Inkscape
Inkscapeとは[編集]
Inkscapeとは、Linux、Windows、MacOSXで稼動するドロー系のグラフィックアプリケーションである。ベクトル画像を含むSVGファイルの作成、編集が可能である。本書ではWindows版のInkscape0.43についての操作法を説明する。
Inkscapeの特長[編集]
下記のような特長(機能)を持っている。
- 作図ツール
- 線(直線・ベジェ曲線・フリーハンド線・カリグラフィ線)
- 楕円弧(円、円弧、楕円)
- 四角形(長方形・正方形)/ 多角形(星形)
- テキスト
- その他(渦形 / コネクター)
- 編集
- オブジェクトの移動、回転、対称化、整列
- 要素のノードの移動、追加、削除など
- オブジェクトの連結、
- レイヤー
- グループ化
- クローン
- テキスト表現(パス上に配置、フレーム内テキスト、カーニング、文字間)
- その他
- ビットマップ画像のインポート、イクスポート
- ビットマップのトレース
- タブレットのサポート(筆圧)
- SCRIPTによる拡張
- XMLエディター
SVGファイルとは[編集]
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コンピュータで扱われる画像の種類にはビットマップ画像とベクトル画像に大別される。ビットマップ画像というのは画像を色情報を持たせた画素を並べて表現したもので、これに対してベクトル画像は円弧、直線などの要素を位置、色、形態などを指定することにより表現したものである。同じ形状のものをビットマップ画像とベクトル画像で表現した場合には縮小した場合には同じように見える場合であっても拡大表示した場合には図2,3で示すように違いがある。
Inkscapeで扱うSVGファイルとは、Scalable Vector Graphicsを省略したものであり、ベクトル画像を扱うことができるものである。
インストール方法[編集]
ウィンドウズのレジストリにインストールする通常版と、レジストリにインストールしないで使えるポータブル版がある。
下記の操作手順は、主に通常版をインストール手順の説明である。
どちらにせよ、普通に公式サイトでインストーラ-ダウンロードしてきてから、手元のパソコンでインストーラーを実行すればいい。インストールに必要な容量は数百MBあるので、もし不足してるなら、あらかじめ容量を確保しておく。
- 手順
- Inkscapeの公式サイトからダウンロードする。
- 「Download」などと書かれたボタンを押すと、どのバージョンをダウンロードするかの新規画面が現れるので、その画面内にある選択したいバージョンを選ぶ。
- ダウンロードしたinkscapeファイル(インストーラー)を実行する。(安全のため、実行中の他のプログラムは終了させると、なお良い。)
- ライセンス (GNU) の確認をいわれるので、チェックをしてから、「Next」などを選択。
- インストールさせたいコンポーネントの確認が行われるので、コンポーネントを選ぶ。
- インストール場所の確認(初期設定ではC:\Program files\Inkscape)=よければInstallを選択。
- ファイルの展開が始まる。
- インストール終了表示が出るので、Finishを押すと、インストーラーのウィンドウが自動的に閉じられる。
なお、インストール時の表示は英語となっているが、Inkscapeを実行した際には日本語表示となる(Windowsのコントロールパネルの言語設定を変えれば英語表示となる)。
- 一部の環境においてインストール中にAdobe SVG Viewerのインストール / アップデート / 使用許諾契約の同意を促されることがある。ユーザにとっては予想外かもしれないが、これは.SVGに対する関連付けが追加されることによって規定のブラウザ側が行っている動作(IE6を規定のブラウザにした、他に.SVGを表示できるソフトの入っていないXPで現象に遭遇)。Adobe SVG Viewerを使用しない(=ブラウザで見ない / 他のプラグインを使う)場合は同意する必要はない。
起動と終了[編集]
起動と終了の方法は他のアプリケーションソフトと同じ。
起動方法[編集]
普通のアプリと同様、実行ファイルへのショートカットをクリックすればいい。
- デスクトップ上のInkscapeショートカットアイコンをクリック
