中学校社会 公民/世論とマスメディア

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

世論[編集]

政治についての、人々の意見のことを 世論(せろん、よろん、英:public opinion) と言う。

マスコミ[編集]

テレビや新聞やラジオや雑誌などによる、大衆への報道(ほうどう)のことをマス・コミュニケーション(略:マスコミ、英:mass communication [1])と言い、そのような報道を行っているテレビや新聞やラジオなどの機関のことをマス・メディア(英:mass media [2])という。テレビ、新聞、ラジオなどで報道を行っている報道機関(ほうどう きかん、英:the press)のことが、マスメディアです。

(※ 範囲外)「マス」(mass)とは、日本語でも英語でも、多数とか多量とかの意味です。集団と言う意味もあります[3][4]。英語のマス mass にも、同じ意味があります。英語 mass には他の意味もありますが、中学公民の範囲でないので、深入りを避けます。

マスメディアと同じ意味で、つまり報道機関という意味でマスコミという言葉を使うこともあります。

マスメディアの報道では、単に起きた出来事だけでなく、その解釈もふくめて報道するのが一般である。

マスメディアの情報や解釈は、必ずしも正確とは限らない。(※ 検定教科書にも、そう書かれています)

マスメディアの機関や会社は、機関や会社によっては、政治について特定の理念を持っている場合があります。

たとえば、新聞どうしでも、それぞれの新聞社ごとに(たとえば中日新聞と朝日新聞と毎日新聞と日本経済新聞と読売新聞と産経新聞で)、同じ時期の同じ事件についても、各社ごとに意見や論じ方が違っている場合もあります。(※ 東京書籍がそう言っている)

このように、同じ情報源でも、結果的にマスメディアの会社ごとに、ちがう情報になることも、よくあります。


さて、もし特定の政治的な考えを、マスメディアのある機関が持っていた場合、その機関が、特定の方向に世論を誘導しようとする場合があります。世論を誘導するために、マスメディア機関が誘導したい方向に都合のいい情報しか発表しようとしない場合もあります。(日本文教出版や育鵬社がそう言っている。)

たとえば、ことなる新聞社の新聞で、同じ政治の出来事についての記事で、その記事の解釈を見比べると、新聞社ごとに違っている場合もあります。好意的な解釈をしている新聞もあれば、同じ出来事を批判的に解釈している新聞もあります。

新聞だけでなく、テレビやラジオや雑誌でも同様に、それぞれの会社ごとに出来事の解釈に偏りがあります。

したがって、私達はマスメディアの情報を、いくつも比較して批判的に見ることが必要です。

私たちは、けっして一つの情報をうのみにすること無く、いろんな情報を比べることによって、情報を確かめて、きちんと考えて判断する必要があります。

このように、メディアを利用しつつも、メディアをうのみにせず、さまざまな視点から確かめることによって、メディアから社会についての正しい情報を読み解く能力のことをメディア・リテラシー(英: media literacy t [5] )と言います。(※ 東京書籍、日本文教出版、自由社、育鵬社などが「メディアリテラシー」という用語を紹介。)

(※ 範囲外) 「リテラシー」(literacy)とは、もともとは「読み書き、算数」のような、学習のための基本的な能力のことです[6]。ですが、21世紀の現代では、特定の分野の入門的な知識と技能のことを「〇○リテラシー」のように言います[7]。たとえば、コンピュータの使い方の入門的な知識と技能なら、「コンピュータリテラシー」のように言います[8]
※ 検定教科書には「マス」(mass)や「リテラシー」(literacy)の意味まで書いてないですが、常識的に考えて授業で教師が口頭で意味を説明するだろうと思います。検定教科書に記載してしまうと高校入試の範囲になってしまうので、それを禁止するために、あえて教科書に載せない知識というのもあるのです。
マスメディアについて
※ 中学の範囲内。

マスメディアによる意図的な誘導とは別に、マスメディアでは、まだ答えの分からない出来事も扱うので、出来事の解釈をマスコミ関係者が推測せざるをえない部分もあり、推測なので、正しい場合もありうるし間違っている場合もありうる。


