高等学校 生物基礎/様々な植生

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校 生物基礎>様々な植生

 地球上には様々な植物が生育しています。ある場所に生育している植物の集まりを植生といいます。また、植生を外から見た時の様相を相観といい、植生の中で、個体数が多く、背丈が高くて葉や枝の広がりが大きい種を優占種といいます。一般に相観は優占種によって特徴づけられます。

植生
 植生は、直射日光を遮ると気温が下がるだけではなく、環境にも影響を及ぼします。さらに、植生は、植物が有機物を蓄えており、生態系の物質循環についても大きな役割を果たしています。日本のように、気候が温暖で、適度な降水量があるところには、高山などを除いた陸地なら、ほぼどこでも森林の植生が発達します。また、日本の国土の67%が森林です。
植生の種類
 例えば、関東地方では、コナラやクヌギなどの冬に葉を落とす落葉樹を主体とする雑木林や、シイやカシなどの冬でも葉をつけている常緑樹からなる社寺林などの森林の植生がみられます。また、洪水などによって土砂が堆積したり、生育している植物が流されたりしてしまう河川敷には、ヨシ原のような草原の植生がみられます。さらに公園の緑地、スギの植林地、作物が生育する畑など、人工的につくられた植物の集まりも植生の1つです。このように、植生には多様な種類があります。
社寺林
 神社の参道や拝所を岡むように設定・維持されている森林を社寺林といいます。

森林の階層構造[編集]

 森林は、草原や荒原に比べて植生が占める空間が大きく、構造も複雑です。

 よく発達した森林の内部を観察すると、林冠と呼ばれる森林の最上部から、林床と呼ばれる地面に近い場所まで、様々な高さの樹木や草木による階層構造をみられます。森林の階層構造は、上層部から順に高木層、亜高木層、低木層、草本層、コケ植物などが生える地表層といった構造になっています。森林内の環境も多様です。森林の植生は、草原や荒原に比べて階層構造が複雑なので、多くの動物の生活場所にもなります。森林内の光環境は、1日の時刻や季節、天気によっても変化します。

森林内の光環境
 上層の葉が密に茂ると下層への光の透過が妨げられるため、下層の日陰の程度が強くなります。しかし、林床でも木漏れ日が当たる場所は、短時間でも明るくなります。また、冬の落葉樹林の林内は秋から冬にかけて高木層の樹木が葉を落とすため、夏に比べて明るくなります。このように、森林内の光環境だけに注目しても、森林内の環境が多様です。

植生と土壌の関係[編集]

 植物は、土壌中の水や栄養分を吸収して成長します。そのため、土壌は、植物が生活する上で重要な環境要因です。土壌は、岩石が風化して出来た砂などに、落葉・落枝や生物の遺体が分解されて出来た有機物が混じり合って出来ています。落葉・落枝の分解は、ミミズ、ヤスデ、トビムシ、ダニ、ダンゴムシなどの土壌動物や細菌、キノコなどの菌類などの分解者のはたらきによって起こります。つまり、土壌の形成には、分解者が大きく関わっています

 よく発達した森林の土壌は、層状になっています。地表に近い最上層には落葉・落枝で覆われており、これを落葉層といいます。その下には落葉・落枝が分解されて出来た黒褐色の有機物(腐植質)と風化した岩石が混じった層(腐植土層)がみられます。その下には風化した岩石の層、さらにその下には風化を受けていない岩石(母岩)の層があります。

 風化した細かい岩石と腐植がまとまった粒状の構造を団粒構造といいます。

 団粒構造は保水力が高く、隙間が多いので通気性に優れています。根は、団粒構造の発達した、有機物に富む層でよく成長します。これは、水や養分の吸収が容易に行える上に、根の呼吸にも都合がよいためです。