Meson

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Meson(メソン)は、効率的で使いやすいビルドシステムであり、ソースコードの管理を簡素化し、様々なプログラミング言語やプロジェクトに柔軟に対応します。 Pythonで開発され、C、C++、Rust、Java、Pythonなどの言語をサポートしており、複雑なビルドタスクをシンプルな構文で自動化します。 Mesonは読みやすく記述しやすいPythonに似た構文を使用し、NinjaやVisual Studioなどのバックエンドを利用して高速なビルドを提供します。 クロスプラットフォームで動作し、Linux、Windows、macOSなどで開発が可能であり、モジュール化された設計により外部ライブラリの統合や独自のカスタムルールの追加が容易です。 アウトオブツリービルドをサポートしており、ビルドディレクトリをソースコードとは別に保持することでビルドシステムのクリーンさを維持します。 MesonのインストールはPythonとpipを使用して行い、バージョン確認後、プロジェクトのビルドや管理にMesonを導入することができます。

はじめに[編集]

Meson(メソン)は、効率的で使いやすいビルドシステムであり、様々なプログラミング言語やプロジェクトに対応しています。この章では、Mesonビルドシステムの基本的な概要とその利点について紹介します。

Mesonとは何か?[編集]

Mesonは、プロジェクトのビルドを自動化し、ソースコードの管理を簡素化するためのツールです。MesonはPythonで書かれており、複雑なビルドタスクをシンプルな記述で行うことができます。C、C++、Rust、Java、Pythonなどの言語をサポートしており、さまざまな種類のプロジェクトに柔軟に対応しています。

Mesonの特徴[編集]

Mesonの特徴は以下のとおりです。 シンプルな構文: MesonのビルドファイルはPythonに似た簡潔な構文を使用しており、読みやすく記述しやすいです。 高速なビルド: NinjaやVisual Studioなどのバックエンドを使用することで、Mesonは高速なビルドを実現します。 クロスプラットフォーム: MesonはLinux、Windows、macOSなどのさまざまなプラットフォームで動作し、クロスプラットフォームの開発をサポートします。 モジュール化された設計: Mesonはモジュール化された設計を採用しており、外部ライブラリの統合や独自のカスタムルールの追加が容易です。 アウトオブツリービルド: Mesonは、ビルド用のディレクトリをソースコードとは別に保持する「アウトオブツリービルド」をサポートしています。これにより、ビルドディレクトリ内でのソースコードの汚染を回避し、ビルドシステムのクリーンさを維持できます。

Mesonのインストール方法[編集]

Mesonをインストールする手順は以下の通りです。

  1. Pythonのインストール: MesonはPythonで動作するため、まずはPythonのインストールが必要です。Pythonは公式サイト( https://www.python.org/ )からダウンロードしてインストールします。
  2. pipを使用したMesonのインストール: Pythonのパッケージ管理システムであるpipを使用して、Mesonをインストールします。コマンドラインで以下のコマンドを実行します。
    pip install meson
    
  3. インストールの確認: Mesonが正しくインストールされたかどうかを確認するために、以下のコマンドを実行します。
    meson --version
    
    バージョン情報が表示されれば、Mesonのインストールが成功しています。

Mesonのインストールが完了したら、プロジェクトのビルドや管理にMesonを利用する準備が整いました。

基本的な使い方[編集]

Mesonを使用してプロジェクトを効率的にビルドするためには、いくつかの基本的な手順に従う必要があります。この章では、Mesonを使用したプロジェクトの初期化からビルド、そしてインストールまでの基本的な手順を説明します。

プロジェクトの初期化[編集]

プロジェクトをMesonで管理するには、まずプロジェクトを初期化する必要があります。プロジェクトのルートディレクトリで以下のコマンドを実行します。

meson init <プロジェクト名>

このコマンドにより、プロジェクト名のディレクトリが作成され、Mesonの初期設定が行われます。また、meson.buildという名前のビルド定義ファイルも生成されます。

ビルドディレクトリの構築[編集]

