出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
- 注意事項
- ~この「日本国憲法」について~
- ・原文には漢字に読みがなが無いが、読者の学習を考えいくつかの漢字や用語などには、( )をつけて読みがなをふっている。
- また、原文の漢字はすべて旧漢字(例:「国」の旧漢字は「國」)であるが、この原文紹介では新漢字に直して紹介している。
- なお 原文にはこのような記載はないことをご承知おき。
- ・条文の冒頭にある「【皇位の継承(けいしょう)】」(第2条)のように、条文の冒頭の 【 】 および【】内部の文章は、教科書側で追加された語句である。もとの日本国憲法には【】とその内部の語句は無いので、教科書ごとに【】内の語句が違う場合がある。
- ・本ページには用語解説が 「象徴 抽象的で形のないものを表現するときに、かわりとして似たような感じをもつ具体的なもので表したもの。」 のように書かれているが、日本国憲法のもとの文には用語解説の項目は無い。
- ・もとの日本国憲法には読みがなは無いので、たとえば第16条にある「何人も」という語句の「何人」の読みを、「なんびと」(3文字目の発音が Bi )と読むか「なんぴと」(3文字目が Pi かは読み手によって異なる。)
- ・本記事で原文紹介中に解説を加えるときは、ページ右側の解説欄に書くことにする。
- ~基礎知識~
- 日本国憲法は全部で11章からなり、条文は103条まである。
~朗読(外部サイト)~
- 「日本国憲法」全文《CV:古谷徹》 動画サイト「ニコニコ動画」内、 ※朗読は1:31から
- 「日本国憲法」全文《CV:三石琴乃》 動画サイト「ニコニコ動画」内、 ※朗読は1:31から
- 【日本国憲法前文】アナウンサーのわかりやすい条文朗読 熊谷章洋, BGMあり,動画サイト「YouTube」内、
- ※再生終了後に自動で再生動画が切り替わるので注意
以下、「前文」より日本国憲法の原文である。
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
われらとわれらの子孫のために、
諸国民(しょこくみん)との協和(きょうわ)による成果と、わが国(くに)全土(ぜんど)にわたつて自由のもたらす恵沢(けいたく)を確保し、
政府の行為によつて再び戦争の惨禍(さんか)が起る(おこる)ことのないやうにすることを決意し、
ここに主権(しゅけん)が国民に存(ぞん)することを宣言(せんげん)し、
この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛(げんしゅく)な信託(しんたく)によるものであつて、
その権威(けんい)は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使(こうし)し、その福利(ふくり)は国民がこれを享受(きょうじゅ)する。
これは人類普遍(じんるい ふへん)の原理であり、この憲法は、かかる原理に基く(もとづく)ものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令(ほうれい)及び(および)詔勅(しょうちょく)を排除する。
日本国民は、恒久(こうきゅう)の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高(すうこう)な理想を深く自覚するのであつて、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持(いじ)し、専制(せんせい)と隷従(れいじゅう)、圧迫(あっぱく)と偏狭(へんきょう)を地上から永遠に除去(じょきょ)しようと努めてゐる国際社会において、名誉(めいよ)ある地位を占めたい(しめたい)と思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏(けつぼう)から免れ(まぬかれ)、平和のうちに生存する権利を有する(ゆうする)ことを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念(せんねん)して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的(ふへんてき)なものであり、この法則に従ふ(したがう)ことは、自国の主権を維持(いじ)し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務(せきむ)であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉(めいよ)にかけ、全力をあげて この崇高(すうこう)な理想と目的を達成することを誓ふ(ちかう)。
|
|
用語解説
協和 心を合わせて仲よくすること。
恵沢 めぐみ、恩恵(おんけい)。
惨禍 いたましい災い(わざわい)。
主権 政治のありかたを最終的に決定する最高の権力
厳粛 まじめで、きびしく、おごそかな様子。
信託 信用して、まかせること。
権威 社会的信用の高さなどによって他人を自発的に服従させるような力のこと。強制的に服従させる社会的な上下関係である権力とは区別される。
行使 権力や力を実行すること。
福利 幸福と利益。
享受 受け取って自分のものにすること。
普遍 どこでも。いつでも。
人類普遍の原理 人類にとって、いつの時代においても、当てはまる原理。
詔勅 天皇の発する公文書(詔書)と、公的な言葉(勅語)。
恒久 いつまでも変わらないこと。永遠。
崇高 気高い様子。
専制 上に立つ者が独断でものごとを決めること。
隷従 他の者につき従うこと。隷属。
偏狭 せまく、かたよっていること。
欠乏 不足していること
責務 責任と義務
|
第1条 【天皇の地位・国民主権】
- 天皇は、日本国の象徴(しょうちょう)であり日本国民統合(とうごう)の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く(もとづく)。
第2条 【皇位の継承(けいしょう)】
- 皇位(こうい)は、世襲(せしゅう)のものであつて、国会の議決した皇室典範(こうしつ てんぱん)の定めるところにより、これを継承(けいしょう)する。
第3条 【天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認】
- 天皇の国事(こくじ)に関するすべての行為(こうい)には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第4条 【天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任】
- 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能(けんのう)を有しない。
