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線型代数学/計量ベクトル空間

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

このページでは、2、3次元の数ベクトルの長さや内積を拡張し、一般の線型空間のベクトルについても、長さ(ノルム)や内積を定義する。

2、3次元の数ベクトルの場合は、高等学校数学B ベクトルを参照のこと。

目次

[編集] 数ベクトルのノルム・内積

[編集] ノルム

ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、

||\mathbf{a}||=\sqrt {\sum^{n}_{i=1} |a_i|^2}

と定義される。これをaのノルムと言う。

\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 3\\
 5\\
 6\\
 2\\
 4\\
\end{pmatrix}
||\mathbf{a}||=\sqrt{3^2+5^2+6^2+2^2+4^2}=3\sqrt 10

演習

次のベクトルのノルムを求めよ
  1. \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
 1\\
\end{pmatrix}
  2. \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 2\\
 4\\
 0\\
 8\\
 6\\
 9\\
 3\\
\end{pmatrix}
  3. \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
 0\\
\end{pmatrix}
  4. \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 3\\
 4\\
\end{pmatrix}
  5. \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 \sqrt a\\
 3a\\
 \sqrt 3a\\
\end{pmatrix}

[編集] 内積

ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

(\mathbf{a},\mathbf{b}) = \sum^{n}_{i=1} a_ib_i

ab内積という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

(\mathbf{a},\mathbf{b})=|\mathbf{a}||\mathbf{b}|\cos \theta

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • (a,a)=||a||2
  • abが直交する⇔(a,b)=0[1]
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)
  1. ^ なす角について上で述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。

演習

空間ベクトル

\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 1\\
 1\\
\end{pmatrix}

とのなす角が\pi\over6であり、かつ

\mathbf{y}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 1\\
 4\\
\end{pmatrix}

とのなす角が\pi\over4であるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

[編集] \R,\C 上の線型空間でのノルム・内積

次に、上で書いたような数ベクトルのノルム・内積の概念をさらに拡張しよう。

[編集] 定義

\ V を \R  または \C上の線型空間とする。(以下、\bold K は一般の体ではなく、実数体 \R または複素数体 \Cを指すことにする )

 \bold x,\bold y \in \ V に対して、 \bold K の元をかえすような演算 (\bold x, \bold y)が次の(Ⅰ)(Ⅳ)の性質をみたすとき、 (\bold x, \bold y)内積という。

(Ⅰ)(\bold x,\bold y_1 + \bold y_2) = (\bold x,\bold y_1) + (\bold x,\bold y_2)  
(\bold x_1 +\bold x_2, \bold y) = (\bold x_1,\bold y) + (\bold x_2,\bold y)
(Ⅱ)(c\bold x,\bold y) = c(\bold x,\bold y)  ,(\bold x,c\bold y) = \bar c(\bold x,\bold y)  
\bar c \ c の複素共役)
(Ⅲ)(\bold x,\bold y) = \overline {(\bold y,\bold x)}
(Ⅳ)(\bold x, \bold x) \geq 0  
(\bold x,\bold x) = 0 が成り立つのは、\bold x = \bold 0 のときに限る。

また、

|| \bold x || = \sqrt{(\bold x ,\bold x)}

で定義される量をxノルムという。

このように、内積が定義された線型空間を計量ベクトル空間計量線型空間)という。

[編集]

1. \ V = \C^n ,\bold x,\bold y \in \C^n のとき、

 (\bold x,\bold y) = \sum^{n}_{i=1} x_i\bar y_i

とすれば、これは内積になっている。

2.\ V = \ M(m,n;\R) ,\ A,\ B \in \ M(m,n;\R) のとき、

(\ A,\ B) = \ Tr(^tA \ B)

とすれば、これは内積になっている。(Trについては行列概論を参照)

3.\ V = {0 \leq x \leq 1 上連続な関数} ,\ f(x),\ g(x)0 \leq x \leq 1 上連続な関数のとき、

(\ f(x),\ g(x)) = \int^{1}_{0} f(x)g(x) dx

とすれば、これは内積になっている。

[編集] 三角不等式・シュワルツの不等式

ここで定義した内積・ノルムに関しても数ベクトルの場合と同様に三角不等式・シュワルツの不等式が成り立つ。

定理 \forall \bold x,\forall \bold y \in \ V に対して、次の(1),(2)の不等式が成り立つ。

(1) |(\bold x,\bold y)| \leq ||\bold x|| \cdot ||\bold y|| (シュワルツの不等式)

等号が成り立つのは、\bold x = \alpha \bold yと書ける場合のみ。

(2)|| \bold x + \bold y || \leq || \bold x || + || \bold y ||

等号が成り立つのは、実数\beta \geq 0 を用いて、\bold y = \beta \bold x と書ける場合のみ。

(証明)(1)\ a,b \in \bold K  とすると

 0 \leq ||a\bold x + b\bold y||^2 = (a\bold x + b\bold y,a\bold x + b\bold y) = |a|^2||\bold x||^2 + a\bar b(\bold x,\bold y) + \bar a b(\bold y,\bold x) + |b|^2||\bold y||^2

ここで、\ a = ||\bold y||^2 ,\ b = -(\bold x,\bold y) とおけば、

\begin{align} 0 & \leq ||\bold y ||^4 ||\bold x||^2 - ||\bold y||^2 \overline{(\bold x,\bold y)} (\bold x,\bold y) - ||\bold y||^2 (\bold x,\bold y)\overline{(\bold x,\bold y)} + |(\bold x,\bold y)|^2||\bold y||^2 \\ &= ||\bold y||^2(||\bold x||^2||\bold y||^2- |(\bold x,\bold y)|^2)\\ \end{align}

両辺を  ||\bold y||^2 で割り、正の平方根をとれば、

 |(\bold x,\bold y)| \leq ||\bold x|| \cdot ||\bold y||   となる。

等号が成り立つのは、 0 = ||a\bold x + b\bold y||^2 すなわち、\bold 0 = a\bold x + b\bold y となるときだから、\bold x = \alpha \bold y と書ける。

逆にこれが成り立つとき、不等号は等号になる□

(2)\begin{align} ||\bold x + \bold y||^2  = (\bold x + \bold y,\bold x + \bold y) & = ||\bold x||^2 + (\bold x, \bold y) + (\bold y,\bold x) + ||\bold y||^2\\  &  \leq  ||\bold x||^2 + 2|(\bold x, \bold y)|+ ||\bold y||^2 \\
                                                                               & \leq ||\bold x||^2 + 2||\bold x|| ||\bold y|| + ||\bold y||^2 \\&= (||\bold x + \bold y||)^2\\ \end{align}

したがって、正の平方根をとれば || \bold x + \bold y || \leq || \bold x || + || \bold y ||  となる。

1つ目の等号は  (\bold x, \bold y) が非負の実数となるときに成り立ち、2つ目の等号は \bold x = \alpha \bold y と書けるとき成り立つ。この2つの条件から、実数\beta \geq 0 を用いて、\bold y = \beta \bold x と書けるときのみ等号が成立する□

[編集] 基底の直交化

[編集] 種々の特徴的な変換

[編集] 随伴変換

[編集] ユニタリ変換と直交変換

[編集] エルミート変換と対称変換

 

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