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高等学校工業 原動機/流体の測定

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

流体の測定

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これから、様々な測定原理について紹介する。

だが、工場などでの流体測定を扱う実務の基本は、まずは正しく装置を組み立てることである。流体の漏れ(もれ)などが、あってはならない。 漏れがあっては、測定機器の場合は誤差につながる。 このため、継ぎ手の部分には、けっしてホコリがあってはならない。 実務では、業界によるが、「ベンコット」(という工業向けの不織布(ふしょくふ)の商品がある)などで、継ぎ手の部分を拭き取る場合もある。

このため、作業場の清掃(せいそう)も大事である。作業者には「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」が必要である。

継ぎ手を締めるときにはスパナなどの工具を正しく使い、正しく締める必要がある。

流体機器には、製品によっては溶接部分も多くあるだろう。そのような溶接でも、漏れがあってはならない。このため、正確な溶接が要求される。


圧力の測定

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流量の測定では、その手段として圧力を測定する必要が生じることが多い。なので、まず、圧力測定を説明する。

  • マノメータ
U字管マノメータ

液中の高さによって、圧力を測る測定器に、マノメータというものがある。図の左側の円は管路の仮想的な断面とする。 圧力の釣り合いより、

[Pa]

である。求めたいのはpだから、

[Pa]


  • ブルドン管
表示盤のガラス窓と、ケースを外したブルドン管ゲージ。
表示盤の側
裏側。ブルドン管が見える

断面が楕円形または扁平の金属曲管をもった測定器。内部に圧力が加わると、断面は内圧によって円形になろうとする。このとき、曲管が直線に伸びようとし、結果的に、端が外側に開ことするので、その位置変化を読み取ることで圧力を読み取る。


  • 重錘形圧力天びん(じゅうすいがた あつりょくてんびん、pressure balance)
重錘形圧力計。(長野計器株式会社) 画像のものは、覆い(おおい)では、密閉していない。
気体用の重錘型圧力天秤での、空気の流れの説明図。シリンダーとピストン軸の隙間から、圧力測定用の気体流体(空気など)が抜け、このためピストン軸が流体圧によって浮き上げられ、ピストンとシリンダーが接触しないので、シリンダ内壁との摩擦が無視できる。さらに、図には描ききれないが、シリンダは回転しており、それが流体を伝わり、ついにはピストン軸を回転させる。この回転により、流体に均等に荷重が掛かり、精密に測定できる。

分銅である重錘(じゅうすい、英:weights)による力と、流体の圧力による力を釣り合わせることで圧力を求める。重錘を乗せる皿(重錘皿という。)はピストンにつながっている。シリンダ内に円筒状のピストンが挿入されている。ピストンとシリンダの間には、少しのすき間が開いている。そのため、使用中は、ピストンは浮き上がり、シリンダとは接触をしていない。重心の偏りの影響を減らすため、使用時に、シリンダを回転させるためのモータが装置に備わっていることが多い。粘性などによりシリンダの回転が、重錘に伝わっていき、結果的に、使用時に重錘は水平方向に自転する。

ピストンが浮いてるため、ピストンの高さは変わる。このピストン高さの検出器が内蔵されている。

圧力計として用いられるだけでなく、ブルドン管圧力計や電気式圧力計などの他の圧力計の校正に用いられることがある。校正の用途で用いる場合は、これに用いる重錘については、測定値のトレーサビリティが保証されている必要がある。 校正用途で用いる場合の装置では、空気による浮力の影響を減らす目的で、真空ポンプで減圧できるような密閉構造になっていることが多い。この場合、密閉のため、透明なケースで覆う。

国家標準器として、多くの国で、この重錘形圧力天びん、またはこれを応用した装置が、圧力の国家標準器として採用されている。日本でも、この重錘形圧力天びんが、気体圧力標準および液体圧力標準の国家標準器である。(2013年時点。)

