中学校社会 公民/消費生活・消費者の保護

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消費者の責任[編集]

物を買うのも、法律上は 契約(けいやく) の一つである。 買い物は、たとえ契約書(けいやくしょ)などの書類を交わさなくても、口頭での「買います。」という約束であっても、法律的には契約なのである。 なので、販売側に詐欺や不良品などの過失がない場合は、取り消しできないのが普通である。

販売方法によっては、消費者保護の観点から、一定期間内の間なら無条件な解約が認められる場合もある。だが、基本的にほとんどの契約は、もし解約すると損害賠償などが発生する。

たとえば、ある商品を購入したとして、そのあとに店にレシートを持って行って交換をしてほしいと頼んでも、基本的には店側には交換に応じる義務は無い。

店によっては好意で、消費者側の購入品の間違えの場合などに限り、商品が未使用・未開封で購入直後〜数日後程度で、生鮮品などでなければ、レシートの提示とともに店側が好意で交換や返金に応じてくれる場合もあったりするが、これらの交換に法的な義務はなく、あくまで、その店が好意で交換に応じてくれただけにすぎない。したがって交換や返金を店側が断る場合もあるし、たとえ店側に交換を断られても、法的には店側には責任は無いのが一般的である。


契約についての法律は、民法などに定めがある。


  • 違法な契約は無効

契約は原則的に守るべき責任があるが、ただし銃や麻薬などの売買契約などのように法律に違反した契約は無効であり、守る法的義務が生じないばかりか、処罰の対象にもなる。 また、だまされたり、おどされたりして結ばされた契約は取り消しをすることが出来る。

消費者保護[編集]

買い物には消費者にも責任があると言っても、消費者には生産者とちがい、その商品の専門的な知識が無いのが普通であり、その知識さを悪用してウソの広告を出したりする悪質な業者も、ときどき出てきます。

また、商品の中には欠陥品があり、消費者が被害を受ける場合もある。

そのため、消費者の権利を守るための法律が作られています。


  • 消費者の権利
ケネディ大統領

1962年にアメリカの大統領 J・F・ケネディの主張した 消費者の4つの権利(Consumer Bill of Rights) がある。

  • (商品が)安全である権利、The right to safety
  • (商品の情報を)知らされる権利、The right to be informed
  • (商品を)選択する権利、The right to choose
  • (消費者の意見を)反映させる権利、The right to be heard


日本の戦後の高度経済成長の時代において、経済の発展にともない消費者問題も取り上げられるようになり、1968年(昭和43年)に消費者を保護するための 消費者保護基本法(しょうひしゃ ほご きほんほう) が施行(しこう)された。

2004年(平成16年)には改正され 消費者基本法(しょうひしゃ きほんほう) となった。消費者基本法では、消費者の権利、事業主の責任、政府(国や地方公共団体など)の責任などを規定している。


1994年(平成6年)に 製造物責任法(せいぞうぶつ せきにんほう、PL法、Product liability) が定められた。 この製造物責任法により、欠陥品による被害は、生産者が負うことが定められた。より細かく説明すると、たとえ生産者に過失が無くても、製品に欠陥があることさえ本当ならば、生産者が損害賠償責任を負うことを定めた法律である。このため、消費者は製品の欠陥だけを立証すればよくなり、消費者が生産者に損害賠償をさせやすくなった。 損害賠償を求めることの出来る期間は出荷後10年までである。

2000年に 消費者契約法(しょうひしゃ けいやくほう) が定められた。 商品の説明が事実と異なる場合や、強引に加入されて契約した場合は、一定期間内であれば契約を取り消しできる法律。


2009年には 消費者庁(しょうひしゃ ちょう) が発足した。これは、それまで各省庁に分散していた消費者行政を一元化したものである。


  • クーリング・オフ

訪問販売や電話勧誘で商品を購入した場合は、一定の期間内(基本的には8日以内)であれば、通知により、無条件で契約を取り消せる制度があり、この制度をクーリング・オフ(cooling-off)という。特定商取引法に定められている。通知は、内容証明郵便(ないようしょうめい ゆうびん)を配達証明つきで行うと確実であるが、別に書留(かきとめ)でも構わない。