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プログラミング/コンパイラ実装技術

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

コンパイラ実装技術

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コンパイラは、ソースコードを効率的な実行形式に変換する複雑なソフトウェアです。これを実現するためには、以下のような要素技術が必要です。

字句解析 (Lexical Analysis)

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字句解析は、ソースコードをトークン(意味のある最小単位)に分割する工程です。たとえば、変数名、予約語、演算子、リテラルなどがトークンになります。

技術例
字句解析器生成ツール: LexFlexなど。
正規表現: トークンのパターンを記述するのに使用。

構文解析 (Syntax Analysis)

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構文解析は、字句解析で得られたトークン列が言語の文法規則に従っているかを確認し、構文木(Syntax Tree)を生成する工程です。

技術例
構文解析器生成ツール: YaccBison
LL法/LR法: 構文解析アルゴリズム。

意味解析 (Semantic Analysis)

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意味解析では、構文木に基づいてプログラムの意味が正しいかを確認します。たとえば、型チェックや識別子の解決が行われます。

技術例
記号表: 変数や関数のスコープや型を管理。
型検査: 明示的および暗黙的な型変換の確認。

中間コード生成 (Intermediate Code Generation)

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中間コードは、ターゲットマシンに依存しない表現形式であり、コンパイラの後続工程で使用されます。

技術例
3アドレスコード: 命令を「操作」「オペランド1」「オペランド2」の形式で表現。
スタックマシンモデル: 中間コードを仮想スタックに基づいて設計。

最適化 (Optimization)

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最適化では、中間コードまたは生成されたコードの効率を改善します。これには、実行速度の向上やメモリ使用量の削減が含まれます。

技術例
ループ最適化: ループのアンローリング、インバリアントコードの外出し。
デッドコード除去: 実行に影響を与えないコードを削除。
共通部分式除去: 再利用可能な式の計算結果を共有。

コード生成 (Code Generation)

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コード生成は、中間コードをターゲットマシンのアセンブリコードやバイナリコードに変換する工程です。

技術例
命令選択: ターゲットマシンの命令セットに合わせたコード生成。
レジスタ割り当て: 計算に使用するレジスタの効率的な割り当て。
スケジューリング: 命令の実行順序を最適化。

エラー処理 (Error Handling)

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コンパイル中に発生するエラーを検出し、適切なメッセージを出力します。これにより、プログラマーが問題を修正しやすくなります。

技術例
復帰解析: エラーが発生しても解析を続行する技術。
エラーメッセージ生成: 問題箇所を正確に指摘。

リンカ・ローダとの連携

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生成されたコードはリンカによって他のモジュールと結合され、ローダによって実行可能形式としてロードされます。

技術例
シンボル解決: 外部シンボル(関数や変数)のリンク。
アドレス修正: 実行時のメモリアドレスの調整。

まとめ

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コンパイラは、字句解析からコード生成までの多段階の工程を組み合わせることで、高効率でエラーの少ない実行コードを生成します。各工程における技術の進化は、プログラミング言語とコンパイラの性能向上に大きく寄与しています。