コンテンツにスキップ

中学校社会 公民/日本国憲法の原則

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

憲法について

[編集]
法の構成  憲法を頂点として、上にあるほど、強い効力をもつ。強い下位にある法が、上位にある法に反することはできない。

憲法(英:constitution コンスティチューション)とは国の基本となる最高法規(英:supreme law サプリーム・ロー)である。具体的には、憲法は国家や政治のあり方や国民の権利と義務を定めるもっとも基本的な法であり、憲法に違反している法律は無効とされる。(憲法98条)

一方、法律は国会の制定したきまりのことを指す。

日本国憲法の三大原則

[編集]

日本国憲法の原則として、国民主権(英訳:the sovereignty of the people)、平和主義(英訳:Pacifism)、基本的人権の尊重(英訳: respect for fundamental human rights)が挙げられる。これは憲法の三大原則と呼ばれている。

国民主権

[編集]

国民主権とは、国の政治権力は国民全員が持ち、政治を国民自身の手で行うことにしたものです。これを実現するためには、国民一人ひとりが意見を表明できる場を与えられ、国民全員の意見が尊重され、話し合いによって政治が決まる必要があります。そこで、国民自身が政治に行う民主主義と呼ばれる制度が必要になります(国民主権ならば民主主義でなければならないが、民主主義ならば国民主権であるというわけではない。)。

民主主義には直接民主主義と間接民主主義があります。直接民主主義は文字通りの民主主義で、国民一人ひとりの意見が尊重され、国民投票などの手段で政治が決まる社会になります。しかし直接民主主義で政治を決める手段は国民投票だけではありません。投票の議題を決定するのに重要な役割を果たす請願権や表現の自由が非常に重要な要素になります。

これに対し、間接民主主義は、国民からの選挙で選ばれた議員を代表者として、議員を通して議会で政治が決まります。なお、このように、議会を通して政治を決める方式を議会制民主主義(ぎかいせい みんしゅしゅぎ、Representative democracy リプリゼンティティブ・デモクラシー)と言い、また、間接民主制(かんせつ みんしゅせい)とも言う。

現在の日本では明治時代から続く議会制度が維持され、現行法では18歳以上の全ての日本国民に選挙権が与えられています。衆議院は25歳以上、参議院は30歳以上で被選挙権を得られます(議員に立候補する権利のこと。)。また、最高裁判所の裁判官は国民による審査をうける。

このように、主権者が国民であるという方式や考え方などを「国民主権」という。

天皇について

[編集]
アメリカ大使館でのマッカーサー(左側の人物)と昭和天皇(右側)(1945年9月27日フェレイス撮影3枚中の1枚)

天皇は、日本国及び日本国民の統合の象徴とされています(第1条)。また、外国からのその扱いは国家元首に準ずるものとなっています(ただし、これには議論がある。)。

日本国憲法では明治時代から続く伝統の明文化が行われ、天皇は「国政に関する権能を持たない」ことが明文化されました。そのため、政治に関しては、天皇は、実際の政策の決定は行わず、また政策の決定をする権限も天皇は持っていません。天皇は、儀式的な国の仕事である国事行為を行うとされている。ただし、国事行為以外の公的行為や祭祀などの行為も行います(これらは依然として政治の決定権を持たない。)。また、その国事行為は、内閣の助言と承認にもとづくとされている。

天皇の国事行為は次のようなものが挙げられる。

  • 国会を招集と衆議院の解散[1]
  • 憲法改正、法律、政令、条約の公布。
  • 勲章(くんしょう)などの栄典の授与。
  • 外国の大使や公使の接待。
  • 内閣総理大臣の任命。および最高裁判所の長官の任命。

基本的人権の尊重

[編集]

全ての人間が生まれながら持っている基本的な権利が基本的人権(きほんてき じんけん、英:fundamental human rights ファンダメタル・ヒューマン・ライツ)です。国家は、国民に対して、法の下に、自由権と社会権、参政権などを平等に保障しています。これは国民一人ひとりの自由意思でコントロールされるべきものであり、政府がこれを侵害することは許されません。

基本的人権の具体的な内容については別のページにて詳しく説明しています。

公共の福祉

[編集]

国家は、特定の個人や団体のためにあるのではなく、「公共の福祉」のためにあります。そのため、爆音スピーカーで自身の主張を宣伝するなどの度を超えた行為は認められません。なぜなら、それは表現の自由である一方、爆音スピーカーを用いることが近くの人の平穏に暮らす権利を侵害しているからです。しかし、このような人権制限は無限に拡大できる可能性を孕んでいます。ですから、国民は政府が行う人権制限を監視し、国会で立法された法律に着目し、人権規制を国民全体でコントロールしていく必要があります。また、先程の例に倣えば、爆音スピーカーで自身の主張を宣伝する者がいることを理由にして、自身の主張を宣伝すること自体を制限しようとする動きが見られる場合がありますが、これは著しい人権侵害となります。このように、一件騙されやすいよう主張で人権侵害が行われる場合もありますから、一人ひとりが法律によっても制限されない人権の価値をしっかりと認識する必要があるでしょう。