- windowsのスタート>プログラム>Inkscape>Inkscape
- エクスプローラなどで編集対象のファイルを選択し、マウス右クリックにより編集、あるいはInkscapeをクリック
- 起動すると次項に示すアプリケーションウインドウが開く。
終了方法[編集]
- アプリケーションウインドウの右上のXボタンをクリック。
または
- メニューバーからファイル>終了(閉じる)をクリック。
画面の説明[編集]
操作方法[編集]
ファイルの操作[編集]
オブジェクトの作成[編集]
- フリーハンド線
- ツールボックスで鉛筆アイコンを選択(あるいはF6キーを押す)。
- 描きたい個所でマウスの左ボタンをクリックしながらドラッグする。ドラッグ時の軌跡がフリーハンド線となる。このツールが選択されている場合には鉛筆形のマウスポインタとなっている。
- ベジェ線/直線
- ツールボックスで鉛筆アイコンを選択(あるいはShift+F6キーを押す)。
- このツールが選択されている場合には鉛筆形のマウスポインタとなっている。
- 直線の場合には描きたい線の始点でマウスの左ボタンをクリック、終点としたい位置で再度クリックする。始点を指定後にはステータスバーにマウスポインタの位置に応じて長さ、角度が表示される。コントロールキーを押しながら操作することで15度単位の角度直線を描くことができる。端点の位置をクリックして指定することで連結された直線を描くことができる。なお指定する端点を始点の□に合わせる(赤くなる)ことで閉じた線を描くことができる。
- ベジェ線の場合には...
- カリグラフィック線
- ツールボックスで鉛筆アイコンを選択(あるいはコントロール+F6キーを押す)。
- このツールが選択されている場合にはS形のマウスポインタとなっている。操作はフリハンド線とほぼ同じである。ただカーソルキー(矢印キー)を押すことで幅、角度を変えることができる。
- 長方形・正方形
- ツールボックスで□アイコンを選択(あるいはF4キーを押す)。
- 描きたい個所でマウスの右ボタンをクリックしながらドラッグ、ボタンをはなすことで四角形状を描くことができる。このツールが選択されている場合には長方形のマウスポインタとなっている。なおコントロールキーを押しながら操作することで正四角形状とすることができる。また描かれた図形はメニューバー下のツールコントロールの設定を変えることにより幅、高さ、あるいは角の丸めを変えることができる。なお描かれる図形は後述のフィル / ストローク設定の線、塗りのものとなる。
- 円・円弧
- ツールボックスで○アイコンを選択(あるいはF5キーを押す)。
- 描きたい個所でマウスの右ボタンをクリックしながらドラッグ、ボタンをはなすことで楕円形状を描くことができる。このツールが選択されている場合には楕円形のマウスポインタとなっている。なおコントロールキーを押しながら操作することで正円形状とすることができる。またメニューバー下のツールコントロールの設定を変えることにより始点、終点を指定した弧形状を描くことができる。なお描かれる図形は後述のフィル / ストローク設定の線、塗りのものとなる。
- 星・多角形
- ツールボックスで☆アイコンを選択(あるいは*キーを押す)。
- 描きたい個所でマウスの右ボタンをクリックしながらドラッグ、ボタンをはなすことで5角の星形状を描くことができる。このツールが選択されている場合には星形のマウスポインタとなっている。ツールコントロールの設定部で多角形としたり角数を変えたり凹凸度、あるいは角部を丸めたりすることができる。なお描かれる図形は後述のフィル / ストローク設定の線、塗りのものとなる。
- 螺旋
- ツールボックスで渦アイコンを選択(あるいはF9キーを押す)。
- 描きたい個所でマウスの右ボタンをクリックしながらドラッグ、ボタンをはなすことで螺旋形状を描くことができる。このツールが選択されている場合には渦巻形のマウスポインタとなっている。ツールコントロールの設定部で螺旋の巻き方を変えることができる。なお描かれる図形は後述のフィル / ストローク設定の線、塗りのものとなる。
- テキスト
- ツールボックスでA形のアイコンを選択(あるいはF8キーを押す)。
- このツールが選択されている場合にはA形のマウスポインタとなっている。方法として2つある。
- 文字を描きたい個所でマウスの右ボタンをクリックし、キーボードより文字を入力する。パスに沿わせる、フレームに入れるなどの編集が可能(後述)。
