耕作に向かず、酪農が主に行われている。
チューリップの栽培などの園芸農業や、バター・チーズなどの酪農がさかん。 オランダの首都はアムステルダム。
沿岸部のロッテルダムにヨーロッパ最大の貿易港になっているユーロポートを持つ。 また、ロッテルダムでは製油所や石油化学工場が多く、石油化学工業が発達している。(一般に石油化学の大工場は、輸入に便利な沿岸部に立地しやすい。日本でも同様。)
スペイン
[編集]- 近年、バルセロナで自動車産業が発達。農業は、南部は地中海式農業で、ブドウ、オリーブなどを栽培。
- リアス式海岸の「リアス」の語源は、スペインの入り江(いりえ)のことである。
- イベリア半島の内陸部の乾燥高原をメセタという。メセタで、羊の牧羊が盛ん。つまり、イベリア半島の内陸部の高原では、羊の牧羊が盛ん。
スイス
[編集]スイスは、どこの国とも軍事同盟を結ばない永世中立国である。そのため、スイスはEUに加盟していない。 中立の政策が、経済にも影響している。
チューリッヒが、国際的な金融の中心地のひとつになっている。
工業もさかんで、時計などの精密機械が盛ん。
農業では、アルプス山脈中での涼しい気候をいかした、酪農(らくのう)が盛ん。
スイスの公用語については、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を公用語として定めている。「スイス語」という言語は無い。
宗教も、カトリックとプロテスタントの両方である。スイスは、中立国ということから、国際会議などの開催の場所になることも多い。スイスには国際機関の本部も多く、たとえば世界保健機関の本部がある。フランスやドイツなどが加盟しているヨーロッパ連合(EU)には、スイスは加盟していない。
永世中立というスイスの立場のため、第2次大戦後、ながらく国際連合にはスイスは加盟しなかったが、2002年にスイスは国際連合に加盟した。スイスは、その中立を維持するために、軍事力を高めている国である。スイスには徴兵制(ちょうへいせい)がある。
北ヨーロッパの国
[編集]ノルウェー
[編集]水力発電が盛んで、アルミ二ウム工業が盛ん。
北海油田から原油が産出されるので、イギリスとノルウェーは産油国である。 高福祉国家としても知られる。
スウェーデン
[編集]社会保障の制度が充実していることで有名。しかし、福祉が充実しているぶん、税金も高い国としても有名。
製紙工業が、さかん。 首都はストックホルム。
スウェーデンでは鉄鉱石が産出され、ドイツなどに輸出されている。
自動車工業が発達している。
育児を支援する制度が1980年代から充実し、出生率を上昇させた。
スウェーデンは緯度が高く、気候が寒冷なことから、農業(畑、田)には適さない土地が多い。森林は耕地にはせず、森林のまま、森林資源として用いている。
スウェーデンは1995年にEU加盟したEU加盟国である。だがスウェーデンは、EUの共通通貨ユーロを導入していない。
中立国である。軍事に関していうが、日本では あまり知られてないが、スウェーデンは徴兵制(ちょうへいせい)を2010年まで行っていた。スウェーデンの徴兵制は、2010年に廃止された。
デンマーク
[編集]酪農、養豚などの畜産、漁業がさかん。世界有数の酪農国。豚肉などの輸出国になっている。水産物の輸出国でもある。高福祉国家としても知られる。
東ヨーロッパ
[編集]ポーランド
[編集]農業は、ライ麦・ジャガイモなどの栽培。
シロンスク地方で石炭が産出される。
住民のほとんどはスラブ系で、宗教はカトリック。
チェコ
[編集]プラハで工業が発達している。
冷戦中はチェコスロバキアという国だったが、1993年にチェコとスロバキアという2つの国に分離。
チェコ、スロバキアは両国とも、住民のほとんどはスラブ系で、宗教はカトリック。
チェコの首都はプラハ。
ハンガリー
[編集]住民はウラル語族のマジャール人で、宗教はカトリック。
ドナウ川が流れる。
首都はブダペスト。
ハンガリーの農業では、小麦の栽培、あるいは肉牛や豚などの飼育を組み合わせた混合農業が盛ん。
ルーマニア
[編集]住民の大半がラテン系で、宗教は東方正教。国名のルーマニアとは「ローマ人の土地」という意味。
カルパティア山脈などから石油・天然ガスが産出する。
ルーマニアの農業は小麦が盛ん。あるいは混合農業。
人口の動態
[編集]- (※ 2017年度センター試験に下記の内容が出題 ↓)
ドイツの出生率は2010年の時点で約1.4であり、日本の出生率と近い。
いっぽう、同時期(2010年前後)のフランスの出生率は1.8〜2.0であり、アメリカ合衆国の出生率と近い。
また、福祉の充実しているスウェーデンやデンマークの出生率も、じつは1.8〜2.0であり、アメリカ・フランスと、あまり差が無い。
- ※ このことから、日本の少子化の原因を「日本固有の事情」とか「東アジア固有の事情」などに結びつける政治評論は、間違っている可能性が高いことが分かる。
- また、北欧のように福祉が充実していても、それでも出生率は2.0前後でしかない。(一般に人口を増加させるには2.1以上が必要と言われている。)
フランスは、北欧と違って高福祉・高負担というわけでもないのに、フランスでの出生率がアメリカ・北欧なみに高いことから、近年、各国の少子化対策政策においてフランスが注目されている。
- (※ 範囲外: ) しかし、フランスの子どもの多くは、じつは移民(アフリカ系またはアジア系)の子である。(※ 清水書院の『現代社会ライブラリーにようこそ 2018-19』に掲載されているフランスの保育学校の写真をみると、肌の黒い子どもばかりである。)