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ChromeOS

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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ウィキペディアGoogle ChromeOSの記事があります。

Google ChromeOS[1]は、Googleが開発したクラウドベースのオペレーティングシステムで、主にChromebookと呼ばれるラップトップコンピュータに搭載されています。ChromeOSはシンプルで使いやすく、起動時間が短く、バッテリーの持ちが長いのが特徴です。また、Googleのオンラインサービスにシームレスにアクセスできるよう設計されており、GoogleドキュメントやGmailなどのアプリケーションを使用する際に最適化されています。

ChromeOS の概要

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ChromeOSは、Googleが開発したオペレーティングシステムです。このOSは、Google Chromeブラウザを基盤としており、Webアプリケーションを中心に設計されています。

ChromeOSの特徴は、その軽量性と高速性にあります。データは主にクラウド上のサーバーに保存されることを前提としており、ローカルストレージの代わりにGoogle Driveなどのオンラインストレージサービスが使用されます。このため、ユーザーはインターネット接続さえあれば、どこからでもデータにアクセスすることが可能です。また、Googleの各種サービスとの統合が進んでおり、Googleドキュメント、Gmail、Googleカレンダーなどをスムーズに利用することができます。

ChromeOSは、Chromebookと呼ばれるノートパソコンや、Chromeboxと呼ばれるデスクトップコンピュータなどのデバイスで利用されています。セキュリティが強化されており、OSは自動的にアップデートされるため、セキュリティ上のリスクを最小限に抑えることができます。また、最近ではAndroidアプリの実行にも対応しており、これにより、ChromeOS上でより多くのアプリケーションを利用することが可能となっています。さらに、Linuxアプリケーションのサポートも進んでおり、開発者や技術者にとっても便利な環境が整っています。

ChromeOS の利点

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ChromeOSの利点は、以下の通りです。

  1. 高速かつ軽量:ChromeOSは、高速かつ軽量であり、起動時間が短く、アプリケーションの起動も迅速です。そのため、生産性が向上し、快適な使用感が得られます。
  2. セキュリティ:ChromeOSは、セキュリティが強化されています。自動的にアップデートされるため、最新のセキュリティパッチが適用され、セキュリティ上のリスクを最小限に抑えることができます。また、アップデートプロセスは非常に迅速で、通常数分以内に完了します。このため、常に安全な環境で作業することができます。
  3. 簡単な管理:ChromeOSは、クラウドベースの管理システムであるGoogle Workspaceと統合されており、デバイスの管理が簡単です。一度に多数のデバイスを効率的に管理できるため、大規模な展開や運用に適しています。
  4. オフラインでの使用:ChromeOSは、オフラインでも使用可能です。Google Driveなどのオンラインストレージにデータを保存することで、インターネット接続がない環境でも作業を続けることができます。これにより、インターネット接続が不安定な場所でも安心して使用できます。
  5. Androidアプリの利用:ChromeOSは、Androidアプリの実行が可能です。これにより、多数のアプリケーションが利用でき、より多様な用途に対応できます。ユーザーは、ChromeOS上で豊富なアプリケーションのエコシステムを享受できます。
  6. 低価格:Chromebookは、他のノートパソコンと比べて低価格であり、コストパフォーマンスが高いため、学校や企業などでの大規模な展開に適しています。経済的な選択肢として、多くの場面で活用されています。
Google ChromeOS Flex
ChromeOS Flexは、Neverwareが開発したCloudReady OSの改良版で、NeverwareがGoogleの傘下に入った後にさらなる開発が行われているオペレーティングシステムです。中古パソコンにChromebookと同等の操作性を提供することができ、純正のChromebookと同様に、高速な起動時間や長時間のバッテリー寿命が特長です。
概要

ChromeOS Flexの最大の利点は、認定された中古パソコンにインストールできる点です。ただし、通常のChromebookとは異なり、Google PlayやAndroidアプリ、仮想マシンのサポートはありません。代わりにPWA(Progressive Web Apps)をサポートし、Linux環境も利用可能です。また、低スペックのパソコンにも対応しているため、既存のハードウェアを再利用することができます。

システム要件

ChromeOS Flexを利用するには、以下のスペックが必要です:

  • Intel または AMD x86 64ビットプロセッサ(2010年以降推奨)
  • メモリ: 4GB以上(推奨)
  • 内蔵ストレージ: 16GB以上
  • UEFI対応(レガシーBIOSは非推奨)
  • USBブート機能
導入状況