- 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任(いにん)することができる。
第5条 【摂政(せっしょう)】
- 皇室典範(こうしつ てんぱん)の定めるところにより摂政(せっしょう)を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用(じゅんよう)する。
第6条 【天皇の任命権】
- (1) 天皇は、国会の指名(しめい)に基いて(もとづいて)、内閣総理大臣(ないかく そうりだいじん)を任命(にんめい)する。
- (2) 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所(さいこう さいばんしょ)の長(ちょう)たる裁判官を任命する。
第7条 【天皇の国事行為】 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
- 1 憲法改正、法律、政令(せいれい)及び条約(じょうやく)を公布(こうふ)すること。
- 2 国会を召集(しょうしゅう)すること。
- 3 衆議院(しゅうぎいん)を解散(かいさん)すること。
- 4 国会議員の総選挙(そうせんきょ)の施行(せこう)を公示(こうじ)すること。
- 5 国務大臣(こくむだいじん)及び(および)法律の定めるその他の官吏(かんり)の任免(にんめん)並びに全権委任状(ぜんけんいにんじょう)及び大使(たいし)及び公使(こうし)の信任状(しんにんじょう)を認証(にんしょう)すること。
- 6 大赦(たいしゃ)、特赦(とくしゃ)、減刑、刑の執行の免除(めんじょ)及び復権を認証すること。
- 7 栄典(えいてん)を授与(じゅよ)すること。
- 8 批准書(ひじゅんしょ)及び法律の定めるその他の外交文書を認証(にんしょう)すること。
- 9 外国の大使(たいし)及び公使(こうし)を接受(せつじゅ)すること。
- 10 儀式(ぎしき)を行ふこと。
第8条 【皇室の財産授与(ざいさんじゅよ)】
- 皇室に財産を譲り(ゆずり)渡し(わたし)、又は皇室が、財産を譲り(ゆずり)受け、若しくは(もしくは)賜与(しよ)することは、国会の議決に基か(もとづか)なければならない。
|
|
用語解説
第1条
象徴 抽象的で形のないものを表現するときに、かわりとして似たような感じをもつ具体的なもので表したもの。
第2条
世襲 地位などを子や孫など血のつながった者が代々うけつぐこと。
皇室典範 皇位の継承や皇室の範囲や皇族の扱いなど皇室に関することがらを定めた法律。
第3条
国事行為 天皇が国家機関として行う儀礼的な行為。
第4条
権能 権限と能力。
第5条
摂政 天皇にかわって国事行為を行う皇族。
第6条
指名 この人だと名をあげて確定すること。この憲法の場合は適任者を選ぶこと。
任命 人を官職や役目につける命令。この憲法の場合の「任命」は、国会の指名を承認する形式的な行為。
第7条
政令 憲法や法律を実施するために、内閣によって制定される命令。
公布 広く知らせるために発表すること。
公示 広く知らせるために、人々が知りうる状態におくこと。
官吏 役人。国家公務員。
任免 職につける行為・権限と、その職をやめさせる行為・権限。任命と免職(めんしょく)。
委任状 ある事務などの処理について他人に任せているときに、そのことを記した書面。
全権委任状 条約を結ぶかどうかの交渉の際に、自国の外交官など交渉者が国家を代表して交渉していることを証明するための公の文書。元首から代表者である外交官など交渉担当者に渡される。
大赦 国や皇室にめでたいことがあったときに、軽い罪など一定の程度以下の犯罪への刑罰に対して、特別に刑の執行を免除し、また刑事訴訟の訴えを取り下げること。
特赦 刑を言い渡された特定の人に対して、刑の執行を免除し、有罪判決の効力を失わせること。
復権 有罪判決により失われた権利(被選挙権など)を回復させること。
栄典 国家に功績のある者には勲章や位階などが与えられることがあり、そのような勲章や位階をまとめて栄典という。
批准 条約を国家が最終的に承認すること。
接受 受け入れること。
第8条
賜与 身分の高い者が、身分の下の者に財産などを与えること。
|
第9条 【戦争放棄、戦力および交戦権の否認】
- (1) 日本国民は、正義(せいぎ)と秩序(ちつじょ)を基調(きちょう)とする国際平和を誠実(せいじつ)に希求(ききゅう)し、国権(こっけん)の発動(はつどう)たる戦争(せんそう)と、武力(ぶりょく)による威嚇(いかく)又は(または)武力の行使(こうし)は、国際紛争(こくさいふんそう)を解決する手段としては、永久(えいきゅう)にこれを放棄(ほうき)する。
- (2) 前項(ぜんこう)の目的を達する(たっする)ため、陸海空軍(りくかいくうぐん)その他の戦力(せんりょく)は、これを保持(ほじ)しない。国(くに)の交戦権(こうせんけん)は、これを認めない。
|
|
用語解説
第9条
基調 ある作品や論説などでの、主張などの基本的な傾向。
希求 ねがい、もとめること。
国権 国の権力。「国権」という用語そのものには批判的な意味は無い。
威嚇 おどしつけること。
武力の行使 軍事力や兵力を実際に使うこと。この憲法の場合は、実際に戦闘を行うこと、という意味だろう。
交戦権 戦争をなしうる権利。この憲法での「交戦権」の解釈について、自衛のための戦争についての反撃の権利を認めるかどうかが論争・政争などになっている。また、「交戦権」の解釈について次の2つの説がある。 (1)戦時国際法では戦争を行ってる国どうしについて戦争当事者として認められている権利があり、それぞれの敵兵を攻撃したり敵国領土を攻撃したりする権利は認められている。この権利のことを、この憲法では「交戦権」と言っているというような説。 (2) 戦争を行う権利そのものを、この憲法では「交戦権」と言っているという説。
|
第三章 国民の権利(けんり)及び(および)義務(ぎむ)
[編集]
第10条 【国民の要件】 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11条 【基本的人権の享有(きょうゆう)】 国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条 【自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止】 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用(らんよう)してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 【個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉】 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14条 【法の下の平等、貴族の禁止、栄典】
