中学校社会 公民/労働者の権利と保護
労働者の権利と保護
[編集]男女平等
[編集]1999年には
労働者の権利
[編集]労働条件の交渉は使用者と労働者が対等に交渉する。 |
労働時間は原則的に週あたり40時間以内、1日あたり8時間以内。 |
休日を毎週すくなくとも1日は用意する。 |
監禁などの強制労働は禁止。 |
労働者の国籍、信条、社会的身分を理由に労働条件に差をつける (差別する) ことを禁止。 |
雇われている労働者も人間なので、もちろん人権がある。雇う側に比べ弱い立場にある労働者を守るため、労働者を保護し、集団で労働条件の改善を要求することなどを
労働基準法は賃金や労働時間などの最低基準を決めている。労働時間は「1日8時間を基本とし、1週間で40時間まで」と決められている。もし時間外労働をさせる場合には、会社は
なお、当然のように思われる読者の方も多いだろうが、アルバイトもパートタイマーも法定の労働時間の制限は同じである。
そして、労働基準法の定める基準を守らせるため、
労働三権
[編集]前述のように、労働者は雇う側 (以降、使用者) に比べ弱い立場にあり、本来なら労働者と使用者の間で契約として自由に取り決めることができる労働条件だが、各々が個々に交渉すれば、労働者にとって不利な条件になりやすい。それ故
憲法28条 「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」
これら3つの権利 (団結権・団体交渉権・団体行動権) をまとめて
他に、ストライキなどの
また、使用者が労働組合に加入している従業員に不当な扱いをすることは労働組合法 (第7条) で禁止されている。このような使用者が労働者に労働三権の行使を妨害することを「
なお、賃上げの交渉の権利が認められているが、必ずしも労働者の要求が通るとは限らない。最終的に賃金を上げるかを決定する権限は、使用者にある。なお、労働者の労働組合への加入は義務では無い。
女性の労働の権利と責任
[編集]女性には男性と同様の給料をもらう権利もあるが、男性と同等の責任もある。かつて、男女雇用機会均等法などのできる前は、女性への福祉の観点から、女性の深夜労働が禁止されていた。しかし女性の深夜労働の禁止は削除された。
解雇 の通知義務
[編集]労働者が不正などを行った場合などを除き、使用者が労働者を解雇する場合には、解雇する日の30日よりも前に通知する義務があり、また30日分の給料を
失業者の保護
[編集]公共職業安定所 (ハローワーク) では、失業者などに仕事を紹介しているほか、職業訓練を受けたい人のための公共の職業訓練施設なども紹介している。
障碍者の雇用
[編集]障碍者の雇用を促進するため、企業には規模に応じて一定の割合の障碍者数の雇用をする法的義務が、
労働問題
[編集]中学校社会 公民/労働問題 を参照。
「失業」
[編集]「失業」とは
[編集]一般に、収入を得るための働き先を失うことを
失業者が増える時
[編集]一般に、景気が悪くなった時に、失業者は増えると考えられています。また、産業構造が大幅に変化した時にも、失業者が増える場合があります。
多様化する労働環境
[編集]雇用の流動化
[編集]終身雇用の終わり
[編集]かつて、日本では使用者が労働者を定年まで同じ企業で勤め上げさせるように雇う、
しかし、次第に中国や韓国などの国々が工業力をつけてきた。それから日本の企業は、それらの国との厳しい競争にさらされることになった。外国との市場の奪い合いになるため、日本の企業の売り上げが減っていった。この減った分の売り上げは給料などの費用を減らすことにつながり、労働者の解雇や給料の見直しが行われた。今度は日本が外国から仕事をうばわれる側に回っていった。いつしか中国が「世界の工場」[2]と言われるようになっていった。こうして、多くの日本企業で、終身雇用は無くなっていった。
年功序列 の終わり
[編集]昔の会社では、その会社への勤務年数が長くなるほど賃金や
