高等学校工業 原動機/内燃機関の原理
ピストンの上死点と下死点
[編集]クランク機構などの回転機構につながったピストンの位置について、そのピストンに膨張・圧縮などの力が加わっても、クランクへの回転トルクとして寄与しない位置にある状態を死点(してん、dead center)という。 クランク機構などの回転機構につながったピストンがシリンダ内のもっとも奥に押し込まれ、クランク軸側から遠い状態を上死点(じょうしてん、top dead center,略称はTDC)という。 ピストンがシリンダ内のもっとも手前側に引き出されクランク軸側に近い状態を下死点(かしてん、bottom dead center略称はBDC)という。 ピストンが上死点から下死点へと移動する距離を行程(こうてい、stroke)という。行程という言葉は別の意味にも用いられる事があるので、場合によっては区別のため、上死点から下死点までのピストンの移動距離のことを、「ピストン行程」とか「行程距離」などと呼ぶ場合もある。
ピストンが上死点から下死点へ移動するまでの間に、ピストンが押しのける容積を行程容積という。ピストン内の気体が排気弁などから排出される際、その気体の容積を、行程容積に換算した値を排気量という。一般に排気量は行程容積に等しい。
ピストンの断面積を A として、上死点から下死点までの距離を S とした場合、行程容積 V_s は次の式になる。
なお、内燃機関などの燃焼機関で排気量という用語を用いることが多いが、燃焼機関でなくてもピストンが押しのける容積に排気量という言葉を用いる場合がある。たとえば気体用のポンプなどで排気量という言葉を用いる場合がある。
ピストンが上死点にあるときに、シリンダ内に残っている隙間の容積をすきま容積という。内燃機関の場合は、すきま容積のことを燃焼室容積ともいう。内燃機関では、ピストンが上死点にあるときのシリンダ内の残りの空間のことを燃焼室という。 行程容積とすきま容積を合わせた容積をシリンダ容積という場合がある。 行程容積にすきま容積を足した容積を、すきま容積で割った値を圧縮比(compression ratio)という。
圧縮比の式について
- 圧縮比:ε
- すきま容積:Vc
- 行程容積: Vs
としたとき、圧縮比εの式は
- ε
となる。圧縮比は、ガソリン機関では4~10の程度であり、ディーゼル機関では12~24の程度である。 ディーゼル機関では圧縮点火という仕組みから圧縮比がガソリン機関よりも大きくなる。
エンジン周辺部品
[編集]クラッチ
[編集]科目「機械設計」でも、自動車以外の一般のクラッチを扱う。wikibooksの本科目「原動機」でのクラッチの説明は、主に自動車などの内燃機関のクラッチについて説明をすることにする。
クラッチとは、エンジンで発生した動力(トルク)を、変速機(トランスミッション)以降の駆動軸へと伝えるために、機構の接続と遮断などを行う断続装置である。クラッチの取り付け位置は、通常は、エンジンとトランスミッション(変速機)の間に取り付けられている。
クラッチがつながっている状態では、エンジンの力が トランスミッションに伝わるので駆動ができる。 クラッチが切り離されている状態では、エンジンの力がトランスミッションに伝わらないので駆動がされない。 クラッチは、エンジンの始動や変速レバーの操作などで使われる。エンジンでは一気に負荷が掛かるとエンジンが停止してしまうので、徐々に負荷をかけていく必要がある。そのため、エンジンの始動や、レバー操作の際に、クラッチが必要になる。