JIS B 7610 で、重錘形圧力天びんの規格が定められている。

重錘型圧力天秤での、回転の伝わり方。
外部のモーターなどによりシリンダが回転すると(図では下側の矢印)、流体を通してピストンにも回転が伝わり、ピストンに固定された皿がピストンと共に回転する。(図では上側の矢印) 皿に乗っている重錘も、皿といっしょに回転する。皿の回転により、重心の偏心が打ち消される。
遠心力は考えなくて良い。回転スピードは、それほど大きくは無いので、特に遠心力を考える必要は無い。


  • 電気式圧力計(ひずみ式)

圧力により、ダイアフラムやブルドン管などでの弾性体の計測部分は変化するが、その弾性体の変化を、ひずみゲージや圧電素子などをもちいて電気的な変化に置き換え、その電気信号を読み取る圧力計。

  • 共振式圧力計

振動する弾性体の固有振動数は、その弾性体に荷重が加えられると変化をする。たとえば、音叉なども、荷重によって固有振動が変わる。これを応用した圧力計である。

共振式圧力計は、(圧電体(あつでんたい)などをもちいて、)圧力計のセンサー部分を振動させておき、固有振動数の変化を読みとることで、圧力を算出した圧力計である。

※ メーカー企業側が、振動子の材質を公開していない。しかし、おそらく、下記の理由から、圧電体をもちいた材料だろう。

まず、圧電体とは、電圧を加えると伸びるなど変形する物質であり、交流電圧を加える事で伸び縮みを繰り返すので、振動させられる。ZnOやAlNなどが圧電体になる。

※ 企業側が仕様を隠すので、推測になるが、強度的な理由により、シリコン基盤の上に、圧電体を蒸着させて成形する構造だろう。なぜなら、メーカー企業によっては、製品名で「シリコン共振」式圧力計のような「シリコン」という単語の入る名称を用いている場合もあるからである。シリコン材料 Si そのものは、圧電体ではない。なので「シリコン共振式」などと名乗る製品は、シリコン以外に、なんらかの電気的刺激を加えた際に、振動をする材料を用いていることになる。
※ 電子デバイスで、発振器として用いられるデバイスで「圧電薄膜共振器」というのがあり、それがシリコン基盤の上に、圧電体(ZnOやAlNなど)を付けている構造である。「圧電薄膜共振器」を英語ではthin-film bulk acoustic resonatorといい、FBARまたはTFBARと略す。おそらく、共振式圧力計の構造も、圧電薄膜共振器と類似した構造だろう。

重さの測定器での、音叉式の電子天びんも、この共振式圧力計とほぼ同様の、固有振動数の変化を読み取る測定原理である。

流速の測定

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ピトー管

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ピトー管の原理図
ピトー管

フランス人の土木技師であったピトーは、あるとき、簡単な原理の河川用の流速計を発明した。彼の発想では、ガラス管の下端を90°曲げて、先端を水に入れて流れに対向して支えれば、管内の水位は水面よりも上昇するはずだから、これにより、流速が測定できるのでは、と彼は考えた。実際にこの原理は正しく、ほぼ同様の原理の流速計がピトー管(Pitot tube)と呼ばれ、現代(2013年に本記事を記述)でも広く用いられる。 現在、用いられるものは、対向した全圧管と呼ばれる取り出し口だけでなく、流れの直角方向につながった、静圧管と呼ばれるもう一つの取り出し口が付いている。この二つの取り出し口から取り出した圧力の差を測るように、現代のピトー管はなっている。


ベルヌーイの定理を適用すると、管路は水平なので、位置エネルギー差は無視でき、

となる。 これより、

ここで、

なので、 これを代入すれば、

となり、hより流速が測定できる。

ピトー管から離れた上流の圧力を静圧という。ピトー管先端の流速がゼロの部分の圧力p2を全圧という。ρv^2 /2 を動圧という。

実際の測定では、式に補正係数[無次元]が付き、

となる。 この補正係数をピトー管係数または速度係数という。

その他の流速計

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  • レーザードップラ流速計

まず、ドップラー効果とは、音や波を発する物体が運動している時に、その速度に応じて観測される周波数が変化する現象である。 さて、レーザ光が媒質中を伝わるときに散乱光があるが、その散乱光の周波数はドップラー効果を受けて変化する。この現象を利用した流速計。 この流速計は非接触なので、流れを乱さないという長所を持つ。