私達が世論を知るには、マスメディアを利用するしか、ほとんど手段はありません。この点で、マスメディアの影響力はとても大きいので、マスメディアは、「司法、立法、行政」の三権につづく、「第四の権力」(英:Fourth Estate フォース・エステイト)とマスメディア全体が例えられることもあります。(※ 自由社が「第4の権力」という用語を紹介している。)



マスメディアについて 2 ※ 範囲外
ラジオ放送を行うヒトラー。1933年2月。独裁者のヒトラーはラジオなどの当時の新しいメディアを効果的に使い、ドイツの人々を戦争に導いた。

また、新聞記者などの取材で、取材対象が外国の政府など権力の大きい場合、取材対象に批判的なことを書くと、今後の取材を断られる場合があって、取材が行いづらくなるので、取材を断りそうな相手には、あまり批判的なことを報道しない場合もありうる。

また、独裁国家では、政府に批判的なことを報道すると逮捕されたりしてしまうので、政府に都合の良い情報しか報道しない。


※ 範囲外: よくインターネットなどでは、ヒトラーが「うそも100回言えば真実となる」と言ったという通説もある。しかし、正確には、それを言った人はヒトラー本人ではなく、ヒトラーの部下の宣伝大臣ゲッペルスの発言である。



マスメディアについて 3 ※ 範囲外
  • スポンサー

また、民間のテレビ局では、テレビ番組などを作るのにはお金(制作費)がたくさんかかるので、お金を払ってくれる大企業などの出資者(「スポンサー」という)や、大手の広告会社などの都合のいいことしか報道しない場合もある。(※ 中学公民では範囲外だが、過去に高校の『情報』科目で、メディアリテラシーにおける「スポンサー」などの概念を習う場合があった。)

  • 取材対象への「ちょうちん記事」

また、『提灯(ちょうちん)記事』という用語があり、なんらかの事情で、マスメディア企業が取材対象にとって都合のいい事ばかりを書いた記事のことを『提灯記事』(ちょうちん きじ)と言います。

取材対象に批判的なことを書くと、今後の取材をしづらくなる事が多いので、取材対象がよほどの不祥事をしないかぎり、マスメディア各社が取材対象に批判的なことを書かないで都合のいいことばかり書く場合(つまりチョウチン記事)があります。


  • 単なる知識不足によるマチガイ

また、単にマスメディア機関の知識不足などによって、マスメディアの判断が間違う場合もあります。



世論調査[編集]

新聞などのマスメディアは、世論を知るための調査として、社会の関心になりそうな内閣の支持・不支持や、支持政党や、政策への賛成・反対など、政治における重要項目などについて、不特定多数の人々にアンケートを取って世論の考えを調査して、そのアンケートの結果を発表することがあります。 このようなマスコミによる、アンケートなどの調査を 世論調査(せろん ちょうさ、よろん ちょうさ、英:opinion poll オピニオン・ポール) と言います。

(※ 範囲外: )この世論調査の結果も、マスコミの会社ごとに結果の傾向が違っている場合があります。マスコミ会社の政治的考えと、その会社の熱心な読者や視聴者とは、考えが近いことが多いので、マスコミ会社ごとに世論調査の結果が片寄って(かたよって)いる場合が多いです。
なので、私達は一つのマスコミ会社の世論調査だけをうのみにしないほうが良く、いくつかのマスコミ会社の世論調査を見比べたほうが良いでしょう。

※ 範囲内 :2025年度からの追加内容[編集]

フェイクニュース[編集]

※ とうほう(副教材の出版社)の資料集にフェイクニュースの話題あり
※ 2024年の教科書検定により、2025年度から教科書にフェイクニュースが入る見込み[9]


SNSなどの普及により、根拠のないウワサが、ニュースとして伝わります。また、それとは別に、意図的に嘘をついている情報が、ニュースのふりをして伝えられる場合があります。