企業によっては、大企業などを中心に年功序列を続けている場合もあるが、景気の悪化などによって、実質的には長年勤めていても人員解雇の対象になる場合も多い。また、景気の悪化で高い賃金を払えなくなった企業が、自社の給与体系を見直すこともある。給与体系をすぐに変えられない会社の場合には、一旦社員には形式上退職させ同じ会社に再雇用するという形で、新人社員と同じくらいの程度の給料にするという方法を取る場合もある。
生涯賃金の低下の可能性
[編集]前述のように、終身雇用や年功序列の終わりにより、労働者が定年までに受けとる給料の合計額 (
非正規雇用の増加
[編集]上記のように、終身雇用が減少した今 (2020年) では、労働者のおよそ3人に1人が、アルバイトやパート、派遣労働などの
外国人労働者の増加
[編集]日本では、少子高齢化や人口減少、ニート(wp)の増加などが進みつつあり、外国人労働者を受け入れなければならなくなっている。外国人は日本人と同じ労働をしても給与を安く抑えられる、深夜労働をしてくれるなどの理由で、外国人を使いたがる企業がある。
かつての日本は外国人労働者の就役を一部の分野に限定してきた。1990年代から南アメリカ大陸の国々の日系人(wp)の受け入れを始め、外国人労働者の数は増加傾向にある。しかし、前述のように近年まで外国人労働者の数が少なかったため、日本社会や日本の人々に多い外国人に対する差別的思想が蔓延っている。
※ キャリアデザイン的な話題
[編集]分業の大切さ
[編集]※ 労働者の権利保護とは別のことなのですが、最近の2020年代の中学公民の教科書には、中学生に向けて、「働く」とか「就職」とかはどういうことなのか、説明しています。
とりあえず、東京書籍と帝国書院の教科書では、経済は「分業」で成り立っている、と説明しています。
教科書ではあまり理由をきちんと説明していなおですが、wiki側で分業の理由をきちんと説明すると、一人の労働者の人生の時間には限りがあるので、分業しないと、仕事を身に着けるためのトレーニングの時間だけで人生が終わってしまい、ろくに仕事ができなくなってしまいます。(たとえば、4年ていどの勉強で身につく仕事でも、もし30個の仕事を分業せずにぜんぶ仕事しようとすると、30×4年=120年 で、人間の平均寿命オーバーになってしまい、仕事しないまま人生が終わります。)
なので、分業が必要なのです。
また、分業のさいには、それぞれの人が、得意なことを活用できる職場に勤める必要があります[3]。たとえばパン屋だったら、当然ですが、パン屋さんはパンを作るのが得意でないと、お客さんは困ります[4]。
パン屋さんは、パンの原料の 小麦や さとうきび の生産なんて、していません[5]。小麦をつくるのは小麦農家です。これが分業です。
キャリアデザイン
[編集]まず、将来の希望の仕事を決めるさいの、暗黙の前提として、会社名ではなく職業で決める、という進路相談や就職活動などでの常識があります。東京書籍の教科書も、日本文教出版の教科書も、「会社」ではなく「職業」の志望を考えさせています。
中学の検定教科書では、「仕事をとおして夢をかなえたり」みたいに言います。高校の教科書だと「自己実現」みたいに言います。
基本的には、自分の好きな分野を事を目指すとよいでしょう。
なぜなら、本当に好きなら、練習を長々とたくさん出来るので、得意になるからです(得意な仕事でないと、せっかくの分業の意味がありません)。
さて、色々なことを勉強するのは大切ですが、しかし人生の時間にも限りがあります。
代わりに必要なのは、自分が勉強できてない分野への経緯や想像力を持つことが重要でしょうか。そういった想像力をもつためにも、中学・高校・大学などを卒業したあとの勉強は、日々の仕事の勉強も大切ですが、しかし時々は国語・数学・理科・社会・英語など仕事以外のことも勉強する必要があるでしょう。
東京書籍の教科書には、分業によって「社会で必要な財やサービスを提供していく」と目的があります。