  • 熱式流量計および熱式流速計

以下に原理を示す。なお、気体流量および気体流速の測定に用いられることが多い。

  • 熱線式流速計

流れの冷却効果を利用して流速を求めるものである。あらかじめ、測定器の金属線に電流を流し、この抵抗熱が、流れによって、どれだけ冷却されたかを測ることで流速を測る、または抵抗熱による電気抵抗の変化を測ることで流速を測る。一般的に、電気抵抗の変化の測定には、ホイットストン・ブリッジなどのブリッジ回路が用いられる。 発熱抵抗体の材質には様々あるが、高精度なものには、白金抵抗体が用いられることが多い。

  • マスフローメータ
熱式マスフローメータでは、質量流量に応じて、流路に温度差が生じる

なお、これと同様の原理は、形状は異なるものの、質量流量計のマスフローメータ(mass flow meter)が、流れによる冷却を読み取って流量計として利用ている。マスフローメータの場合は、流れる物質ごとに、分子あたりの比熱が異なるので、流体の分子の種類に応じて測定器を使い分けなければならない。 マスフローメータの用途として、化学工業などでは、質量流量のほうが体積流量よりも化学反応量を見積もりやすいという点から、マスフローメータは化学工場や半導体工場、宇宙関係などの流量計で用いられることが多い。

なお、この例のように、流速計と流量計に、似た原理を用いる場合がある。文献によっては、ある流量計を流速計に分類したり、逆にある流速計を流量計に分類したりとする場合がある。


流速計には、紹介した物以外にも他にも多くの方式がある。


流量の測定

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ベンチュリ管

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ベンチュリ管の図。"1"での圧力は"2"よりも高い。"2"での流速は"1"よりも高い。
U字管はベンチュリ管の下部に付いている。

ベルヌーイの定理より、高さと圧力を測定すれば、流速が計算できる。そして、連続の式より、流速から流量を計算できる。 これを利用した液体用かつ気体用の流量計としてベンチュリ管(venturi tube)がある。

ベンチュリ管の構造は、図のようになっている。圧力の測定は、圧力ヘッドの差を元の測定できる。ベルヌーイの式中の高さについては、管路を水平に置くので、無視できる。

まずベンチュリ管で測定される圧力ヘッドから流速を求める手順を説明する。説明の簡単化のため、流体は液体とし、液体の種類は水とする。 まず、ベルヌーイの式より以下の関係が求まる。

また、圧力ヘッド差をh[m]とすると、

である。

最終的にベルヌーイの式から求めた速度の式にhを代入するのだが、力学的な状況を記述したいので、しばらく圧力の項を残したまま計算を進める。

まず、連続の式より、

[m/s]

である。これより、


これに、圧力ヘッドと位置ヘッド差の式を代入すれば、



ここで、断面積の比のA_2/A_1を開口比と呼ばれ、一般にmと置く。つまり、

である。 これを速度の式に代入すれば、

求めたいのは流量であった。体積流量Qは、Q=A_2 v_2 [m^3/s]であるから、

[m^3/s]

実際の測定では、摩擦などの損失によって、ベルヌーイの式から計算した理論値と少し食い違う。なので補正の計算が必要になる。ベンチュリ管の流量補正のための係数は流量係数(coefficient of discharge)と呼ばれ、この係数は実験によって決める。流量係数の数式記号にはcを用いるのが一般である。 あらかじめベンチュリ管を製造した測定器メーカなどにより流量係数が準備されていれば、それを用いても良い。 流量計メーカー製の補正係数を用いる場合、この流量係数cは、レイノルズ数の関数で与えられる場合がある。 ベンチュリ管に限らず、流量計での、流量の補正係数を実務で求める場合は、レイノルズ数の関数で近似するのが一般である。

この係数cを理論値に掛けて、ベンチュリ管による流量の測定結果とする。理論値をQ_thとした場合、補正済みの流量の測定値Qは、

[m^3/s]