- (1) すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分(しゃかいてき みぶん)又は門地(もんち)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
- (2) 華族(かぞく)その他の貴族(きぞく)の制度は、これを認めない。
- (3) 栄誉(えいよ)、勲章(くんしょう)その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第15条 【公務員 選定 罷免権(ひめんけん)、公務員の本質、普通選挙の保障、秘密投票の保障】
- (1) 公務員を選定し、及びこれを罷免(ひめん)することは、国民固有の権利である。
- (2) すべて公務員は、全体の奉仕者(ほうししゃ)であつて、一部の奉仕者ではない。
- (3) 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
- (4) すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
第16条 【請願権(せいがんけん)】
- 何人も(なんびとも)、損害の救済、公務員の罷免(ひめん)、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏(へいおん)に請願(せいがん)する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
第17条 【国および公共団体の賠償(ばいしょう)責任】
何人も(なんびとも)、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償(ばいしょう)を求めることができる。
第18条 【奴隷的拘束(どれいてきこうそく)および苦役(くえき)からの自由】
何人も(なんびとも)、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る(よる)処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第19条 【思想および良心の自由】 思想(しそう)及び良心(りょうしん)の自由は、これを侵してはならない。
第20条 【信教の自由】
- (1) 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
- (2) 何人も(なんびとも)、宗教上の行為、祝典(しゅくてん)、儀式(ぎしき)又は行事(ぎょうじ)に参加することを強制されない。
- (3) 国(くに)及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第21条 【集会結社表現の自由、通信の秘密】
- (1) 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
- (2) 検閲(けんえつ)は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22条 【居住移転および職業選択の自由、外国移住および国籍離脱の自由】
- (1) 何人も(なんびとも)、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
- (2) 何人も(なんびとも)、外国に移住し、又は国籍を離脱(りだつ)する自由を侵されない。
第23条 【学問の自由】
学問の自由は、これを保障する。
第24条 【家庭生活における個人の尊厳(そんげん)と両性の平等】
- (1) 婚姻(こんいん)は、両性の合意のみに基いて(もとづいて)成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互(そうご)の協力により、維持(いじ)されなければならない。
- (2) 配偶者(はいぐうしゃ)の選択、財産権、相続(そうぞく)、住居の選定、離婚(りこん)並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
|
|
第10条
用語解説
要件 必要とされる条件。
日本国民たる要件 これを定めた法律としては国籍法がある。
第11条
基本的人権
享有 生まれながらにして持っていること。
第12条
不断 絶えることのない。「普段」とは意味がちがうので、まちがえないように。
濫用 むやみに用いること。「乱用」とは字が違うので、まちがえないように。
第13条
公共の福祉
第14条
信条
門地 家がら。
華族 大日本帝国憲法下の時代にあった特権的な高い地位である爵位(しゃくい)を持つ人々とその家族。爵位には公爵(こうしゃく)・侯爵(こうしゃく)・伯爵(はくしゃく)・子爵(ししゃく)・男爵(だんしゃく)があった。
第15条
罷免 職をやめさせること。
固有 そのもの自体が、なんらかの性質などをもとから持っていること。
普通選挙 納税額や身分などに関係なく、自国民の大人なら誰でも投票できて、誰もが同じ一票を持つ選挙。
選挙人 選挙権を持つ人。
第16条
何人も(なんびとも) 誰でも。だれであっても。まちがって「なんにんも」とは読まないように注意しよう。
請願 国や地方公共団体等の機関に対して、希望などを申し立てること。
第17条
不法行為
第18条
拘束 捕らえたり監禁したりして、自由には動けないようにすること。
苦役 強制的に労働をさせること。
第19条
思想 政治や社会などについての考えかたや見解。
第20条
信教 宗教を信じること。
信教の自由 どの宗教を信じるかを本人が選ぶ自由。また、宗教を信じないことを選ぶ自由。
祝典 お祝い(おいわい)の儀式。
第21条
結社 人々がなんらかの目的をもった団体をつくること。または、その団体のこと。
検閲 民間による出版物や放送などの内容を、国など公の機関が審査を行い、大衆への発表の前に審査し、発表内容が不適当な内容と認めた場合には発表を禁止すること。
第24条
婚姻 結婚すること。
両性 この憲法の場合、男性と女性のこと。
配偶者 夫婦での、おたがいの結婚相手。夫にとっての妻。妻にとっての夫。
相続 財産を親などから受けつぐこと。
立脚 よって、たつこと。「立脚する」とは「よりどころ にする」というような意味。
|
第25条 【生存権(せいぞんけん)、国の社会的使命(しめい)】
- (1) すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
- (2) 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第26条 【教育を受ける権利、教育の義務】
- (1) すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