目的を忘れてはいけません。あくまで、社会に必要な財やサービスといったものを生産するのが、分業の目的です。決して、この目的を忘れて、形式的に、単に難しいだけで社会に役立たない技術のトレーニングばかりをしないようにしましょう。
- ※ 東京書籍は明言はしていないですが、社会に必要のない能力をアピールしても、社会からは受け入れられません。中学生あたりは企業を知らないので能力アピールも仕方ないですし、自己アピールも必要ですが、しかし、もし社会の要求を完全に無視してトレーニングしてしまい、大人になっても高校卒業・大学卒業して五年・十年も経っても社会をまったく無視して完全に自分の子供時代からの興味だけで能力トレーニングすると、企業などから相手をされず、なので子どもの思い描くような「夢」などは かなえられません。
だいたい、どのお店の客を見ても、どの消費者も、その消費者じしんにとって役に立たない商品を買いたくありません。
視点を、企業の経営者の目線に、変えてみましょう。どの会社の社長も、その会社に役立たない志望者を、雇用したくありません。役立とうとする気のない人を雇うほど、一般の企業も役所も、お人よしではありません。
キャリアデザインとは、このように自分をみつめなおすことで、志望の進路やそのための勉強・努力や練習を、より適切なものに見直しておくことも含まれるでしょう。
なお、中学の段階で、あまり「やりたい職業」が決まってなくても、大丈夫です。日本文教出版の公民の検定教科書では、2015年の日本の中学生のアンケートで、50%近くの中学生が、まだ将来の希望の職業が決まっていません[6]。
社会の役に立つかどうかを考えずに、人気や評判だけで進路を決めるのは、下記の理由から危険です。
これは高校の教科書の内容なのですが、「自分が社会に受け入れらている」という感覚が、青年期以降の健全な精神の発達には必要です。「自分は社会に受け入れられている」という感覚が無くなると、自己嫌悪や無力感などの状態になります。
清水書院は具体的にはどうすべきかまでは指定していないですが、しかし上述の議論から常識的に考えて、なるべくなら、社会の役に立とうとする職業や仕事っぷりを目指すのが健全でしょう。
社会の役に立つことを目指している仕事のほうが「自分は社会に受け入れらている」という感覚を得やすいからです。
普通の人は、「自分が社会から受け入れてもらえてない」という孤独には耐えられず、そのため、その状態になると自己嫌悪で行動がおかしくなり、やることなすこと失敗だらけになります。
あくまで、社会に受け入れられるために、まずは他人になるべく負担をかけないようにする必要としての経済的自立であり、そのための仕事に必要だからという理由での進路志望やキャリアデザインです。あくまで最終目的が「社会に受け入れてもらう」であることを間違えないようにしましょう。
- ※ 帝国書院の検定教科書がコラムで貨幣の交換機能の話題を扱っており、分業とからめて語っている[7]。
派生的な話ですが、上述のように経済は分業で成り立ってますので、けっして自給自足で何でも調達するというわけにはいきません。
そこで、業種の異なる人たちの間で、生活などに必要な物を交換する必要が生じます。
こうして、社会にさまざまな商業が誕生したと、仮定できます。(あくまで説明を分かりやすくする都合での仮定。実際の人類の経済史がそうだとは言ってない。)
貨幣(かへい)には、業界を超えて、価値の基準となる機能があり、そのため、貨幣を仲立ちとして物やサービスなどの交換が、商業では行なわれてます。このような貨幣の機能のことを、経済学の用語で「貨幣の交換機能」と言います。なお、「貨幣」(かへい)とは、お金のことです。
- ※ 帝国書院の検定教科書では「交換」だけが太字だが、ネットで調べるときは「貨幣の交換機能」で調べる。経済学用語としては「貨幣の交換機能」なので。
