今までにある数を2乗する計算は何度か行ってきました。例えば、一辺が5mの正方形があれば、その正方形の面積は52=25m2です。では、その逆はどうでしょうか。面積が10m2の正方形を作りたいとします。その時、正方形の一辺の長さはどのくらいにすればいいでしょうか。これに答えるためには、「2乗された数を元に戻す」計算をしなくてはなりません。この章ではそのような計算をする、平方根(へいほうこん)を学習します。
3年生では、新しい計算式と記号を学びます。それがこの「平方根(へいほうこん)」です。
1年生の時には「累乗」というものを習いました。22=4、52=25などですね。つまり、2乗した数を求めることをしていたわけです。(忘れてしまった人は復習しましょう)
平方根はこの逆で、2乗する前の数を求めることをいいます。たとえば、2乗して9になる数は3と-3です(32=9、(-3)2=9)。ですから、「9の平方根は3と-3(この2つをまとめて±3と表してもよい)」と言えます。
平方根の定義
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2乗すると a になる数を、 a の平方根(へいほうこん)という。
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平方根を計算することは、x2=aとなるxの値を求めることになります。
また、中学校では a が0以上の数である場合のみを勉強します。なぜなら、2乗して負の数になる数は存在しないからです。
- ※ 高等学校では、2乗して負になる数も学習します(虚数)
ある数を2乗すると、その答えはかならず正の数になります。だから、ある数の平方根は、ふつう、絶対値が同じ正の数と負の数の2つがあります。
平方根の性質
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ある数 a に対する平方根は正の数と負の数の2つがある。
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ただし、0の平方根は0のみである。
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4の平方根は±2であることはすぐに分かりますが、3の平方根はいくつになるでしょうか?実は3の平方根を求めるのは、結構面倒な問題です。しかし、次のような記号を用いることで3の平方根にあたる数を表すことができます。
これは「ルート3」と読み、3の平方根のうち符号が正である数を表します。負の数の方は、と書いて、「マイナスルート3」と読みます。
一般に、a が正の数のとき、a の平方根のうち、正の方を、負の方をと表します。記号√を根号(こんごう)といいます。aが0でないとき、平方根は正と負の2つありましたが、は正の数だけを表すことに注意してください。
平方根の表し方
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ある数 a に対する平方根は、記号√(根号)を用いて、
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(正の方) (負の方)
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と書く。それぞれ、「ルートa 」、「マイナスルートa 」と読む。
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一般的には、a の平方根ととを、まとめて、と書きます。
a <b となる2つの正の数aとbを考えます。とでは、どちらが大きいでしょうか?
面積がa,b の、2つの正方形があります(右図参照)。この正方形の一辺はそれぞれ、です。なぜなら、正方形の面積は一辺の長さの2乗なので、一辺の長さは面積の(正の)平方根と言えるからです。
正方形は、一辺の長さが大きいほど、面積が大きいです。逆に、面積が大きいほど、一辺が大きくなります。
この図では、「面積」:根号の中の数、「一辺」:正の平方根を示しています。直感的に正の2数の大小と、それぞれの平方根の大小は一致することが読み取れます。
計算でも確かめてみましょう。
a <b となる2つの正の数aとbを考えます。ここでは、b-a >0 です。このとき、- >0 が成り立つことを確かめましょう。定義から+ >0 は明らかなので、-の符号と、(-)(+)の符号は一致します。ところが、(-)(+)=
()2-()2=b-a >0
となって、この値の符号は正です。従って、-の符号は正であることが示されました。
すなわち、次のことが言えます。
平方根の大小
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正の数aとbに対して
- ならば a <b
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つまり、根号のついた正の数の大小を比較するには、それぞれを2乗した数を比較すればいいのです。
たとえば、とでは、13 < 15なので、がいえます。
ここで、先程の問題に戻ります。の値はいくつになるでしょうか?