- (2) すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育(ふつう きょういく)を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償(むしょう)とする。
第27条 【勤労(きんろう)の権利および義務、勤労条件の基準、児童(じどう)酷使(こくし)の禁止】
- (1) すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
- (2) 賃金(ちんぎん)、就業時間(しゅうぎょうじかん)、休息その他の勤労条件(きんろうじょうけん)に関する基準は、法律でこれを定める。
- (3) 児童(じどう)は、これを酷使(こくし)してはならない。
第28条 【勤労者の団結権(だんけつけん)】
- 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第29条 【財産権(ざいさんけん)】
- (1) 財産権は、これを侵してはならない。
- (2) 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
- (3) 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
第30条 【納税(のうぜい)の義務】
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。
第31条 【法定の手続(てつづき)の保障】
- 何人も(なんびとも)、法律の定める手続(てつづき)によらなければ、その生命(せいめい) 若しくは(もしくわ) 自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科(か)せられない。
第32条 【裁判の権利】
- 何人も(なんびとも)、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第33条 【逮捕(たいほ)の要件】
- 何人も(なんびとも)、現行犯(げんこうはん)として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲(しほうかんけん)が発し、且つ(かつ)理由となつてゐる犯罪を明示する令状(れいじょう)によらなければ、逮捕されない。
第34条 【抑留(よくりゅう)・拘禁(こうきん)の要件、不法拘禁に対する保障】
- 何人も(なんびとも)、理由を直ち(ただち)に告げられ、且つ(かつ)、直ち(ただち)に弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又(また)、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
|
|
第25条
社会福祉 老人福祉や障害者福祉など、社会的弱者に救済を国が与えること。
社会保障 社会保険や公的扶助などによって、国民の生存権を保障すること。
公衆衛生 国民の健康の維持や向上のため、病気の予防などを行うこと。
第26条
普通教育 専門教育・職業教育ではなく、国民にとって社会生活で必要とされる知識などを教え、国民共通に与える教育。
第27条
酷使 重労働などに、こき使うこと。
第28条
団体交渉 労働組合などの労働者の団体が、経営者など使用者を相手に、労働条件について交渉すること。
団体行動 労働者のストライキなど。
第29条
私有財産 個人または民間の会社など、公共機関でない民間の者が所有している財産。
第33条
現行犯 ちょうど目の前で犯罪を行っている者。または目の前で犯罪を行い終わった者。
司法官憲 司法に関わる公務員のこと。この条文では裁判官のこと。
令状 裁判官が出す警察などへの許可書で、強制的な処分を行うことを認める文書。逮捕状や差押状(さしおさえじょう)などがある。
第34条
抑留 比較的に短い期間、強制的に居場所をとどめおかせること。逮捕にともなう警察署内にある留置場での2日程度の留置など。
拘禁 比較的に長期の間、強制的に居場所をとどめおかせること。刑務所や留置場などで、被疑者や受刑者を、長期間にわたり留めておくこと。
|
第35条 【住居の不可侵(ふかしん)】
- (1) 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索(そうさく)及び押収(おうしゅう)を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて(もとづいて)発せられ、且つ(かつ)捜索する場所及び押収する物を明示する令状(れいじょう)がなければ、侵されない。
- (2) 捜索(そうさく)又は押収(おうしゅう)は、権限を有する司法官憲(しほう かんけん)が発する各別(かく べつ)の令状により、これを行ふ。
第36条 【拷問(ごうもん)および残虐刑(ざんぎゃくけい)の禁止】
- 公務員による拷問(ごうもん)及び残虐(ざんぎゃく)な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第37条 【刑事被告人の権利】
- (1) すべて刑事(けいじ)事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速(じんそく)な公開裁判を受ける権利を有する。
- (2) 刑事被告人(けいじ ひこくにん)は、すべての証人に対して審問(しんもん)する機会を充分に与へ(あたえ)られ、又(また)、公費(こうひ)で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
- (3) 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国(くに)でこれを附(ふ)する。
|
|
第35条
押収 裁判所・検察官が、証拠物などを差し押さえたり、被疑者から取り上げて没収し警察署などで保管すること。
第36条
拷問 相手に肉体的苦痛をあたえ、むりやりに情報を出させたり要求にしたがわせること。
第37条
審問 審理のために問いただすこと。
|
第38条 【自己に不利益な供述(きょうじゅつ)、自白(じはく)の証拠能力】
- (1) 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
- (2) 強制、拷問(ごうもん)若しくは(もしくは)脅迫(きょうはく)による自白(じはく)又は不当に長く抑留(よくりゅう)若しくは拘禁(こうきん)された後の自白は、これを証拠とすることができない。
- (3) 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第39条 【訴求処罰(そきゅう しょばつ)の禁止、一事不再理(いちじ ふさいり)】