ChromeOS Flexを利用して中古パソコンを販売している業者も存在し、エンタープライズ向けの管理機能も提供されています。認定デバイスのリストは定期的に更新され、対応機種は増加傾向にあります。

この取り組みは中古パソコンの再利用を促進し、電子廃棄物の削減にも貢献しています。

注目の背景
Microsoft Windows 11のシステム要件[2]が発表され、TPM 2.0などの要件により多くのPCがサポート対象外となることが明らかになりました。これにより、ChromeOS Flexは既存PCの延命策として注目を集めることとなりました。ChromeOS Flexは、セキュリティ面でも優れた特長を持ち、企業や教育機関での導入も進んでいます。
GIGAスクール構想
GIGAスクール構想は、日本の文部科学省が2019年に開始した取り組みで、全国の児童・生徒に1人1台のコンピューターと高速ネットワークを整備することを目的としています。この取り組みは、学校のICT環境が脆弱であり、地域間での整備状況に大きな格差があるという危機的な状況に対処するために始まりました。GIGAスクール構想は、2019年12月に閣議決定され、2021年度3月までに1,742自治体など(96.1%)が整備を完了し、小・中学生一人一台教育用端末の整備がほぼ完了しました。

ChromeOSは、『GIGAスクール構想の実現 標準仕様書』[3]で、「学習者用コンピュータ(児童生徒用)」として指定された3つのオペレーティングシステムの1つとして挙げられています。具体的には、以下の3種類です。

  1. Microsoft Windows 端末
  2. Google ChromeOS 端末
  3. iPadOS 端末
これらの中で、ChromeOSが全体の40.1%、Windowsが30.4%、iPadOSが29.0%と[4][5]、ChromeOSの採用が目立ちました。GIGAスクール構想でChromeOSの採用が多かった理由として、さまざまな分析がありますが、標準仕様書のハードウェア・スペックは当時の水準から考えても比較的低く、特にChromeOSとWindowsを比較すると、ストレージの容量以外は同じスペックであり、相対的に使用資源が少ないChromeOSが軽快に動作し、Windowsが鈍重に感じられることが一因として挙げられます。

以下に、ChromeOS、Windows、iPadOSの比較を表形式でまとめました。

ChromeOS、Windows、iPadOSの比較
機能/特徴 ChromeOS Windows iPadOS
セキュリティ性 高い 平均的 高い
ハードウェア要件 低い 高い 平均的
ソフトウェア/アプリケーション Google Playストアのアプリ、Linuxアプリに対応 多数のソフトウェア/アプリケーションに対応 App Storeのアプリに対応
オフライン利用 一部のアプリ/機能のみ利用可 多数のアプリ/機能がオフライン利用可 一部のアプリ/機能のみ利用可
マルチタスク性 高い 高い 平均的
ファイル管理 Google Driveを中心にしたクラウドストレージ ローカルストレージやクラウドストレージに対応 iCloudを中心にしたクラウドストレージ
タッチスクリーン対応 一部のデバイスに対応 一部のデバイスに対応 ほぼ全てのデバイスに対応
ペン入力対応 一部のデバイスに対応 一部のデバイスに対応 ほぼ全てのデバイスに対応
価格 低価格から中価格 低価格から高価格 中価格から高価格

以上のように、ChromeOSは低価格でありながらセキュリティ性が高く、Google PlayストアのアプリやLinuxアプリに対応している点が特徴的です。

一方、Windowsは多数のソフトウェア/アプリケーションに対応しているものの、価格が高く、ハードウェア要件が高いために高性能なデバイスが必要になることがあります。

iPadOSは、タッチスクリーンやペン入力に対応しており、クラウドストレージにはiCloudがありますが、比較的高価なデバイスが多い点が特徴的です。

デバイスのセットアップ

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Chromebookのセットアップには、以下の手順が含まれます。

Chromebookの起動

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Chromebookを開封し、電源ボタンを押して起動します。初回起動時には、言語設定、キーボードの設定、ネットワーク接続の設定を行う必要があります。

Wi-Fi接続

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初回起動時には、Wi-Fi接続の設定を行う必要があります。接続先のWi-Fiネットワークを選択し、パスワードを入力することで、接続が完了します。

Googleアカウントの設定

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初回起動時には、Googleアカウントの設定も必要です。すでにGoogleアカウントを持っている場合は、そのアカウントでログインします。Googleアカウントを持っていない場合は、新しいアカウントを作成することができます。