である。なお、一般にベンチュリ管の流量係数は0.95~0.99の程度の値であることが多い。


流れている流体が気体の場合は、ベンチュリ管の下部に付いているU字管によって差圧p_1-p_2を用いて、圧力差を測定し、液体の場合と同様の計算をする。

なお、U字管を用いる場合、装置製作の都合上、長さに限界があるので、測定できる位置ヘッド差に限りがある。このため、U字管内の液体に水銀を用いて比重を重くする場合がある。水銀は猛毒なので、もし実験などで取り扱う際は、厳重に注意すること。

流量校正について

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流量測定については、日本国の計量行政の国家標準機関(日本の場合は産業技術総合研究所が担当)などによる校正では、最終的には体積流量の校正では流した時間と体積を実測で測って、体積流量の実測値を算出している。たとえば質量流量の校正では、重さと時間を実測で測って、質量流量の実測値を算出している。 流量係数も、元をたどれば、このような国家標準器での実測値に基づく。(トレーサビリティと言う。)

ただし一般の工場や学生実験での測定器の校正では、このような国家機関レベルと同水準の校正は行わない。設備や予算などの都合上、国家機関レベルの困難なので、ほかの校正された測定値の信頼できる流量計を参照標準(Reference リファレンス 、 略:ref.)として、流量を比較する。参照標準の流量と比較するという流量比較の方法で、流量係数などの補正係数を決めるのが一般である。

このような校正も専門知識や流量比較実験のための設備が必要であり、一般の工場の流量計ユーザーでは自社では校正は行わず、流量計の製造元や外部企業の校正を業務にしている業者に校正を依頼する。

高校の実験の場合は、流量計の測定器の数値を、そのまま信用すれば良いだろう。学校の設備の定期検査や定期校正の外部業者への依頼などは、学校教員側が管理する仕事であろう。

さまざまな原理の流量計

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さまざまな流量計を紹介するが、どの原理の流量計も、最終的には校正によって流量を確認している。そして、どの流量計も、校正のトレーサビリティをたどっていけば、最終的には国家標準器がトレーサビリティの頂点にたどりつき、標準器による 重さ(あるいは 体積) と 時間の測定に たどり着く。

なので、これから述べる様々な原理の流量計の検証も、校正のトレーサビリティは、最終的には国家標準器にたどりつき、標準器による 重さ(あるいは 体積) と 時間の測定に たどり着く。

オリフィス

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流れをせき止める薄くて頑丈な金属板の中央に穴を開け、その穴から流れを流出させたとき、この穴をオリフィス(orifice )という。あるいは、仕切り板全体を単にオリフィスという。穴と仕切り板を区別する必要がある場合は、板の側をオリフィスプレート(orifice plate)などと呼ぶ。 流量の式は

エネルギー損失が大きく、流量係数cは0.6の前後である。

オリフィスの場合、メーカー製の流量係数を用いる場合や便覧などから流量係数を調べる場合などは、レイノルズ数Reの他に、管内系D[mm]と穴径d[mm]の比の絞り比β=D/dを計算することが必要になる場合がある。


ノズル

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長円ノズル や ISA1932 ノズルがある。 (※ ウィキペディア内に使用できる図がないので、外部のサイトや専門書などでISA1932ノズルなどを確認してください。) 流量係数は、一般にC=0.9~1.0である。

流量計では、単にノズルといった場合、このノズルを意味する。なお、流体力学では、差圧流量計とは別の、他の構造の部品にも「ノズル」という単語を使う場合があるので注意のこと。たとえば、航空工学などでの「超音速ノズル」や、質量流量計の「臨界ノズル」や、「ラバール・ノズル」というものは、この差圧流量計でのノズルとは異なる。これらについては、本科目の教育範囲を超えるので、解説しない。

流量の式は、穴断面積をA[m^2]として、差圧を位置ヘッド差h[m]で表せば

あるいは圧力差Δp[Pa]を用いて表せば

超音波流量計

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超音波流量計の原理図

超音波を利用した流量計を超音波流量計(ultrasonic flowmeter)という。測定原理の方式には、二種類の方式がある。いずれとも、流速を求めてから流量を演算して算出する。なので、流速計に分類する場合もある。

