ここでは、ミンコフスキー空間の計量を
とする。
を計量テンソルの行列式とする。計量テンソルの
小行列式を
とすると、
となるから、
を得る。
は、
となるから、
を得る。
また、ベクトル
に対して、
となる。
ついでに、ラプラシアンの極座標における表式を求めてみよう。
極座標では、
であるから、その逆行列は
となる。また、
[1]である。これらを代入することで、ラプラシアンが簡単に計算できる:
速度
で、重力ポテンシャル
の場の中にある質量
の粒子の作用は
で与えられる。一方、
であるから、
を得る。両辺を二乗して、
となるから、
ここで、
を使った。また、計量テンソルは
で定義されるものだから、
を得る。
電磁場との類推から、重力場のラグランジアンは、計量テンソルの一回微分
に関する二次の量
であろう。しかし、
は任意の一点ですべて0とすることができる。このことは、局所慣性系で
がすべて0となることから明らかである。したがって、
はスカラーではない。ところで、リッチスカラー
は
の形に変形することができ、作用は
のようになる。第二項の積分はガウスの定理よって、四次元の面積分に変換され、境界で
という条件を課せば変分で第二項は消えることになる。
重力場のラグランジアンは
を定数として
で与えられることが分かる。物質場のラグランジアンを
とすれば、全系の作用は
[2]
となる。変分は、
である。ただし、
はそれぞれアインシュタインテンソルとエネルギー・運動量テンソルで、
で定義される。
という条件から、アインシュタイン方程式
を得る。
しかし、まだアインシュタインテンソルの具体的な表式を得ていない。これを
から計算することは大変だから、直接変分することによって求める。
ここで、ある一点で
となる局所慣性系を使うと、リッチテンソルは
となり、その変分は、
で与えられる。
また、
はテンソルだから、任意の座標系で
となることがわかる。
よって、
となるから、これは積分して0となる。
最終的に、
となるから、アインシュタインテンソルは、
である。
したがって、アインシュタイン方程式は、
となる。添字を上げて、
縮約を取ると、
となる。よって、アインシュタイン方程式は、
と置いて、
とも変形することが出来る。特に、真空中(
)では、
となる。
エネルギー運動量テンソルの表式を求める。電磁場のラグランジアン
について、公式
を使ってテンソルの微分を実行すれば
となる。ここで、
となるから、
となる。すなわち、
を得る。これは、ミンコフスキー空間では、特殊相対性理論での電磁場のエネルギー運動量テンソルに一致する。
最後に、アインシュタイン定数
の値を求める。アインシュタイン方程式が、弱い重力場
の極限で、さらに、静的な場合に、ニュートンの重力理論
に一致することを示し、定数を決定する。ここで、
は重力定数、
は質量密度である。
エネルギー・運動量テンソルは、
となる。アインシュタイン方程式の00成分は
となる。クリストッフェル記号は
と近似することができる。
また、リッチテンソルの
の項は、二次の微小量となるから無視すると、
と近似できる。
さらに、静的な場合だから、
に関する微分が0となることに注意すると、
となる。従って、
となる。この係数は
であるから、
を得る。最終的に、アインシュタイン方程式は、
となる。
とすると、
となるから、アインシュタイン方程式は、
となる。宇宙定数
は通常小さい値のため無視することができるが、宇宙論的な議論をする際には重要になる。
球対称な物質が作り出す重力場の真空解について考えよう。球対称な空間の計量は
の形になる。計算を簡単にするために、
とすると
となる。すなわち、
となる。真空中のアインシュタイン方程式は
である。
を求める前に
を求めなくてはならない。一見計算量が膨大だと思うかもしれないが、
は非対角成分が0であることによって割と簡単に計算できる。例えば、
は、
となる。さらに、
が相異なる場合は括弧内の部分に対角成分は存在し得ないから0となる。また、
の2つのみが同じ整数の場合、括弧内の対角項のみが残る。例えば、
である。
がすべて等しい整数の場合は、
となる。これに従って計算してみよう。
は
についての微分、
は
についての微分を表す。
次に
について:
次に
について:
最後に
について:
となる。
次に、リッチテンソルを計算する。まずは、
を計算する。
ここで、
である。
であるから、
となる。よって、
となる。アインシュタイン方程式より
となるから、
を得る。すなわち、
は
に依存しない。また、
となる。次に
を計算しよう。
より、
を得る。また、
を計算すると、
となる。アインシュタイン方程式
より、
となるから、
を得る。積分すると、
となる。これは
の形の変換を施すことによって一般性を失うことなく
とすることができる。
最後に
を計算しよう。
となる。
とアインシュタイン方程式
より、
となる。
を積分して、
を得る。ここで、
は積分定数であり重力半径と呼ばれる量である。最終的に計量は
となる。さて、
の極限では弱い重力場
に一致する。ニュートン力学おけるポテンシャル
を代入すると、
となる。
重力の効果が弱いとき、
を十分微小な量として、
と書くことができる。アインシュタイン方程式
は真空中では、
となる。クリストッフェル記号は、
となる。リッチテンソルは
に対する二次の項を無視すれば、
となる。
である。ここで、
を微小量として、座標変換
をすることによって、ゲージ条件
を課す事が出来る。ゲージ条件により、最後の三項は打ち消し合い、
となるから、アインシュタイン方程式は、
と変形できる。これは波動方程式である。
- エリ・デ・ランダウ、イェ・エム・リフシッツ著、恒藤敏彦、広重徹訳『場の古典論(原著第6版)』東京図書(1978)
- 中嶋慧、松尾衛『一般ゲージ理論と共変解析力学』現代数学社(2020)
- ^
の
は根号の中身を正とするために導入したものである。今回の場合は、
は正だから
としていい。
- ^ 積分に係数
がついているのは、
となるためである。