中学校社会 公民/貿易と円高・円安

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予備知識(小学校の復習)[編集]

輸出(ゆしゅつ、英:export)は、外国へ商品を売ることである。輸入(ゆにゅう、英:import)とは、外国から商品を買うことをである。

貿易収支(ぼうえき しゅうし、英:trade balance)とは、輸出額と輸入額の差額である。

貿易黒字(ぼうえき くろじ、英:trade surplus トレイド・サープラス)とは、輸出額が輸入額より大きい場合のことである。

貿易赤字(ぼうえき あかじ、英:trade loss)とは、輸入額が輸出額を上回ってる場合のことである。


  • 加工貿易(かこう ぼうえき)

加工貿易(かこう ぼうえき、英:added-profit trade)とは、外国から原料を輸入し、日本国内で加工して工業製品にして、その工業製品を外国に輸出することで外貨をかせぐ貿易の方法のことである。

日本には資源がとぼしく、外国から原料などを多く輸入しているので、日本にとって加工貿易は、必要な方法である。


※ 以上、小学校の復習。下記から、中学の範囲。

円高と円安[編集]

「1ドル=110円」とかの、ある国と別の国との通貨の交換を、外国為替(がいこく かわせ)といいます。

また、「1ドル=110円」のような、国と国との通貨の交換比率のことを「為替レート」(かわせレート)または「為替相場」(かわせ そうば)といいます。

銀行の窓口の近くの電光掲示板などで、為替レートが表示されています。為替レートは、日々、変動します。

外国企業との貿易の取引きでは、取引きのどこかの段階で、日本円を、相手の国の通貨に変える必要があります。

このような、日本円と外国通貨との交換の手続きは、日本の銀行と、貿易相手の外国の銀行が、仲介業者となって、通貨の交換が行われます。

日本の貿易では、支払いの通貨はアメリカの通貨のドルで支払いをすることが多いです。


円高ドル安」(えんだかドルやす)というのは、ドルに比べて円が高いということです。「円高」と略す場合もあります。 たとえば、仮に1ドルと交換するのに100円だったとして、つまり為替レートが1ドル=100円 だったとして、そのあと為替レートが 1ドル=90円 に交換の比率が変化したら、今までよりも少ない円でドルが買えるようになったので、円高になったことになります。

逆に為替レートが 1ドル=100円から 1ドル=110円に変わったら、円が安くなったので円安ドル高(えんやすドルだか)、つまり円安です。


円高になると、輸入企業が有利になります。なぜかというと、今までの手持ちの円で、より多くの外国製品が買えるからです。

いっぽう、輸出企業が不利になります。なぜかというと、たとえばアメリカに輸出するときは、現地の通貨であるドルで販売するのが一般です。日本で作っている以上は、製品を作る費用は日本の円でかかっているので、それと同等の価値の値段を輸出先のドルでもつけないといけません。なので、円高の時は日本の輸出製品は、現地企業に比べて割高の値段になるのが普通です。そのため、輸出先国の消費者から日本製品が高価格と思われて、購入を手控えられてしまうことが多いのです。

なので加工貿易による工業製品の輸出で儲けている日本にとっては、円高では経済が苦しくなる場合が多いです。また、日本の場合、円高だと貿易収支は赤字になりやすいです。円安だと、貿易収支は黒字になりやすいです。

製造業は円高だと苦しくなる場合が多いです。特にデジタル家電などの規格化が進んだ工業製品では、どこの国で作っても性能が大して変わらないので価格の安さだけで消費者に評価されやすく、円高だとデジタル家電の輸出は不利です。

円高による日本経済の「円高不況」(えんだか ふきょう)などと言われます。

もっとも、原材料や石油などを購入するのには円高のほうが安く輸入できるので、必ずしも円高が悪いことばかりではありません。また、円安が輸出に有利と言っても、日本は外国から多くの資源や食料を輸入しているので、円安が進みすぎると経済が悪化してしまう恐れもあります。 円安だと石油価格は、日本人にとって割り高になります。

貿易摩擦[編集]

  • アメリカとの日米貿易摩擦

1960年代ごろから、せんい製品・カラーテレビ・自動車・半導体電子部品などが多く輸出され、アメリカの製造業が不振になり、アメリカと日本との貿易摩擦が起こる。 アメリカは日本に輸出の規制を、もとめる。


現状[編集]

アメリカと中国が、日本の大きな貿易相手。 日本から外国への輸出では、アメリカへの輸出、中国(中華人民共和国のこと)への輸出、韓国(大韓民国のこと)への輸出、台湾への輸出が多い。