Mesonでは、アウトオブツリービルドを推奨しています。つまり、ソースコードとは別にビルド用のディレクトリを作成し、その中でビルドを実行します。プロジェクトのルートディレクトリ内で、次のようにしてビルドディレクトリを作成します。

meson setup <ビルドディレクトリ名>

このコマンドにより、指定した名前のビルドディレクトリが作成され、Mesonによるビルドの準備が完了します。

コンパイルとインストール[編集]

ビルドディレクトリが準備されたら、次は実際にコンパイルとインストールを行います。以下のコマンドを使用します。

meson compile -C <ビルドディレクトリ名>

このコマンドにより、指定したビルドディレクトリ内でプロジェクトのコンパイルが実行されます。コンパイルが成功すると、ビルドされたファイルがビルドディレクトリ内に生成されます。

meson install -C <ビルドディレクトリ名>

このコマンドにより、ビルドされたファイルがシステムにインストールされます。インストール先のディレクトリは、meson.buildファイルで指定されたディレクトリになります。

これで、Mesonを使用してプロジェクトをビルドし、必要に応じてシステムにインストールする基本的な手順を理解しました。

レシピ[編集]

ここでは、基本的なレシピの書き方について説明します。

  1. meson.buildファイルの作成: レシピは通常、プロジェクトのルートディレクトリにあるmeson.buildという名前のファイルに記述されます。このファイルはMesonビルドシステムによって解釈され、プロジェクトのビルド手順が定義されます。
  2. プロジェクトの構造を定義する: meson.buildファイルの中で、プロジェクトの構造を定義します。これには、ソースコードのディレクトリ構造やプロジェクトに含まれるファイルのリストを指定します。
  3. ビルドオプションの設定: Mesonでは、ビルドオプションを使用してビルドの様々な側面をカスタマイズできます。これには、コンパイラの選択、最適化オプション、デバッグオプションなどが含まれます。ビルドオプションは、meson.buildファイル内で定義され、meson configureコマンドを使用して設定されます。
  4. ターゲットの定義: Mesonでは、ビルド対象となるターゲット(実行可能ファイル、ライブラリ、テストなど)を明示的に定義する必要があります。これは、executable()shared_library()static_library()test()などの関数を使用して行います。
  5. 依存関係の管理: プロジェクトが外部ライブラリや他のプロジェクトに依存している場合、これらの依存関係を明示的に指定する必要があります。これは、dependency()関数を使用して行います。
  6. カスタムルールの追加: 必要に応じて、Mesonのビルドシステムに独自のカスタムルールを追加することができます。これには、custom_target()custom_target()などの関数を使用します。

以下は、簡単な例で、C言語のプロジェクトのビルド手順を示すmeson.buildファイルの例です。

meson.build
project('my_project', 'c')

sources = ['src/file1.c', 'src/file2.c']

executable('my_executable', sources)

これは、名前がmy_projectで言語がCであるプロジェクトを定義し、srcディレクトリ内のfile1.cfile2.cからなるソースコードを持つmy_executableという実行可能ファイルをビルドするためのレシピです。

上記のレシピは、以下のようなディレクトリ構造を想定しています。

project_root/
├── meson.build
└── src/
    ├── file1.c
    └── file2.c
  • project_root/: プロジェクトのルートディレクトリです。
  • meson.build: Mesonビルドシステムの設定やビルド手順が記述されたファイルです。
  • src/: ソースコードが格納されているディレクトリです。
    • file1.c: ソースファイル1
    • file2.c: ソースファイル2

このディレクトリ構造では、プロジェクトのルートディレクトリにmeson.buildファイルがあり、その中でsrc/ディレクトリ内のソースファイルを指定しています。Mesonはこの構造に従ってプロジェクトをビルドします。

Mesonによるビルドの仕組み[編集]

Mesonによるビルドの仕組みは、プロジェクトのソースコードとビルドシステムの定義を解析し、それに基づいてビルドを実行するプロセスです。以下に、Mesonによるビルドの仕組みの概要を説明します。

