アイヌ語 数の数え方
アイヌ語の数詞は、全体としては二十進法であり、中に十進法が含まれています。また、大きな数まで完全に十進法である地域や、100までは二十進法で、百の位からは十進法になる地域もあります。日本語などの周辺の言語と異なる、独自の数体系を持っています。
地域や場合によっては、ここに示したものとは異なる言い方をする場合があります。地域名を示したものでも、示した地域すべてには当てはまらないことがあります。また、特に大きな数では、各地で多様な表し方があるため、いまだ全ては網羅できていません。
0~10
[編集]| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 1 | シネ | siné |
| 2 | ツ゚ | tú |
| 3 | レ | ré |
| 4 | イネ[1] | íne |
| 5 | アシㇰネ | asíkne, asne |
| 6 | イワン | iwán |
| 7 | アㇻワン | árwan |
| 8 | ツ゚ペサン | tupésan |
| 9 | シネペサン | sinépesan |
| 10 | ワン | wán |
(多蘭泊などを除いた樺太方言のp,t,k(,r)の規則的なh,sへの変化とrの開音節化は省略、以下注記のない限り同様)
基本になる数です。しっかり覚えましょう。
何かを数えるときには、この数詞のあとに数える物の名前を置きます。数連体詞の状態で単独で使われることは基本的にありません。
例えば、二匹の猫(チャペ/サ゚ペ cápe)は「ツ゚ サ゚ペ」、三人の人(アィヌ ajnu)は「レ アィヌ」と言います。何を数えるときもこれは変わりません。
因みに、日本語での神聖数は4[よ]と8[や]ですが、アイヌ語における神聖数はイワン iwan иўан(6)です。しばしば日本語での8と同じように、ものがたくさんあることを表します。(例:「iwan sike イワン シケ/イワイ シケ 六個の荷物、 たくさんの荷物。 [引用元 1]」、「kokutkor kane, iwan kosonte opannere 帯をしめ、六枚の着物を羽織って[引用元 2]」)
樺太西海岸では5がasisne(=asikne)ではなくasne アㇱネとなります。[参照 1]:69頁
| 個数(または数名詞) | 人数 | |||
|---|---|---|---|---|
| 数 | カナ | ラテン文字 | カナ | ラテン文字 |
| 1 | シネㇷ゚ | sinép | シネン | sinén |
| 2 | ツ゚ㇷ゚ | túp | ツ゚ン | tún |
| 3 | レㇷ゚ | rép | レン | rén |
| 4 | イネㇷ゚[1] | ínep | イネン | ínen |
| 5 | アシㇰネㇷ゚[2] | asíknep | アシㇰネン | asíknen |
| 6 | イワンペ | iwánpe | イワニゥ | iwániw |
| 7 | アㇻワンペ | árwanpe | アㇻワニゥ | árwaniw |
| 8 | ツ゚ペサンペ | tupésanpe | ツ゚ペサニゥ | tupésaniw |
| 9 | シネペサンペ | sinépesanpe | シネペサニゥ | sinépesaniw |
| 10 | ワンペ | wánpe | ワニゥ | wániw |
個数を数えるとき、1から5までの数(e,u,e,e,eと、全て母音で終わっている)には -ㇷ゚ -p -пを付け、6から10まで(全て子音(ン n)で終わっている)には -ペ -pe -пэを付けます。(これは述詞を名詞化するときにつける接尾辞[3]-p(e)の変化と全く同じです。)トゥキ レㇷ゚<お椀3杯>、イナゥ イワンペ<御幣6つ>などのように数えます。数詞を単独で使いたいときはこちらを使います。例えば、何かが5個あると言いたい場合は「アシㇰネ」だけ言うのではなく、「アシㇰネㇷ゚」または「アシㇰネ 何々」といいます。
人数を数えるときは、1から5までには -ン -n を付け、6から10までには -(イ)ゥ -iw を付けます。シサㇺウタㇻ アシㇰネン<和人5人>のように数えます。
また、個数、人数は前に名詞がなくても単独で使えます。
10〜20
[編集]音韻変化による単語の違いはあるものの、1~19までの数詞はどの方言でも同じ発想で形成されます。(ここから紹介する数詞も、数連体詞単独で使われることはないことに注意してください。)
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 10 | ワン | wán |
| 11 | シネ イカㇱマ ワン | siné ikásma wán |
| 12 | ツ゚ イカㇱマ ワン | tú ikásma wán |
| 13 | レ イカㇱマ ワン | ré ikásma wán |
| 14 | イネ イカㇱマ ワン | íne ikásma wán |