外国から日本への輸入は、中国からの輸入、アメリカからの輸入、オーストラリアからの輸入が多い。


中国は人件費が安いので、その結果、輸出品の価格も安くなるので、各国の消費者が価格の安い中国製品を好んで買うので、多くの製品が中国から輸出される。 中国からの輸出品の生産は、中国の現地企業が生産している場合もあれば、外国の起業が人件費の安い中国に工場をたてて生産している場合もある。

中国にかぎらず、東南アジアも人件費が安いので、中国と同様に、安い製品の輸出をしている。

日本からも、人件費の安い外国に生産工場をうつす動きがあるが、その結果、国内の工場の仕事が減り、国内の生産力が下がるという産業の空洞化が起きている。

また、外国に工場を作ると、日本国内の工場でつちかわれた生産ノウハウも外国の労働者に教えることになるので、外国に技術ノウハウが流出するという 技術流出(ぎじゅつ りゅうしゅつ) も、問題になっている。

また、中国は人口が多く、世界最大の人口を持つので、中国市場に多くの企業が参入し、中国への輸出額も多くなっている。

国際的な経済協力[編集]

  • 世界貿易機関 WTO
( World Trade Organization)

自由貿易の促進のため、関税の引き下げや、貿易の障害になりうる制限である貿易障壁を取り払うことを呼びかける国際機関。GATTにかわって設立された。約160カ国が加盟。

日本もこれに加盟し、なるべく関税の引き下げや貿易障壁などに協力している。

  • アジア太平洋経済協力 APEC(エイペック)

太平洋沿岸地域ではアジア太平洋経済協力APEC(エイペック)

(Asia-Pacific Economic Cooperation)

1989年にオーストラリアの呼びかけて発足。日本も参加。日本・アメリカ合衆国・カナダ・韓国・オーストラリア・ニュージーランドおよび当時の東南アジア諸国連合 (ASEAN) 加盟6か国の計12か国で発足した。

オーストラリア、日本、アメリカ、韓国、台湾、中国、香港、メキシコ、カナダ、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、ニュージーランドの旗 ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、パプアニューギニア、チリ 、ペルー、ロシア、ベトナム が参加。

  • 北米自由貿易協定(NAFTA、ナフタ)
(North American Free Trade Agreement)

北アメリカ大陸でアメリカ、カナダ、メキシコが結んでいる貿易の協定。関税の撤廃などの自由貿易の推進をしている。


  • 自由貿易協定 FTA
(Free Trade Agreement)

その他、2国間以上で相互に関税の引き下げるなどの協定を結ぶ自由貿易協定(じゆう ぼうえき きょうてい、FTA )を結ぶことも多い。 FTAはFree Trade Agreement の略。 FTAをさらに発展させたものとして、関税だけでなく各国間での人の移動の規制緩和などをふくむ、より深い経済交流の協定である経済連携協定(EPA)がある。EPAはEconomic Partnership Agreement の略。


これらの経済のグローバル化によって、価格は安くなった。その反面、いくつかの産業では先進国から人件費の安い国へ産業が流れて、先進国でいくつかの産業が衰退した。

また、各国で景気が連動するようになった。2007年〜2008年におきた、アメリカの住宅バブル崩壊がきっかけの国際的な金融危機である世界同時不況は、その例であろう。

  • フィリピンとのEPA

鉄鋼や自動車などの関税を10年以内に撤廃。

以下のものの関税を10年以内に撤廃もしくは削減。 農産物のバナナ、パインの関税を10年以内に撤廃。 水産物のキハダマグロ、カツオの関税を10年以内に撤廃。

日本からの輸出の農産品目として関心の高いブドウ・リンゴ・ナシの関税を撤廃。

介護現場や看護現場でのフィリピンからの外国人介護福祉士・看護師の日本への受け入れもEPAに基づく(もとづく)ものである。

BRICs[編集]

ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4カ国のこと。 この4カ国は1990年以降の経済成長が目覚ましい国である。 この4カ国の共通点として、国土が広く、天然資源も豊かで、人口も多いので、1990年代よりも以前から経済発展が期待されていた。

4カ国の特徴

  • インド IT産業が強い。
  • ロシア 石油・天然ガスなどのエネルギー資源が豊富。
  • ブラジル コーヒー豆の生産および輸出量は世界1位。 
  • 中国 1978年に市場経済に転換し外国資本を受け入れ始めた。

NIES(ニーズ、新興工業経済地域)[編集]