  • 時間差式

流れの方向に対して、超音波の伝搬方向が同じ方向の場合と異なる方向の場合とで、超音波の伝搬速度が異なる。このため、流れの上流と下流の2点に、送受波器を取り付け、上流から下流へと超音波を送った場合の到達時間と、下流から上流へと超音波を使った場合の到達時間との差から、流速や流量を求める測定器である。 異物や気泡のない流体に向く。


  • ドップラー式

液体中の気泡や異物に超音波を当てたとき、反射波の周波数は流体の速度に応じて入射波から変化するというドップラー効果を応用した流量計である。 気泡や異物のある流体に向く。


時間差式とドップラー式のいずれとも、次のような特性を持つ。

  • 可動部が無い。
  • 測定による流れのエネルギー損失が無い。

主な測定対象は液体の流れである。一部には気体を測れるものもある。


電磁流量計

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電磁流量計の原理図

電磁流量計(electromagnetic flow meter)はファラデーの電磁誘導の法則を利用した流量計であり、体積流量計である。 平均流速に比例した起電力により、体積流量を求める。測定可能な流体は、水のほか、導電性の液体の流れに対して用いられる。 絶縁性の流体や気体には使用できない。

渦流量計

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カルマン渦列のイメージ

流れの中に円柱状の形状の物体を置くと、円柱の下流側に渦を生じる。このときの渦の発生周波数は流速によって変わり、ほぼ流速と渦の発生周波数は比例関係なので、発生周波数を測定して、そこから流速を逆算し、流量を算出する流量計が渦流量計(うず りゅうりょうけい、vortex flow meter)である。渦流量計は流速計であり体積流量計である。発生周波数の検出方法は、渦の発生によって、流体の動きが変わるので、その動きの変化によって生じる力の変化を円柱内部に取り付けた検出器で検出する。

測定対象は、液体および気体である。

  • カルマン渦

流れの中にある障害物の下流側に生じる渦をカルマン渦(カルマンうず、Karman vortex)という。カルマン渦は、液体でも気体でも生じる現象である。カルマン渦は、たとえば、旗が風になびく現象である。ポールに高く掲げた旗が風になびく現象と、同じ原理の現象である。カルマン渦とは、流れの進行方向を基準に満た場合、流れの下流側の背後から、左右交互に渦が生じる現象である。「カルマン」とは、この現象を研究した科学者の人名。

なお、混同されやすい現象として、渦の発生と、層流から乱流への遷移の現象があるが、これらは別の現象であるので混同しないように注意が必要である。 カルマン渦が発生するレイノルズ数Reは、だいたい50のあたりから、円柱の背後にカルマン渦が発生するように、レイノルズ数の値が、乱流遷移のレイノルズ数のおよそ2000周辺とは大きく異なる。

渦の種類は、カルマン渦のほかにも双子渦などがあるが、詳細は省略する。そのほか詳しい解析計算は、高校レベルを超えるので省略する。

  • 渦流量計の構造や特性

流量計の構造については、円柱内部での流れ変化の検出には、圧電素子やひずみゲージが使われることが多い。 渦を発生させる障害物の形状は、円柱の他にも三角柱などの物の場合もある。 欠点として、流量がゼロの時の確認ができない。また、低レイノルズ数では誤差が大きい。 また、流体の粘性が高く渦が発生しにくい流体の場合には、渦流量計は適用できない。