Googleアカウントの設定が完了すると、Chromebookは自動的にGoogleのサービスと同期され、Googleドライブ、Gmail、Googleカレンダーなどのアプリケーションを利用できるようになります。

以上がChromebookのセットアップの基本的な手順です。Chromebookは簡単にセットアップでき、使いやすく、安全なオペレーティングシステムです。

Chromebookの基本操作

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Chromebookの基本操作には、以下の手順が含まれます。

デスクトップとシェル

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Chromebookのデスクトップは、Google Chromeブラウザのウィンドウとして表示されます。アプリケーションを起動するには、左下のアプリ一覧からアプリをクリックするか、タスクバーにピン留めすることができます。

Chromebookのシェルは、Linuxベースのターミナルウィンドウとしてアクセスできます。シェルを開くには、Ctrl + Alt + Tを押して、ターミナルウィンドウを開くことができます。

ウィンドウの操作

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Chromebookでは、複数のウィンドウを同時に開いて作業することができます。ウィンドウの移動は、Alt + Tabを使用することで行えます。ウィンドウの最大化と最小化は、ウィンドウ右上のアイコンをクリックすることで行えます。また、ウィンドウのサイズを調整するには、ウィンドウの右下にあるサイズ変更アイコンをクリックして、ウィンドウのサイズを変更することができます。

ファイルの管理

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Chromebookでは、Google Driveやローカルストレージを使用して、ファイルの管理を行うことができます。Google Driveには、ドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーション、PDFファイルなどを保存できます。ローカルストレージには、写真、音楽、ビデオ、ダウンロードファイルなどを保存できます。

ファイルを開くには、Google Driveやローカルストレージからファイルをクリックするか、Chromebookのファイルマネージャーを使用することができます。ファイルマネージャーには、フォルダー、ファイル、ドライブなどが表示されます。ファイルマネージャーを開くには、タスクバーからファイルマネージャーアイコンをクリックします。

以上がChromebookの基本操作の手順です。Chromebookは、シンプルで使いやすいオペレーティングシステムであり、高速かつ軽量なため、生産性を向上させるために必要な操作が簡単に行えます。

Googleアプリケーションの使い方

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ChromeOSには、Googleのさまざまなアプリケーションが搭載されています。以下では、主要なアプリケーションであるGmail、Googleドライブ、Googleカレンダーの使い方を紹介します。

Gmail

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Gmailは、Googleが提供するメールサービスです。Chromebookのデフォルトのメールアプリケーションとして使用することができます。Gmailは、スパムフィルター、自動返信、カレンダーとの連携、複数のアカウントの管理など、多数の便利な機能を提供しています。 Gmailを使用するには、Googleアカウントにログインする必要があります。ログイン後、左側のサイドバーからメールを送信したり、受信したりすることができます。また、Gmailの検索機能を使用して、過去に受信したメールを検索することもできます。

Googleドライブ

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Googleドライブは、クラウドストレージサービスであり、Googleが提供するオンラインストレージサービスです。Googleドライブには、ドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーション、PDFファイルなどのドキュメントを保存できます。また、Googleドライブに保存されたドキュメントは、Googleの共同編集機能を使用して、複数の人が同時に編集できます。 Googleドライブを使用するには、Googleアカウントにログインする必要があります。ログイン後、Googleドライブのウェブサイトにアクセスすることができます。ファイルのアップロード、共同編集、フォルダーの作成、共有など、多数の便利な機能を提供しています。

Googleカレンダー

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Googleカレンダーは、Googleが提供するカレンダーアプリケーションです。Googleカレンダーには、予定の作成、共有、通知、リマインダーなど、多数の便利な機能があります。 Googleカレンダーを使用するには、Googleアカウントにログインする必要があります。ログイン後、Googleカレンダーのウェブサイトにアクセスすることができます。予定の作成や共有、通知、リマインダーなど、多数の便利な機能を提供しています。

以上が、Chromebookに搭載されている主要なGoogleアプリケーションの使い方です。これらのアプリケーションは、Googleアカウントにログインするだけで利用することが可能です。

Chromebookの高度な操作

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以下は、Chromebookの高度な操作に関する内容です。

キーボードショートカット

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Chromebookには、多数のキーボードショートカットが用意されています。これらのショートカットを使用することで、タブの切り替え、画面のスクロール、ウィンドウの最大化/最小化などを簡単に行うことができます。