| 15 | アシㇰネ イカㇱマ ワン | asíkne ikásma wán |
| 16 | イワン イカㇱマ ワン | iwán ikásma wán |
| 17 | アㇻワン イカㇱマ ワン | árwan ikásma wán |
| 18 | ツ゚ペサン イカㇱマ ワン | tupésan ikásma wán |
| 19 | シネペサン イカㇱマ ワン | sinépesan ikásma wán |
| 20二十進 | ホッネ※ | hótne※ |
| 20十進 | ツ゚ クンクツ゚[4] / ツ゚ ホッネ | tu kunkutu, tu hótne |
イカㇱマとは、「余る」を意味する一項述詞(自動詞)です。日本語の「とあまりひとつ(11)」などと同じような考え方ですが、アイヌ語では小さい方の数詞が先に来ます。
物を数えるときは、どちらの数字の後にも数える物の名前を付けます。例えば、14匹の犬(セタ seta сэта)は「イネ セタ イカㇱマ ワン セタ」のように言います。
※20を表す数詞は八雲ではhot, hotneの他にsinehotという形式も見られ、千島ではhowatという語形だったとされています。[参照 2]:104頁
ほぼすべての方言で10はwanで表されますが、10進法の地域でもtu wanのような形は見られないようです。
そこで、物の数を数えるために「ネ」という辞をつけ、「ホッネ」という形にします。そうすることで数連体詞になり、これまで見てきた数と同じように、ホッネ エㇽム「20匹のネズミ」やエムㇱ ホッネㇷ゚「刀20本」、カッケマッ[5] ホッネン「淑女20人」のように表すことができます。
(以上は沙流方言においてであり、他の地域では異なる可能性もありますが、概ねほとんどの地域で違いはないと思われます)| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 10 | ワンペ | wánpe |
| 11 | シネㇷ゚ イカㇱマ ワンペ | sinép ikásma wánpe |
| 12 | ツ゚ㇷ゚ イカㇱマ ワンペ | túp ikásma wánpe |
| 13 | レㇷ゚ イカㇱマ ワンペ | rép ikásma wánpe |
| 14 | イネㇷ゚ イカㇱマ ワンペ | ínep ikásma wánpe |
| 15 | アシㇰネㇷ゚ イカㇱマ ワンペ | asíknep ikásma wánpe |
| 16 | イワンペ イカㇱマ ワンペ | iwánpe ikasma wanpe |
| 17 | アㇻワンペ イカㇱマ ワンペ | árwanpe ikásma wánpe |
| 18 | ツ゚ペサンペ イカㇱマ ワンペ | tupésanpe ikásma wánpe |
| 19 | シネペサンペ イカㇱマ ワンペ | sinépesanpe ikásma wánpe |
| 20二十進 | ホッネㇷ゚ / ホッ / シネホッ | hótnep, hót, sinéhot |
| 20十進 | ツ゚ クンクツ゚ / ツ゚ ホッ | tu kunkutu, tu hot |
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 10 | ワニゥ | wániw |
| 11 | シネン イカㇱマ ワニゥ | sinén ikásma wániw |
| 12 | ツ゚ン イカㇱマ ワニゥ | tún ikásma wániw |
| 13 | レン イカㇱマ ワニゥ | rén ikásma wániw |
| 14 | イネン イカㇱマ ワニゥ | ínen ikásma wániw |
| 15 | アシㇰネン イカㇱマ ワニゥ | asíknen ikásma wániw |
| 16 | イワニゥ イカㇱマ ワニゥ | iwániw ikásma wániw |
| 17 | アㇻワニゥ イカㇱマ ワニゥ | árwaniw ikásma wániw |
| 18 | ツ゚ペサニゥ イカㇱマ ワニゥ | tupésaniw ikásma wániw |
| 19 | シネペサニゥ イカㇱマ ワニゥ | sinépesaniw ikásma wániw |
| 20二十進 | ホッネン | hótnen |
人数、個数を数える場合でも同様に、各数詞のあとに-p/-peや-n/-iwを付けます。
数えるものの名前を示すときでも、ちゃんと数える物の名前を言うのは最後だけで、それ以外の部分を-p/-peや-n/-iwで済ますことがあります。この場合、例えば14匹の犬は「イネㇷ゚ イカㇱマ ワン セタ」のように言えます。地域によってどちらをより多く使うかには差があります。
20~40
[編集]| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 20 | ホッネ[6] | hótne |
