高等学校地理B/地誌 オセアニア

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地形[編集]

ニュージーランド[編集]

オーストラリアから見て南東の洋上に、ニュージーランドがある。

ニュージーランドは国土の大部分が、環太平洋造山帯に属する新期造山帯のため、火山が多い。 ニュージーランドは主に北島と南島に大別される。

ニュージーランドの南島に、南北方向につらなるサザンアルプス山脈があるため、気候が南島の東西で異なる。 ニュージーランドには偏西風が吹いており南島の西側は降水量が多いが、あまり農業に利用されていない。 南島の東側は、雨が少なくて農地に向かないこともあり、羊の放牧や羊毛の生産に利用されている。(オーストラリアでも、雨が少なく、農地に向かないため、羊を放牧している。オーストラリアとニュージーランドを関連づけて覚えること。)

なおニュージーランド南島の南東部の北側の沿岸にはフィヨルドがある。 フィヨルドの形成された理由として、偏西風の影響により、山地に雪が大量に発生し、その影響だと考えられている。(※参考文献:山川出版社『もういちど読む山川地理』)

北島は、偏西風をさえぎるものがないこともあり、降水量が多くて温暖であり、酪農が行われている。(オーストラリアでも、南東部で酪農が行われている。ニュージーランドの位置は、オーストラリアから見て、南東方向にある。つまり、このあたりの地域(オーストラリア南東部〜ニュージーランド北島 のうち、陸地の部分)で、酪農がさかん。関連づけて覚えること。)

ニュージーランドは、チーズやバターの輸出で有名。日本にも、ニュージーランド産のチーズが輸出されている。戦前は、ヨーロッパにチーズ・バターを輸出する時代もあった。

ニュージーランドは、偏西風の影響や緯度などにより、夏と冬との気温差が少なく、年中とおして雨が平均的に多いので、ニュージーランドの気候は、ほぼ全土が西岸海洋性気候である。(南島の東側は、山脈で偏西風がさえぎられるため降水量が少ないが、しかし東側の気候も「西岸海洋性気候」と見なして構わない。参考書でも、そう見なしている。)

ニュージーランドの先住民はマオリ人

ニュージーランドの公用語は、英語とマオリ語

オーストラリアとは違い、ニュージーランドでは先住民の言葉であるマオリ語も公用語になっている。

ニュージーランドは、北島に火山が多いことをいかして、北島には地熱発電所も作られている。なお、(ニュージーランドの)南島では水力発電が電力エネルギー源。

ニュージーランドの治安は世界的に見ても良い。

ニュージーランドとオーストラリア[編集]

第二次大戦前のかつて、オーストラリアやニュージーランドの農産物は、ヨーロッパに多く輸出されていた。しかし戦後、ヨーロッパがEC、EU域内の農産物を重視したので、オーストラリアやニュージーランドの農産物は、あまりヨーロッパには売れなくなった。

ちょうど戦後のそのころ、日本を始めとするアジア諸国が経済発展しだしたので、オーストラリアやニュージーランドの農産物の生産者が、日本などへの輸出を目ざし、そしてオーストラリアやニュージーランドの農産物は日本向けになっていった、という経緯がある。

ニュージーランドの先住民はマオリ人。オーストラリアの先住民はアボリジニ


オーストラリア[編集]

オーストラリアの歩み
1788年 イギリスの流刑地として、イギリスが植民開始。(〜1868年)
1868年 イギリスがオーストラリア流刑を廃止。
1901年 オーストラリア連邦の成立。

    移民制限法。(白豪主義)

1973年 白豪主義の法律の撤廃が、この頃から。
1989年 第1回APEC開催。
2000年 オリンピックがシドニーで開催。

北東部の沿岸にグレートバリアリーフというサンゴ礁がある。

オーストラリア大陸の東部のグレートディバイディング山脈は、古期造山帯である。

総論[編集]

このように、オセアニア地方の島じまは、火山島か、あるいはサンゴ礁島である。

気候[編集]

オーストラリアの気候図。南東の水色部分で雨が多い。北部の緑色部分は熱帯気候。内陸の茶色部分は砂漠。

オーストラリア北部は南緯10°ほどの低緯度帯にあり、熱帯に属する。

オーストラリア大陸の北部沿岸は、サバナ気候である。

なお、オーストラリアの雨季と乾期に関して、南半球にあるため、季節が日本とは反対なので、注意すること。

オーストラリアでは1月前後は夏で多雨であり、7月前後は冬で小雨である。

オーストラリアの内陸部は、亜熱帯高圧帯の影響下にあり、年降水量500mm以下の砂漠気候が多い。

なお、すべての大陸の中で、オーストラリアは、砂漠の割合がもっとも高い。

大陸の東側の沿岸部は、西岸海洋性気候

オーストラリアの政治経済・産業など[編集]