Chromebookの主なキーボードショートカットには、以下のものがあります。

  • Ctrl + Alt + T: ターミナルを開く
  • Alt + 検索キー: アプリケーションメニューを開く
  • Ctrl + Shift + Q (2回): Chromebookをシャットダウンする
  • Ctrl + Shift + L: ログアウトする
  • Ctrl + Shift + W: タブをすべて閉じる
  • Ctrl + Shift + N: シークレットウィンドウを開く

Chromebookの設定

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Chromebookの設定は、Chromebookのステータスエリアをクリックして、設定アイコン(⚙)を選択することでアクセスできます。設定アイコンをクリックすると、Wi-Fi、Bluetooth、音量、スクリーンの明るさなど、多数の設定を変更できるメニューが表示されます。

Chromebookの設定メニューには、Chromebookの管理、デバイス、システム、アプリなどのカテゴリがあります。各カテゴリには、多数の設定項目が含まれています。たとえば、「デバイス」カテゴリには、マウス、タッチパッド、外部ディスプレイ、ストレージなどの設定項目があります。

Linuxアプリケーションのインストール

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Chromebookには、Linuxアプリケーションをインストールして使用することができます。Linuxアプリケーションをインストールするには、ChromebookにLinux開発環境をインストールする必要があります。

Linuxをインストールするには、Chromebookの設定メニューで「デベロッパー » Linux開発環境」オプションを有効にします。Linuxが有効になった後、Linux用のターミナルが利用可能になります。

Linux用のターミナルを使用して、DebianベースのLinuxパッケージ管理システムである「apt-get」を使用して、Linuxアプリケーションをインストールすることができます。

ChromeOSにおけるLinuxサポートの概要

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ChromeOSは、Linuxアプリケーションを安全に実行するための仮想化環境を提供しています。この機能は「Linux開発環境」または「Crostini」として知られ、開発者やパワーユーザーがChromeOS上でLinuxアプリケーションを利用できるようにします。

アーキテクチャ概要

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ChromeOSのLinux実行環境は、以下のような階層構造になっています:

  1. 最上位層:ChromeOS(ホストOS)
  2. 仮想化層:KVMベースの仮想マシン(termina)
  3. コンテナ層:LXDで管理されるDebianベースのLinuxコンテナ(penguin)
  4. アプリケーション層:Linuxアプリケーション

主要な要素

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ChromeOSにおけるLinuxアプリケーション実行には以下の要素が含まれています:

基盤システム

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Crostini
ChromeOSの仮想化機能の総称です。以下の特徴があります:
  • セキュリティを重視した設計で、Linuxアプリケーションをホストシステムから隔離
  • ファイルシステムの共有やクリップボードの連携機能を提供
  • GPUアクセラレーションのサポート
  • ネットワークアクセスの管理
termina
ChromeOSの仮想化マネージャで、以下の役割を持ちます:
  • KVMベースの軽量な仮想マシンを実行
  • システムリソースの管理
  • セキュリティ境界の確立
  • ホストOSとゲストOS間の通信制御

コンテナ管理

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LXD
高レベルのコンテナ管理ツールで、以下の機能を提供:
  • コンテナのライフサイクル管理(作成、起動、停止、削除)
  • リソース制限の設定
  • ストレージプールの管理
  • ネットワーク設定
  • スナップショットとバックアップ
LXC
低レベルのLinuxコンテナ技術で、以下の特徴があります:
  • 軽量な仮想化環境の提供
  • システムコンテナのサポート
  • カーネル名前空間の分離
  • リソース管理機能

インターフェース

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Wayland
最新のディスプレイサーバーで、以下の役割を担います:
  • グラフィカルアプリケーションの表示管理
  • ウィンドウマネージャとの連携
  • HiDPIサポート
  • タッチスクリーン入力の処理
crosh
ChromeOS用のシェル環境で、以下の機能を提供:
  • 開発者向けコマンドラインインターフェース
  • システム診断コマンド
  • ネットワーク設定ツール
  • デバッグ機能

管理ツール

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vsh
仮想マシン操作ツールで、以下の機能があります:
  • Crostini環境へのシェルアクセス
  • 仮想マシンの状態確認
  • コマンドライン操作の実行
vmc
仮想マシン管理ツールで、以下の操作が可能:
  • 仮想マシンの起動/停止
  • コンテナの作成/削除
  • ネットワーク設定の変更
  • ディスク容量の管理