さて、(コラムではなく)本文の上述のパン屋さんの例で言えば、客がパンを買うということは、お金とパンを交換しているわけです。また、パン屋さんは小麦業者から小麦を買っていますが、これは小麦とお金を交換しているわけです。図にすると、小麦がお客に流れる方向とは逆に、それぞれお金が小麦業者およびパン屋に流れています
小麦 パン 小 ----→ パ ----→ 麦 ン 客 業 ←---- 屋 ←---- 者 金 金
需要と供給を中学の公民で習いますが、労働者にも、需要と供給があります。このため、労働市場という語もあります。
東京書籍は明言していませんが、労働にも、需要と供給がありますので、需要のない事を仕事にしようとしても、それで収入を得るのは難しい。
大企業などは、出身大学の偏差値などで、就職活動をする新卒の応募者を、偏差値のひくい学校の卒業生は機械的に不合格にします。
これは、俗(ぞく)に、学歴フィルターと言います。フィルターとは、換気扇フィルターとか、ああいうののフィルターの意味です。俗語なので、あまり気にしなくていいです。
大企業は、応募者が多すぎるので、面接の時間も無いので、こういう、ふるいわけがあるのです。
学校の偏差値が低い場合は、たとえば野球なら甲子園など公式のスポーツ大会で好成績を納めるとか、そういう、実力を客観的に証明できる公式の大会で勝ち進まないと、フィルターを突破できません。(なお、大学入試における、私大を目指す場合のスポーツ推薦なども同様に、公式大会での勝利が求められます。学校内だけで、いくらスポーツが得意でも不合格です。)
さて、東京書籍の検定教科書で、キャリア教育の単元のページで、歌手・アニメ声優の女性からの「声優・歌手を目指すなら、中高の勉強もしなさい」的なメッセージが紹介されているのです(小中学生の女子の憧れのトップクラスの職業なので、掲載)。
編集者たちが鈍くてなかなか気づかなかったのですが、一般に、俳優など役者の業界、あるいは歌手などの業界にも、学歴フィルターがあります。21世紀に入ってからは、あまり言われなくなりましたが、1990年代はよく、けっこうな人数の芸能人がじつは高学歴だと世間で普通に言われていたものです。
マンガ家のように、自分で作品をつくれる業界だと、あまり学歴フィルターは強くないのですが、しかし俳優・声優は自分だけでは作品を作れません(他の作家のつくった作品の役を演じる仕事ですので)。なので、俳優などは採用の人数が限られています。なのに志望者が多すぎるので、学歴フィルターがけっこう強く、じつは大卒など高学歴を優先的に採用する業界です(もちろん、最低限の演技力や歌唱力などは必要でしょうが)。
大企業や中央官公庁(都心の官僚など)の採用を学歴で決めることをメリトクラシー(meritcracy)と言います。メリトクラシーとは「能力主義」と言う意味です。「〇〇さんは取引先のお偉いさんの息子だから採用」みたいな血縁で決まる封建的な貴族社会と比べたら実力重視なので、学歴採用の事をメリトクラシーと言います。学歴とは類似の、なにかの全国大会みたいな競争の戦績の良さで採用を決める事もメリトクラシーに含めます(たとえば高校野球の甲子園で全国8位の以内とか)。
語源は、メリト merit が能力の意味。クラシーcracy は支配の意味。民主主義 democracy デモクラシー なら民衆 demo による支配 cracy なのでデモクラシーというのと同様。
註
[編集]- ^ どの役所に相談に行くべきか、分からなくても、住んでる地元の市役所などに相談に行けば、市役所の職員が担当の役所を紹介してくれる。
- ^ 現在はインドネシアなどの東南アジアが「世界の工場」と呼ばれる。
- ^ 帝国書院 tokushokusho.pdf
- ^ 帝国書院 tokushokusho.pdf
- ^ 帝国書院 tokushokusho.pdf
- ^ 日本文教出版 "r3_c-shakai_kou_naiyo.pdf" P.14
- ^ 帝国書院 "tokushokusho.pdf"