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中学校社会 公民/国内総生産と国民総生産

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

国内総生産

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一国の経済力は、どうやって計算すれば良いだろうか?

まず、消費者が商品を買う時、値段のぶんの価値を認めている。

消費者が商品を買う時、原材料費などの原価よりも値段が高くても消費者が買う理由は、その「原価との差額のぶんだけの価値が、商品に追加されている」と消費者が認めているからである。 もし、消費者が値段分の価値を商品に認めていないのなら、消費者は買わなければいいのである。

だったら、ある商品について、原価と販売価格の差を計算すれば、その商品を消費者まで届ける労働の生産性が測れそうである。

最終的な売り上げ額から、原材料費や設備費や下請けメーカーへの費用などの原価を引いた差のことを 付加価値(ふか かち、英:added value[1]) という。

つまり式で書けば、簡単に言うと、

(付加価値) = (売上高) - (原価)

である。

販売者以外の原材料メーカーなどの労働の価値は、販売者から見た場合の原材料費に含まれている。 付加価値の計算では、原材料などの中間財を売ることで得た金は含まれない。これは同じ商品について二重に数えることを、さけるためである。


付加価値などの用語の意味などは、業界によって多少の意味の違いはあるが、大まかな意味は、このような意味や計算式である。

そして、日本中のすべての産業について、日本中の付加価値を足し合わせれば、その国全体の(つまり日本国全体の)、労働の生産性が計算できそうである。 じっさいに、国内の付加価値を総計した金額のことを 国内総生産( こくない そうせいさん)といい、英語のGross Domestic Product (グロス・ドメスティック・プロダクト)を略した GDP (読み:ジーディーピー) という表記がよく用いられる。

つまり式で書けば、簡単に言うと、

(GDP) = (1国内での売上高の合計) - (原価の合計)

である。

国内総生産の計算では、企業が原材料などの中間財を売ることで得た金は含まれない。これは同じ商品について二重に数えることを、さけるためである。


ボランティア労働や家事労働などの成果は、GDPの計算には含まれない。なぜなら、計算のしようがないのである。


さて、日本のGDPは世界第3位である。(2014年。) GDPの1位はアメリカ合衆国であり、2位は中華人民共和国です。2010年に日本はGDPで中国に抜かれました。


ところで、「経済成長率」(けいざい せいちょうりつ、英:economic growth rate)という言葉を聞いたことがあるだろうか? 年ごとに国内総生産の変化を調べれば、経済力が成長しているかどうかが分かりそうである。

経済学では、経済成長率とは、次の式によって定義される。

(経済成長率)

なお、上の式で、

G1とは、ある年の国内総生産だと置いた。
G0とは、基準年の国内総生産だと置いた。


式から分かるように、GDPが前年より下がると、経済成長率はマイナスになる。このようなGDPが下がった場合を「マイナス成長」などという。

「マイナス」成長と言っても、けっしてGDPの金額そのものがマイナスというわけでは無くて、けっして赤字や借金などでは無くて、マイナス成長とは単にGDPが下がっただけのことである。

国内総生産と国民総生産

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  • 国内総生産について

国内総生産(GDP)には、日本国内で働いた外国人の作った付加価値も含まれる。また国内総生産(GDP)には、日本人が外国で作った付加価値は含まれない。

  • 国民総生産(こくみん そうせいさん)とは

以前使われていた指標として、国民総生産(こくみん そうせいさん)というものがあった。これは国民[2]が作った付加価値の合計で、英語では Gross National Product (グロス・ナショナル・プロダクト)と言い、略した GNP (読み:ジーエヌーピー) と言う略称の表記がよく用いられた。

式で国民総生産を書けば、

(国民総生産) = (国民による全ての最終製品の売上高) - (原価の合計)

である。

国民総生産は、日本人が外国で作った付加価値の金額も含まれる。そのため、グローバルな経済活動が進み、日本企業が国外で、または海外企業が日本国内で行う経済活動も活発になった現在、日本国内の経済状況をしめすのにやや不正確なGNPは使われていない。

「名目GDP」と「実質GDP」

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中学校の段階では、「名目GDP」と「実質GDP」の用語の意味のちがいは知らなくても、じゅうぶんである。

なお、「実質GDP」(じっしつGDP、英:real GDP)とは、物価の変動を考慮して、単純計算で求めたGDPに、物価指数を用いて補正したものに過ぎない。

実質GDPの式は中学レベルを超えるので紹介しない。

「名目GDP」(めいもくGDP、英:nominal GDP ノミナル・ジーディーピー)とは、物価の補正などを行ってない単純計算で求めたままのGDPのことである。 GNPについても同様に名目GNPと実質GNPがある。

「実質経済成長率」(じっしつ けいざい せいちょうりつ、英:real economic growth rate)とは、物価の変動を考慮して、単純計算で求めた経済成長率に物価指数を用いて補正したものに過ぎない。 実質経済成長率 の式は中学レベルを超えるので紹介しない。なお、「名目経済成長率」(英:nominal economic growth rate)とは、物価の補正などを行ってない単純計算で求めたままの経済成長率のことである。


  1. ^ 『ビジネス基礎』、実教出版、令和2年12月25日検定、令和4年1月25日発行、P114
  2. ^ ここでいう「国民」とは「一定期間、国内に住んでいる人・企業」という意味であり、国籍の有無は関係ない。