  1. プロジェクトの定義: Mesonでは、プロジェクトを定義するためにmeson.buildファイルが使用されます。このファイルには、ビルドの設定やビルドに含まれるターゲット(実行可能ファイル、ライブラリ、テストなど)が記述されます。これには、ソースコードのファイルパス、コンパイルオプション、依存関係などが含まれます。
  2. ビルドシステムの選択: Mesonでは、Ninjaがデフォルトのビルドシステムですが、他のバックエンド(Make、Visual Studio、Xcodeなど)も利用できます。meson setupコマンドを使用して、プロジェクトのビルドディレクトリを作成する際に、使用するバックエンドを指定します。
  3. ビルドディレクトリの作成: ビルドを実行する前に、ビルド用のディレクトリを作成する必要があります。このディレクトリには、ソースコードのビルドに必要なすべてのファイルが生成されます。
  4. コンフィギュレーション: Mesonはコンフィギュレーションステップを持ちます。このステップでは、ビルドオプションやプロジェクトの設定を解析し、ビルドに必要な依存関係を確認します。また、コンパイルやリンクに使用するコンパイラやリンカなどのツールを決定します。
  5. ビルドの実行: Mesonは、解析されたプロジェクトの定義に基づいて、ソースコードのコンパイル、リンク、およびその他のビルドタスクを実行します。これにより、実行可能ファイルやライブラリなどのビルドが行われます。
  6. テストの実行: Mesonは、テストフレームワークをサポートし、定義されたテストを実行するための機能も提供しています。これにより、ビルドしたソフトウェアの品質を確保するためのテストを実行できます。
  7. インストール: ビルドが成功した場合、Mesonはビルドされた成果物(実行可能ファイル、ライブラリなど)を指定された場所にインストールします。これにより、他のプロジェクトから利用できるようになります。

Mesonによるビルドの仕組みは、プロジェクトの定義からビルドの実行、そして最終的な成果物のインストールまで、効率的で柔軟な方法で行われます。

ユースケース[編集]

  1. クロスプラットフォーム開発: MesonはLinux、Windows、macOSなどのさまざまなプラットフォームで動作し、クロスプラットフォームの開発に適しています。これにより、異なる環境での開発やビルドが容易になります。
  2. 大規模プロジェクト: Mesonは大規模なプロジェクトにも対応しており、複数のサブディレクトリやモジュール化された構造を効果的に管理できます。大規模プロジェクトのビルドや管理において、Mesonは高い生産性を提供します。
  3. オープンソースプロジェクト: Mesonは多くのオープンソースプロジェクトで採用されており、特にGNOMEプロジェクトなどの大規模なプロジェクトで広く使用されています。オープンソースコミュニティでは、Mesonがコントリビューターの参加を容易にし、プロジェクトのメンテナンスを簡素化します。

ベストプラクティス[編集]

  1. アウトオブツリービルドの推奨: Mesonでは、ソースコードとは別にビルド用のディレクトリを作成してアウトオブツリービルドを行うことが推奨されています。これにより、ビルドのクリーンさと効率性が向上し、ソースコードの汚染が防止されます。
  2. 定期的なコンフィギュレーション: プロジェクトの依存関係やビルドオプションは変化する可能性があるため、定期的にコンフィギュレーションを実行し、最新の設定を反映することが重要です。新しいライブラリの追加やビルドオプションの変更があった場合には、再コンフィギュレーションを行います。
  3. テストスイートの統合: Mesonはテストフレームワークをサポートしており、プロジェクトに組み込まれたテストスイートを実行して品質を確保することができます。ビルドの一部としてテストを統合することで、ソフトウェアの信頼性を高めることができます。
  4. ドキュメントの充実: プロジェクトのビルド手順や依存関係、ビルドオプションなどの情報をドキュメント化することで、新しい開発者やコントリビューターがプロジェクトに参加しやすくなります。Mesonのプロジェクトでは、READMEファイルやmeson_options.txtなどのドキュメントを充実させることが推奨されます。