- 12=1
- 22=4
- 1<3<4
この3つの式から
ということが分かります。つまりは1と2の間にある数なので、整数ではないということがわかります。
- 実はは
- という小数点以下が無限に続く少し扱いの面倒な数なのです。
では、たとえば6とのように、根号を用いない正の数と根号を用いた正の数とを比較するにはどうすればいいでしょうか。
この場合も両方を2乗するのです。62=36とを比べると、36<42ですから、とわかります。
このように、根号のついた式を、2乗することで根号の無い式にすることを、2乗して根号をはずすといいます。
2乗して根号をはずす
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ここまで根号が関係する正の数同士の大きさを比べてきました。正の数と負の数であれば、正の数の方が大きいのでこのような比較は必要ありません。
また、負の数同士を比べる場合は、絶対値の大きい方が小さな数ということになりますから、絶対値の大きさを比べることになります。(正の数と負の数の大小や絶対値の考え方については、1年生の数量分野を参照してください。)
例えば、との大小を比べる時は、5 < 7から絶対値の大小が
となるため
とわかります。
根号をはずすことによって、根号のある式から根号の無い式へ変換すると式が分かりやすくなることも多いですが、根号を自由に使いこなすためには、根号をはずすという方法とは逆の方法を知ることも重要です。
例えば
この式は左右を入れ替えると
となります。これを見ると、左辺の2乗に根号をかぶせたものが右辺になっています。ですから、下のような性質がわかります。
数に根号をかぶせる
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正の数aに対して
- 正の数の場合:
- 負の数の場合:
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は負にはならないので、負の数の場合はマイナスを根号の中に入れられないことに注意してください。
ある数の平方根を求めるときには、その数に根号をかぶせればいいということがわかりました。
しかし、根号を用いると不便になることもあります。たとえば、定規でcmの線分を引くとき、このままでは引くことができません。根号を用いた表し方では、cmが定規のどこに対応するのかわからないからです。
そこで、を小数で表してみましょう。
を求めるということは、すなわち、2乗したときに10になる数を求めればいいのです。
- 12=1
- 22=4
- 32=9
- 42=16
9 < 10 < 16ですから、3 < < 4であることがわかります。もっと細かい値を調べてみましょう。
- 3.12=9.61
- 3.22=10.24
9.61 < 10 < 10.24ですから、3.1 < < 3.2であることがわかります。このように続けていくと、どんどん細かい値を出すことができます。この場合は、およそ3.2cmとると、cmとだいたい同じ長さになります。図形を描く分には、これで十分です。
=3+d とおいて、dの値を考えましょう。ここで、dはそれ自体、小さい絶対値を持つ値になるだろうと予想されます。この式を辺々2乗すると、
(3+d)2=10 より、6d+d2=1 となります。ここで、d2は、6dに比べて、絶対値が非常に小さい値になると考えられるので、あえて無視すると、d=1/6≒0.17 となって、=3+d≒3.17 となりました。d2を無視した分、正確な値とは言えませんが、一回の計算でここまで近づけることができます。さらにこの結果を利用して、
=19/6+d とおいて、同様の計算を繰り返すと、(19/6+d)2=10 より、19d/3+d2=-1/36 となります。ここで先程と同様にd2を無視すると、d=-1/228≒-0.00439 が得られ、=3+d≒3.16228 が手計算で求められます。これを繰り返せば、どんどん真の値に近づけることができます。
しかし、きちんと正確な値を出すことはできません。小数で表すとどこまでも続く小数(無限小数といいます)になるからです。ですから、平方根の値を求めるときはそれに限りなく近い数(近似値といいます)を求めることになります。ただし、のように、値が無限小数で無く、正確な値が出る場合もあります。
平方根の値を、上のように計算で出すこともできますが、計算機を用いると、すばやく正確に出すことができます。電卓の場合、「10」、「√」の順に押すことで、およその値(近似値といいます)が表示されます。
1から10までの正の平方根の値(近似値)は以下の表の通りです。語呂合わせもありますが、平方根の値が必要な問題は、問題文中や表でその値が与えられるので、そこまで覚える必要はありません。2,3,5,7のルートの値は、π≒3.14 と同様、小数第2位ないし3位まで覚えておけば十分でしょう。
- ひとよひとよにひとみごろ(一夜一夜に人見ごろ)
- ひとなみにおごれやおなごを(人並みに奢れや女子を)
- ふじさんろくおうむなく(富士山麓オウム鳴く)
- によよくよやくなよ(煮よ 良くよ 焼くなよ)
- なにむしいない(菜に虫いない)根号の中の7から始める。「い」:5であることに注意
- にやにやよにない(ニヤニヤ世担い)
- (ひとまるは)みいろにならぶ(人丸は三色に並ぶ)「になら」は数字が2つずつになる。「ならぶ」とかけてある。
分数で表される数を小数で表すと、途中で割り切れてそれより下の桁はすべて0となるか、途中から先では同じ数の並びが繰り返し表れるかのどちらかとなる。
