高等学校工業 土木施工/コンクリートの性質

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
  • フレッシュコンクリート

コンクリートをつくるため、セメントなどのコンクリート原料に水などを加えて練り混ぜてから、まだ固まらない状態のコンクリートをフレッシュコンクリート(fresh concrete)という。

フレッシュコンクリートの性質[編集]

フレッシュコンクリートは、ある程度やわらかいほうが作業しやすいが、あまりにもやわらかすぎると、作業しづらくなる。

むしろ、ある程度は、変形や流動などの力が加えられたときに対してフレッシュコンクリートが抵抗できないと、作業中に目的の形状を保持できず、作業しづらい。(このように、コンクリートが力に抵抗する程度について、どのていど目的の形を保てるかという性質をコンシステンシー(consistency)という。)

スランプ試験[編集]

フレッシュコンクリートのコンシステンシーを知るための試験として、スランプ試験がある。(※ 実教出版の『土木施行』の教科書では「スランプ試験」の用語は範囲外だが、普通の土木工学書の土木材料の書籍を読めば書いてある名称なので、覚えておこう。)


スランプ試験


スランプ試験は、上図「スランプ試験」の説明のように、円錐状のコーンに入れたコンクリートを用意して、そのコーンを真上に引き上げると、コンクリートがくずれて高さが下がるので、どのくらい高さが下がったかを調べる試験である。

スランプ(slump)とは、上図のように、スランプ試験をしたときの、さがり具合、または、この現象のことである。

スランプ試験を行う際、コーンを引き上げようとする際、コーンの高さが30cmなので、コーンを引き上げるときは30cm以上まっすぐ上にコーンを引き上げる事になる。

そして、コーンを引き上げて、コンクリートの高さがどのくらい下がったかの値がスランプ値である。スランプ値を測るときは0.5cm単位で測定する。スランプ値の程度を伝えるときは、ふつう、cm単位で「スランプ◯◯cm」というふうに言う。 また、スランプ値のことを「スランプ」ともいう。

なお、スランプ試験に使うコーン、あの高さ30cmのコーンを「スランプコーン」という。※ 実教出版の『土木施行』の教科書では「スランプコーン」の用語は範囲外だが、普通の土木工学書の土木材料の書籍を読めば書いてある名称なので、覚えておこう。)

スランプ値が高すぎると、目的の形状を保てなくなるので、望ましいスランプ値の大きさとは、作業が可能な範囲で、スランプ値はなるべく小さいほうがいい。

スランプの標準値
種類  スランプ
(cm)
無筋コンクリート 一般の場合 5〜12
断面の大きい場合 3〜10
鉄筋コンクリート 一般の場合 5〜12
断面の大きい場合 3〜10
※ 右図「スランプの標準値」のスランプ値は、実教出版『土木施行』(検定教科書)より引用。なお、土木学会編「コンクリート標準示方書(施工編)」からの孫引き。

標準的なスランプの値は、だいたい3〜12cmである。AE剤(Air Entraining Agent:空気連行剤)を用いる場合は、だいたい 8〜18cmていどまでのスランプ値が標準である。(※ 参考文献: コロナ社『土木材料学』、中村聖三・奥松俊博 共著、2014年初版、37ページの表2.4「スランプの標準値」より、無金コンクリートおよび鉄筋コンクリートのスランプ値を参照。)

空気の量[編集]

コンクリート中に必要な空気の量は、およそ3〜6%である。

空気量が多すぎると強度の低下をまねくので、適切な値にする必要がある。

空気量の測定には、空気室圧力方式が、よく用いられる。

材料の分離[編集]

  • ブリーディング

コンクリートの凝固・硬化につれ、水が上に上昇してきて、その結果、上表面には水やセメントの微粉が集まる。このような現象をブリーディング(bleeding)という。

水は比重が小さいので上昇してくるのである。

  • レイタンス

ブリーディングによって集まったセメント粉末などの微粒子が、水の蒸発後には、微粒子からなる層を形成する。この表面の微粒子からなる層をレイタンス(laitance)という。コンクリートを継ぎ足す際、レイタンスは付着力を下げるので、継ぎ足す前にレイタンスを削りとって除去する必要がある。

硬化したコンクリートの性質[編集]

※ 圧縮試験の写真がウィキにないので、検定教科書を参照せよ。