CMake との違い[編集]

MesonとCMakeは、どちらも人気のあるビルドシステムであり、プロジェクトのビルドや管理に使用されます。以下に、MesonとCMakeの主な違いを示します。

言語と構文
Meson
Pythonライクな構文を使用しており、読みやすく記述しやすい特徴があります。
CMake
独自のDSL(Domain Specific Language)を使用しており、学習コストが高く、時には複雑な構文が必要な場合があります。
ビルド速度
Meson
高速なビルドが特徴であり、Ninjaと組み合わせることで効率的なビルドを提供します。
CMake
標準のビルドシステムとしては比較的速いですが、大規模なプロジェクトではビルド時間が増加することがあります。
クロスプラットフォームサポート
Meson
クロスプラットフォームのサポートが強力であり、Linux、Windows、macOSなどのさまざまなプラットフォームで動作します。
CMake
クロスプラットフォームのサポートがありますが、プラットフォームごとに微妙な違いがある場合があります。

文書化:

Meson
ドキュメントが充実しており、使いやすさが重視されています。Mesonの公式サイトには豊富な情報が提供されています。
CMake
ドキュメントは広範であり、幅広いトピックにわたる情報が提供されていますが、初心者向けの入門情報が不足している場合があります。
コミュニティとエコシステム
Meson
比較的小規模なコミュニティですが、活発に開発が進められています。パッケージ管理システムなどのエコシステムはまだ発展途上です。
CMake
大規模なコミュニティとエコシステムがあり、多くのライブラリやツールがCMakeでサポートされています。

MesonとCMakeはどちらも優れたビルドシステムであり、プロジェクトのニーズや個々の好みに応じて選択することが重要です。MesonはPythonライクな構文や高速なビルドなどの特徴を持ち、CMakeはクロスプラットフォームサポートや豊富なエコシステムなどの利点があります。

小史[編集]

Mesonの歴史は、その作者であるJussi Pakkanenによる開発から始まります。Mesonは、彼がPythonで記述し、簡潔で効率的なビルドシステムを作成することを目指しています。以下に、Mesonの主なマイルストーンと歴史を示します。

2013年
Jussi PakkanenがMesonプロジェクトを開始し、最初のコードがリリースされる。
2014年
Mesonの最初の公式リリースが行われ、コミュニティの関心を集める。
2015年
Mesonがより一般的に使われるようになり、プロジェクトの成長が加速する。
2016年
Mesonの安定性と機能が向上し、多くのプロジェクトがMesonを採用し始める。特に、GNOMEプロジェクトがMesonを採用し、従来のAutotoolsに代わるビルドシステムとして採用する動きが見られる。
2017年
Mesonの普及が加速し、多くのオープンソースプロジェクトがMesonを採用する。Mesonのコミュニティも成長し、積極的な開発とサポートが行われる。
2018年
Mesonの人気が高まり、ビルドシステムとしての地位を確立する。Mesonの安定性、パフォーマンス、使いやすさが評価され、多くの開発者がMesonを選択するようになる。
2020年
Mesonは依然として活発な開発が行われ、新しい機能や改善が追加され続けている。Mesonは、多くのプロジェクトにとって信頼性の高いビルドシステムとして定着しています。

Mesonは、その簡潔さ、高速さ、そして使いやすさから、多くの開発者やプロジェクトに採用されています。これからもMesonは、さらなる進化と普及が期待されるビルドシステムとして注目されています。

リソース[編集]

Mesonの基本的な使い方に関するリソースを提供します。

Meson公式ドキュメント
https://mesonbuild.com/
Mesonの公式ウェブサイトには詳細なドキュメントがあります。ここにはチュートリアル、リファレンス、FAQ、コミュニティリソースへのリンクが含まれています。
GitHubリポジトリ
https://github.com/mesonbuild/meson
Mesonのソースコードや最新のアップデートはGitHubで入手できます。また、バグの追跡や機能の提案など、コミュニティとのやり取りも行われています。