APECアジア太平洋協力会議)を最初に提唱した国は、オーストラリアである。だからAPEC第1回の開催地はキャンベラ。

オーストラリアにはボーキサイトや石炭など様々な資源が産出し、重要な産業となっている。

ボーキサイトが、北部の熱帯・サバナ気候のゴヴやウェイバなどの地域から産出する。 一般に熱帯では降雨によりボーキサイト以外の塩分が流されやすいためボーキサイトが産出しやすい。

例外的に、オーストラリアでは南西部のパースでもボーキサイトが産出する。

古期造山帯であるグレートディバイディング山脈では石炭が産出する。

一般に、古期造山帯からは石炭が産出しやすく、いっぽう、新期造山帯からは石油が産出しやすい。オーストラリアでも、石炭は、そのパターンどおりに産出している。

オーストラリア北西部のピルバラ地区からは、鉄鉱石が産出する。

※ 『高等学校生物/生物II‐生物の進化』で「ストロマトライト」について調べると、鉄鉱石が産出する理由が説明されてるはず。

かいつまんで言うと、地球の始めごろの大昔に、まだ光合成生物がいなかったころ、海中で鉄イオン濃度が高く、さらに海中の酸素が少ない時代があった。

その後、光合成生物が海中で誕生したら、光合成により酸素が発生するので、鉄イオンと酸素が反応して、酸化鉄が大量に出来た。

酸化鉄は、比重が水より重いので沈殿するので、海底に酸化鉄がしずむ。


のちの時代に、古代にそういう酸化鉄の沈殿現象の現象の起きてた場所が、地層になったりしたとき、安定陸塊では、その地層が地表ちかくにある事が多い。 よって、安定陸塊は、鉄鉱石の産地になりやすい。


地理学では、「安定陸塊で鉄鉱石が産出しやすい」とよく言われるが、つまり酸化鉄が沈殿したまま、そこに固まったということ。


農業[編集]

土地が乾燥してるから羊を飼育[編集]

オーストラリアは、内陸部に行くほど乾燥していく。沿岸から離れた地域は農地には向かなくなる。

オーストラリア東部の沿岸から、オーストラリア南西部では、乾燥のため農地に向かないこともあり、羊の放牧をして羊毛を生産する産業が発達した。

さらに内陸にいって東部の中心部ちかくになると、乾燥しすぎて、牧羊すらも行われない非農業地域になる。

また、オーストラリアで飼育されてる羊の品種の多くは、毛の長いメリノ種である。なお、ニュージーランドで飼育されている羊では、コリデール種や、肉用にもなるロムニー種が多い。

第二次大戦前のかつて、オーストラリアは、イギリスに羊毛を輸出していた。

グレートアーテジアン盆地マリーダーリング盆地で、羊毛の生産が盛ん。(「盆地は雨が少ない」と小学校から習ってるのを思い出そう。)

羊の飲み水は、井戸水を使っている。


オーストラリア産の牛肉であるオージービーフが有名なのも、もとをただせば、気候的な理由も一因だろう。なお、近年では、肉牛をフィードロットで肥育している。 (※ フィードロットについては、中学校社会 地理/北アメリカ州などを参照せよ。)

肉牛の生産地は、オーストラリア北部に多いので、結果的にサバナ気候の場所にオージービーフ肉牛生産地が多いことになる。

灌漑したら塩害になった[編集]

もし降水量が少なくて乾燥している地域で、無理やり灌漑して農業をしても、蒸発によって塩害が起きてしまい、なかなか上手くいかない。実際に、農地の無理な拡大により、オーストラリアでは塩害の発生が広まっている。

かつて、オーストラリア南東部にあるマレーダーリング盆地で農業しようと、スノーウィーマウンテンズ計画や地下水などで灌漑したが、塩害が発生するという結果になってしまった。「スノーウィーマウンテンズ計画」とは、オーストラリアアルプス山脈の東側にある川の上流から、水を引っ張ってくる計画。(「オーストラリアアルプス山脈」とは、グレートディバイディング山脈の南端の山脈。)

