不動産登記法第148条
条文
[編集](筆界確定訴訟の判決との関係)
- 第148条
- 筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。
解説
[編集]筆界特定制度とは,平成18年1月20日から新たに施行された制度で,不動産登記制度によって国が登記上公示している土地と土地との境界を筆界(ひつかい)と定め,不動産登記法第123条で定義(+平成17年12月6日法務省民二第2760号通達 第1(筆界))し,筆界が不明なときに土地の所有者や相続人などから筆界特定の申請があれば,筆界調査委員という筆界の専門家の意見を基にして,筆界特定登記官が筆界を特定する制度です。
筆界特定された筆界は,登記行政上の特定であり,特定された筆界を反映させる分筆登記や地積更正登記は可能ですが,行政処分としての公定力はないとされています。したがって,不動産登記法第156条の「登記官の処分」には該当しない為,審査請求の対象にならず,又,行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟も提議できません。
現状では、筆界特定された筆界に不服がある場合は,不動産登記法第148条の規定に基き,境界(筆界)確定訴訟を提起し,筆界特定された筆界を覆す判決を確定させることによってしか,筆界特定の効力を失わせることはできません。
筆界特定の問題点
1.筆界特定されても、特定された各点に、直接、境界標を設置する為には、相手方の同意が必要とされ、裁判での確定の様な完全な効力はありません。
2.筆界特定されても、納得できない者は、いつでも(10年後でも可)裁判を提訴することができ、裁判の確定判決の様な安定した状態とはなりません。にもかかわらず、特定された筆界を測量し作成した地積測量図を使用した、地積更正登記や分筆登記の申請は、筆界特定後はいつでも可能であり、地積更正後や分筆後に、事情を知らない第三者に所有権移転があった場合、後日、裁判で筆界特定が覆され、購入した土地が狭くなったり、家が建てられなくなったりする可能性があります。
3.筆界特定制度と裁判を関連付け、裁判の際の控訴期間に該当する期間を作り、この期間が経過した後は、境界確定訴訟を提訴出来なくし、筆界特定された筆界を裁判上の判決と同等の効果を持つ筆界とする制度の改革が求められます。
参照条文
[編集]
|
|
不動産登記規則
(筆界特定書等の写しの交付の請求情報等)
第237条 登記官は、その保管する筆界特定手続記録に係る筆界特定がされた筆界について、筆界確定訴訟の判決(訴えを不適法として却下したものを除く。以下本条において同じ。)が確定したときは、当該筆界確定訴訟の判決が確定した旨及び当該筆界確定訴訟に係る事件を特定するに足りる事項を当該筆界特定に係る筆界特定書に明らかにすることができる。
平成17年12月6日法務省民二第2760号通達 抜粋
(筆界)
1 筆界特定の手続における「筆界」とは,表題登記がある1筆の士地(以下単に「1筆の土地」という。 )とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。)との聞において,当該1筆の士地が登記された時にその境を構成するものとされた2以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう(法第123条第1号)。「当該1筆の士地が登記された時」とは,分筆又は合筆の登記がされた土地については,最後の分筆又は合筆の登記がされた時をいい,分筆又は合筆の登記がされていない士地については,当該土地が登記簿に最初に記録された時をいう。
(筆界特定)
2 「筆界特定」とは,一の筆界の現地における位置を特定することをいい,その位置を特定することができないときは,その位置の範囲を特定することを含む(法第123条第2号) 。
(筆界確定訴訟の記載)
164 申請人又は関係人その他の者から筆界特定に係る筆界について筆界確定訴訟の確定判決の正本又は謄本の提出があったときは,規則第237条の規定により筆界特定書に確定判決があったことを明らかにするものとする。この場合には,筆界特定書の1枚目の用紙の表面の余白に確定日,判決をした裁判所及び事件番号を記載するものとする。提出された確定判決の正本又は謄本は,筆界特定書とともに保存するものとする。