- 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第40条 【刑事補償(けいじ ほしょう)】
- 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
|
|
第38条
自白 自分が犯罪を犯したと供述すること。あるいは、自分の犯した犯罪の内容について供述すること。
第39条
訴求処罰 その法律が定められる前の出来事を、さかのぼって処罰すること。
|
第41条 【国会の地位・立法権】 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第42条 【両院制】 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第43条 【両議院の組織・代表】
- (1) 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
- (2) 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第44条 【議員および選挙人の資格】
- 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第45条 【衆議院議員の任期】
- 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了(まんりょう)前に終了する。
第46条 【参議院議員の任期】
- 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選(かいせん)する。
第47条 【選挙に関する事項】 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第48条 【両議院議員 兼職(けんしょく)の禁止】 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
第49条 【議員の歳費(さいひ)】 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額(そうとうがく)の歳費を受ける。
|
|
用語解説
第41条
国権 国の権力。国家権力。
第44条
選挙人 選挙権を持つ人。公職選挙法で、選挙権は、20歳以上の日本国民に定められている。
第45条
満了 期間を最後まで終えること。
第46条
改選 議員の任期満了のときに、あらためて選挙を行い、次の任期の議員たちを選ぶこと。
第49条
国庫 国家に属する財産の保管場所。あるいは、その国家財産の持ち主として捉えた国家財政および国家のこと。
歳費 国会議員に国から支給される報酬。
|
第50条 【議員の不逮捕特権(ふたいほ とっけん)】
- 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放(しゃくほう)しなければならない。
第51条 【議員の発言・表決(ひょうけつ)の無責任】 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論(とうろん)又は表決(ひょうけつ)について、院外で責任を問はれない。
第52条 【常会(じょうかい)】 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第53条 【臨時会(りんじかい)】
- 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
|
|
第51条
表決 議会に提出された議案について、賛成または反対の意思を表明すること。
|
第54条 【衆議院の解散・特別会(とくべつかい)、参議院の緊急集会(きんきゅう しゅうかい)】
- (1) 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
- (2) 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会(へいかい)となる。但し(ただし)、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
- (3) 前項但書(ただしがき)の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
|
|
第54条
但書 「ただし」や「但し」などをつけて、その直前の文章への例外規定を表す文。
|
第55条 【資格争訟(そうしょう)の裁判】
- 両議院は、各々(おのおの)その議員の資格に関する争訟(そうしょう)を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第56条 【定足数(ていそくすう)、表決】
- (1) 両議院は、各々(おのおの)その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
- (2) 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第57条 【会議の公開、会議録、表決の記載】
- (1) 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会(ひみつかい)を開くことができる。
- (2) 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布(はんぷ)しなければならない。
- (3) 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
|
|
第55条
争訟 訴訟を起こして争うこと。
議席 ここで言う「議席」とは、議員としての資格のこと。
第56条
定足数 議会を開くために必要とされる最小限度の出席者数のことをいう。衆参両院では本条文よりそれぞれ3分の1以上の出席者数が必要であり、委員会の定足数については国会法により「その委員の半数以上」つまり2分の1以上が必要であり、両院協議会は3分の2位上である。
過半数 半分をこえる数。
第57条
秘密会 公開されない会議。非公開の会議。
頒布 広く、多くの人に配って、行きわたらせること。
|
第58条 【役員の選任、議員規則・懲罰(ちょうばつ)】
- (1) 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
- (2) 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第59条 【法律案の議決・衆議院の優越(ゆうえつ)】
- (1) 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