画像がついていても、実はまったく記事内容とは関係のない画像だったりする場合もあったり、また画像を加工している場合もあるので、画像は裏付けになりません。

こういう、ウソの情報が、ニュースとして伝わったものをフェイクニュース(fake news)と言います。

2016年には、熊本自身の直後に、動物園のライオンが逃げたというフェイクニュースとその画像が作られ、最終的にフェイクニュースを作った人は逮捕されました。

なので、ニュースっぽいサイトを見つけても、それを鵜呑みにはせず、まったく違った情報源から裏取りをする「ファクトチェック」(fact check)が必要です。ファクトとは、「事実」という意味です。解釈とか認識とかは後回しにして、まずは事実関係を押さえましょう。

単に複数人から聞き取るだけでは、ファクトチェックとしては不十分です。なぜなら、同じフェイクニュースを複数人が見ている可能性があるからです。

(※範囲外)出典の無い情報はフェイクニュースの可能性が高い

ニュースっぽい内容の情報に、たとえ証拠らしき写真画像があっても、出典の無い情報ならば、画像そのものが加工された偽造でないかと、つよく疑いましょう。

ネット情報なら、出典となったサイト名、アドレス、日時などの不明な場合は、価値がとても低いです。偽造した写真の検証をさせないようにするために、出典のアドレス先などを隠しているのではないかという疑いを、つよく持つ必要があります。

あるいは、もし仮にその情報や写真が偽造でなくとも、いい年こいた大人のくせに出典も書けないのですから、情報提供した人物そのものの信頼性が低いと見たほうが良いでしょう。


Google レンズで確認しよう

Google レンズと言う機能を使うと、アップロードした画像に近い画像を探せます。検索欄にあるカメラの形をしたアイコンをクリックすると、Google レンズになります。真偽のうたがわしい写真があれば、Google レンズで確認しましょう。

写真画像が、一見すると大手サイトや公共機関サイトらしき画像でも、Googleレンズで探してみても、画像の提供者以外にそれに近い画像がまったく見つからないこともあります。このような場合、強くフェイクニュースの疑いがあります。

また、Googleレンズでは、画像中の文字を、テキストデータに文字おこしが出来ます。そのテキストデータを使って検索サイトで検索してみましょう。画像の提供者以外に近いテキストが見つからない場合、フェイクニュースの疑いがあります。

なお、品質の低いAIだと、そのフェイクニュースの疑いの高い唯一の情報源の影響を受けます。検索サイトの中には、AIで情報を出してくるサイトもあります(マイクロソフトのサイトなど)。このため、出典を出せない低品質AIの検索サイトは、フェイクニュース拡散機だと疑う必要があります。

そのような裏取りのできない情報は、フェイクニュースの可能性が高いと思ったほうが良いでしょう。


口コミサイト

グルメサイトなどの口コミ サイトの信頼性が2025年からの教科書に掲載予定[10]

この口コミサイトも、単にネット上の人が書いているだけにすぎないので、鵜呑みにしてはいけません。ニュースというほどのものではないですが、利用するさいにはファクトチェックのような検証が必要です。

また、検定教科書では触れてないかもしれませんが、意図的にウソや悪評を書く人がいます。脅迫などとして、ウソやコジツケの悪評を書いて、「悪評を書かれたくなければ、カネを払え」みたいな人です[11]


(※ 参考)時事ニュースにもなっています。事実と異なる内容の口コミを、大手IT外資が放置しているとして、悪評を書かれた組織から提訴をされたというニュースがあります。


(※まだ範囲外)ディープフェイク
※ 文科省も広告で注意を呼び掛けています[12]

かつて、(静止画ではなく)実写の動画は、偽造が困難だと思われていました。

しかし最近はAIの発達により、比較的に低コストで、偽の実写動画が作れるようになっています。動画に限らず、AI技術などの深層学習(ディープラーニング)を悪用して生成した偽情報のことを「ディープフェイク」と言います。

偽の動画、偽の音声、など、そういったものも現代ではコンピュータ技術によって低コストで作れてしまいます。これによって、「なりすまし」もしやすくなっています。

フィルターバブルによる情報の片寄[編集]