Freon

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ChromeOSのグラフィックススタックの一部で、以下の機能を提供します:
  • GPUリソースの管理
  • GPUドライバの効率的な利用
  • 低レイテンシのグラフィックス処理

Project Lacros

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ChromeOS上でのLinuxアプリケーションの実行をさらに向上させるプロジェクトです。以下の特徴があります:
  • LinuxアプリケーションをChromeブラウザと統合することにより、ネイティブアプリケーションのように動作させる
  • ユーザー体験の向上を目指した新しいアーキテクチャを開発中

動作の流れ

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  1. ユーザーがLinuxアプリケーションを起動
  2. ChromeOSがterminaを通じて仮想マシンを管理
  3. LXDがLinuxコンテナ内でアプリケーションを実行
  4. WaylandがGUIアプリケーションの表示を処理
  5. ChromeOSのウィンドウマネージャがアプリケーションウィンドウを管理

この階層化された構造により、セキュリティを確保しながら、ChromeOS上でLinuxアプリケーションをネイティブに近い性能で実行することが可能になっています。

ChromeOSとWayland

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ChromeOSは、Waylandと互換性を持つ部分もありますが、独自のディスプレイサーバーとウィンドウ管理システムを採用しているため、完全にWaylandに基づいているわけではありません。以下、ChromeOSとWaylandの関連について詳しく解説します。

ChromeOSのディスプレイスタック

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ChromeOSはもともと、X11やWaylandとは異なる独自のグラフィックススタックを使用していますが、特定の条件下でWayland互換を提供しています。以下のような設計が特徴です。

Freon
ChromeOSは以前はX11を一部で使用していましたが、「Freon」と呼ばれる独自のディスプレイ管理システムに切り替わっています。Freonは直接グラフィックハードウェアにアクセスし、レンダリングを効率化しています。この変更により、X11に依存しない軽量なグラフィックススタックが実現され、リソース消費の低減やパフォーマンス向上に寄与しています。
Waylandプロトコルの部分採用
ChromeOSでは、特にLinuxアプリケーションサポート(Crostiniプロジェクト)において、Waylandプロトコルが部分的に使用されています。これにより、Wayland対応のLinuxアプリケーションがChromeOS上でシームレスに動作するようサポートされています。ただし、完全なWayland実装ではなく、ChromeOSのウィンドウ管理システムと統合された形で提供されています。
Exoコンポジタ
ChromeOSには「Exo」と呼ばれる独自のコンポジタがあり、これがWaylandクライアントに対してプロトコルの一部をエミュレートしています。ExoはWaylandと互換性を持ちながら、ChromeOSの固有のウィンドウ管理スタイルやアプリケーションの動作をサポートする役割を果たしています。特に、Crostini(Linuxアプリケーションのサポート)でLinuxアプリがChromeOS上で統合される際に使用されています。
ARC(Android Runtime for Chrome)との連携
ChromeOSではAndroidアプリケーションも動作するため、WaylandベースのアプリとAndroidアプリが混在しています。ARCは独自のグラフィックス層を持ち、AndroidアプリケーションをChromeOSに統合するための役割を担っています。Waylandベースのアプリとは異なるものの、ChromeOS全体としてはシームレスなウィンドウ管理が提供されています。

ChromeOS上でのWaylandアプリケーションの動作

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ChromeOSでLinuxアプリを動作させる際、Waylandプロトコルを通じて動作するアプリケーションのサポートが可能です。Waylandプロトコル対応のアプリケーションはExoコンポジタを介してChromeOSのディスプレイ環境に表示されます。このプロセスには次のようなポイントが含まれます。

Crostiniとの連携
ChromeOSのLinux環境であるCrostiniでは、Waylandプロトコルの一部を利用してLinuxアプリケーションが動作します。これにより、ChromeOS上のLinuxウィンドウがネイティブに動作するように表示されます。実際にはWayland互換の仮想ディスプレイが設定されており、Exoを介してChromeOSの画面に描画されます。
Sommelier
ChromeOSでは、LinuxアプリケーションをWaylandまたはX11の両方でサポートするために、「Sommelier」と呼ばれる中間層が使用されます。Sommelierは、Waylandプロトコルを利用してChromeOSのディスプレイサーバーと通信し、ChromeOSのウィンドウ管理に適応します。これにより、LinuxアプリケーションがChromeOS上でまるでネイティブアプリのように動作します。