- (2) 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
- (3) 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
- (4) 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第60条 【衆議院の予算先議(よさんせんぎ)、予算議決に関する衆議院の優越】
- (1) 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
- (2) 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第61条 【条約(じょうやく)の承認(しょうにん)に関する衆議院の優越】
- 条約(じょうやく)の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用(じゅんよう)する。
|
|
第58条
懲罰 ここでいう「懲罰」とは、院内の秩序を乱した議員に国会内で制裁を加えること。国会法122条によると議会秩序のために議員に科せる制裁としては、広会議場における戒告・広会議場における陳謝・一定期間の登院停止・除名(議員の資格をなくす。)の4種類の罰がある。最も重い国会による懲罰が除名。一般的な「懲罰」の意味は、こらしめるために罰すること。
除名 議員としての資格を失わせること。国会による懲罰のうち最も重い懲罰が除名。
第60条
予算 一会計年度の、国家または地方公共団体の、歳入と歳出における、見積もり。
第61条
条約
締結 とりきめること。
|
第62条 【議員の国政調査権(こくせいちょうさけん)】
- 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第63条 【閣僚の議員出席の権利と義務】
- 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁(とうべん)又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
第64条 【弾劾裁判所(だんがい さいばんしょ)】
- (1) 国会は、罷免(ひめん)の訴追(そつい)を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所(だんがい さいばんしょ)を設ける(もうける)。
- (2) 弾劾(だんがい)に関する事項は、法律でこれを定める。
|
|
第62条
出頭 本人みずからが、ある場所に出向くこと。
第64条
罷免 ある公務員を、やめさせること。
訴追 この条文でいう「訴追」とは、裁判官の罷免を求めるために弾劾の申し立てをすること。一般的には、訴追とは訴えを起こして、訴訟を進めさせること。
弾劾裁判所 衆参両院議員の各7人からなる。
|
第65条【行政権(ぎょうせいけん)】 行政権は、内閣に属する。
第66条【内閣の組織、国会に対する連帯(れんたい)責任】
- (1) 内閣は、法律の定めるところにより、その首長(しゅちょう)たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
- (2) 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
- (3) 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
第67条【内閣総理大臣の指名、衆議院の優越(ゆうえつ)】
- (1) 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
- (2) 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第68条【国務大臣の任命および罷免】
- (1) 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
- (2) 内閣総理大臣は、任意(にんい)に国務大臣を罷免(ひめん)することができる。
第69条【内閣不信任決議の効果】 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条【内閣総理大臣の欠缺・新国会の召集と内閣の総辞職】 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
第71条【総辞職後の内閣】 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
第72条【内閣総理大臣の職務】 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
第73条【内閣の職務】 内閣は、他の一般行政事務の外(ほか)、左の事務を行ふ。
- 一 法律を誠実に執行(しっこう)し、国務を総理(そうり)すること。
- 二 外交関係を処理すること。
- 三 条約を締結(ていけつ)すること。但し、事前に、時宜(じぎ)によつては事後(じご)に、国会の承認(しょうにん)を経る(へる)ことを必要とする。
- 四 法律の定める基準に従ひ、官吏(かんり)に関する事務を掌理(しょうり)すること。
- 五 予算を作成して国会に提出すること。
- 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し(ただし)、政令には、特にその法律の委任(いにん)がある場合を除いては、罰則を設ける(もうける)ことができない。
- 七 大赦(たいしゃ)、特赦(とくしゃ)、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第74条【法律・政令(せいれい)の署名(しょめい)】 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署(れんしょ)することを必要とする。
第75条【国務大臣の特典】 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は害(がい)されない。
|
|
用語解説
首長 組織の中で、いちばん、えらい者。
第66条
文民 軍人でない人。この規定にともなって、日本では現役の自衛官は大臣にしないのが、日本では一般である。では、自衛隊を退役した元・自衛官についてはどうあるべきか、諸説ある。つまり、どの範囲までを「軍人」というかに多くの説がある。現憲法では自衛官も人権として参政権を持っており、それとの整合性についても諸説ある。なお、過去の戦後の昭和時代のころの日本においては「文民」と言う場合には「職業軍人の経歴を有しない者」とする説が有力であったが、べつに文民に対応する英語の civilian(シビリアン) には政治家の軍隊経験そのものを禁じるような国際的な定説は無く、たとえばアメリカ合衆国では元・職業軍人のアイゼンハワーが選挙に出て政治家に転職し大統領(第34代)になっているという例もある。