※ 2025年度の検定教科書に掲載の予定[13]
※ 三省堂「現代の国語」や、教育出版「公共」で紹介されている

メディアは、紹介する情報が片寄っているのが普通です。

インターネットなどで、ユーザーが見たくない情報を遮断する「フィルター」という機能があります。

こういうフィルターがあるので、多くの情報を集めているつもりでも、知らず知らずのうちに、自分好みの情報ばかりを集めてしまう現象も起こりえますが、こういう現象のことをフィルターバブルと言います。

ここでいうバブルとは泡のことで、いくつもの泡が、それぞれ、ほかの泡と切り離されて断片的に孤立している様子の事を言っています。(「バブル」と言っても、べつに不動産バブルや金融バブルのことではないので、誤解しないように。)


また、インターネットに限らず、紙の書籍やテレビなどでもフィルターバブルと似たような現象は起こります。

残念ながら、雑誌や書籍や新聞・テレビなどでも、読者や視聴者の好みそうな情報でないと売れないので、結果として、読者などにウケのいい情報ばかりが紹介されますので、読者以外の知っている情報とはズレが大きくなっている場合もあります。

フィルターバブルに陥らないように、気をつけましょう。情報の集め方には、工夫がいろいろと必要です。

※ 中学の範囲外:[編集]

エコーチェンバー[編集]

※ 高校の三省堂『現代の国語』に「エコーチェンバー」の紹介がある。
※ 高校の新科目「公共」の東京書籍の教科書にもエコーチェンバーがあるらしい。

さて、メディアからの情報収集ではなく、たとえばインタビューなどで聞き取り調査をする場合、気をつけなければならないこととして、取材対象の集団は必ずしも世間の人々の意見をバランスよく反映しているとは限りません。

どんな集団であっても、何らかの目的をもって集まっていることで集団が形成されているわけですから、その集団の考え方には片寄りがあります。

学校の生徒の集団だって、ほとんどが学生ばかりなわけで、片寄っているわけです。中学校の場合なら普通、先生以外に大人はいないだろうし(ただし戦災などで中学校に通えなかった高齢者の夜間中学などは除く)、片寄りはあります。

地域の自治会などの集会ですら、「その地域に住んでいる」という条件がありますので、片寄りがあります。


なので、一見すると集団の皆に意見をつのって「客観的な意見をあつめている」つもりでも、気づかないうちに似たような意見ばかりを集めてしまいますので、もし自分がそういう意見の片寄りの仕組みに気づいてないとしたら、その意見が世間の意見だと誤解してしまい、結果として片寄った意見が形成されている場合があります。

また、普通の人は、自分と似た考えをもつ集団に所属したがるので、自分の属する集団でほかの人の意見を聞いても、自分と似た考えばかりが集まりがちです。(たとえば部活動とかを例に考えてください。運動部の人が、自分の属する部活で「好きなスポーツは?」と他の部員にインタビューを聞いたら、当然ですが自分の部活と同じ答えが返って来る傾向が多いでしょう。)

こういうふうに、せっかく意見を集めても、なんらかの原因で、自分と似た意見ばかりが片寄って集まってくる現象のことをエコーチェンバーと言います。もともと音響の用語で、音楽録音用の残響室のことをエコーチャンバーと言っていました。


さて、意見を集める際にはエコーチェンバーという現象がありますが、だからといって集団を形成する人々から意見を集めることが悪いわけではなく、こういう事があることを自覚すべきでしょう。世界中の全ての集団から意見を集めるのは不可能ですので、ある程度、意見を集める集団をしぼりこまざるをえないのが実情でしょう。

ともかく、エコーチェンバーという現象があることを自覚してないと、自分の属する集団の他人から意見をきいて「客観的な意見を集めている」つもりなのに、しかし同じ集団に属するので似たような意見ばかりが集まってしまうので実際には片寄った意見ばかりが集まることになってしまい、目的と結果が一致しません。

なので、意見の集め方には、ちょっとした工夫が必要です。(どういう工夫が必要なのかは本ページでは説明しません。大人になるまでに、各自で考えてください。)