例
一方、を小数で表すと
と、同じ数の並びを繰り返すことなく限りなく続く。このような数は分数で表せない。
のように、分数で表すことができない数を無理数(むりすう)という。これに対して、分数で表される数を有理数(ゆうりすう)という。
平方根のほか、円周率 も無理数である。
それでは、平方根の計算をしてみましょう。
まずは乗法です。
- 問題
- を計算しなさい。
この計算はどうすればいいでしょうか。根号の中の数をかけて答えが出るなら、計算は楽ですよね。そこで、
が正しいかどうかを考えてみましょう。
根号がついているのでは計算が面倒なので、根号をはずしてしまいましょう。平方根を2乗すれば根号をとることができるということを学びましたね。ですから、両辺をそれぞれ2乗してみましょう。
- 左辺
- 右辺
つまり、(左辺)2 = (右辺)2ということがいえました。右辺も左辺も正の数なので、2乗した結果が同じならば、2乗する前の数も同じはずです。ですから、両辺は等しくなり、
がいえたわけです。根号を含む数同士の乗法では、根号の中の数の積に根号をつければよいのです。
平方根の積
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a,b がどちらも正の数のとき、
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続いては除法です。
- 問題
- を計算しなさい。
これも、乗法と同じように「根号の中の数の商に根号をつける」ことで、答えが出るかどうか、確かめてみましょう。つまり、
がいえるかどうかを考えることになります。
同じように、両辺を2乗してみると、
- 左辺
- 右辺
(左辺)2 = (右辺)2ですから、(左辺) = (右辺)と言えます。根号を含む数同士の除法では、根号の中の数の商に根号をつければいいのです。
平方根の商
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a,b がどちらも正の数のとき、
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根号を含む数の計算では、いくつかの決まりごとがあります。これを守らなければ、値が同じでも不正解になります。これから複雑な式の計算を学びますが、その上で必要になってくることもあります。これらは大切なことなので、よく覚えておくようにしてください。
- 根号を含む数と含まない数との積は、記号×を省略する
とかなどの計算では、記号×を省略して、と書きます。根号の前に他
方の数を書きます。
このようなものは、
のようにして、の形にすることができます。これを用いることで、計算を簡単にできることがあります。
平方根の計算では、解に根号が含まれるときには根号の中の数をできるだけ簡単にします。ただし、途中計算ではその限りではありません。やり方は上とは逆に、
のように変形することでできます。桁数の多いものは、素因数分解を使うと解きやすいです。
この方法は、答えをきちんと出すほかに、平方根の値を求めるときにも使うことができます。たとえば、の値を求めるとき、
としておきます。こうすれば、の値を求め、それを5倍すればいいことになります。の値は前のセクションでやったように、覚えることができますから、暗算で計算することができます。
分数に根号を含む数があると、値を求めるときに計算が難しくなります。ですから、分母には根号をつけないのがルールになっています。しかし、計算をしていくとどうしても分母に根号が出ることがあります。ですから、その根号を消去することで、正解が得られます。
根号は2乗することで消えますから、このようにします。
1をかけても量は変わらない、というのがポイントです。このように、分母に根号がない形にすることを、「分母の有理化」といいます。
分母に平方根の和や差が含まれているときには、上の方法とは別の方法で分母を有理化できます。以前に学習したの公式を使います。
(この計算は、後に出てくる計算の規則を使っています)
それでは、加法と減法について考えてみましょう。
- 問題
- を計算しなさい。
まずは加法です。実は、根号を含む加法・減法は文字式の計算と同じように考えて行います。根号の中の数字が同じところを同じ文字として考えます。この問題の場合は、
と考えるのです。2a + 3a = 5a ですから、同じように考えて、
とまとめます。
減法も加法と同じように考えます。
- 例:
ただし、根号の中の数字が違うものや根号がないものは別のものと考えるため、たとえばや、などのようなものは、これ以上まとめることはできません。
しかし、根号の中の数字が違っていても、計算できることがあります。
- 例題
- を計算しなさい。
このままではまとめることはできませんが、根号の中の数を簡単にすることで、計算できることがあります。
根号の中の数が違うため、これ以上簡単にすることはできないので、これが答えとなります。
分数の分母に根号が含まれる計算でも、分母の根号をとることで計算できることがあります。
- 例題
- を計算しなさい。
分母の根号をとり、またの根号の中を簡単にします。
さて、根号は文字と同じ、と書きましたが、これは式の展開にもいえます。
- 例題
- を展開しなさい。
a (b +c )=ab +ac という、分配法則を用いて計算します。
また、根号を含む式では乗法公式を用いて解くこともできます。
- 例