公共の福祉によって制限される人権の例
制限される行為 制限される人権  制限の根拠となる法令
他人の名誉を傷つける行為 表現の自由 刑法
届け出のないデモ 集会・結社の自由 公安条例
感染症による入院・隔離措置 居住・移転の自由 感染症法・医療法
資格・免許が必要な仕事に就くこと 職業選択の自由 道路交通法・医師法など
公務員の労働組合の結成やストライキ 労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権) 国家公務員法・地方公務員法

平和主義

[編集]

日本国憲法では、戦争をおこさずに平和主義をまもろうとしています。憲法では、日本は戦力(せんりょく)や武力(ぶりょく)を持たないとしており、軍隊を持たないとしています。しかし、実際には日本国は自衛隊が戦車などの兵器をもっています。これが憲法で禁止されている「戦力」であるのかは現在でも議論が続いています。

より細かい説明は中学校社会 公民/日本の平和主義を読んでください。


前文

[編集]
日本国憲法の条文は長いので、この節では、すべては紹介できません。この節では、日本国憲法の冒頭に書かれている前文(ぜんぶん)を紹介します。
  • 前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、

われらとわれらの子孫のために、

諸国民(しょこくみん)との協和(きょうわ)による成果と、わが国(くに)全土(ぜんど)にわたって自由のもたらす恵沢(けいたく)を確保し、

政府の行為によって再び戦争の惨禍(さんか)が起る(おこる)ことのないようにすることを決意し、

ここに主権が国民に存(ぞん)することを宣言(せんげん)し、

この憲法を確定する。

そもそも国政は、国民の厳粛(げんしゅく)な信託によるものであって、 その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使(こうし)し、その福利(ふくり)は国民がこれを享受(きょうじゅ)する。 これは人類普遍(じんるいふへん)の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づく(もとづく)ものである。 われらは、これに反する一切の憲法、法令(ほうれい)及び(および)詔勅(しょうちょく)を排除する。

日本国民は、恒久(こうきゅう)の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高(すうこう)な理想を深く自覚するのであって、 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

われらは、平和を維持し、専制と隷従(れいじゅう)、圧迫(あっぱく)と偏狭(へんきょう)を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい(しめたい)と思う。 われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏(けつぼう)から免れ(まぬかれ)、平和のうちに生存する権利を有する(ゆうする)ことを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的(ふへんてき)なものであり、この法則に従う(したがう)ことは、自国の主権を維持(いじ)し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務(せきむ)であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉(めいよ)にかけ、全力をあげて この崇高(すうこう)な理想と目的を達成することを誓う(ちかう)。

(以上、前文)

憲法改正の手続き

[編集]


憲法の改正は、通常の法律とは違う改正の手続きがありますが、改正そのものは日本国憲法でも可能です。 日本国憲法の条文にも改正の手続きが書いてあります。

憲法を安定させるため、改正の条件は、通常の法律よりも、きびしい条件になっています。 通常の法律の改正よりも、より多くの議員の賛成や国民の賛成が、憲法の改正では必要なようになっています。

憲法は最高法規なので、他の法律よりも安定させる必要があり、そのため日本では、きびしい改正の条件になっています。

まず、衆議院と参議院それぞれ両方の総議員の3分の2以上の国会での賛成によって、発議(はつぎ、意味:国会での提案のこと)されます。 この憲法改正の発議では、衆議院と参議院は対等です。

国会での発議ののち、国民投票にかけ、過半数の賛成があれば、憲法は改正されます。

これらの条件の一つでも満たさなければ、その発議での憲法改正は廃案になります。たとえば衆議院の3分の2以上の賛成が合っても参議院の3分の2が満たさなければ廃案です。衆参の3分の2以上を満たしても、国民投票の過半数の賛成に届かなければ廃案です。

以上の条件を満たし、もしも憲法改正が決まったら、天皇が国民の名で憲法改正を公布することになります。憲法改正の公布も、天皇の国事行為の一つです。


さて、西暦2021年7月の時点では、まだ日本国憲法は一度も改正されていません。

  • 国民投票法(こくみん とうひょうほう)

2007年に、憲法改正のための国民投票の手続きを定めた法律の国民投票法(こくみん とうひょうほう)が制定され2010年に施行されました。 なお、国民投票法の正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」です。

なお、憲法改正には改正発議のあとの国民投票による「その過半数」(憲法 第96条)の賛成が必要ですが、しかし「その過半数」とは何の過半数なのかは憲法そのものには書かれていません。国民投票法では、有効投票の過半数によって憲法改正をできると制定しています。(※ 検定教科書では、帝国書院や教育出版の教科書で、本文では説明は無いがい、図表で「投票」の過半数だと説明されている。)

有権者の過半数ではなく、有効投票の過半数です。


憲法改正の論点

[編集]

憲法の改正で、よく提案される改正案を上げます。

・自衛隊を確実に合憲にするため、憲法第9条を改正するかどうか?
・新しい人権として、知る権利 や プライバシー権 や 環境権 などを、憲法に追加するかどうか?
・国の歴史や伝統にふれた文を前文に書くか?(現在の日本国憲法では、あまり、ふれてない。)

ほかにも、いろいろと改正案はあります。

  1. ^ ただし、これらを天皇が直接決定するわけではない。