高等学校看護 疾病と看護/薬物の作用

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薬物(やくぶつ)とは、ヒトや動物などの生体に与えたときに何らかの作用をおよぼす物質のことである。単に薬(くすり)や薬品(やくひん)という場合もある。 薬物のうち、病気の治療やケガの治療などの医療の目的に用いる薬品を医薬品という。 医学では、単に「薬」と言った場合は、毒薬や劇薬なども含む。


薬理作用[編集]

薬物が、それを与えた生物体に及ぼす作用を薬理作用(やくりさよう)という。 ここでいう作用とは、薬物による生体の何らかの変化のことであり、生体にとって有益か不利かは、作用の定義に問わない。

興奮作用と抑制作用[編集]

薬物を投与した場合、生体の器官・組織・細胞などの機能が促進される場合、その作用を興奮作用(こうふんさよう)という。 薬物を投与した場合、生体の器官・組織・細胞などの機能が低下される場合、その作用を抑制作用(よくせいさよう)という。


選択的作用と一般作用[編集]

  • 選択的作用

薬物が生体に投与されると、薬物は生体のさまざまな部位に作用をするが、薬物は部位によって作用の強さが異なる。 そして、特定の器官や組織に、強く作用が現れることがある。このことを選択的作用(せんたくてきさよう)という。

(例)

ジギタリスという植物にふくまれるジゴキシンと呼ばれる成分は、心臓の心筋の作動を強める強心作用をもつが、骨格筋には、ほとんど影響しない。

  • 一般作用

一般の多くの細胞や組織、器官において作用する場合、その作用を一般作用(いっぱんさよう)という。 消毒薬用のフェノールなど。


主作用と副作用[編集]

  • 主作用

薬の、治療目的の作用のことを主作用(しゅさよう)という。

  • 副作用

治療目的以外の作用を副作用(ふくさよう、英: side effect[1])という。(生体に有利か不利かは問わない)。


これらとは別に以下の用語がある。

  • 有害作用

その薬の投与によって起こる、生体に有害な作用を有害作用(ゆうがいさよう、英: adverse reaction[2])という。


薬物の、ある作用が、主作用か副作用かは、治療目的によって変わる。たとえばモルヒネを鎮痛薬として用いる場合、服用者に生じる便秘は副作用である。いっぽう、下痢症状に対する下痢止めとして、モルヒネを用いる場合は便秘は主作用である。

副作用と有害作用は異なる概念なので混同しないように。


直接作用と間接作用[編集]

  • 直接作用

薬物の作用のうち、最初に現れると考えられる作用を直接作用(ちょくせつさよう)という。または一次作用ともいう。

  • 間接作用

直接作用の結果、他の器官に2次的におよぼす作用を間接作用(かんせつさよう)という。または二次作用とも言う。


(例)

強心剤のジギタリスには、投与で心臓が働き血液の循環が改善された結果、腎臓による血液のろ過量が増え、尿量が増えるという利尿作用がある。この場合の利尿作用が間接作用にあたる。


局所作用と全身作用[編集]

  • 局所作用

薬物の投与した部位の付近にのみ限定して現れる作用を局所作用(きょくしょさよう)という。 局所作用を持つ薬物としては、たとえば外傷に対する軟膏。ほかには散瞳薬、局所麻酔薬などがある。

  • 全身作用

薬物が吸収されて、血流の循環により全身に運ばれて全身に現れる作用を全身作用(ぜんしんさよう)という。

脚注[編集]

  1. ^ 『NEW薬理学』、改訂第6版、607ページ
  2. ^ 『NEW薬理学』、改訂第6版、607ページ