第67条
案件 議案にかけられている事がら(ことがら)。議題にされている事がら。
第68条
任意 法的な制限なく、自由に選択すること。意のままに、まかせること。
第69条
不信任 この条文での不信任とは、国会が内閣を信用せず、その存続をみとめないこと。
総辞職 この条文での総辞職とは、内閣総理大臣および全ての国務大臣が自ら(みすから)職をやめること。一般に「辞職」とは、みずから職をやめること。
第70条
欠缺 欠けていること。この条文見出しでは、欠員のこと。
第73条
総理する 全てを処理・管理すること。
時宜(じぎ)によつては 場合によっては。都合によっては。状況によっては。
掌理(しょうり) 全体を取りまとめて処理・管理すること。
第74条
連署 同一の文書等に複数の者が名を書き連ねること。同一の文書等に複数の者が署名すること。
|
第76条 【司法権・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立】
- (1) すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
- (2) 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審(しゅうしん)として裁判を行ふことができない。
- (3) すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権(しょっけん)を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第77条 【最高裁判所の規則制定権】
- (1) 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
- (2) 検察官(けんさつかん)は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
- (3) 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第78条 【裁判官の身分の保障】
- 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執る(とる)ことができないと決定された場合を除いては、公(おおやけ)の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒(ちょうかい)処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第79条 【最高裁判所の裁判官、国民審査(こくみんしんさ)、定年(ていねん)、報酬(ほうしゅう)】
- (1) 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
- (2) 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際(さい)国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
- (3) 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
- (4) 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
- (5) 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
- (6) 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬(ほうしゅう)を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第80条 【下級裁判所の裁判官・任期・定年、報酬(ほうしゅう)】
- (1) 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
- (2) 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬(ほうしゅう)を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第81条 【法令審査権と最高裁判所】
- 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
|
|
用語解説
第76条
特別裁判所 特定の種類の事件をあつかう裁判所であるか、あるいは特定の身分を持つ人についてのみ扱う裁判所であって、さらに司法裁判所の司法権に属さない裁判所。大日本帝国憲法下での行政裁判所や軍法会議、皇室裁判所などのこと。ただし国会が設置する弾劾裁判所は例外である。
(※ 中学の範囲外。大学範囲) なお、海難審判所(かいなんしんぱんしょ)や国税不服審判所(こくぜいふふくしんぱんしょ)などの行政審判所(ぎょうせいしんぱんしょ)は司法裁判所の管理下に属するので、特別裁判所には含めない。本76条の規定通り、行政審判は終審には出来ない。
終審 その裁判について、それ以上は訴えることのできない最終的な審判。
第77条
検察官 犯罪を捜査し、起訴および維持する権限をもつ公務員。
第78条
心身の故障 重い病気など心や体に生じた障害。
|
第82条 【裁判の公開】
- (1) 裁判の対審(たいしん)及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
- (2) 裁判所が、裁判官の全員一致で、公(おおやけ)の秩序(ちつじょ)又は善良の風俗(ふうぞく)を害(がい)する虞(おそれ)があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
|
|
第82条
対審 裁判で、対立している双方の当事者(民事訴訟では原告と被告、刑事訴訟では検察官と被告人・弁護人)が、裁判官の前でそれぞれの主張を述べること。民事訴訟における口頭弁論、刑事訴訟における公判手続などが、これにあたる。
善良の風俗 社会での道徳や、良いとされる習慣など。
虞(おそれ) 心配。
|
第83条 【財産処理の基本原則】
- 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第84条 【課税(かぜい)】
- あらたに租税(そぜい)を課(か)し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
第85条 【国費の支出および国の債務(さいむ)負担】
- 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