| 21 | シネ イカㇱマ ホッネ | siné ikásma hótne |
| 22 | ツ゚ イカㇱマ ホッネ | tú ikásma hótne |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 29 | シネペサン イカㇱマ ホッネ | sinépesan ikásma hótne |
| 30 | ワン エ・ツ゚ホッネ | wán e-túhotne |
| 31 | シネ イカㇱマ ワン エ・ツ゚ホッネ | siné ikásma wán e-túhotne |
| 32 | ツ゚ イカㇱマ ワン エ・ツ゚ホッネ | tú ikásma wán e-túhotne |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 39 | シネペサン イカㇱマ ワン エ・ツ゚ホッネ | sinépesan ikásma wán e-túhotne |
| 40 | ツ゚ホッネ | tuhótne |
(「シネ イカㇱマ」と「ワン エツ゚ホッネ」で区切り、“e-”は減算を示すとする解釈と、「シネ イカㇱマ ワン」と「エツ゚ホッネ」で切り、「『11が40に向かう』、『40に届かぬ11』」などとする(20を単位としたときに40に最も近い11だと考える)解釈もあります。)
「エ」は「そこへ(向かう)」という意味があると考えられ「ツ゚ペサン エ・ツ゚ホッネ(8が2×20へ向かう)」で「32」を表した例もあります。[7]
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 20 | ホッネ[6] | hótne |
| 21 | シネ イカㇱマ ホッネ | siné ikásma hótne |
| 22 | ツ゚ イカㇱマ ホッネ | tú ikásma hótne |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 29 | シネペサン イカㇱマ ホッネ | sinépesan ikásma hótne |
| 30 | ワン イカㇱマ ホッネ | wán ikásma hótne |
| 31 | シネ イカㇱマ ワン イカㇱマ ホッネ | siné ikásma wán ikásma hótne |
| 32 | ツ゚ イカㇱマ ワン イカㇱマ ホッネ | tú ikásma wán ikásma hótne |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 39 | シネペサン イカㇱマ ワン イカㇱマ ホッネ | sinépesan ikásma wán ikásma hótne |
| 40 | ツ゚ホッネ | tuhótne |
e-を使わずに単純に足していく方言もあります。
| カナ | ローマ字 | |
|---|---|---|
| 10 | ワンペ | wanpe |
| 11 | シネㇸ イカㇱマ ワンペ | sineh ikasma wanpe |
| 12 | ツ゚ㇷ イカㇱマ ワンペ | tuh ikasma wanpe |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 20 | ツ゚ クンクツ゚ | tu kunkutu[8] |
| 21 | シネㇸ イカㇱマ ツ゚ クンクツ゚
または ツ゚ クンクツ゚ シネㇸ |
sineh ikasma tu kunkutu
または tu kunkutu sineh |
| ︙ | ︙ | ︙ |
| 30 | レ クンクツ゚ | re kuntuku |
十進法の地域では、20, 30,... はkunkutuにtu, re,... を付けて表します。また、端数を含む数字は11~19と同様に「端数 ikasma 〇〇 kunkutu」のように表す場合もあれば、漢数字のように「〇〇 kunkutu 端数」のように表すこともあります。
89まで
[編集]同じようにしていくと、このようになります。
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 10 | ワン | wán |
| 20 | ホッネ | hótne |
| 30 | ワン エ・ツ゚ホッネ / ワン イカㇱマ ホッネ | wán e-túhotne |
| 40 | ツ゚ホッネ | tuhótne |
| 50 | ワン エ・レホッネ / ワン イカㇱマ ツ゚ホッネ | wán e-réhotne |
| 60 | レホッネ | rehótne |
| 70 | ワン エ・イネホッネ / ワン イカㇱマ レホッネ | wán e-ínehotne |
| 80 | イネホッネ | ínehotne |
ここまでをまとめると、数の表し方は次の表のようになります。
| 一の位 | 十の位 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
