中学校社会 公民/国際連合以外の国際組織

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

地域機構[編集]

ヨーロッパ連合[編集]

ヨーロッパ連合の加盟国の多くで用いられている共通通貨のユーロ。

ヨーロッパ連合とは、ヨーロッパでの経済の統合など、ヨーロッパの国どうしで協力しあっている国家どうしの連合である。ヨーロッパ連合のことを EU(イーユー) という。European Union の略。

EUの本部はベルギーの首都ブリュッセルにある。

もともとは第二次大戦後に、ヨーロッパの資源の共同管理をすることで、資源をめぐる戦争をなくそうという平和目的として1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体( ヨーロッパ せきたん てっこう きょうどうたい 、英語 略称:ECSC イーシーエスシー)の設立が、戦争であらそったドイツとフランスを中心に設立された。結果的にドイツ・フランスにイタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクを加えた6カ国で1952年にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立された。

似たような国際機関で、1958年にはヨーロッパどうしの経済協力を目的にヨーロッパ経済共同体( ヨーロッパ けいざい きょうどうたい、EEC イーイーシー )が設立した。また1958年に原子力の共同管理のためのヨーロッパ原子力共同体(ヨーロッパげんしりょく きょうどうたい、 EURATOM 、 ユーラトム)が設立された。

このECSCとEECとEURATOMの3つが統合して、1967年に発足したヨーロッパ共同体( EC(イーシー) )が設立された。 その後、ECは加盟国が増えていった。 このヨーロッパ共同体ECが、1993年にはヨーロッパ連合(EU 、イーユー)に発展した。

国際機関が多く出てきたが、とりあえずEU(ヨーロッパ連合)だけを覚えておけば、たぶん大丈夫だろう。


2002年からEUの共通通貨のユーロが加盟国の多くで使われている。このため、それまで加盟国にあった通貨(たとえばドイツのマルク通貨やフランスのフラン通貨など)は回収された。域内での関税は撤廃されている。EUの加盟国は27カ国に達し、域内の人口は5億人におよぶ巨大な経済圏である。


欧州連合の旗は、つぎのような旗です。

欧州連合の旗。

ASEAN[編集]

1967年に東南アジアの諸国を中心にASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)が結成され、政治経済や安全保障の分野での協力をしている。

現在のASEAN加盟国は、インドネシア 、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、 ラオス、 カンボジア。

カンボジアは、1999年にASEANに加盟。カンボジアでは第二次大戦後、1970年代ごろから、たびたび内戦があった(カンボジア内戦)。 内戦のきっかけとなっていた独裁勢力が、1991年には追放され、その後、カンボジアでの独裁や内戦の心配がなくなり、そして1998年にはカンボジアがASEAN加盟が認められた。

日本はASEAN加盟国では無いが、ASEANの発足当初から日本はASEANに協力し、たびたび会議などに参加している。

国際的な経済協力[編集]

第二次世界大戦の前では、世界恐慌により、欧米諸国が自国に有利な関税引き揚げなどの保護的な貿易を行って、閉鎖的な経済ブロックをつくった。それが、諸国どうしの対立につながり、世界大戦のきっかけの一つとなったと考えられてる。

また、日本軍が、第二次世界大戦で、東南アジアに進出するきっかけになったのも、アメリカなどからの日本への石油の輸出禁止によって、日本が石油を輸入できなくなったという理由もある。

このような、経済ブロックの失敗による反省にもとづき、第二次世界大戦のあとは、貿易をなるべく開放的にすることが望ましいとされた。

そして、1948年、「関税と貿易に関する一般協定」(GATT)が結成され、国際的な関税の引下げが計られた。


  • 世界貿易機関 (WTO , 英:World Trade Organization の略)

世界貿易機関(WTO)は、GATTにかわって、1995年に結成された。WTOは、さらなる自由貿易の促進のため、関税の引き下げや、貿易の障害になりうる制限である貿易障壁を取り払うことを呼びかける国際機関。2016年では、約160カ国が加盟している。

日本もこれに加盟し、なるべく関税の引き下げや貿易障壁などに協力している。

  • アジア太平洋経済協力 (APEC ,エイペック)

太平洋沿岸地域ではアジア太平洋経済協力APEC(エイペック、Asia-Pacific Economic Cooperation の略) 1989年にオーストラリアの呼びかけて発足。日本も、発足時から参加している。 日本・アメリカ合衆国・カナダ・韓国・オーストラリア・ニュージーランドおよび当時の東南アジア諸国連合 (ASEAN) 加盟6か国の計12か国で発足した。

