高等学校工業 機械設計/機械要素と装置/ばね

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  • 本分野の予備知識

予備知識として、この分野は、普通科高校の物理科目での、力学のばねに関する知識を予備知識としています。 もし、物理の力学に詳しくなければ、まず物理科目(リンク:「高等学校物理」)からお読みください。

また、機械設計科目内の材料力学に関する知識も予備知識としています。詳しくなければ、まず、材料力学(リンク:「高等学校工業 機械設計/材料の強さ」)に関するページからお読みください。

この節の分野は、材料力学などの知識を用いて、ばねの性質を詳しく解析する科目です。


コイルばね[編集]

圧縮コイルばね
テンションコイルばね

まず、考察対象の「ばね」として、円筒形のコイルばね(coil spring)を考える。円錐コイルばねなど別形状のばねは、今回は考えない。ばねの材質は一般の金属として、ばねに掛かる荷重の大きさは、弾性変形の範囲内とする。 また、コイル線の断面形状は円形だと仮定する。世の中には、円形断面の他にも、角形断面のばねも存在するが、今回は考えないとする。

ねじり応力の式[編集]

コイルばねの図。
なお、図ではコイルのピッチをpと表してある。線径dとピッチpを混同しないように。
一般的に、機械製図での文字の方向は、寸法間の矢印の上に寸法値を書くという方向である。

ばねに荷重が掛かって縮んでいる場合、ばね全体で見たら、ばねには圧縮荷重が掛かっている。だが、コイルばねのコイル線の視点から見た場合の荷重の掛かり方は、コイル断面に垂直方向の荷重である、せん断荷重および、ねじり荷重の2種類の荷重である。

ねじり荷重は断面2次極モーメントZpで計算できる。 コイルの線径をd[mm]とすれば、(コイル線径dは、ばね全体の直径Dとは別なので混同しないように。)

[mm3]

ねじり応力τの式は、かかる曲げモーメントをMとすれば

[MPa]

で、曲げモーメントMは、荷重をW[N]として、ばね全体の直径をD[mm]とすれば、(ばね全体の直径Dは、コイル線径dとは別なので混同しないように。) 曲げモーメントMの式は、

[N・mm]

である。すると、ねじり応力と曲げモーメントの関係式より、

[MPa]

となる。

これより、コイルばねの、荷重W[N]とねじり応力τ[MPa]の関係式が求まったので、以下に結論をまとめる。

[MPa]


たわみの式[編集]

次にコイルばねのたわみに関して考えよう。 まず、ねじり応力τと、その応力が掛かってる箇所のせん断ひずみγの関係式は、

[MPa]

である。せん断係数Gは物性値なので計算で求める必要がない。ねじり応力τの関係式は前節で既に求めた。まだ、ねじり応力の具体的な値は求まっていない。ねじり応力の実験値を求めるには、せん断ひずみγを求めれる必要がある。 そしてせん断ひずみは、コイル全体の伸び縮みの変化から求めることになる。なので、コイル全体の伸び縮みの変化である「たわみ」と、線材のひずみとの関係式を求める必要が生じる。 まず、解析の方針として、コイルの巻数をn巻と、しよう。(正確には、有効巻数(ゆうこうまきすう)という。後述。) そして一巻きあたりの「せん断ひずみ」と全体「たわみ」の関係式を求めてから、それを巻き数のn倍すれば全体の「たわみ」になるから、そうして関係式を求めてみよう。

すると、まず、コイル一巻きの線材の長さLと、ばね全体の直径Dの関係式を求める必要が生じる。これは簡単に求まり、

となる。これから、さらに、せん断ひずみを求めるには、軸のねじれ角とモーメントの関係式の公式を用いる。(近似的に、ばねのたわみを軸のねじりに見立てる。)すると極断面2次モーメントI_pとねじりモーメントTの関係式が用いられる。その、ねじりモーメントの関係式は、一巻きあたりのねじれ角をθ1とすると、

である。なお、単位について、この式のθ1の角度の単位はラジアン単位である。いわゆる弧度法である。[rad]という単位である。 「度」の°とは異なるので混同しないように。 ひずみを求める計算に用いるのは、一巻きあたりのねじれ角のθ1なので、式変形をして、θ1に関した等式に変形する。すると、

である。

この式のLは既に求めた。コイルひと巻きあたりの長さLは、

L=π D

で、あった。 この式のモーメントTも、既に求めてあって、荷重とねじりモーメントの関係式は

T=WD/2

と求まっている。 次に、Gは物性値なので、解析では求める必要がない。 極断面2次モーメントI_pは、線材の断面形状が円形なので、以下の公式が使えて、

である。

これらの、4つの代数をθ1の式に代入しよう。すると、

と、なる。ところで、θ1は、一巻きあたりのねじれ角であって、ばね全体の全巻き数のねじれ角の合計ではない。なので、全巻き数合計の、総ねじれ角を求めよう。全巻き数は、n巻と設定してあったので、単純にn倍すれば良い。総ねじれ角θnは、

全体のたわみδnを求めるには、総ねじれ角θnに、ばね全体のコイル半径D/2を掛ければ良い。 なぜなら、一巻きあたりのたわみ量δ1は、

だから、である。 結局、全体のたわみδnは、

である。

結論を、まとめると、

である。


有効巻数[編集]

圧縮コイルばねの端部は、すわりを良くするため研削され、不完全巻き数になる。

以上の計算では、ばねの巻き数を単純にn巻きとして説明したが、実際のばねでは、ばねの全ての部分が機能するわけではない。コイル端部の、巻き始めと巻き終わりの部分は、ばねとしては、あまり機能しない。 この、ばねとして機能しない部部員の巻き数を不完全巻き数という。 ばねとして機能すると考えられる巻き数を有効巻数(ゆうこうまきすう、英:number of active coils)という。 力学解析で、たわみなどを求める際は、このあまりばねとして機能しない不完全巻き数の部分を排除して、有効巻数で計算する必要がある。