また、本を読んだりする場合でも同じ危険性があります。普通の人は、自分と考えの近い意見の書かれた本を読みたがります。なので、本を読んで「多様な意見を集めている」つもりでも、しかしエコーチェンバー(あるいは別セクションで述べているフィルターバブル)によって知らずのうちに自分の考えと似た意見ばかりを集めてしまい、あまり情報として役立たない、片寄った意見ばかりを集めてしまうこともあります。

なので本の読み方にも、工夫がいろいろと必要です。

なお、とくにインターネット上のコミュニティで、同じ意見・感想ばかりが集まって、(その意見が世間だと誤解してしまったりした結果として)閉鎖的・過激なコミュニティが形成される現象のことをサイバー・カスケードと言います。

(※ 範囲外)エコーチェンバーを防ぐ方法

自分がエコーチェンバーに落ちてしまうことを防ぐためには、現在の自分の考えとは違う意見の話を読んだり聞いたりして、自分の今までの考えを「勘違いかもしれない」と疑ってみる必要があります。

たとえば自分が高校生で、「今の高校生は昔の高校生よりも頭もいい」とか思っているなら、逆の「もしかしたら今の高校生は、昔よりもある意味では馬鹿かもしれない」みたいな主張をしている人の話も時々は読んだりするべきなのです。

読者対象である自分を否定するような内容の書籍で、統計や歴史などの証拠がキッチリとそろっていて、もっともらしい内容の書籍を読むのが良いでしょう。

スポーツで例えるなら、対戦などの試合のようなものです。自分の考えと同じ本ばかり読むのは、対戦・試合などをしないようなものです。


しかし、このような自分を否定するような意見の読書や視聴などには、心理的なストレス(負担・苦痛)が掛かります。まるで、スポーツの対戦で負けたら、挫折感(ざせつかん)を味わって、悔しい(くやしい)ようなものです。

しかし、反対意見を読むというストレスを我慢してでも、自分に対する反対意見に付き合わない限り、エコーチェンバーに落ちてしまいます。


社会問題などの情報なら、読者のアナタが自発的に修正しなくても、世間の偉い人(学者さんとか知識人とか)が勝手に教科書などを修正してくれます。

しかし、「私は頭がいい/私は馬鹿だ」みたいな自己評価などは、もしエコーチェンバー的な情報の片寄りによって、自己評価も片寄ってしまった場合、世間の偉い人の手ではもう、その誰かアカの他人にとっての「自己評価」の片寄りを修正できません。なぜなら、他人の脳味噌はいじくれないからです。


自分を褒めてくれる内容の本を読むのは気持ちいいですが、しかしそれを目的にしてしまう読書はもはや勉強ではなく、単なる娯楽です。なにより怖いのは、勉強できておらず娯楽で時間をつぶしているだけなのに、「自分は勉強できている」と自己評価が高くなり、本来の能力の低さ と 自己評価の高さ の差がどんどんと開いていしまうことです。

形式的に多くの冊数の本を読んでいても、内容が片寄っていては、せっかくの読書の意味がありません。気をつけましょう。

高校生くらいになったら、読書の評価軸を見直しましょう。小学生くらいに言われる「多くの本を読むとよい」のは、幼児や小学生のような言葉を覚える段階での話です。

高校生くらいになったら、やみくもに多くの本を読むのではなく、自分を鍛えるために適切な本を選んで読むのです。


読書で勉強する際は、やみくもに冊数やページ数の多さを目指すのではなく、「自分(このwikiをよんでるアナタ)の考えとは反対の意見のある書籍も読む」ということを目標にするのが良いと思います。もちろん、自分の考えと同じ意見の書籍も読むべきです。


さて、マスコミや左翼政党はよく、「低所得者に配慮しろ!」「女性にも配慮しろ!」などと言います。教科書もそう言っているかもしれません。

しかし、たとえば、貧乏人が「貧乏は素晴らしい」という本ばかり読んでたら、その貧乏人は一時(いっとき)は気分はいいですが、しかしいつまで経っても同じ暮らしを続けて貧乏のままでしょう。本当にアナタの人生、それで良いのですか? 貧乏なままで良いのですか? という事です。

