ガロア理論/単拡大

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定義(単拡大)

体の拡大 が単拡大(単純拡大)であるとは、 となる が存在することを言う。

定理 1 (原始元定理)[編集]

体の有限次拡大 に対して以下は同値。

(i) 中間体が有限個である
(ii) 単拡大である

証明

(i) ⇒ (ii):
が有限体の場合は ガロア理論/有限体 を参照のこと。
, が無限体、のときを示せば十分。 とおいて、 となる を探す。 は無限集合であるが、 は仮定より有限集合。したがって となる相異なる が取れる。
であるので、 となり

(ii) ⇒ (i):
として、 上の最小多項式とする。 の中間体 について、 上の最小多項式とする。 の係数 について、 となることを示そう。
として、 上の最小多項式とする。明らかに なので、 で割り切れる。また、 より、 で割り切れる。つまり、 であり、 なので
したがって、 の中間体は で決まることがわかったのだが、 内で を割り切るので、中間体が有限個であることが示された。

命題 2[編集]

有限次分離拡大は単拡大である。

証明

を有限次分離拡大とする。 を中間体として、 上の の自己同型のなす群として、 とおく。このとき明らかに である。

は有限次分離拡大であり、拡大次数についての帰納法によって とすれば、 の共役元として、 という自己同型がある(ガロア理論/分離拡大参照)ので、 である。したがって、 である。

さて、 は有限群 の部分群であり、そのような全ての に対して を考える。すると、 の真の中間体は、ある部分群 について の部分体であり、そのようなものは帰納法の仮定により有限個である。したがって、部分群 は高々有限個しかないから、 の中間体は有限個である。

よって原始元定理によって示された。