オーストラリア、日本、アメリカ、韓国、台湾、中国、香港、メキシコ、カナダ、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、パプアニューギニア、チリ 、ペルー、ロシア、ベトナム が参加している。

  • 北米自由貿易協定(NAFTA、ナフタ、North American Free Trade Agreement の略)

北アメリカ大陸でアメリカ、カナダ、メキシコが結んでいる貿易の協定。関税の撤廃などの自由貿易の推進をしている。


  • 自由貿易協定 (FTA)

その他、2国間以上で相互に関税の引き下げるなどの協定を結ぶ自由貿易協定(じゆう ぼうえき きょうてい、FTA )を結ぶことも多い。 FTAはFree Trade Agreement の略。

FTAをさらに発展させたものとして、関税だけでなく各国間での人(ひと)の移動の規制緩和などをふくむ、より深い経済交流の協定である経済連携協定(EPA)がある。EPAはEconomic Partnership Agreement の略。


これらの経済のグローバル化によって、価格は安くなった。その反面、いくつかの産業では先進国から人件費の安い国へ産業が流れて、先進国でいくつかの産業が衰退した。

また、各国で景気が連動するようになった。2007年〜2008年におきた、アメリカの住宅バブル崩壊がきっかけの国際的な金融危機である世界同時不況は、その例であろう。

その他の地域機構[編集]

  • メルコスール(南米南部共同市場、MERCOSUR)

ブラジル、アルゼンチンなど、南米諸国5か国が参加している、経済的な地域機構である。

東南アジア諸国のGDP(国民総生産)の合計よりも、南米諸国のGDPの合計のほうが大きい。

2010年度のGDPでは

東南アジア GDP: 1.5兆ドル
南米 GDP : 2.3兆ドル

である。

さまざまな国際団体や国際活動[編集]

  • 政府開発援助(せいふ かいはつ えんじょ、ODA オーディーエー、英語:Official Development Assistance)

アメリカやイギリス・フランス・ドイツなどの先進国は、アフリカなどの発展のおくれた国に資金援助や技術援助などの援助をおこなっている。

日本も、同じように、アフリカなどに資金援助や、農業技術や医療技術などの指導の技術援助などを、アフリカやアジアの発展の遅れた国に援助している。

先進国の政府や政府機関による、発展のおくれた発展途上国に対して行う政府援助を政府開発援助(せいふ かいはつ えんじょ、ODA オーディーエー)と言う。


日本が派遣(はけん 、英:despatch)している青年海外協力隊(せいねんかいがいきょうりょくたい)もODAのひとつであり、アフリカなどで技術支援をしている。志願できるのは、20〜39歳の青年の男女の日本人が志願できる。

40才〜69才の年長者は、シニア海外ボランティアに志願できる。

ODAは政府活動である。


・ NGO (非政府組織、※ 「エヌジーオー」と発音) 政府指揮下の団体のほかに、民間にもボランティア活動をしている人たちはいる。外国での活動にかぎらず、国内活動でも国外活動でも、民間のボランティア活動をしている組織や団体を非政府組織(ひせいふ そしき、NGO エヌジーオー、non-governmental organizations)と言う。

赤十字や、「国境なき医師団」は、NGOである。 日本では国外でのボランティア活動をしている組織や団体に対してNGOという場合が多い。

NGOの中には、国連などと共同作業している国際的な団体もあるが、かならずしも全てのNGO団体が、国連と関係が深いわけではない。


・ NPO(非営利組織 、 ひ えいり そしき、Non profit Organization ) ※ 「エヌピーオー」と発音

NGOと名前が似ている組織でNPO(非営利組織 、 ひ えいり そしき )というのがあるが、 NPOは利益をだすことを目的としていない団体のことであり、NGO(非政府組織)とはことなるので、まちがえないように。必ずしも国際組織とは、かぎらない。たとえば、日本の市町村レベルのボランティア団体などでも、NPOの団体がある。

「非営利組織」(NPO)といっても、けっして「商売をしない」という意味でもなく、また「利益を出してはいけない」という意味ではなく、もしも利益が出ても、最低限の給料だけを従業員などの関係者に分配して、あまった利益は今後の活動のための資金にしている団体のことである。

ふつう、NPO団体(非営利組織)はNGO団体(非政府組織)でもある場合が多い。