高等学校工業 原動機/油空圧機器

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油圧アクチュエータの概略
1:ポンプ。
2:シリンダ。
3:配管

油圧機器は、鉱物油などを作動液として、油圧モータや油圧シリンダ などのアクチュエータに仕事をさせる機械である。 パスカルの原理を応用することで、大きな力を出すことが出来る。

油圧は油を循環させて使うので、装置全体を油圧回路という。

油圧機器の全体の構造は、主に以下の部品からなる。

  • 油圧ポンプ
  • 油圧シリンダあるいは油圧モータなどのアクチュエータ
  • 制御弁:具体的には方向制御弁や流量制御弁など
  • アキュムレータ:
  • 圧力制御弁
  • 油タンク
  • フィルタ


フィルタは油タンクにあり、摩耗くずなどがタンク内に入らないようにしている。 油タンクには通気口が上部にある。

油圧機器[編集]

作動油の種類[編集]

一般に引火性や燃焼性があるので、火気や高温に注意が必要である。低温にも注意が必要である。低温では、粘度が上がる。なので、冬場などは、ヒーターなどで適温まで上げたり、あるいは暖機運転が必要である。 作動油の分類は、主要成分により3種類に分類される。石油系と合成系と水性系である。

石油系作動油[編集]

錆止め剤や酸化防止剤を添加したもの。別名は、鉱物系作動油とも呼ばれる。 引火性があるので、火気に注意する必要がある。また、高温での使用にも注意が必要である。このような理由から消防法の危険物の適用を受ける。

合成系作動油[編集]

50°以上では、合成系作動油を用いるのが一般である。

リン酸エステル系

難燃性が高い。 ゴムや樹脂に対する腐食性があり、ニトリルゴムやウレタンゴムなどを侵すので、これらの材料を用いている油圧機器には使用できない。(シール材などで、ニトリルゴムやウレタンゴムは用いられることが多い。) シール材にゴムを用いる場合は、フッ素ゴムなどを用いる必要がある。


脂肪酸エステル系

難燃性はリン酸エステルと比べると劣るが、一般石油系と比べると難燃性は高い。 シール材やパッキン類には、一般石油系のものが使用できる。ただし、フェノール樹脂およびブチルゴムを侵すので注意が必要。 生分解性がある。


水性系[編集]

水グリコール系

約40%が水。添加剤として、増粘剤や錆止め剤、摩耗防止剤や消泡剤などが加えられている。 潤滑性は劣る。 水分の蒸発により、濃度変化をするため、濃度管理が必要。高温では用いない。高温で用いない理由は、水分の蒸発が、高温では激しくなるためである。50°以下で使用するのが望ましいとされる。 難燃性は高い。


油圧ポンプ[編集]

油圧機器には、油タンクからアクチュエータへ作動油を送るための油圧ポンプが取り付いている。 歯車ポンプやベーンポンプが用いられることが多い。 いずれも容積型ポンプである。 歯車ポンプは、内接形歯車ポンプも、外接形歯車ポンプも、ともに油圧ポンプとして用いられている。

アクチュエータ[編集]

アクチュエータには油圧シリンダや油圧モータが用いられる。

油圧シリンダ[編集]

油圧シリンダのイメージ。(図の上部)

油圧シリンダの種類には、単動シリンダと複動型シリンダがある。単動は、行き行程のみ油圧により働かせて、戻り行程はピストンの自重やスプリング力などの油圧以外の力で戻るシリンダである。 複動シリンダは、行き行程と戻り行程の両方とも油圧の働きによって作動するシリンダである。シリンダの両側に油の流入口があるのが複動シリンダの特徴である。

  • 片ロッド形

ピストンロッドがピストンの片側にのみ付いた方式のシリンダを、片ロッド形という。片ロッド型では、作動流体からの受圧面積が、ピストンの左右でロッドの断面積のぶんだけ異なるので、よってピストンの行きと戻りの動作特性が異なる。

  • 両ロッド形

ピストンロッドがピストンの両側に付いた方式のシリンダを両ロッド形という。通常、ロッドの太さは同じである。両側の受圧面積が同じなので、ピストンの行きと戻りは同じ動作特性である。


背圧

シリンダの流出側も、圧力が残っている。これを背圧という。背圧による抵抗のぶんだけ、シリンダが外部に与える力が下がる。


油圧モータ[編集]

油圧モータには、歯車モータ、ベーンモータやアキシャル形ピストンモータなどがある。構造は、容積式ポンプと原理は類似している。 油圧モータは、圧油の力を、回転運動に変換する機械である。


油タンク[編集]

油タンクには、送り出す油をためるだけでなく、戻ってくる油を回収して溜めることにも使う。


アキュムレータ[編集]

アキュムレータの概要
アキュムレータの作動原理

制御弁[編集]

方向制御弁[編集]

方向制御弁の構造
方向制御弁による方向切り替えの原理

流量制御弁[編集]

圧力制御弁[編集]

リリーフ弁[編集]
一般的なバネ式リリーフ弁の模式図。(ただし図は、油圧用の物ではないので、参考程度に。)

圧力が高くなった時に、油タンクへと油を戻すための弁。油タンクからアクチュエータへの流路から、分岐して配置する。構造は、スプリングなどでポペット弁と呼ばれる栓を押し付ける構造。調整用ハンドルで、設定圧を調整しているのが一般である。

減圧弁[編集]

油タンクからアクチュエータへの流路に直列に配置し、弁の出口側の2次側の圧力が高まると、流路を閉じて、結果的に2次側への流量が減ったことから2次圧も下がるので、このようにして圧を下がる弁。


速度制御の方式[編集]

  • メータイン

アクチュエータに入る流量を制御することで、アクチュエータを制御する方式。

  • メータアウト

アクチュエータから出てくる流量を制御することで、アクチュエータを制御する方式。

空圧機器[編集]