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高等学校理科 生物基礎/内臓と体内環境

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

肝臓とその働き

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ヒトの肝臓(liver)、腎臓(kidney)

肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。 肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。

肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。 腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が肝門脈の中を流れる血液に含まれている。


  • 血糖値の調節

グルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。

  • タンパク質の合成・分解

肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィブリノーゲンも肝臓で合成している。

  • 尿素の合成

タンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。

哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。


(※ 範囲外: ) ただしヒトとチンパンジー、ゴリラは例外的であり、尿酸までしか分解できず、尿酸を尿とともに排泄している[1]
このため、病院の尿検査では、「尿酸値」などを測定する事になる。


  • アルコールなどの分解

そのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。

  • 胆汁

胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。 胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。

  • 古くなった赤血球の破壊

古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。

  • 体温の維持

合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。

腎臓とその働き

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腎臓の構造

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ヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、 腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。 血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、 腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。

ネフロン
1. 腎小体, 5~9あたりは集合管  赤い血管は動脈 青い血管は静脈。  図のように毛細血管が集合している。
(※編集者へ あとで、他の簡略図に差し替えてください。)

腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、 ネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、 片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。

腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。



尿の生成のしくみ

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腎臓の働きと再吸収

タンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、 原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。

グルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。

原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。

そして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。

ボーマンのう で こし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に体外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。


※ 発展: 尿の成分

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ヒトの原尿に、タンパク質は含まれない。(※ 2013年センター生物I本試験に出題。)

ヒトの原尿にアミノ酸は含まれる(※ 東京書籍の検定教科書で確認)。

細尿管で再吸収される成分は、主に水とグルコースと無機塩類とアミノ酸など。グルコースはすべて再吸収される。


発展: ヒト以外の尿について

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※ 人間以外の魚類などの体液や尿の生成については、啓林館と第一学習社が『生物基礎』で紹介しているが、他社が紹介しているので、wikibooksでは説明を省略。詳しくは専門『生物』で習う。かつての旧課程の生物Iでは、魚類などの尿についても範囲内だった。


水中生物の塩類濃度調節

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脊椎動物

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魚類
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※ 海水魚と淡水魚の体液の話題が、啓林館『生物基礎』と第一学習社『生物基礎』とで共通している話題である。


淡水魚と海水魚で、尿の生成のしくみが違う。なお淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。

海水と淡水では塩類濃度が違うので、尿の生成のしくみも違っていると考えられている。


  • 海水魚の場合

海水魚では、体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。なので海水魚は対策として、体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。

海水魚の尿は、体液と塩類濃度が同じくらいの尿を、少量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。


  • 淡水魚の場合

淡水魚の場合、もし体内に水が侵入してしまうと、体内の塩分が失われてしまうので、なので淡水魚は、体内の塩分を失わせないために、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。

淡水魚の尿は、体液よりも塩類濃度のうすい尿を、多量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。

そのほか
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※ 啓林館の教科書で紹介。

  • ウミガメの場合

水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(えんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。

  • 海鳥

アホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(えんるいせん)を持つ。


無脊椎動物の場合

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多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。

例外的に、いくつかの生物では発達している。

カニの場合
  • モクズガニ
川と海を行き来する。浸透圧の調節機構が発達している。
  • ケアシガニ
外洋のみで暮らす。あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。
  • ミドリイサ ガザミ (カニの一種)
河口付近に生息。浸透圧の調節機構が発達している。

ゾウリムシの場合
収縮胞で余分な水を排出する。ゾウリムシは淡水に住む。

脚注

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  1. ^ 『なるほど なっとく! 病理学』、南山堂、2019年2月14日 2版1刷、90ページ