- 文字を描きたい個所でマウスの右ボタンをクリック、ドラッグしながら範囲を指定し、キーボードより文字を入力する。文字が範囲外となった場合には折り返される。
- また、入力バーが文字の前にある場合、「Alt」+「方向キー」でカーニング(字間の調整)ができる。
テキスト[編集]
- 注意事項 テキストで表示できる文字は、使用しているパソコンにフォントがインストールされている文字のみである。もし、相手のパソコンにフォントがインストールされていない場合、文字をパス化して、SVG図形に変換する必要がある。文字のパス化は不可逆であるので、いったん保存してしまったら戻せない。なので、パス化する前のテキストをふくむファイルを自分の手元に保管しておく必要がある。
オブジェクトの編集[編集]
- フィルとストローク
- 画面左下あたりに存在するフィル/ストロークの太さ設定欄が存在する。コマンドバーにある「フィル / ストローク」 (Shift+Ctrl+F) で設定用のダイアログが開き、オブジェクトを選択することで、そのオブジェクトのフィルとストロークの変更ができる。
- また、全項目の下部にある「透過性」は色の透過性ではなく、オブジェクト自体のものを指し、色の指定とは独立している。
- フィル・ストローク
- フィル(塗り)とストロ-ク(輪郭線)の編集を行う。
- 「なし」(塗りなし) 「フラットカラー」(べた塗り) 「線形グラデーション」「放射状グラデーション」「パターン」が選択できる。
- 色を指定のほか、透過性(αチャンネル)の指定も行える。
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- ストロークスタイル
- 線の幅・頂点の処理の仕方、線の先端・中心・終端の形状が選択できる。
- 実線と多様な点線から、用いる線の選択もできる(数字は、点線の切れ込みなどの位置を示しており、0.0から10.0まで動かすことができる)。
- テキストとフォント
- コマンドバーにある「テキスト / フォント」 (Shift+Ctrl+T) で設定用のダイアログが開く、テキスト (F8) で作成したオブジェクトの編集が出来き、使用するフォントとスタイル、レイアウトの指定が出来る。
- スタイルは、Regular(そのまま)、Bold(太字)、Italic(斜体)、BoldItalic(太字な斜体)の4つ。
- レイアウトにある「線の間隔」は意味を取りにくいが、行間を指している。
- 注意としては、フォントの種類によってはInkscapeで使用できない場合や、スタイルの選択に制限がある場合がある。
- また、(日本語フォントが中心であるが)レイアウトで縦書きを使用した場合に、字間が広くなる場合もあり、このときには、横書きのまま一文字ずつ改行をし、中央配置にすることで暫時的に縦書きを実現できる。
キー操作[編集]
- 以降にInkscapeで使用するキーを記すが、ツール・ダイアログの呼び出しは各項を参照のこと。
- Ctrl + Z やりなおし Ctrl + C コピー Ctrl + X 切り取り Ctrl + V 貼り付け
- また、Ctrlキーを押した状態では、四角形の作成が正方形になる、カリ直線では直線の角度が限定される、オブジェクトの変形では縦横の比を保持したままの変形になるなどの変化がある。
- そのほか、Shiftキーを押した状態でクリックを繰り返すことで複数のオブジェクトの選択が出来る(Windowsでは一般にCtrlで行う操作であり注意が必要)。
レイヤーの操作[編集]
いちおうレイヤー機能が存在するが、あまり高性能ではない。 Photoshopのような直感的なレイヤー管理は困難である。
- レイヤーは[メニューバー]の[レイヤー]にメニューがあり、新規レイヤーの作成・レイヤーの名称変更・移動のほか削除が出来る。
- また、ステータスバーには現在、アクティブ(選択している)なレイヤーが表示され、レイヤーの選択・可視化・不可視化・ロックとロック解除が実行できる。ロックしたレイヤーのオブジェクトは選択が出来なくなり、改変する恐れや位置を変更する恐れがなくなる。
外部リンク[編集]
- Inkscape. Draw Freely. (公式ウェブサイト、大部分が英語表記)
- SourceForge.net: Inkscpae Portable
- Inkscapeの使い方掲示板
- Inkscaper