まとめ

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ChromeOSは独自のFreonおよびExoを使用しており、完全なWaylandスタックに基づいているわけではありません。しかし、Waylandプロトコルを一部採用し、Linuxアプリケーションのサポートを実現するために互換性が提供されています。特にCrostiniやSommelierの導入により、WaylandアプリケーションをChromeOS上でシームレスに動作させる環境が整えられ、ユーザーはChromeOSのシンプルなインターフェースで多様なアプリケーションを利用できます。

トラブルシューティング

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以下は、Chromebookのトラブルシューティングに関する内容です。

Chromebookの問題の特定

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Chromebookには、多数の問題が発生する可能性があります。たとえば、Chromebookが起動しない、Wi-Fiに接続できない、アプリケーションがクラッシュするなどの問題があります。

問題を特定するには、Chromebookの設定メニューで「問題の解決」オプションを使用します。問題の解決オプションを使用すると、問題が発生したときに取るべき手順が表示されます。たとえば、Wi-Fiに接続できない場合は、Wi-Fiアイコンをクリックして「問題の解決」オプションを選択することができます。問題の解決オプションを使用しても問題が解決しない場合は、Googleのサポートに連絡することができます。

ネットワーク接続の問題解決

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Chromebookでネットワーク接続の問題が発生した場合は、以下の手順を実行して解決することができます。

  • Wi-Fiをオンにする
  • Wi-Fiアイコンをクリックして、接続したいWi-Fiネットワークを選択する
  • Wi-Fiネットワークに接続できない場合は、パスワードが正しいことを確認する
  • Wi-Fiネットワークに接続できない場合は、ルーターの再起動を試みる
  • ルーターの再起動が効果がない場合は、Chromebookを再起動する

システムのリセット

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Chromebookのシステムをリセットすることで、問題を解決することができます。システムをリセットするには、以下の手順を実行します。

  • Chromebookをシャットダウンする
  • パワーボタンを押して、Chromebookを再起動する
  • Chromebookのログイン画面で、Esc + Refresh + Powerを同時に押す
  • 「Powerwash」オプションを選択して、Chromebookをリセットする

システムをリセットすると、Chromebookのすべてのデータと設定が削除されます。リセット後に再びログインすると、Chromebookは新しい状態で開始されます。

ChromiumOSとChromeOS
Chromium OSとChromeOSは、Googleによって開発されたオペレーティングシステムです。

Chromium OSは、Googleがオープンソースで開発しているオペレーティングシステムで、主にWebアプリケーションの実行を目的としています。Chromium OSは、Chromeブラウザをベースとしており、Googleが提供する多くのWebアプリケーションをサポートしています。また、Chromium OSは、セキュリティを強化するために、アプリケーションの実行をサンドボックス化するなどの機能を備えています。Chromium OSは、オープンソースであるため、誰でも自由に使用、改変、配布することができます。

一方、ChromeOSは、Chromium OSをベースにGoogleが開発した商用のオペレーティングシステムです。ChromeOSは、Chromium OSと同様にWebアプリケーションの実行に特化していますが、商用製品として提供されるため、セキュリティやユーザーインターフェースなどの点で、より洗練された仕組みを備えています。また、ChromeOSは、Chromebookというハードウェアプラットフォームに最適化されており、ChromebookにはChromeOSがプリインストールされています。

簡単に言えば、Chromium OSはオープンソースのプロジェクトで、誰でも自由に使用できるオペレーティングシステムであり、一方のChromeOSは商用のオペレーティングシステムであり、Googleが提供するハードウェアプラットフォームでのみ使用できます。

脚註

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  1. ^ 公式では「ChromeOS」と「Chrome OS」の表記が混在していますが、本項では「ChromeOS」に統一しました。
  2. ^ Windows 11 の仕様、機能、コンピューターの要件を確認する
  3. ^ GIGAスクール構想の実現 標準仕様書(2022-09-03 閲覧)
  4. ^ GIGAスクール端末の利活用 小学校84%、中学校91%が全学年で開始 - データは語る:日経クロステック Active
  5. ^ 原資料ではiOSと記載されていましたが、iPadのOSはiPadOSであり、『GIGAスクール構想の実現 標準仕様書』でも「iPadOS 端末」としているため、iPadOSとしました。

外部リンク

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