- 定義 (体)
集合
と写像
について、
と書くことにする。このとき、
が(可換)体であるとは、以下の条件を満たすことを言う。
- 結合法則 : 任意の
に対して ![{\displaystyle (a+b)+c=a+(b+c).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/78049526aa4d0679013492a8df74bbc3e3f228cb)
- 単位元の存在 :
が存在して、任意の
に対して
この 0 という元を加法の単位元という。
- 逆元の存在 : 加法の単位元
に対して、任意の
に対して
が存在して ![{\displaystyle a+a'=a'+a=0.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/bfd68f6c509128666594194fd70b617a991dacac)
- 交換法則 : 任意の
に対して ![{\displaystyle a+b=b+a}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/684f43b5094501674e8314be5e24a80ee64682e3)
- 結合法則 : 任意の
に対して ![{\displaystyle (ab)c=a(bc).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/5e6c4d74971641a99268166983d327dbab37efa6)
- 単位元の存在 :
が存在して、任意の
に対して
この 1 という元を加法の単位元という。
- 逆元の存在 : 加法の単位元
に対して、任意の
に対して、
が存在して
ただし、
は加法の単位元である。
- 交換法則 : 任意の
に対して ![{\displaystyle ab=ba.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b5d5646647777ca9af6af0092f66277f20349202)
- 結合法則 : 任意の
に対して ![{\displaystyle a(b+c)=ab+ac,(a+b)c=ac+bc.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/cc76347243bf4e477970a28ea3813d01dfa8407c)
![{\displaystyle 0\neq 1.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9feb288cef604a85eff86e6f9cb813ad6e9aec2a)
基本的には「
は体である」というより、演算を省略して「
は体である」ということが多い。
- 例
は、自然な加法と乗法について体となる。
は、自然な加法と乗法について体にはならない。乗法の逆元が常に存在するとは限らないからである。
- 有限体
![{\displaystyle \mathbb {Z} /p\mathbb {Z} .}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/4b0114cbd8da133c89104e402eb84a6e8435d86f)
体
の加法の単位元、乗法の単位元は共にただ一つ存在する。
- 証明
体は加法に関して群なので一般論より成り立つ。群論参照。
体
の元
の加法の逆元はただひとつ存在する。
なら、乗法の逆元はただひとつ存在する。
- 証明
体
は加法に関して、またその部分集合
は乗法に関してそれぞれ群を成すので、一般論より成り立つ。
群論参照。
このことから、加法の逆元を
、乗法の逆元
などと書く。
- 定義
体
の間の準同型
とは、以下を満たす写像である。
- 任意の
に対して ![{\displaystyle f(a+b)=f(a)+f(b).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/095a4d4d8da5e264591c491d30d63f272aabd2c8)
- 任意の
に対して ![{\displaystyle f(ab)=f(a)f(b).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/35adb3531183b18ef3299ae87546ecd005aa30dd)
![{\displaystyle f(1)=1.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/097117bc0ac6889a92466d3f7f3bd3f4460833db)
簡単に分かる性質として以下を挙げる。
より、![{\displaystyle f(0)=0.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/cc3f237e89ebcbd24f17125497c63b4d3749dbf6)
より ![{\displaystyle f(-x)=-f(x).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/3496996a2ac28bf5626eb661172927b3b0c4009b)
のとき、
より ![{\displaystyle f(x^{-1})=f(x)^{-1}.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/5c7b3372ca65fed7c841fee1e87259c3868b6a35)
体の準同型
は単射である。
- 証明
のとき、乗法の逆元
が存在し、
なので、
である。
よって、
のとき、
なので、
、すなわち
である。
すなわち、fは単射である。
- 定義
体の同型写像とは、準同型であり、かつ全単射であることを言う。
体という数学的構造を扱う際、同型な体は同じ構造を持っているとみなすことができる。
体の同型写像の逆写像はまた準同型写像である。
- 証明
練習問題。
- 定義
体
とその部分集合
について、
の演算
を
上に制限したときの行き先が必ず
に入り、かつ、その制限写像によって
が体になるとき、
は
の部分体である、
は体の拡大である、という。
このとき包含写像が準同型になることに注意。
体の準同型
があるとき、
が同型であることから、命題 4 とあわせて、体の準同型があれば同型を除けばそれは体の拡大である、と思うことができる。
- 例
は体の拡大である。
は体の拡大。ただし、![{\displaystyle \mathbb {Q} ({\sqrt {-2}})=\{a+b{\sqrt {-2}}\in \mathbb {C} |a,b\in \mathbb {Q} \}.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/aaf5e70db975ab3d540125cd96a5d71d5f72b2b5)
- 定義
を体の拡大とする。
が体
上の(準)同型であるとは、体の(準)同型であり、かつ
上では恒等写像であることをいう。
- 定義
を体の拡大とする。
の自己同型とは、
上の同型写像
のことをいう。自己同型全体の集合
には、写像の合成を積とする群構造が入る。これを自己同型群という。
- 定義
体の拡大
について、
がその中間体であるとは、
が体の拡大になっていることをいう。
体の拡大
および中間体
について、
は中間体である。
- 証明
体の演算について閉じていることを機械的に確かめるだけなので、省略。群論参照。
体の拡大
および集合
について、
を含むような
の中間体のうち、包含順序について最小の中間体が存在する。
- 証明
を
を含むような
の中間体全体の集合として、命題 5 を適用する。
- 定義
命題 6 で存在が保証される体を
と書く。特に
が有限集合である場合、
とも書く。
体の拡大
および集合
について、
が存在して ![{\displaystyle \alpha =f(\alpha _{1},\cdots ,\alpha _{n})\}.}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/21e134315aa9f3cd639e1c36094cae449d9ae20c)
ただし、
は
上の
変数有理関数体であり、その元は
係数多項式
で
と表せるもの全体からなる。
- 証明
命題の主張にある集合
が体であることを確認する(省略)。そうすると、明らかに
であり、
を含む中間体である。逆に、そのような任意の中間体は
を含む。
体の拡大
と体
上の準同型
について、
であるならば
である。
- 証明
命題7 より。詳細は読者に委ねる。