カトゥッルス 詩集/第29歌
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C・VALERII・CATULLI・ CARMINA
ラテン語テキスト
[編集](Latin LibraryのCatullus 29 の前半4行を抜粋してアレンジした。)
Quis hoc potest vidēre, quis potest patī,
nisi impudīcus et vorāx et āleō,
Māmurram habēre quod comāta Gallia
habēbat ūnctī et ultima Britannia ?
語釈
[編集]- 語釈1
- quis (疑問代名詞 quis, quis, quod の男性・単数・主格) 誰が
- hoc (指示代名詞 hic, haec, hoc の中性・単数・対格) これを
- (語釈4 の不定法句を指す)
- potest (不規則動詞 possum の三人称・単数・現在・能動・直接法) ~できる
- vidēre (第二活用動詞 videō の現在・能動・不定法) 見ること
- potest vidēre 見ることができる
- quis hoc potest vidēre (?) 誰がこれを見ることができるか(?)
- 語釈2
- quis (疑問代名詞 quis, quis, quod の男性・単数・主格) 誰が
- potest (不規則動詞 possum の三人称・単数・現在・能動・直接法) ~できる
- patī (第三活用・デポネンティア動詞 patior の現在・能動・不定法) 耐える、黙認する、許容する
- potest patī 耐えることができる
- quis 《hoc》 potest patī (?) 誰が《これを》耐えることができるのか(?)
- 語釈3
- nisi (接続詞) もし~でなければ
- impudīcus (第一・第二変化形容詞 impudīcus, -a, -um の男性・単数・主格) 恥知らずな
- et (接続詞) かつ
- vorāx (第三変化形容詞の男性・単数・主格) 食欲旺盛な、食い意地が張っている
- et (接続詞) かつ
- āleō (第三変化名詞の男性・単数・主格) ばくち打ち
- nisi impudīcus et vorāx et āleō 恥知らずで、食い意地が張っていて、ばくち打ちでないとすれば
- 語釈4
- Māmurram (第一変化・男性名詞 Māmurra, -ae の単数・対格)
- マームッラ (ローマ人の家名) ⇒不定法句の主語
- habēre (第二活用動詞 habeō の現在・能動・不定法) 持つこと、所有すること、行なうこと
- quod (関係代名詞 quī, quae, quod の中性・単数・対格) ~ところのものを
- comāta (第一・第二変化形容詞 comātus, -a, -um の女性・単数・主格) 長髪の
- Gallia (第一変化・女性名詞 の単数・主格) ガッリア(ガリア)が
- comāta Gallia 長髪のガリア (※ローマの支配下でなかったアルプス以北のガリア) が
- habēbat (第二活用動詞 habeō の三人称・単数・未完了過去・能動・直説法) 持っていた、所有していた、行なっていた
- ūnctī (第二変化・中性名詞 ūnctum, -ī の単数・属格) ご馳走、宴会(banquet) の
- et (接続詞) かつ
- ultima (第一・第二変化形容詞 ultimus, -a, -um の女性・単数・主格) 最も遠方の
- Britannia (第一変化・女性名詞の単数・主格) ブリタンニアが
- quod comāta Gallia habēbat ūnctī et ultima Britannia 長髪のガッリアや最遠方のブリタンニアが催していた宴会を
- Māmurram habēre quod comāta Gallia habēbat ūnctī et ultima Britannia
- 長髪のガッリアや最遠方のブリタンニアが催していた宴会をマームッラが催していることを
対訳
[編集]{ } 内は関係文。
Quis hoc potest vidēre, quis potest patī, nisi impudīcus et vorāx et āleō, Māmurram habēre {quod comāta Gallia habēbat ūnctī et ultima Britannia} ? | 恥知らずで、意地きたなくて、ならず者でもなければ、目の当たりにすることができようか、我慢できるだろうか? (目の当たりにして我慢できるのは、恥知らずで、意地きたなくて、ならず者だろうよ) 長髪のガッリア(人たち)や最果てのブリタンニア(人たち)が催していた宴会を マームッラ が催していることを。 |
解説
[編集]カトゥッルスが、カエサルらを攻撃した諷刺詩の一つからの抜粋である。カトゥッルスは、彼と親交があり、彼と並び称された抒情詩人 カルウス ともどもカエサルらの政治姿勢などを諷刺する詩を書いている。
ここで名前を挙げて攻撃されているのは、カエサルの側近で技師長であった マームッラ であり、カエサルの名前は出てこない。が、ここで掲げた後の箇所も含めて、マームッラを寵童にしていたと取り沙汰されていたカエサルとの男色関係と、縁故による昇進、ガリアやブリタンニアの富を略奪して私腹を肥やしていたことなどが暗に非難されている。
スエトニウスは、後にカトゥッルスやカルウスがカエサルと和解したと記しているが、カルウスの作品は残っていないものの、カトゥッルスはカエサル非難の諷刺詩を出版させている。
脚注
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関連項目
[編集]外部リンク
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