第86条 【予算】
- 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
第87条 【予備費】
- 予見し難い予算の不足に充てるため(あてるため)、国会の議決に基いて(もとづいて)予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
- すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾(しょうだく)を得なければならない。
第88条 【皇室財産・皇室の費用】
- すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経(へ)なければならない。
第89条 【公(おおやけ)の財産の支出または利用の制限】
- 公金(こうきん)その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益(べんえき)若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善(じぜん)、教育若しくは博愛(はくあい)の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第90条 【決算検査、会計検査院(かいけい けんさいん)】
- 国の収入支出の決算は、すべて毎年 会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
- 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
第91条 【財政状況の報告】
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
|
|
用語解説
第84条
租税 いわゆる税金のこと。
第85条
債務 この条文では、たとえば借金での返す義務のように、将来にお金を払う義務のこと。
第88条
計上 予算の中に、ふくませること。
第89条
公金 国や地方公共団体のお金。
便益 便利なこと。利益になること。
第90条
会計検査院 国家機関の一つで、国の収入支出の決算を検査する。
|
第92条 【地方自治の基本原則】
- 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨(ほんし)に基いて、法律でこれを定める。
第93条 【地方公共団体の機関、その直接選挙】
- 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
- 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員(りいん)は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第94条 【地方公共団体の権能】
- 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第95条 【特別法(とくべつほう)の住民投票】
- 一の地方公共団体のみに適用される特別法(とくべつほう)は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
|
|
用語解説
第92条
本旨 あるべき姿(すがた)。ありかた。
第93条
吏員 地方公務員など。
第95条
特別法 ここでいう特別法とは、特定の地域のみに適用される法。例としては、広島平和記念都市建設法(昭和24年法律第219号)、長崎国際文化都市建設法(昭和24年法律第220号)、横浜国際港都建設法(昭和25年法律第248号)などの国際港都建設法(横浜・神戸)、京都国際文化観光都市建設法
(昭和25年法律第251号)などの国際文化観光都市建設法(京都・奈良・松江)などがある。
|
第96条 【改正の手続、その公布】
- この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議(はつぎ)し、国民に提案(ていあん)して その承認(しょうにん)を経なければ(へなければ)ならない。この承認には、特別の国民投票(こっかいとうひょう)又は国会の定める選挙の際(さい)行われる投票において、その過半数(かはんすう)の賛成を必要とする。
- 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ち(ただち)にこれを公布(こうふ)する。
|
|
用語解説
第96条
発議 議案を提出すること。
|
第97条 【基本的人権の本質】
- この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多(いくた)の試錬(しれん)に堪へ(たえ)、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託(しんたく)されたものである。
第98条 【最高法規、条約および国際法規の遵守】
- この憲法は、国の最高法規であつて、その条規(じょうき)に反する法律、命令、詔勅(しょうちょく)及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
- 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守(じゅんしゅ)することを必要とする。
第99条 【憲法尊重(そんちょう)擁護(ようご)の義務】
- 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護(ようご)する義務を負ふ。
|
|
用語解説
第98条
条規 条文に書かれている規則・規定。
第99条
擁護 まもること。かばうこと。
|
第100条 【憲法施行期日、準備手続】
- この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。
- この憲法を施行(しこう)するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
第101条 【経過規定 ー 参議院未成立の間の国会】
- この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。
第102条 【同前 ー 第1期の参議院議員の任期】
- この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。
第103条 【同前 ー 公務員の地位】
- この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。
|
|
用語解説
第100条
起算 数え始めること。
施行 法令の効力を実際に発生させること。
|