力を検出しているため、外部からの振動などの影響を受けやすい。 測定方式は、他にも、超音波流量計と組み合わせて、渦による流速の変化を検出する方式のものもある。


タービン流量計および羽根車流量計

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流れの中に羽根車を置く。羽根車は流体の運動エネルギーによって回転するので、回転速度から流速を求め、体積流量を算出する流量計である。羽根車の動きの検出には、機械式のほか、光学式や磁気式などがある。 一部の水道メータなどに用いられている。測定対象の流体は、主に液体が対象である。一部には気体を測れるものもある。液体を図る場合は、測定できる体積流量の流量範囲が広い。 羽根車が慣性を持つという性質のため、平均流速や、積算流量を測定するのに適する。瞬時流量を測るには向かない。 欠点として、エネルギー損失が大きいので、流体のエネルギーを損失させたくない場合の用途には不向きである。また、可動部を持つので、可動部を嫌う用途には不向きである。流体に異物が含まれている場合、異物により回転が妨げられるという影響を受けやすい。


範囲外: 流量計の校正

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せっかくだから、産業技術総合研究所の国家標準器での流量計の校正(こうせい、calibration)の話をしよう。 校正とは、測定器の示す、その量の測定値と、じっさいの、その物理量のほんとうの値(あたい、ち)との対応を確認し、もし調整が必要なら調整するなどの適切な対応をすることである。

校正と器差試験のちがい

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※ 工業高校科目『電子計測制御』の教科書では、測定値が許容誤差の範囲内に入ってるかを検査することを校正という、などのように説明したりしてるが、厳密には、それは「器差試験」(きさ しけん)である(。「校正」ではなく)。なお、公共の計量検定所(けいりょう けんていじょ)が法令にもとづいて行う器差試験が、「計量検定」(けいりょう けんてい)の一部分である。


※ 器差試験と校正のちがいの説明として、たとえば、もし仮に、ある重さ計(おもさけい)で、じっさいの質量よりも、ぴったりと1234gだけ値が大きめに表示される重さ計があったとしよう(じっさいには存在しないが)。
1234.01gでもなく1233.98gでもなく、ぴったりと1234.00000000000000000・・・gの値だけ 毎回 かならず 大きく表示されたとしよう。
この重さ測定器の器差は1234gとなる。この測定器をつかって、測定者が「つねに表示される測定値から1234グラムを差し引いた値こそが、ほんとうの重さ」として解釈すれば、世界でもっとも正確に重さを知れる測定器として(なぜなら「ぴったり」1234gの器差だから)、この重さ計を利用できる。しかし、器差は1234グラムであり、重さ計としては、とても器差が大きい測定器になっている。このように、校正と器差は、異なるアイデアである。
※ なお現実には、けっして、上記のように、器差が「ぴったり」「毎回」「かならず」として寸分の狂いもなく一定値の測定器なんて、存在しない。あくまで説明のために、仮に想定しただけである。
※ もちろん、現実的には、測定器の器差もなるべく小さくするべきである。
※ 「校正」は、「器差試験」よりも広い概念(がいねん)である。「もし器差試験が必要なら、必要におうじて器差試験をおこなうこと」も、校正にふくまれる。なにも器差試験を行ったり専門業者に計量検定を依頼したからといって、けっして校正でなくなることはないので、技術者は安心してよい。
※ なお、「つねに表示される測定値から1234グラムを差し引いた」のように、つねに測定器の表示値からある大きさの一定値をズラすことを、ゼロ点調整(ゼロてん ちょうせい)という。なぜ「ゼロ点」調整というかというと、たとえば、重さ計に、まだ何も重りを乗っけていない状態(これが「ゼロ点」といわれる状態)で、表示部に1234gという数値が出たら、その値を、今後の測定値から、つねに差し引くからである。
※ このように、ゼロ点調整をおこなうことによって、器差をある程度は減らすことができる。しかし、現実には、器差がけっして「ぴったり」「毎回」「かならず」として寸分の狂いもなく一定値の測定器なんて存在しないので、ゼロ点調整によっても、そのあとの、その測定器の器差をけっして完全にゼロにする事はできない。

教育上の説明のため、校正と器差とのちがいを協調したが、しかし学生の段階では(高校生、大学生、高専生など)、測定器の「校正」と「器差試験」は、とりあえずは同じものだと思っても、かまわないだろう。

じっさい、市販のデジタルセンサーをもちいた製品などの説明書でも「キャリブレーション」(校正は英語で calibration という)という用語が、むしろゼロ点調整のような意味で使われる場合もよくある。工業製品ですらキャリブレーションとゼロ点調整を区別してないので、学生は区別しなくていい。