仮にアナタが「べつにカネだけが人生じゃない」という人生観でも、たとえば仮にアナタがスポーツ好きの人なら「スポーツが下手でもイイじゃないか。スポーツの技術なんて知らなくていい」という主張につかってばかりではスポーツ能力が成長しません。「絵がヘタでもいいじゃないか」も「音楽がヘタでもいいじゃないか」も「勉強ができなくてもいいじゃないか」も同様です。


あるいは、アナタが女性なら、21世紀の欧米でのファミニズム運動の流行に乗って「女性は男性に差別されている!」と連呼するだけで何の建設的・現実的な提案もない本を読むのは、それが気軽で気持ちいい女性読者もいるかもしれません。ですが、その「女性差別」とやらの現状分析や原因を分析して現実的な対策をしない限り、何時まで経っても、その女性は差別されたままでしょう。理由はさきほどの貧乏人の例と同じです。

なお、現実はそんなに甘くはなく、もう実際に高校の公共の教科書などで、2010~2020年代のある医大での女性受験者の面接での点数の不利な取り扱いの事例が紹介されており、女性の面接の点数を下げた原因として、外科医の労働環境の過酷さと、それが女性には健康上の理由で耐えづらいという現実が、もう紹介されています。

そして、その公共教科書などでは、結論として「もし女性の医者をもっと増やすなら、保険料や税金などの医療費が増えることになるだろう」という感じの論で、トレード・オフ的な経済的な分析法で説明しています。医療費も増えずに女医を増やすことなんて無理なのです。一言も「女医を増やすな」なんて教科書では言っていません。単に「女医を増やすなら、医療費も増えることになる」という経済的な現実を認めろ、というだけの話です。

その医大の面接の採点方法が正しいかどうかなんて事は、公共教科書は一言も言っていません。ですが、それにも関わらず、「女医を増やせば医療費も増えることになるよ」という経済的な予想についてすら世間では「女性差別だ」などと批判するような人も、残念ながら世間には居ます。(もちろん、もう高校教科書では、そのような「女性差別だ」は相手にされていないのが現実。)

なお、どちらか一方を選択すれば、もう一方をあきらめなければならない状態を、トレード・オフ( trade-off )と言います。もうこれが高校生・高校教科書の知的レベルの高さです。世間には残念ながら、こういった高校教科書より下の知的レベルの大人も、男女とわず、います

このように、女性にとって現実と向き合うためには、都合のいい耳障りの言い非現実な主張は、否定しなければならない必要もあります。このため、社会問題などの現実的な対策を考える議論をストレスに感じる人もいます。しかしそういったストレスから逃れていて、自分に耳障りのいい主張だけを集めて広めていては、社会からは相手にされません。

低所得者や女性など何らかの「弱者」とされる者への配慮は必要ですが、しかし弱者とされた側の人は、けっして永久に配慮に甘んじ続けるだけではいけません。筋トレに負荷が必要なように、心や知性の成長にも適度な負荷が必要です。自分の心や知性の成長にあわせて、負荷も段階的に上げていきましょう。



(※ 範囲外)淘汰されないフェイクな自称「ファクトチェック」

口コミサイトの問題と似たような問題は、ニュースサイトのコメント欄や、そのほか動画サイトのコメント欄をもっているwebサイトにもあります(一部のニュースサイトは、コメント欄を持っています)。ニュースサイトのニュース本体は本当の情報なのですが、しかしコメント欄の投稿者の質が悪い場合もあり、コメント欄でそこでフェイクニュースが飛びかっているサイトも多くあります。匿名掲示板と同レベルの、信頼性の低い低品質なコメント欄であると、峻別(しゅんべつ)しなければなりません。

多くのコメント機能つきサイトは、「情報が正しいかどうか」ではなく、「その意見が好きか嫌いか」で投票するシステムなので、まったく低品質なコメント欄が淘汰されません。好き嫌いと真偽の区別のつかないバカを相手に商売しているネット企業は多いのです。エコーチェンバーの一種でしょう。

口コミサイトなども同様、口コミのコメントに投票する機能はあるwebサービスが多いのですが、しかし好き嫌いの投票であり、その口コミの真偽を検証するシステムは無く、淘汰されません。また、一人で何十人ぶんものアカウントを作成して、自分の不正コメントに「いいね」ボタンとかで投票して、自分の口コミをあたかも信頼できる意見かのように偽装する悪人もいます。