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| 一の位 | 十の位 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
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| 一の位 | 十の位 | 十の位 | 一の位 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
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90以降(100の表し方)
[編集]二十進法の地域では、hotneを1~10までの数詞で修飾することで200までの数を表すことができますが、このようにして表す方言だけでなく、100で一旦区切りをつけて新しい単位を導入する方言もあります。
前者の方法では、そのまま同じ数え方を続けるだけです。(パターン2の完全足し上げ法は省略します。)
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 80 | イネホッネ | ínehotne |
| 90 | ワン エ・アシㇰネホッネ | wán e-ásiknehotne |
| 100 | アシㇰネホッネ | asíknehotne |
| 110 | ワン エ・イワンホッネ | wán e-íwanhotne |
| 120 | イワンホッネ | iwánhotne |
| 130 | ワン エ・アㇻワンホッネ | wán e-árwanhotne |
| 140 | アㇻワンホッネ | árwanhotne |
| 150 | ワン エ・ツ゚ペサンホッネ | wan e-túpesanhotne |
| 160 | ツ゚ペサンホッネ | túpesanhotne |
| 170 | ワン エ・シネペサンホッネ | wán e-sínepesanhotne |
| 180 | シネペサンホッネ | sinépesanhotne |
| 190 | ワン エ・ワンホッネ | wán e-wánhotne |
| 200 | ワンホッネ | wánhotne |
後者の方法では、100を表す数詞には地域によって様々なバリエーションがあります。
| カナ | ローマ字 | 地域 |
|---|---|---|
| アシㇰネホッネ | asíknehotne | 沙流・樺太 |
| イㇰ | ík | 多くの地域 |
| シネ イㇰ | siné ík (またはsinéik?) | |
| アツ゚ィタ | atúyta | 旭川 |
| ワン ホッ | wan hot | 宗谷 |
| タンク | tanku | 十進法地域 |
| シネ タンク | sine tantu | 〃 |
ikを例として示すと、次のようになります。
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 80 | イネホッネ | ínehotne |
| 90 | ワン エ・イㇰ | wan e-ík |
| 100 | イㇰ | ík |
| 110 | ワン イカㇱマ イㇰ | wán ikásma ík |
| 120 | ホッネ イカㇱマ イㇰ | hótne ikásma ík |
| 130 | ワン エ・ツ゚ホッネ イカㇱマ イㇰ | wán e-túhotne ikásma ík |
| 140 | ツ゚ホッネ イカㇱマ イㇰ | tuhótne ikásma ík |
| 150 | ワン エ・レホッネ イカㇱマ イㇰ | wán e-réhotne ikásma ík |
| 160 | レホッネ イカㇱマ イㇰ | rehótne ikásma ík |
| 170 | ワン エ・イネホッネ イカㇱマ イㇰ | wán e-ínehotne ikásma ík |
| 180 | イネホッネ イカㇱマ イㇰ | ínehotne ikásma ík |
| 190 | ワン エ・ツ゚イㇰ | wán e-túik |
| 200 | ツ゚イㇰ | tuík (tú ík か?) |
十進法地域では、次のようになります。ここでは10と100はkunkutu–tankuとしますが、旭川ではhot–atuytaとなります。漢数字のように表すこともあります。
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 90 | sinepesan kunkutu | |
| 100 | sine tanku | |
| 110 | sine tanku orowa wanpe (ikasma) | |
| 120 | sine tanku orowa tu tanku ikasma | |
| 130 | sine tanku orowa re kunkutu (ikasma) |