学生にとっては、「校正」と「器差試験」のちがいに深入り勉強するよりも、物理学などを勉強することのほうが大切であろう。


例: 質量流量の国家標準器での校正

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一例として、気体流量の質量流量の国家標準器での校正の話をする。(このほかに、液体流量の標準器などもある。)

質量流量とは、結局、流れた質量を、流した時間で割った物理量である。なので測定の精度を決める主な要因は、 質量計(しつりょうけい)の精度 と 時計の精度 で、質量流量の測定の精度は決まる。 (なお、標準器の業界では「精度」という言葉ではなく、かわりに「確かさ」(たしかさ)とか「不確かさの小ささ」などの言葉を用いているが、高校生にとっては、あまり本質的ではない。この教科書では、「精度」という表現を用いることにしよう。)

流量校正は、つまり流量比較で、校正される流量計の示す表示値と、校正に用いる質量計や時計から実際に確かめられた流量を比較すれば、いいのである。

たとえば産業技術総合研究所の気体流量の標準器の測定では、質量を測るのには、市販の高精度の電子天びんを用いている。(市販と言っても大企業の開発した部品であり、とても高価だし、特注品としてカスタムはしているが、しかし元は民間企業が作っている市販品の技術である。)

時間を測るのには、同様に民間企業の市販の高精度の周波数カウンタなどの時間計測器を用いている。

気体の重さの計り方は、原理は単純で、実際にタンクなどの容器に測りたい気体を流しこみ、流した後に、タンクの栓を閉めて、流体を流す前後のタンクの重さを比較すればよいだけである。 この流しこむ実験の間に、時間を測る。時間の測定は、実際に流している瞬間にしか出来ない。

流体の重さは、流す前のタンクの重さと、流した後のタンクの重さを重さ計で比較すれば、それで流した質量や重さが分かる。

また、どのような重さ計も、重力の影響を受けているので、産総研で電子天秤を用いる際、あらかじめ国土地理院などの重力データを持っている省庁に定期的に重力値の確認をしている。(高校の地学の教科書にも書いてあるが、実は地球上の重力の強さは、地域ごとに少し偏りがある。)重力データそのものの測定は、国土地理院などの地理・地学の学業界の仕事であり、機械技術者の仕事では無い。

小学校で習うように、てこの原理は重力では変わらない。なので天秤の左右で、2個の物体の重さを比較する方法で、重力の影響を、ほぼ打ち消せる。(小学校で習うように月面などの重力の異なる地域であろうが、てこの原理は変わらない。)

なので、天秤の左右にタンク容器を乗せるため、流体の容器が2つ必要になり、1つの容器には流量を測りたい物質を入れ、もうひとつは空にしておいて、これらを天秤の左右で比較している。

測定中に地震などが来たら、やり直しである。べつに流量測定の場合だけに限らず、他の測定分野でも、地震などが来たら実験やり直しが一般である。(ただし、地学での地震そのものの測定実験を除く。)

もし重さの測定回数が1回だけだと、重さ測定の誤差や測定値のバラツキ具合が確認できないので、少なくとも同じ条件で数回は重さの測定をする。(時間は、流した実験をしている瞬間にしか測れないが、重さは後からでも測れる。)

また、振動の影響を減らすため、重さ計を用いた校正を行う企業では、そもそも建物を作る際に、重さ計の測定器の下には、緩衝のための設備を用意しているのが一般である。

周波数カウンタなどの時間の測定器については、電子工学などの範囲になり、機械技術者が関わる範囲は少ない。


いちおう、ごく大まかな、国家標準での流量校正の手順を紹介したが、ほとんどの工場は、自社ではこのような国家標準レベルの校正は行わない。文章で書くと手順が簡単そうだが、実際に校正を行うとなると大きな設備が必要になり、専門知識が必要なのである。

なので、一般の工場のユーザーは、測定器の製造メーカー等に校正を依頼し、その依頼を受けた専門業者が校正をする。