塩害という皮肉な結果に終わったが、しかし、それでもオーストラリア人は、ひきつづきマレーダーリング盆地で灌漑をつづけて、農業をしている。

酪農[編集]

オーストラリア南東部のメルボルン周辺や、グレートディバイディング山脈東側のブリスベン周辺では、地形の影響もあり、降水量が比較的多いため、酪農もしている。

※ なお、(オーストラリアから見て南東方向の洋上にある)ニュージーランドも酪農が盛んな国家なので、関連づけて覚えよう。

その他[編集]

※ 「アボリジニー」とか「白豪主義」とかも高校の出題範囲なので、勉強するように。 中学校社会 地理/オセアニア州

なお、ニュージーランドの先住民はマオリ族

オーストラリアでは19世紀のゴールドラッシュなど鉱産資源の開発のときに、中国人が低賃金の鉱山労働者として移民してきたので、オーストラリアで中国人が増えた。(※ けっして、近年になってから中国人が増えたわけではない。)

そもそも、このゴールドラッシュによる中国人移民の増加こそが、オーストラリアでの白豪主義の原因である。

アジア系移民の流入を制限するなどの政策の、白豪主義が取られた。

第二次大戦前は、イギリスの影響が強く、オーストラリアの貿易相手国もイギリスが輸出相手1位だった。

しかし、戦後、日本との貿易が大きくなり、1970年代に白豪主義を撤廃し、オーストラリアはAPEC(アジア太平洋協力会議)を提唱して、1989年ごろにAPECアジア太平洋協力会議)が設立された。

1985年(日本の不動産バブル前後)では、日本が、オーストラリアの最大の輸出相手国だった。なお、このころはアメリカ合衆国は、じつはオーストラリアの第2位の輸出相手国。

APECの加盟国も、オーストラリア、日本、中国、アメリカ合衆国などである。オーストラリアの1980年代の貿易相手と、APEC加盟国が、とっても近しい関係である。


なお現在(2016年に記述)、オーストラリアの最大の貿易相手国は中国である。また一方で近年、アメリカとの貿易が、オーストラリアは大幅に減っている。

オーストラリアの治安は良好である。

TPP[編集]

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定、Trans-Pacific Partnershi)はもともと、APEC加盟国であるシンガポール・ブルネイ・ニュージーランド・チリが2006年頃から交渉していた(4ヶ国とも、APECに加盟している)。

TPPの交渉当初は、APECなどの経済協定を発展させるのを目指し、関税の原則撤廃などを目指して、より積極的な貿易自由化をめざした経済協定であった。

その後、アメリカ合衆国や日本やオーストラリアなどもTPPの交渉に参加してきた。TPPは2016年の現在も交渉中である。

諸国[編集]

フィジー[編集]

フィジーの位置は、ニュージーランドの北東の洋上で、オーストラリア中部から東方にあり、日付変更線の手前。

フィジーでは、サトウキビプランテーションが、おもな産業。

第二次大戦前は、イギリスの植民地だった。イギリスの植民地時代に、インド人がプランテーションなどのための労働力として連れてこられたので、フィジーにはインド系住民も多い。また、インド系住民がいるため、ヒンドゥー教徒も多い。

フィジーのおもな宗教はキリスト教だが(キリスト教徒が多いのは、イギリスの影響による)、インド系住民にはヒンドゥー教徒もいる。

パプアニューギニア[編集]

オーストラリアから見て北にある、赤道より少し南の、けっこう大きい島が、ニューギニア島。

そして、ニューギニア島のほぼ東半分がパプアニューギニア。 なお、ニューギニア島の西半分はインドネシア領。

パプアニューギニアでは銅鉱石油などの資源を産出し、輸出している。(東南アジアに位置的に近く、産出する資源にも石油があることが、東南アジアと似ている。)

木材も輸出している。(東南アジアと似ていることに注目。)

国民の平均年収は3万円程。

国の治安は良くはない。

ナウル[編集]

ナウルは、ほぼ赤道直下にある。

ナウルでは、むかしはリン鉱石の輸出がおもな産業だったが、現在ではリン鉱石の枯渇が心配されている。

トンガ[編集]

トンガはカボチャ輸出のモノカルチャー経済。日本では輸入量は減少している。(参考:http://kainouken.web.fc2.com/tokouki/zemi/2009/kabotya/4.html)

ツバル[編集]

地球温暖化などによる海面上昇によって、土地の水没が起き始めている。

ツバルはサンゴ礁島であるので、標高が低い。