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ラテン語 第三変化i幹名詞

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

ラテン語 > 名詞 > 第三変化i幹名詞

三つ目の型は、I型の格変化である。属格複数形が -ium となることに着目して、こう呼ばれる。属格単数形では、 -is という形になるが、これは、I型のみならず、子音型でもそうである。I型の格変化にも、幾つかのパターンがある。

-is, -is

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一つ目のパターンは、単数主格で -is となるものである。このパターンには、単数対格が -im 、単数奪格が -ī となるもの(真正のI型格変化)と、単数対格が -em 、単数奪格が -e となるもの(混合型)の二種類がある。両者を全く別の格変化(独:gemischte Deklination)として扱うものもあるが、これらは辞書の形を見ただけでは区別することはできず、また混合型の名詞でもI型の単数奪格形を許容するものもある。したがって、ここでは敢えて区別しないことにし、I型か混合型かなどの註記を単語に附しておく。それでは、「塔」を意味する「turris, turris」(I型)、「敵」を意味する「hostis, hostis」(混合型)を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)-is (turris, hostis)-ēs (turrēs, hostēs)
属格 (genitīvus)-is (turris, hostis)-ium (turrium, hostium)
与格 (datīvus) (turrī, hostī)-ibus (turribus, hostibus)
対格 (accūsātīvus)-im / -em (turrim, hostem)-īs (-ēs) (turrīs (turrēs), hostīs (hostēs))
奪格 (ablātīvus)-ī / -e (turri, hoste)-ibus (turribus, hostibus)

呼格は、主格と同形である。

男性名詞の例

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Albis, Albis(I型)エルベ川
fīnis, fīnis終り
ignis, ignis(混合型、但し単数奪格igniも可)
mēnsis, mēnsis月(暦の)
Tiberis, Tiberis(I型)ティベリス川

女性名詞の例

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auris, auris
avis, avis
classis, classis(混合型)艦隊、組、階級
febris, febris(I型)
nāvis, nāvis(混合型、但し単数奪格 nāvī も可)
Neapolis, Neapolis(I型)ネアポリス(現在のナポリ)
puppis, puppis(I型)船尾
secūris, secūris(I型)
sitis, sitis(I型)喉の渇き
turris, turris(I型)
tussis, tussis
vallis, vallis

男女同形の名詞の例

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cīvis, cīvis (m./f.)市民
hostis, hostis (m./f.)
testis, testis (m./f.)証人
  • このパターンの各変化をする中性名詞

-es/-ēs, -is

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二つ目のパターンは、単数主格で -es あるいは -ēs となるものである。「狐」を意味する「vulpēs, vulpis」を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)-es/-ēs (vulpēs)-ēs (vulpēs)
属格 (genitīvus)-is (vulpis)-ium (vulpium)
与格 (datīvus) (vulpī)-ibus (vulpibus)
対格 (accūsātīvus)-em (vulpem)-is (-ēs) (vulpis (vulpēs))
奪格 (ablātīvus)-e (vulpe)-ibus (turribus)

呼格は、主格と同形である。

女性名詞の例

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aedēs, aedis
caedēs, caedis殺害、虐殺
clādēs, clādis損害
fames, famis空腹、飢餓
nūbēs, nūbis
vulpēs, vulpis

-s, -is

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三つ目のパターンは、単数主格で s がつくものである。このパターンは語幹の末尾の子音と s が融合するものがある。具体的には、

  • c+s=x
  • g+s=x
  • t+s=s
  • d+s=s

となる。また、一部はこの融合に伴い、単数主格の語幹の最終音節の母音が長音に変化する。それでは、「木の葉」を意味する「frons, frondis」と「額」を意味する「frōns, frontis」を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)-s (frons, frōns)-ēs (frondēs, frontēs)
属格 (genitīvus)-is (frondis, frontis)-ium (frondium, frontium)
与格 (datīvus) (frondī, frontī)-ibus (frondibus, frontibus)
対格 (accūsātīvus)-em (frondem, frontem)-is (-ēs) (frondis (frondēs), frontis (frontēs))
奪格 (ablātīvus)-e (fronde, fronte)-ibus (frondibus, frontibus)

呼格は、主格と同形である。

男性名詞の例

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dēns, dentis
fōns, fontis泉、源

女性名詞の例

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ars, artis術、技、業
frons, frondis木の葉
frōns, frontis
gēns, gentis種族、人種
mors, mortis
nox, noctis
pars, partis部分
serpēns, serpentis
urbs, urbis

男女同形の名詞の例

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adulēscēns, adulēscentis (m./f.)青年
īnfāns, īnfantis (m./f.)幼児

-, -is(語幹変化あり)

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四つ目のパターンは、単数主格で語幹のみとなり、語幹が変化するものである。そもそも、単数主格で語幹のみとなるパターンには二種類あり、上記の三つの格変化のパターンと大体似ているものと、そうでないものがある。前者は、語幹が主格単数で -er 、それ以外で -r に変化する(後者は次に取り上げる)。「大雨」を意味する「imber, imbris」を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)- (imber)-ēs (imbrēs)
属格 (genitīvus)-is (imbris)-ium (imbrium)
与格 (datīvus) (imbrī)-ibus (imbribus)
対格 (accūsātīvus)-em (imbrem)-īs (-ēs) (imbrīs (imbrēs))
奪格 (ablātīvus)-e (-ī) (imbre (imbrī))-ibus (imbribus)

呼格は、主格と同形である。

男性名詞の例

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imber, imbris大雨
venter, ventris

女性名詞の例

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linter, lintris

-, -is(語幹変化なし)

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五つ目のパターンは、-āl, -ār という流音幹をもつものであり、語幹が変化しないものである。ただし、単数主格で語幹のみとなり、最終音節の母音が短母音になる(-al, -ar)。「動物」を意味する「animal, animālis」を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)- (animal)-ia (animālia)
属格 (genitīvus)-is (animālis)-ium (animālium)
与格 (datīvus) (animālī)-ibus (animālibus)
対格 (accūsātīvus)- (animal)-ia (animālia)
奪格 (ablātīvus) (animālī)-ibus (animālibus)

呼格は、主格と同形である。

中性名詞の例

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animal, animālis動物
calcar, calcāris拍車
exemplar, exemplāris写し、模範
tribūnal, tribūnālis古代ローマ大官の座席のあった高段、法廷
vectīgal, vectīgālis

-e, -is

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六つ目のパターンは、単数主格で -e 、単数属格で -is となるものである。これは、五つ目のパターンの亜種である。「海」を意味する「mare, maris」を例に挙げて、格変化を示そう。

数 (numerus)単数 (singulāris)複数 (plūrālis)
主格 (nōminātīvus)-e (mare)-ia (maria)
属格 (genitīvus)-is (maris)-ium (marium)
与格 (datīvus) (marī)-ibus (maribus)
対格 (accūsātīvus)-e (mare)-ia (maria)
奪格 (ablātīvus) (marī)-ibus (maribus)

呼格は、主格と同形である。

中性名詞の例

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cubīle, cubīlis寝台
conclāve, conclāvis部屋
mare, maris