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中学校社会 公民/選挙・政党

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

選挙と政治

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選挙の原則

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  • 普通選挙(ふつう せんきょ)

日本では18歳以上の男女の日本国民に、選挙権(英:voting rights)があり、一定の年齢(ねんれい)以上ならば仕事や性別や納税額(のうぜいがく)などに関係なく、だれでも選挙権があって投票に参加できるしくみです。

かつて、1945年以降から長らく20歳以上の男女の日本国民に選挙権が与えられる仕組みでしたが、2016年に公職選挙法の改正により選挙権が18歳以上に引き下げられました。そして実際に2016年の参議院議員選挙で、18歳以上の有権者による投票が行われました。

※ なお、憲法改正の投票権はこれとは別です。憲法改正の投票権については、2018年に20歳から18歳に引き下げられました。
アメリカ合衆国、イギリス、フランスなども選挙権は18歳からであり、今回の日本の選挙権の改正はそういった欧米諸国などの流れに沿うものです。
  • 平等選挙(びょうどう せんきょ)

有権者がもつ一票の価値は性別や納税額など差別されず、平等であるというしくみです。

  • 秘密選挙(ひみつ せんきょ英:secret ballot シークレット・バロット)

選挙でどの有権者がどの候補者に投票したかをわからないようにするしくみです。

  • 直接選挙(ちょくせつ せんきょ 、英:direct election)

有権者が直接、代表者(首長や議員)を選ぶしくみです。アメリカのように直接代表者を選ばない間接選挙(かんせつ せんきょ)のようなしくみもあります。

選挙のしくみ

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  • 公職選挙法(こうしょく せんきょほう)

選挙の規則について定めた法律で、さまざまな規則があります。

  • 選挙管理委員会(せんきょかんり いいんかい)

選挙の運営を管理する機関のことです。

  • 選挙区(せんきょく)
小選挙区制(しょう せんきょくせい) - ひとつの小選挙区から、1名をえらぶ方式。
・ 大選挙区制 (だいせんきょくせい)- 一つの大選挙区から2名以上をえらぶ方式。大選挙区は、単純に選挙区と呼ばれることもあります。
  • 比例代表制(ひれい だいひょうせい) - 政党が獲得した票数に比例した議席数を、それぞれの政党ごとに与える方式。  

国政の選挙

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日本の国会は、衆議院(しゅうぎいん)と参議院(さんぎいん)という、2つの議院からなる二院制(にいんせい、英:bicameralism バイカメラリズム)である。

二院制により、同じ政策について、異なる議院で審議を出来るので、一院制の場合よりも、より慎重に議論をすることが出来ます。 なお、衆議院と参議院には選挙区や任期などにちがいを設けてあります。

衆議院選挙

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   衆議院   参議院 
議員の数  465人  248人
任期 4年
(ただし解散が
ありうる)
6年
(3年ごとに
半数を改選)
選挙権
満18歳以上
被選挙権 満25歳以上 満30歳以上
選挙区 小選挙区
289人
比例代表
176人
小選挙区
148人
比例代表
100人 

衆議院の選挙は、小選挙区制と比例代表制をあわせた、小選挙区比例代表並立制(しょうせんきょく ひれいだいひょう へいりつせい)です。 小選挙区選挙で1票を投票し、比例代表選挙でも1票を投票するので、有権者は、有権者1人につき2票を持っています。

衆議院選挙での小選挙区選挙(全国での定数:289名)は、全国を289の小選挙区に区割りしているので、当選できる議員の定数は289名です。

比例代表選挙では、全国を11のブロックに区割りし、全国あわせて176人の議員が選ばれます。

参議院選挙

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参議院の選挙区は、都道府県ごとの選挙区(ただし鳥取県と島根県、徳島県と高知県をそれぞれ合同選挙区とした45の選挙区)で、各選挙区から2名〜8名を選びます。全国で選挙区制で148名を選びます。

これとはべつに、比例代表制で、全国を一つの選挙区として、100名を選びます。

選挙の問題点

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現代には、さまざまな選挙制度の問題点があります。

たとえば小選挙区制では、当選者以外の票が多くなりやすいので、当選者以外に投票した人の意見が無駄になってしまうという問題点があります。(なお、当選者以外に投票した票のことを死票(しひょう)と言います。 )また、選挙区の人口などによって、有権者の一票の価値が異なってしまうという問題もあります。これを一票の格差(いっぴょうのかくさ)と言います。

このような問題点をなくすためには新しい選挙のルールをつくっていくことが必要です。そのため国などでは選挙区の区分けを変えたり、選挙区を減らしたりして対応しています。しかしながら、まだ問題は解決しておらず改善に向けた議論が続いています。