| 数 | カナ | ラテン文字 |
|---|---|---|
| 90 | ||
| 100 | ||
| 110 | ||
| 120 |
十進法でも、さまざまな表し方があります。
大きな数
[編集]100や1000を超えるような数を表す際は地域ごとに異なる表現を使っていたと考えられ、全地域をまたいで使われた大数の体系は今のところ確認されていない。
しかし散発的ではあるものの、複数の地域で大きな数を表す表現が記録され、また新たに考案もされているため、ここに地域を(新案の場合はリンクを)付して概略を示す。また最後に20進法を大きな数まで拡張したWikibooks独自の案を記す。
樺太において
[編集](準備中)
太田満による案
[編集](準備中)
☆Wikibooks独自の案
[編集]これがアイヌ語の基本的な(二十進法を使い続けたときの)数体系であると考えられます(あくまで独自の見解です。実際にこのような形で言い表している地域があったかは分かりません)。この表では、0〜3999(4000は20×20×20)まで表せます。また、このほかに大きな数の表し方がある地域もあります。
| 一の位 | + | 十(二十、廿)の位 | + | 二百(四百)の位 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
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イカㇱマ |
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イカㇱマ |
|
| 0[11] | |||
|---|---|---|---|
個数・人数
[編集]数を数えるときは、これらの数詞を「シネ メノコ(1人の女)」や「ツ゚ オㇰカヨ(2人の男)」、「レ セタ(三匹の犬)」のように、数えられる名詞の前に置きます。何を数えるときでも形は変わりません。
また、個数を表す「シネㇷ゚、ツ゚ㇷ゚、…アシㇰネㇷ゚、イワンぺ、アㇻワンペ…[12]」や、人数を表す「シネン、ツ゚ン、…アシㇰネン、イワニゥ、アㇻワニゥ…[13]」を使って数えることもできます。この場合、「ポン チセ イネㇷ゚(小さな家一棟)」や「エユピヒ アシㇰネン(あなたのお兄さん5人)」などのように、数名詞を後に置きます。
11以上の数で、数詞が二つ出てくるときは、「シネㇷ゚ イカㇱマ ワンぺsinep ikasma wanpe(11個)」「ツ゚ン イカㇱマ ホッネンtun ikasma hotnen(22人)」「レㇷ゚ イカㇱマ ワンぺ エ・ツ゚ホッネㇷ゚ rep ikasma wanpe e-tuhotnep(33個)」「イワニゥ イカㇱマ ワニゥ エ・レホッネンiwaniw ikasma waniw e-rehotnen(56人)」のように、1や2や-10の部分も、ワンやホッネも数名詞になります。同様に、「11匹のぬこ(チャペ/サ゚ペ[14]cape:猫)」などという場合は、「シネ チャペ イカㇱマ ワン サ゚ペ」のように、「ねこ」の部分も繰り返して言います。省略形を使って「シネㇷ゚ イカㇱマ ワン チャペ」と言うこともできます。
また、比較的少ない個数や人数を数える場合、固有の呼び方で呼ばれることがあります。下に示したものは沙流方言のものです。
| 人数 | カナ | キリル | ラテン |
|---|---|---|---|
| 5 | アシㇰ | асик | asik |
| 8 | ツ゚ペㇱ | тупэс | tupes |
| 9 | シネペㇱ | синэпэс | sinepes |
| 5人 | ハィナ | һайна | hayna |
| 8人 | ハンピヤ | һанпийа | hanpiya |
| 9人 | ハンチキ | һанчики | hanciki |
序数(順番)は、「イイェエ~/iye-e-」を数詞の前に付けて表します。(国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブより)
【接頭】[i-y-e-e もの・(挿入音)・(と一緒)で・で]…番目。(「二」以上の数詞と共に用いられる。) iye-einen イイェエイネン 四人目。 iye-einep ne イイェエイネプ ネ 四番目の。 iye-einep ne ku=poho イイェエイネプ ネ クポホ 四番目の息子。 iye-eiwan to イイェエイワン ト 六日目。(W神謡) iye-ere pa イイェエレ パ 三年目。(W民話) iye-erep イイェエレプ 三番目。 iye-erep ne イイェエレプネ 三番目の。 iye-ererko イイェエレレコ[名][i-e-e-rerko もの・で・それで・三日] 三日目。 iye-etup イイェエトゥプ 二番目。 a=o uske oro wa iye-erep oro ta ráp=an アオ ウシケ オロ ワ イイェエレプ オロ タ ラパン 乗った所から三つ目で降りましょう。