ほか、大手SNSのツイッター(現:X(エックス) )には、フェイクニュースを通報するシステムが無いですYahoo知恵袋 『Twitterってデマツイートを通報することはできないんですか?』2022/8/20 14:02

ツイッターには「コミュニティノート」というファクトチェックを喧伝する機能があり、疑わしい投稿に別の情報を追記をできますが、しかしその追記の評価の真偽を検証するシステムが無く、口コミサイトなどの投票機能と同様に、好き嫌いで評価が決まっています。このため、情報としては間違ってはいないがピント外れの追記をしている低品質なコミュニティノートでも、まったく淘汰されません。

それどころか、場合によってはファクトチェック気取りのコミュニティノートの側がフェイクニュースだったりすることもある有様です。好き嫌いの投票で評価が決まるシステムなので、偽情報がなかなか淘汰されません。

ステレオタイプ[編集]

※ 高校の「公共」科目の教科書(清水書院)で紹介されていることですが、重要なので中学生にも紹介します。

メディアからの情報は、たとえ伝える人に悪気(わるぎ)がなくても、実は不正確で、かならず偏見の入るものなのです。

型にハマったものの考え方や、そうして得られた世界観のことを「ステレオタイプ」と言います。

型にハマるのは悪い事のように思われがちですが、しかし私たちは物事を他人に伝える際、説明の前提として共通の認識がなければなりません。その共通の認識が、はたして本当に真実かどうかの保証はないのにかかわらず。

だから、メディアの伝える情報は、どうしても、どこかで人々の先入観に従ったものになります。

たとえ、偏見や先入観にとらわれないものの見方を紹介するメッセージであっても、そのようねメッセージですら他人に伝わる際には原理的に最低限の偏見にとらわれたものになってしまうのです。

清水書院の検定教科書では紹介していない事なのですが、たとえば小中学校の公民の説明の際でも、「民主主義はすばらしいものである」とか、どうしても前提として決め付けなければなりません。

そういう前提がないと、それ以降の細かい話(たとえば憲法の第何条がどうのこうのとかの解説)に入れません。

べつに政治や経済だけでなく、大衆文化や芸術などでも、とにかくメディアの伝えるものは基本的に、かならず、説明の前提としての偏見・先入観が含まれてしまいます。そのような先入観の混在は、説明を分かりやすくするためには、どうしても混ざってしまうのです。

だから私たちの目指すべきこととしては、実現不可能な「偏見のない考え方」を目指すのではなく、自身のもっている偏見に気づいて上手にコントロールできる能力が必要とされるでしょう。

  1. ^ 小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.322
  2. ^ 小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.322
  3. ^ 『三省堂新明解国語辞典 第八版』、2020年11月20日 第8版 発行、P1473、
  4. ^ 『グランドセンチュリー英和辞典 第4版』、三省堂、2017年1月10日 第1刷発行、P974
  5. ^ 小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.320
  6. ^ 『三省堂新明解国語辞典 第八版』、2020年11月20日 第8版 発行、P1642、
  7. ^ 酒井朗 ほか編著『よくわかる教育社会学』、ミネルヴァ書房、2012年4月20日 初版 第1刷 発行、P.178
  8. ^ 『三省堂新明解国語辞典 第八版』、2020年11月20日 第8版 発行、P1642、
  9. ^ 『中学校で使用される教科書の検定終了 100点が合格 情報漏洩で2点が初の見送り(2024年3月22日)』2024/03/22
  10. ^ [1]
  11. ^ 後藤大地『悪いレビューを投稿し、削除の代わりに金銭要求する恐喝グループに注意 』掲載日 2022/07/20 08:54
  12. ^ 文部科学省/mextchannel『情報モラル教育啓発動画 情報の真偽を確かめよう編』 2024/03/12
  13. ^ 上野創 ほか共著『フェイク、AI、フィルターバブル…ネットの注意点、教科書に続々』2024年3月23日 8時00分