(※ 範囲外: )このほか小選挙区制の問題点としては、政権政党が自分たちに有利な選挙区の区割りをする「ゲリマンダー」という行為を(大選挙区や中選挙区と比べると)比較的に行いやすい[1]とされる。ゲリマンダーの名前の由来は、1800年代前半のアメリカで起きた事例で、当時の選挙区の形がサラマンダーという、西洋の神話に出てくる、火の中に住むというトカゲ(これがサラマンダー)に似ていたから。「ゲリ」は当時の米国の政治家ゲリーに由来。(※ ゲリマンダーは、高校の政治経済の参考書に少しだけ書いてある話題。高校の検定教科書には、現状では記載が無い。政治学では、ゲリマンダーはとても有名な話題なので紹介だけしておく(将来的に高校カリキュラムが変更するなども場合もあるので)。)

政党と政党政治とは

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同じような政策の方針や、同じような政治の理念を持っている政治家の集団、あるいは議員の集団を 政党(せいとう、英:political party) と言います。

議会制の民主政治では多数決で政策が決まるので、同じ政策を目指している政治家どうしは協力しあって行動したほうが、政策が通りやすいのです。

特に国の政治の場合は、政党どうしの競争が政治の中心になることが多く、このような政党の競争が行われる政治のあり方を政党政治(せいとう せいじ、英:party system) と言います。

一般に、国会で、もっとも多数派をしめている政党が政権をとっています。政権をとっている政党のことを与党(よとう、英:ruling party または governing party) と言います。政権をとれていない政党を野党(やとう、英:opposition) といいます。

国会の場合などで、どの政党も過半数をとれてない場合には、複数の政党どうしが協力しあって、ひとつの内閣をつくる場合があります。この場合の連立している内閣の政党を、連立与党(れんりつ よとう、英:coalition government コーリション・ガバメント)と言います。

政党は、選挙の前に、有権者たちに、もし政権を取った時に行おうとする政策を発表するのが一般的です。このような政党が発表している、政権を取った時の実行を約束した政策のことを 政権公約(せいけんこうやく)と言います。またはマニフェストとも言います。


日本の政党の歴史

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1955年から日本では選挙の結果、自由民主党(じゆう みんしゅとう)が、ほとんどの間、与党となって、自民党は与党として政権を担当しました。また野党は日本社会党(にほん しゃかいとう)の勢力が占めました。 このような自由民主党が与党の第一党として、日本社会党が野党の第一党とした国会の体制は55年体制(ごじゅうごねん たいせい)と言われました。

しかし、1992年〜1993年ごろから、政治の考えかたの違いから、それまでの政党が分裂し、再編成され、1993年には自民党(自由民主党)が野党になりました。 しかし、長続きせず、1994年には自民党をふくめた連立政権が出来ました。 その後は、2009年まで自民党の政権が続きましたが、2009年の衆議院選挙で民主党(みんしゅとう)が勝利して過半数の議席を獲得し、政権が自民党から民主党に交代し、自民党は野党になりました。

2012年12月に民主党の政権は終わり、それから自民党中心の政権に変わりました。 2021年の時点では、政権与党は自民党と連立政権を組んでいる公明党です。

政治資金と政党交付金(政党助成金)

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政治の、政策の調査や、政党の宣伝などの活動を行うには、お金が必要です。国会議員にも給料が出ますが、それとは別に、政党には国から税金によって政党交付金(せいとう こうふきん)という政党への助成金が支出されています。政党助成金(せいとう じょせいきん)とも言います。

政治資金規正法(せいじしきん きせいほう)などの法律は、政党の資金について定められています。

※ 範囲外: 選挙ポスター

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日本の選挙で使う選挙ポスターの掲示板(貼られてない状態)

国会議員を選ぶ選挙や、地方議員を選ぶ選挙など、日本国民や地域の住民などの有権者が投票できる選挙が実際に行われるさいに、選挙が始まってから、街中にある掲示板に、選挙の候補者の写真ポスターが用意されます。これを「選挙ポスター」と言います。

このポスターには、けっして、落書きをしたり、わざと破いたりしては、いけません。もし落書きしたり破いたりすると、違法行為になり、警察などによって、落書きなどを行った人は処罰されます。


日本の国会議員などの選挙で使用される投票箱


その他

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※ 「圧力団体」がコラムとして中学公民に降りてきた(東京書籍)。

経団連や、日本医師会など、ああいう団体を「圧力団体」または「利益団体」といいます。

業界団体や消費者団体などが、自分たちの利益や目的を実現するために、議員や政党などを応援する代わりに条件として自分たちの業界の要望を政治家に意見する団体のことです。


経営者団体や医療者団体のほかにも、労働者の団体、農業団体など、さまざまな圧力団体があります。

  1. ^ 吉野篤『政治学 第2版』、弘文堂、2018年(平成30年 ※原著で併記)2月28日 第2版 第1刷発行、P.100