(S) ☆参考 電車に乗ってから次の次の駅で降りることを言っている。 乗った駅を一つ目として数えている。 ☆発音 二語のアクセントで発音される。 iyé-etú、 iyé-eré。 ☆参考 このように iye-e- イイェ エ を使って言う「…番目」の言い方はサダモさんのみから聞いた。 ワテケさんによれば「…番目」という言い方はなく、 hoski a=ye p, iyos a=ye p, na iyos a=ye p ホシキ アイェプ、 イヨシ アイェプ、 ナ イヨシ アイェプ《最初に言ったこと、 その後に言ったこと、 さらに後に言ったこと》のように言う。 しかしワテケさんも、 神謡の中では iye-eiwan to イイェエイワン ト《六日目の日》のようにこの形を使って歌っている。 (出典:田村、方言:沙流)(国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブより)
| カナ | ラテン | アラビア数字10進法 | 品詞 | 方言 |
|---|---|---|---|---|
| ヘンパㇰ | henpak | 幾つの(疑問詞)[16] | 数連体詞[17] | |
| クンクツ゚ | kunkutu | 10 | 名詞 | 樺太 |
| ホッ | hot | 20, 10 | 名詞[18] | |
| ホッネ | hotne | 20, 10 | 数連体詞 | |
| アツ゚ィタ | atuyta | 10, 40, 100, 200, 1000 | ||
| シネㇰ | sinek | 1000 | ||
| イㇰ | ik | 20, 100, 1000, 100000000 | ||
| タンク | tanku | 100 | 樺太 |
これだけ種類がありますが数を作る規則は確固としてあり、どの数詞で何を表すかを文章の冒頭などで決めておけば、同じ表記で二通りに取れる、といったことは決して起こらないようになっているので誤解はなくなります。
リンク・参考文献
[編集]- ニューエクスプレスプラス アイヌ語(中川裕 2021、白水社)ISBN 978-4-560-08868-5 pp.100–105,106
- 落合いずみ(2021)「アイヌ語の数詞再考 : 二十進法における下方算法から上方算法への切り替え」、『北方言語研究』第11号pp.99–121
- 阪口諒(2022)「アイヌ語樺太方言における数詞と計算」、『北方人文研究』第15号pp.63–84
参照
[編集]引用元
[編集]- ^ 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ
- ^ アイヌ神謡集p78 Nitatorunpe yaieyukar, “Harit kunna”
註釈
[編集]- ^ 1.0 1.1 例外アクセントのため、樺太では「イーネ îne」となる。含まれる語も同様(イーネホㇹiinehoh:40 等)。
- ^ 樺太西海岸ではアㇱネㇸ asneh。
- ^ 述詞を伴う形式名詞だとする考え方もあるが、ここでは触れない。
- ^ kunkutuは数名詞であるため、原則として名詞の前に来て修飾することはない。比較のため本表にも載せた。
- ^ kátkemat
- ^ 6.0 6.1 [ホッネ]の部分は方言によって異なる。「ホッネ」は北海道の中部・南部などで使われる。
- ^ ただし、この例での e- はむしろ減算を表すものだと考えたほうが都合が良い。
- ^ kunkutuはhot/hotnepともなりうる。以下同様。
- ^ ワン・エィワンホッネになる可能性もある。
- ^ ここでは「ホッネ」より一、二段階程度大きな数詞である「アツ゚ィタ」(示す数は地域によって異なる)を使いましたが、実際に400として使われていることがあるのを確かめたというわけではありません。
- ^ 「ただ(副詞)、ただの(連体詞)、空である(一項述詞)」という意味の語。数詞の0として使われるという説明・用例は、これでしか確認できなかった。但し、アイヌ語の一項述詞は一般的に名詞としても使われるため、「空であるもの」という意味の言葉として解釈することはできる。
- ^ 母音終わりなら -ㇷ゚ -p,子音終わりなら -pe -ペ を付ける。(「もの」を表す言葉と同じもの。)樺太方言では -ㇷ゚ -p は-ㇵ/ㇶ/ㇷ/ㇸ/ㇹ -xに変化している。
- ^ 母音終わりなら -n -ン,子音終わりなら-iw -イゥを付ける。
- ^ 表記法が違うだけで全く同じもの。
- ^ 数連体詞の形。「個数・人数など」であげたような使い方ももちろんする。
- ^ ヘンパㇰぺ(幾つ)、ヘンパキゥ(何人)のほか、ヘンパㇰパ(何年)などとしても使う。
- ^ 通常の疑問詞と同じようにhempakpe, hempakiwで何個、何人という意味の名詞にもなる。
- ^ あくまで20や10という数を表す名詞であり、20個(10個)を表すわけではない。